マッサンはウイスキーを作ったけど
アベッチサンは何をしたの……の巻
(ヤン・デンネン特派員の大江戸情報)
【東京発】 昔の特派員仲間で、今はロシア内務省のアナリストをしている友人から、
日本政府の朝鮮対策について知りたいと電話があって、狸穴のスナックで久々に会った。
この男は――仮に名前をレヴィチンコとしておくが――滞日中は山渓新聞の編集局長など
をスパイとして利用したことで名を売り、ソ連解体後もロシア政府の有力者なのである。
ちなみに彼がソ連スパイとして用いた山渓新聞の編集局長は、暗号名が「カント(CUNT)」
だった。言うまでもなく「女陰」を指す。「左折れの男根」を暗示するような名前のソ連
外交官が、日本のマスコミ要人を「女陰」と呼んで利用していたことが何を意味するかは、
賢明な読者なら察しがつくだろう。
それはさておき、古い友人からのたっての頼みである。私ヤン・デンネンも一肌脱ごうと
いうことになり、いろいろな意味で朝鮮事情に通じているサンヤ李恵子にアプローチを
かけた。焼け跡世代の例にもれず、彼女もゴディバのチョコレートなどを差し出せば尻尾
を振って何でも喋ってくれるわけである。アポをとりつけて議員会館に向かった。勿論、
ゴディバチョコレートの詰め合わせを小脇に抱えて……。
私が彼女から聴き出した朝鮮事情や南北朝鮮への日本政府の秘策については、コンフィデ
ンシャルな事項だからここには書かない。だがこのときに交わした冗談くらいは、ここに
書いてもバチは当たるまい。以下はそのやりとりの一部である――
ヤン・デンネン特派員とサンヤ李恵子氏との会話(某日、議員会館にて)
ヤン 「やあ、こんにちワ! お忙しいところスミマセン」
李恵子 「初めまして。あなたのコラムは週刊侵腸で毎回拝読してますわ。おかげで腸をすっかりやられて下痢が止まりませんから(笑)」
ヤン 「それはソーリー、アベソーリー。いやいや申しワケない。ところで李恵子さん、ワタシあなたと初対面じゃないデス。あなたが幼い頃に、あなたの故郷の北陸でたびたび会ってましたよ」
李恵子 「あら!そうでした?」
ヤン 「朝鮮戦争のときにワタシ、北陸に張り付いて特派員やってマシタ」
李恵子 「えっ? 60年以上前のことですよ。そのころから現役の記者さんだったの?」
ヤン 「ハイ。終戦直後から記者稼業ひとすじでして……」
李恵子 「信じられない。どうみても50代にしか見えない! だわ。あなた老化しないの? もしそうなら秘訣を知りたいわ!」
ヤン 「ハイ。ワタシ、毛沢東からじきじきに教わった、中国歴代皇帝が愛用していた回春法をやってマス」
李恵子 「それはすごい! ぜひ教えてほしいワ!」
ヤン 「ザンネンながら殿方専用なのです。それに最近はクスリのほうで貞操観念が薄れてきて、梅毒とかヘルペスになるリスクも上がってきたので、回春どころじゃなくなってマスよ、ハハハ」
李恵子 「えっ? それって回春とかおっしゃってるけど、ひょっとして買春?」
ヤン 「オー!ミステイク! バレてしまった! ニッポンでは、そうも言うそうですね、イエス!」
李恵子 「とんでもないご老人ね。それはともかく、じゃあ父のことはよくご存じでは?」
ヤン 「モチロン! 朝鮮事情に通じた方でしたから。しかも地方新聞社の要職に就いてカツヤクしておられた」
李恵子 「朝鮮戦争のころから、その後に始まった在日北朝鮮人の帰国事業のことなど、父はずっと取材していましたから」
ヤン 「そのあとイロイロあって、郷里で選挙に立候補したけどお負けになって、それでアナタを連れて東京にお引っ越しになり、東京でもマスコミの寵児になりましたよね」
李恵子 「ええ、宇治山渓グループの放送局に職を得まして、ラジオパーソナリティの先駆けとして伝説的な活躍をしました」
