「あいつが無罪になったら、被害者の遺族は納得できないんじゃないでしょうか?」
冤罪の疑いを抱いて最近取材を始めた殺人事件の裁判を傍聴後、男性被告人の家族や友人と一緒に弁護士の説明を聞いていた時のこと。被告人の無実を信じる友人の男性が、心配そうに弁護士にそう聞いていた。
「そういうことを考える責任があるのは、我々ではなく検察官でしょうね」
弁護士はそう説明していたが、まったく正論だろう。この男性に限らず、「犯罪被害者やその遺族をいかに救済するか」という問題と、「被告人は白か黒か」という問題を混同して考える人は世間に少なくない。しかし言うまでもなく、この2つの問題はあくまで別問題である。