世間の耳目を集めているオウム真理教の元幹部・平田信被告(48)の裁判員裁判。公判は何かと波乱含みのようだが、産経新聞の報道によると、弁護側が証人出廷した元オウム信者の受刑者に対し、迷宮入りした「警察庁長官狙撃事件」と平田被告の関連性について意見を求める質問をする場面があったという。質問の背景には、平田被告がかつて、この事件の犯人候補としても警視庁に注目されていたことがあったと思われるが、「あの男」がこの報道に触れたらおそらく気になって仕方がないだろう。
「あの男」とは、かつて警察庁長官狙撃事件の犯人候補としてマスコミにクローズアップされた老スナイパー、中村泰のことである。
1995年3月、地下鉄サリン事件の10日後に発生した警察庁の国松孝次長官(当時57)狙撃事件。捜査を主導した警視庁の公安部がオウム真理教の犯行を執拗に疑い続けた一方で、刑事部が犯人とみていたのが中村だとされる。中村は別件の現金輸送車襲撃事件の容疑で身柄拘束中、警察庁長官狙撃事件の犯行を詳細に自白。さらに獄中にいながらマスコミの取材を受け入れ、自分が長官を撃った真犯人だと認めたに等しい証言を重ねていた。だが結局、警視庁は中村の逮捕に踏み切らず、事件は2010年3月に迷宮入りしてしまったのだった。
そんな中村は83歳となった今も岐阜刑務所で服役中。そして実を言うと、今も自分が警察庁長官狙撃事件の犯人であることを訴える活動を続けているのである。