1986年に福井市で女子中学生が殺害された事件の犯人とされ、懲役7年の判決が確定して服役後に再審請求をした前川彰司さんという男性が6日、一度は開いていた再審の扉を閉ざされた。名古屋高裁がこの日、高裁金沢支部が2011年に出した前川さんの再審開始決定について、検察の異議を認めて取り消した。
筆者はこの事件は詳しくないが、報道などによると、有罪の確たる証拠は何もなく、確定判決が有罪認定の拠り所にした知人たちの供述には随分怪しいところがあるという。それにそもそも、前川さんは福井地裁の第一審で無罪判決を受けながら逆転有罪とされた人で、取り消された再審開始決定でも「犯人であると認めるには合理的な疑いが生じている」と言われており、二度も「無罪」という司法判断を受けたに等しい人だ。それがいまだに「殺人犯」のレッテルを貼られていること自体、疑問を感じさせることである。新聞各社は6日の名古屋高裁の決定について、翌7日付けの朝刊で総じて批判的に報じたが、それらの記事はおおむね得心できるものだった。