インターネットで角川春樹を調べると、悪い評判がたくさん出てくる。彼は出版業界の風雲児であったし、一時は「時代の寵児」とまで言われたが、その手法および大言壮語に批判が多く、また同族経営の会社内で父親や弟と確執があり、後に違法薬物の密輸によって刑務所に入れられてまでいる。これでは悪評も当然だ。

特に彼は、出版物を消耗品として扱ったことにより、文化財としての価値を貶めたと非難されている。記者会見で堂々と「本は、売れるものではなく、売るものです」と言ってのけ、映画やレコードと提携した販売いわゆる「メディアミックス」の路線をとって派手な宣伝を仕掛けた。

そして「読んでから観るか、観てから読むか」のキャッチコピーとともに、映画の原作となった角川文庫が熱心な営業により書店に平積みされた。この文庫本を買うと、そこには映画の宣伝が印刷されている栞が挟まっていて、この栞を映画館の窓口で提示すれば入場料が割引になる、という卓越したアイディアであった。

しかし、古典が中心だった文庫本をエンターテイメント路線に変えてしまったことで、出版文化の質低下を招いたと批判されたし、映画化のほうは、宣伝にばかり金をかけていて完成度が低いと批判された。

そこへ不祥事を起こしたのだから、叩かれてもむしろ当然だった。この機を捉え便乗する形で非難する臆病者や卑怯者もいた。しかし、マスメディアを通じて喧伝される姿だけが角川春樹ではないという指摘もある。

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