ヤン 「存じ上げております。民族のキズナって強いものだなあ……と、そのたびごとに感心しておりました」
李恵子 「あらそうですの?」
ヤン 「クニが違えど同じ民族なのですから内輪もめはイケナイ。就職でも何でも仲間うちで融通しあって助けあう。そういう国際的にも通じる教訓を、お父様からも、あなたの生き方からも、ワタシ学んできたのデス」
李恵子 「あらまあ……。ところでヤンさん、あなた朝鮮戦争のときは戦地で取材したの?」
ヤン 「イイエ、日本の兵站拠点でもっぱら取材してマシタ。でもワタシ、その後、中国とソ連との国境紛争は、第三国人という立場を利用して、双方の“記者席”から戦闘を眺めておりマシタ」
李恵子 「それは興味ぶかい話ね。日本も周辺諸国と国境がらみの諍(いさか)いが激化してきたから、ぜひ中ソ国境紛争のことは聞いておきたいワ」
★ ★ ★
ヤン 「月日の経つのは早いものデス。もう45年も前のことデスが、きのうの出来事のように鮮明に覚えていますヨ。事件はアムール川の支流、ウスリー川に浮かぶ一つの小島で起きました」
李恵子 「竹島みたいに海にうかぶ孤島ではなかったのね」
ヤン 「大陸の二大国家ですから、大きな川が国境線になって、川のなかの島の所有権をめぐって紛争が起きたりするのデス。……で、この島を中国は“珍宝島”と呼び、一方のソ連は“ダマンスキー島”と呼んでいた」
李恵子 「まあ…………」
ヤン 「中国政府は『チンポー!』と叫び、ソ連政府は『ダマンスキ~!』と叫ぶ。それはもう大変なことになってマシタ」
李恵子 「…………(赤面して声も出ず)」
ヤン 「どうしました?」
李恵子 「あなた、私にセクハラしてるでしょ? 中国が『チンポ~!』と叫び、ソ連が『駄マン好き~!』と叫ぶなんて、そんな出来すぎたジョークあるわけないじゃない? それじゃ“男根vs女陰”のおかめ・ひょっとこ対決じゃないの(笑)」
ヤン 「ハァ? サンヤ先生なにか勘違いしてオラレル。珍宝島事件は歴史的な事実デ~ス! それに現地の人は、そういう名前を聞いてもそんなことは連想しませんよ。『チンポ』とか『駄マン好き』とか、それは日本語だから日本でしか通用しません」
李恵子 「あら。そうですの……(ひたすら赤面)」
ヤン 「ワタシの祖国のオランダにも、似たようなことがありますヨ。たとえばワタシはスケベニンゲンの出身なのデスが……」
李恵子 「スケベだなんて自己紹介したら人間終わりですわよ」
ヤン 「イヤイヤ、だか~らチガイマス! オランダの、北海に面したリゾート地ですよ。サカナがめっちゃウマイとこデンネン!」
李恵子 「まあ……。記者歴が長いと駄ジャレで自己紹介するようになるのね。それにしてもスケベな地名よね」
ヤン 「だ~から~、そう感じるのは日本語の“助平”と発音が似ているからで、日本人だけだってバ! だいたい東京にも“銀座スケベニンゲン”という、スケベニンゲン市長から正式に命名許可をもらったレストランがあるんですケド、ご存じ?」
李恵子 「いいえ。外食はもっぱら新大久保なので……」
ヤン 「銀座スケベニンゲンのパスタは絶品ですよ。ワタシ的には“チンチンコース3980円”がおすすめですケド」
李恵子 「え? チンチン食べちゃうの? あたし、なんだかワクワクしてきた……」
ヤン 「だ~から~チガウです、それ! チンチン(Cincin!)はイタリア語で“乾杯!”って意味ですよ。イタリアン酒場で“チンチン”って名前の店はザラにありますから」
李恵子 「そうでしたの? 外国語って、日本人が聞くとイヤラシイのが多いわね。やはり日本では欧米語よりもハングルを教えるべきよ!」
