榛野氏と会っても多くが実りなく無駄な結果に終わる。大半がメールでも済むような気もする。それでも打ち合わせに呼ばれれば行かなくてはならない。それは、仕事を請け負う側だから仕方が無いとこの頃は思っていた。
打ち合わせに行くと早速、原稿が返ってくる。驚く程、真っ赤なのだ。しかし、前回の榛野氏の校正のように誤字に黄色い蛍光マーカーがひいてあるよりはまともな気がする。もちろん校正記号などは使っていないのでプロではないというのはすぐにわかるのだが。
榛野氏は原稿を渡すと同時に「校正というよりも彼女達の個人的な意見が入っている気もするんですよね」と言った。嫌な予感がする。とりあえずと一番上にあった原稿を2~3枚その場で読む。比喩表現であったり、五感をずらして書いていたりと小説だからこそ行っていることに矢印をひき「日本語が間違っている」と書いてあった。もしかしたら理解してもらえないような表現もあるかもしれないが、間違っているつもりもない。最初の2~3枚はそういった指摘がほとんどであった。