(屁世26年9月7日付)
全国の大きなお友だちの方々、ごきげんよう。
屁世滑稽新聞のお時間です。
本紙ではきょうから、浮き世の皆さまが、ふと思いついて、勝手に歌詞をつけて唄っているような鼻歌、ざれ歌、替え歌を紹介していこうと思います。題して「風刺歌伝」。
「ふうしかでん」といえば、学校の国語の授業にでてきた「風姿花伝」を連想するかたもいらっしゃるでしょう。
それは六〇〇年まえの今ごろ、室町時代が始まったばかりの頃ですが、当時の演芸(猿楽と呼ばれていた)の人気芸人で、俳優で劇作家でもあった世阿弥(ぜあみ)さんが書いた“芸道の理論書”でした。
でも『屁世滑稽新聞』で行なおうとしているのは、能や狂言でもないし、その理論的ウンチクでもありません。
ふつうの人たちが作って唄うような鼻歌・ざれ歌・替え歌、とりわけ世間を風刺した、よみ人しらずの“落書き”のような歌を、世に伝えようとするものです。
鼻歌やざれ歌、替え歌は、すべての唄の基本です。人間というのは、何とはナシに唄をを生み出し、何とはナシに歌ってしまう本能があります。楽譜とか器楽演奏なんかは、それを保存したり記録したり再生するために、あとから考え出された道具にすぎません。鼻歌こそ音楽の本質、歌曲の基本なのです。
そういう意味では、鼻歌・ざれ歌・替え歌こそ、民謡やフォークソングの根源であり、本質なのです。
そういうわけですから、ここで高らかに「風刺歌伝」の開会宣言をいたしましょう。
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風刺歌伝 ~あらたなフォークソングのために~
フォークソングは、日本語でいえば民衆歌謡、もっと約(つづ)めていえば「民謡」に他ならない。人々の日常生活のなかでの喜怒哀楽、なかでも労働のつらさを嘆き、社会悪への怒りを叫び、愛する人への気持ちを歌ってきたのがフォークソングであった。
日本では、明治時代の自由民権運動のころに、「市民の自由」と「民権の獲得」をもとめる若者たち、いわゆる壮士や書生が街頭で歌った「壮士節」や「書生節」がフォークソングのルーツである。彼らは革命を訴えて街頭でアジテーション演説を行なったが、官憲に弾圧されたので、「演説の代わりとしての歌」を唄ったのだ。だから社会批判を歌にこめたこれらの歌は、当時、「演歌」と呼ばれた。
アメリカでは移民たちが祖国から民謡を持ち込み、それが現在の「カントリー音楽」に発展したが、アメリカで生まれたフォークソングの最大最強のルーツは、なんといっても黒人奴隷の労働歌に端を発するブルースである。
ところがレコード産業の登場で、「著作権」ビジネスが増長し、フォークソングは、歌の作り手……いや、何よりもレコード会社の独占的財産に変質してしまった。一九六〇年代、ボブ・ディランの登場以降に爆発的に流行し、増長した若者音楽としての「フォークソング」は、じつは民衆から金をくすねる“商材”だったのである。「フォークソング」が「著作権」最優先の財物と化し、民衆が自由に唄うのを阻んできた……。これほど馬鹿馬鹿しい皮肉はない。
本当のフォークソングを産み出し、発展させねばならない。だれでも自由に唄い、自由に作り変えて楽しむことができる歌。それこそが民衆の歌。フォークソングなのだから。
そういうわけで、この『屁世滑稽新聞』では、だれもが自由に歌えることを大前提にした「あたらしいフォークソング」を提案したい。ここに紹介する唄は、メロディも歌詞も、歌い手が自由に変えて歌ってほしい。民衆の創意と工夫こそが、ゆたかな文化を創っていくのだから。
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……さて今回は手始めに、福島原発災害を嘆く唄です。
(歌詞の上に記したアルファベットは、ギターのコードです)
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雨を見たかい
G G
ヒロシマの雨、ナガサキの雨。
D D G
雨! 原爆の、黒い雨
G G
ビキニの島々、マーシャル群島。
D D G
雨! 水爆の、黒い雨
★———————————-
C D G D Em
雨を見たかい? 放射能の黒い雨
C D G D Em
雨を見たかい? 放射能の黒い雨
C D G
いのち むしばむ 雨
———————————————-★
G G
ユーゴスラビア、ボスニア、コソボ。
D D G
雨! 劣化ウランの黒い雨
G G
イラクをむしばみ、アフガンをころす。
D D G
雨! 劣化ウランの黒い雨
(★をくりかえす)
G G
スリーマイルの、不気味なきざし。
D D G
雨! 原発事故の黒い雨
G G
チェルノブイリの、こどもをころす。
D D G
雨! 原発事故の黒い雨
(★をくりかえす)
G G
福島の雨、茨城の雨。
D D G
雨! 原発事故の黒い雨
G G
東京の雨、仙台の雨。
D D G
雨! 原発事故の黒い雨
C D G D Em
雨を見たかい? 黒い死の灰の雨
C D G D Em
雨を見たかい? 黒い死の灰の雨
C D G
おれたちの、あびる雨
*:-.,_,.-:*’“’*:-.,_,.-:*’“’*:-.,_,.-:*’“’*:-.,_,.-:*
おそうじオジチャン
(原発リクビダートルに捧げる歌)
A
おいらは 原発 おそうじ おじちゃん
D7(またはD) A
ふくしま 原発 おそうじ おじちゃん
E A
被曝 しながら 仕事 する
A
朝から 死ぬほど 放射線あびて
D7(またはD) A
いのちを かけての 汚れ仕事
E A
被曝で死んでも 使い捨て
★——————————————–
【1】
A
1日はたらいて 8千円
A
今日もはたらいて 8千円
D7(またはD)
明日もはたらいて 8千円
A
放射能にまみれて 8千円
E A
死ぬまで はたらく お国のために
——————————–
【2】
A
放射線あびたら どーなんの?
A
はかっとらんから わからへん
D7(またはD)
たくさんあびたら どーんなんの?
A
バッチもつけへん わからへん
E A
天国いったら おしえてもらおう
——————————————–★
A
そんな おいらも 夢がある
D7(またはD) A
でっかい 借金 かえしたい
E A
家族と ふたたび くらしたい
(★をくりかえす、一番は【1】、二番は【2】)
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きょうはこれでおしまい。
また今度、お話しましょうね。
では皆さん、ごきげんよう。 さようなら。
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