ヤン 「そうおっしゃりますケド、日本のことばだって、外国人が聞くとスケベ~な連想したりするものがアリマスヨ」
李恵子 「うそでしょ? 日本語は世界一美しい言葉なのですよ。言の葉というくらいですからね」
ヤン 「すべての言語はみな美しいし、みな立派で優れているんですよ。ワシらの言語がいちばん美しい、とか、優れている、とか自慢したり優越感を持つのは、世界の広さをしらないイナカ国家の三等国民くらいなもんですよ」
李恵子 「……美しい日本のわたし。」
ヤン 「60年以上の特派員経験があるワタシのお説教を、受け入れられないようデスから、じゃあ実例をすこし示しマスネ」
★ ★ ★
ヤン 「まず日本では電話で話しだすときに必ず用いる“もしもし”って言葉。あれドイツ人が初めて聞いたら驚愕シマス」
李恵子 「あんなの世界共通のあいさつでしょ?」
ヤン 「レディの前では口にするのも憚(はばか)られることなのですケド……。日本語でいう“お●んこ”は、ドイツ語だは“ムッシ(Muschi)”なんですヨ。元々“ムッシ”は子猫を指す言葉ですけどね。ちょうど英語で子猫を意味する“プッシー(pussy)”が“お●んこ”を指すようになったのと同じ事情でしょう」
李恵子 「えっ? じゃあ“モシモシ”って言ったら……」
ヤン 「オメコオメコって言ってるようなもんデス。相手はビックリします。次はニッポンの“サザエさん”に出てくるあのイガグリ坊やですケド……」
李恵子 「磯野カツオ……ね」
ヤン 「イタリア語では“私”が“イオ(io)”で、“私は何とかです”っていうのは“イオ・ソノ何とか”と言いマス。……で“おちんちん”は“カッツォ(cazzo)”なんですワ。だから“私はオチンチンです”ってイタリア語で言うと……」
李恵子 「イオ・ソノ・カッツォ……ですか?」
ヤン 「イエス! ふつうの速さで言えば“イソノカツオ”になってしまうんですワ。こういう、日本語を知らない外国人に要らぬ誤解を与えるコトバというのは、けっこうありマス」
李恵子 「それが人名だったら悲惨ですね」
ヤン 「イエス! たとえばワタシが好きなAV女優に麻生舞という人がいました」
李恵子 「駄マン好き~……ですか?」
ヤン 「ノゥッ! 名器です。ワタシ名器スキです。……それはともかく、ニッポンの皆さんは“麻生”をふだんどう発音してます?」
李恵子 「あそー……でしょ?」
ヤン 「ふつうに“アソー”と言うと、英語圏では“尻の穴(asshole)”と聞こえるんですよ。発音してみましょうか(http://ja.forvo.com/word/asshole/)」
李恵子 「あっ! 本当だ!」
ヤン 「昭和天皇がご存命のころ、軽く受け流すお答えの常套句として、“あっ、そう”をご愛用していましたが、あれも今考えれば冷や汗ものだったわけです」
李恵子 「世界の広さ、文化のギャップを感じますねえ……」
ヤン 「……で、麻生舞チャンですが、彼女が外国人の前で“マイ・ネーム・イズ・舞・麻生”と言ったら、どう受け取られるか……デスネ」
李恵子 「私のなまえは“私のお尻の穴”です……となってしまう。スゴイですねえ」
ヤン 「そんなこともあったせいか……彼女、その後、“沢口りな”の名前で仕事をするようになったのデス」
李恵子 「お詳しいですわね」
ヤン 「ファンでしたから(笑)」
★ ★ ★
李恵子 「麻生が“お尻の穴”に聞こえるとなると、麻生副総理が心配だわ」
ヤン 「麻生太郎さんの場合は、苗字だけじゃナイからネ」
李恵子 「……とおっしゃると?」
ヤン 「ニッポン人がふつうに喋るように曖昧な発音で“アソータロー”って言ったら、英語圏の人間には“尻の穴のテロ(asshole terror)”に聞こえるでショーね」
