ミャンマー(ビルマ)最大都市のヤンゴンに住むミャンマー人の義父が来日したとき、日本とミャンマーの違いをまざまざと実感した。
義父はエレベータの乗り方を知らなかった。エレベータボタンの意味が分からず、ただボタンを凝視する。行きたい階数のボタンを押すよう、彼の息子である夫が何度も教え、エレベータの乗り方を覚えた。私はこれを見て、ミャンマーのヤンゴンですら、エレベータのある高層ビルがほとんどないことを知った。
義父はよく日本で道に迷った。英国の旧植民地で英語に強いと言われるミャンマー人でも、ミャンマー国内に長くいると英語を使う機会がほとんどなく、英語を忘れている。彼は日本の路上で見知らぬ人に道を尋ねる際も、ビルマ語を使った。
私は義父に、私の電話番号を書いたメモを持ってもらった。彼が滞在するウィークリーマンションから私の家は徒歩10分の距離だが、義父は来るのに1時間かかる。案の定、客待ちをしているタクシーの運転手が、義父のメモを見て私に電話をしてきた。
「よく分からない言葉を話しているんですけど、あなたに電話するように言っているみたいなんで」
タクシー運転手はそう言って、私が義父を迎えにいくまで、隣町のコンビニの前で彼を見てくれた。