戒名代が30万円。納骨のセレモニー代が10万円。計40万円がかかることが、住職から告げられる。
寺の観音塔に、姉と父を入れるとすると、2体で60万円。
すでにある墓所に入っている姉の遺骨を取り出すのにも、費用がかかるかもしれない。
作ってある墓の土台の撤去費用もかかるかもしれない。
墓所は失い、すでに支払ってある永代使用料は戻ってこないということになる。
墓はいらない、という考えであったとしても、墓をなくすほうが費用がかかるというのでは、考えでしまう。
「しかたがないですね」と妹が呟いた。
2文字で30万、10秒で30万の戒名代も、墓に入れるための費用として納得するしかない。
「戒名のない人というのは、いませんから」
住職はまったくのウソをついたが、もうそうするしかない、と思うと、反論する気力は失せた。