李恵子 「想像するだけで背筋が凍りますワ」
ヤン 「たしかに“私はケツの穴のテロです”なんて自己紹介されたら、お尻を押さえて逃げますよ(笑)」
「アソウ・タロウ」とハッキリ発音しないと
「Asshole terror」に聞こえてしまい、
あらぬ誤解を持たれることになる。
李恵子 「とくに麻生さんの場合は、訪米の際などは、はっきり正しく日本語を発音しないと命にかかわりますね」
ヤン 「テロリストと間違われてしまう恐れもアリマス。デカい図体のポリスメンが駆けつけて、あせった麻生さんが“ちょっと待ってくれ!”などと言いながら名刺を出そうと背広に手でも突っ込めば、その場で射殺されるかも知れません」
李恵子 「おお~こわい! プルアンハグナァ……」
ヤン 「ソレ、ニッポンのおまじないですか?」
李恵子 「アニョ、わたしの心のなかの叫びです。心配だなぁ……って呟(つぶや)いただけです」
ヤン 「まあ……しかし、犬のお尻から顔がでてきても、悪いことばかりじゃないかも知れませんよ。2006年にロサンゼルスのジェシカ・ホワイトさんが飼っていたテリア犬のお尻に、キリスト様が降臨して、世界じゅうで騒動になったことがありますから」
犬の尻の穴(asshole)には神が下りることもある……らしい。
(2006年に米国LAのジェシカ・ホワイトさんが撮影。ちなみに
愛犬の名は「アンガス・マクドゥーガル」、三歳の雑種テリア)
李恵子 「ほかに日本の政治家で、こういう要注意の名前の人っているんですか?」
ヤン 「イエス! レディの前で口に出すのも憚られるのですが……。あっ、これさっきも言いましたネ。……とにかく“キンタマ”のことを英語で“ナッカー(knacker)”といいます。これは物と物とが当たって出るコンコンッという音が由来の擬声語らしいのですが、2個の小さな丸い木片をヒモで結びつけて、コンコンッと音を出すカスタネットのような打楽器とか、それに似たキンタマを指す俗語です」
李恵子 「名前のなかに“ナカ”が入る人名ってたくさんあるわよ。中曽根康弘さんとか、竹中平蔵さんとか」
ヤン 「そのお二人がまさに問題なのデス。息子のことを英語で“ソン(son)”といいますが、俗語だと“そこの兄(あん)ちゃん”という卑近なニュアンスになります。さらにこれが“野郎・くそったれ・タコ・ぼけなす”などの罵倒の意味ももつわけデス。だから自己紹介なり他人からの紹介のときに“なかそね”と日本語でハッキリ発音すれば問題はないのですが、変に卑屈な日本人が外国人のまえでよくやるように、西洋人をまねた奇妙なアクセントや発音で“ナッカソーネ”なんて言ったら、聞く人がきけば“キンタマ野郎”と聞こえてしまうのです」
李恵子 「中曽根さんは総理大臣時代、訪米先の記者会見でいわゆる“不沈空母”発言をして世を騒がせたけど、“キンタマ野郎”が“不チン空母”発言なんかしたらシャレになりませんわ(笑)」
ヤン 「そのダジャレも、日本でしか通用しませんから(笑)」
「knacker」「son」はいずれも英語の俗語で、それぞれ
「キンタマ」「野郎」という意味だ。「なーかーそーね」と
母音をちゃんと伸ばして発音せずに、「ナッカソネ」などと
英語っぽく発音すると、「威勢よく突っ張ったキンタマ野郎」
と思われるので注意が必要だ。日本人の名前は、外人の前でも
ちゃんと正しい日本語で発音すべきである。
李恵子 「竹中さんはどうなんです?」
ヤン 「サンヤ先生、“ヘイズ(haze)”っていう英単語はご存じですか?」
李恵子 「煙……よね。あたしの好きな坂本冬美チャンが“パープルヘイズ音頭”っていうのを唄ってるのよ。パ~ヘイズ紫の~♪ けむ~り~がモクモク~♪」(→ https://www.youtube.com/watch?v=Dt4YxGCmO0Q )
