ある日、セントラル社役員の、土方さんが会社に来る。セントラル社自体は規模が小さいものの、大企業の関連会社となっていて資金力はある。土方さんは元々その大企業の重役で、セントラル社を事実上取り仕切っている。
「社長さんな、やりたい仕事をやるんはええけど、ビジネスとして成り立たせないといかんのや。マーケティングもしとらんのやろ? 今まで」
関西弁で社長と長々打ち合わせしているが、土方さんはごく基本的なことから話している。社長は経営を理解していないので、まずはそこから、と考えたのだろう。私のデスクが会議室に程近いこともあり、話す内容がよく聞こえる。まるで親が子供に教育しているみたいだな、と思った。うちの社長は子供みたいなものだ。