「被告人を懲役1年に処する……」
裁判官が主文をここまで読み上げた時、傍聴席で複数の人が「ええっ」と驚きの声を上げた。この裁判では公判のたびに被告人の支援者が多数傍聴に来ていたが、この日もそうだった。声を上げたのは、審理を見てきて、「無罪判決」を確信していた被告人の支援者たちだと思われる。冤罪がこの世に存在することは知りつつも、それはマレなことだと信じていたのだろう善良な人たちに「刑事裁判の現実」が突きつけられた瞬間だった。
9月20日付けの当欄で紹介した広島の放送局、中国放送の元アナウンサー・煙石博氏(67)が窃盗罪に問われた裁判の判決言い渡しが去る11月27日、広島地裁であった。一貫して無実を訴えていた煙石氏に対し、三芳純平裁判官が宣告したのは、懲役1年・執行猶予3年の有罪判決。煙石氏は「一言で言えば、不当な判決。絶対許せない判決です」などと述べ、即日控訴した。