ヤン 「お歌がお好きでケッコウなことデシタ(笑)。“ヘイズ”って言葉は、モヤっとした煙や霞(かすみ)という意味があり、それが一番ふつうの用例なのですが、ほかにもいくつか意味があるんです」
李恵子 「煙だけじゃないんだ?」
ヤン 「ニホンゴでいえば“神”と“髪”と“紙”とか、“橋”と“箸”と“端”とかネ。由来はちがっても現代では同じ音になっていて、漢字で書かないと違いがわからない言葉はこの国にもけっこうあるでショ?」
李恵子 「たしかに。フジといっても“富士”も“不二”も“不治”もあるわね。富士テレビジョンとして発足したフジテレビも、今じゃ“不治テレビ”になっちゃたし」
ヤン 「オーダイバー合衆国とか、オ-ダイバー新大陸とか、新社屋の所在地のオーダイバーを冠につけたイベントだって、われわれ特派員仲間は“ダイジョブかいな~?”と苦笑しながら眺めているわけですヨ。“不治テレビ”に似つかわしく、“ダイバー! ダイバー!”と叫びながら凄い勢いで急降下(dive)しているわけですから、あの会社は(笑)」
李恵子 「……それで煙の話ですけど?」
ヤン 「そうそう、忘れるところデシタ(笑)。煙という意味のヘイズ(haze)は、元をたどると1000年くらい前の、大昔のイギリスで使われていた“どんよりと薄暗く曇った”という意味の“ハズ(hasu)”という古語が由来らしいです。だけどもうひとつ、中世フランスの“嫌がらせをする・いじめる”という意味の“ハゼール(hazer)”という言葉がイギリスに伝わって、現在はヘイズ(haze)という形で使われている言葉もあるんですワ」
李恵子 「言語学のややこしい講釈、ゴクローさんです(笑)」
ヤン 「長くなってスンマセン。……で、こっちの意味の“ヘイズ”なんですけど、“ヘイズする人”つまり“いじめる人”のことを今でも普通に“ヘイザー(hazer)”というんですヨ」
李恵子 「学校のいじめっ子……とかですか?」
ヤン 「いや。むしろ、寄宿制の学校の“新入生歓迎”儀式で新入生をいじめる上級生とか、新兵をいじめる先輩の下級兵士とか、さらに意味がひろがって、使いものにならない家畜をころす屠殺業者、廃屋や廃船を解体する業者なんかも、みんな“ヘイザー”って呼ばれています」
李恵子 「……で、それと竹中さんは関係あるんですか?」
ヤン 「中途半端に西洋人ぶって、“ヘイゾ~・タ~ケナ~カ”などと自己紹介しようものなら、ネイティブの英語つかいには、こんなふうに聞こえてしまうかもしれませんね。“いじめ野郎! キンタマとっちまえ!(Hazer! Take knacker!)”」
先輩による新入生や新兵イジメとか、「ホモ嫌い」による
同性愛者へのイジメや嫌がらせを、英語では「haze(ヘイズ)」
といい、そういうイジメ野郎を「hazer(ヘイザー)」という。
「knacker」には「金玉」のほかに「家畜屠殺屋」「廃屋解体屋」
「屠殺する」「ダメにする」とか「役立たずになった家畜・廃馬」
という意味もある。他人にむかって「Take knacker, hazer!」など
と言ってはいけない。
★ ★ ★
李恵子 「安倍総理はどうなんでしょうね? アベ・マリアっていう歌があるくらいだから、悪いイメージはないでしょ?」
ヤン 「ノゥ……。そんなことないデス。世界のコトバは英語だけじゃナ~イ」
李恵子 「ということはフランス語とか?」
ヤン 「ピンポ~ン! フランス人のまえで安倍総理のことを“あべっちさん”などとニックネームで呼ぶと、ヤバイです(笑)」
李恵子 「どういうこと?」
