自分が何を知っていて何を知らないか、それを知っているのがインテリジェンスだ、とはよく言われることだ。だから知識も分業化され、様々な専門家に分担されることになる。
筆者のようなライターは、得意分野もあるが、浅く広く様々な領域のことを知っていることが求められる。必要に応じてそれを掘り下げる訳だが、その場合にも、自分が何を知っていて何を知らないか、を分かっていることは大事だ。
このところ、ヘンな専門家、に出会うことがあった。
小説の原稿を見てほしい、と持ってきた看護師がいた。50代の女性。ベテランだ。
テーマは臓器移植。妻を事故で亡くした男性が、親や子どもたちと長い時間をかけて話し合い、自分がもし事故に遭ったら、移植のために自分の臓器を提供する、という決意を皆に納得させる。
そしてある日、男性は交通事故に遭い、病院に運び込まれる。看護師だけあって、その辺りの描写はリアルだ。
臓器提供の意思表示をするドナーカードが確認され、翌日、家族たちが見守る中、臓器摘出手術が行われる。提供を受けた患者の体内で、その心臓が脈打ち始めた、という知らせを受けて、家族たちは喜ぶ、というところで話は終わる。