翌日、出社すると社長の姿が無い。遅刻も多い人なのでさほど気にしないでいると、社長からメールが一通届いている。
「一週間ほど、タイに行ってきます」
仕事が遅れに遅れているのに、一週間のバカンスへ行ってしまった。現実逃避も甚だしい。無駄と思いつつ電話をかけるが、やはり繋がらない。メールも返事がない。
土方さんは猛烈に怒るかと思ったが、逆に笑っている。
「ありえへんわ。しょうもない男やな」
と言って、社長の居ない間に開発ソースを全部引っ張り出して、セントラルの社員で修正作業に着手する。今まで社長一人でやっていたので、大変な手間がかかる。それでも全部書き直すぐらいの事をした方が、まだ完成の見込みが立つと思ったのだろう。それは実質、イーダを切り捨てることを意味する。