ヤン 「フランス語で“白痴化する”ことを“アベチル(Ab?tir)”というんですが、ここから生まれた言葉で“馬鹿”のことを“アベッチサン(Ab?tissant)”っていうんですヨ」
アベッチサン(ab?tissant)はフランス語で
「白痴」「バカ」という意味である。だが歴史上、
洋の東西を問わず「バカ(fool)」は、権力者を
おだてる「道化(fool)」としての特権を得てきた。
トランプカードの「ジョーカー(joker=おどけ者)」
もそうした道化師にほかならない。
李恵子 「安倍さんはフランスでは馬鹿の代表みたいになっちゃうのね……」
ヤン 「悲しがることはないデス。なぜなら、世知がらい世間常識などハナから無視して馬鹿なことを言ったり行なったりする本格的なバカは、昔から、それなりに一目置かれていたからです」
李恵子 「まさに安倍総理のことじゃないの」
ヤン 「イエス。そして馬鹿や狂人を、天の声の代弁者として崇拝する習慣というのは、昔から洋の東西を問わず、存在してきマシタ」
李恵子 「すばらしいわ!」
ヤン 「馬鹿、すなわち“アベッチサン”は、西洋では古来、王様や貴族が“宮廷道化師”として重用してきたのですよ。ちなみに英語の“フール(fool)”という言葉がありますが……」
李恵子 「馬鹿のことでしょ?」
ヤン 「“馬鹿”のほかに“道化師”という意味もあるのデス」
李恵子 「知らなかったわ。馬鹿も使いようなのね」
かつては「バカは天与の資質」として神聖視され、常識人が
けっして口に出来ない権力批判も「バカだから仕方ない」と
大目に見られていた。宮廷道化師は王や貴族を笑わせるだけ
でなく、常識人たる側近臣下たちが言えないような辛辣な
批判や、悲しい知らせなどを、権力者に伝える貴重な役目も
果たしてきた。
ヤン 「現在だってまったく変わってないのですが、権力者のまわりには、小賢(こざか)しい欲たかりの小人物たちが集まります。こいつらは世間体を気にして、小賢しく、せせこましく、常識的に振る舞うわけです。そういう木っ端(こっぱ)役人みたいのが、吹きだまりみたいに集まった組織はどうなるか?」
李恵子 「ソニーみたいになるんでしょ?」
ヤン 「イエス! あるいはお台場に移転後の宇治テレビみたいに、こざかしいばかりの烏合の衆の集まりになって、まさにオ~!ダイビング!……するわけです」
李恵子 「おお~ダイバ~ってことね?」
ヤン 「イエス。むかしの王室なども、そうした危険性を経験のなかで学んだのでしょうね。常識ぶる臆病な木っ端役人ばかりで王室が窒息しないようにするため、わざわざ世間知らずのバカを“道化師”として雇っていた、というわけ」
李恵子 「現代の日本では考えられないわ……」
ヤン 「いや、サンヤ先生。あなたみたいな議員には想像できないだろうが、国会制度そのものが、じつは国民的娯楽を提供する“愚者の殿堂”であり、馬鹿どもが騒ぎまわる“道化の劇場”なのですよ。少なくともわれわれ海外特派員は、そういう視線で国会を楽しませてもらってますから(笑)」
李恵子 「まあ…………(ため息)。で、バカ代表のアベッチさんは、どんな存在意義があるっていうの?」
ヤン 「古来から、バカが売りものの宮廷道化師は、常識的な臣下や側近ができないような言動を、担ってきたわけです」
李恵子 「馬鹿にそんなことができるの?」
ヤン 「イエス! まず太鼓持ちの仕事があります。日本語でいえば“幇間(ほうかん)”です。……ところでサンヤ先生、幇間ってどういう意味だと思います?」
李恵子 「モルラヨ~」
ヤン 「あの? それは何のおまじないですか?」
李恵子 「ただの郷里の方言ですよ。“知りません”って意味ですから」
ヤン 「はぁ、そうですか。……で、幇間ですが“幇”ってのは“脇から手を出して助ける”という意味です。犯罪者を支援することを“幇助(ほうじょ)”っていうでしょ? ……まあそういう意味です」
李恵子 「勉強になるわね」
ヤン 「……で、幇間というのは“間をたすける”わけで、酒席などで、間が空くと“間抜け”になっちゃうので、冗談をいったり芸をみせたりして“間を持たせる”わけです。この“間を持たせる人”のことを、そのまま直訳したような英語の言葉があるのですが、ご存じですか?」
李恵子 「モルラヨ~」
ヤン 「答えを言いますと、そのものズバリの“エンターテイナー”です。“エンター”は“間”、“テイナー”は“持たせる者”という意味です」
李恵子 「……で、それと安倍総理はどう関係あるの?」
ヤン 「宮廷道化師のたいせつな仕事は、まず馬鹿をしてみせてご主人の笑いをとる太鼓持ちってことです。そしてもう一つ、これも“馬鹿”しか許されない重大な任務なのですが……」
李恵子 「それは何?」
ヤン 「常識的な木っ端役人の臣下たちには、畏(おそ)れ多くて王様や権力者のまえでけっして口外できないような不埒(ふらち)なことを、権力の主にむかってズケズケと言う任務です」
李恵子 「王様に面とむかって悪口を言うってこと?」
ヤン 「ノゥ! 悪口というよりも批判ですね。それから国や王室の存亡にかかわる不吉なニュースを、王様に伝える仕事とか……」
李恵子 「アベッチサンの安倍総理が“現代の宮廷道化師”だなんて、そんな言い分は通用しないでしょ? ここは民主国家の日本ですよ? 絶対王政時代のフランスやイギリスじゃないんだから」
ヤン 「ノゥっ! よく考えてごらんなさい。われわれ外国人の特派員にはわかることなのですが、日本人には難しいかもね。文化を比較できるだけの広い視野も経験もないですから、日本には……」
李恵子 「そうまで言われたら無理矢理でも考えますワヨ! 腐ってもワタシ、ニポン人ですから!」
ヤン 「……アベッチサンは現代の宮廷道化師だと思いませんか?」
李恵子 「でもべつに王様……というか、天皇陛下を笑わせるような馬鹿な芸をするわけでもなし……。ああ!わかった! いまだに天皇ご一家を汚染のホットスポットに閉じ込めて、京都のご自宅に帰れないようにしているワ。そういう不敬なことは常識的な臣下なら誰ひとりできるはずがない! 天皇陛下にキツく当たっている、という意味では、アベッチサンは立派な宮廷道化師だわね」
ヤン 「たしかに。でも日本は絶対王政でしたっけ?」
李恵子 「天皇陛下は国家と、主権者たる国民の象徴じゃないの! このあたりのことは、あたしらの党の改憲案でじきにぶち壊す予定ですけどね。……まあとにかく、たとえ現在の憲法で“主権者は国民”と書かれていても、安倍総理はその国民にだって大笑いの芸を見せたり、おそろしい罵声を吐いて、じゅうぶんに宮廷道化師の役割を果たしているわよ!」
ヤン 「日本は立派な宮廷道化師を維持していて、まことにうらやましいデス。歴史的伝統を尊重する保守政党の醍醐味(だいごみ)ですね!」
李恵子 「お誉めいただいて光栄です。これからも立派な宮廷道化師を持ち続けるよう、自民党はがんばっていきます!」
(屁世滑稽新聞は無断引用・転載を大歓迎します。
ただし《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=5088)から引用》と明記して下さい。
なお、ヤン・デンネン記者とサンヤ議員の会話は、本紙記者が銀座の酒場で
一人酒していたときに、たまたまそばの席にいた外人特派員どうしの自慢合戦
の、聞くとはなしに聞こえてきた話の内容にヒントを得たフィクションです。
登場人物も勿論虚構ですので、お迷いのないよう……)