10月12日正午から京都大学で「11・12抗議行動実行委員会」主催による「全学緊急抗議行動」が行われた。京都大学全学自治会同学会が中心となり、様々な大学の旗や団体の旗がはためく集会だった。

◆制服姿の高校生も長時間、耳を傾けた

同学会の学生諸君にお目にかかるのは初めてであったが、現在、日本や世界についての状況分析からデモにおける学生の不当逮捕、それに続く京大への公安警察侵入を捕捉した意義と問題点などが基調演説で語られた。うんうん。最近の現役学生にしては非常によく勉強しとるわい、と感心させられる(こんな表現は失礼か)。続いて各団体の発言となり、熊野寮や学部自治会、まるっきりの個人からの発言も相次いだ。学生だけでなく労働団体や市民団体も参加していた。

ざっと見渡したところ参加者は主催者発表で300人、警察発表で70人というところであろうか。印象的だったのは制服姿の高校生が長時間集会に耳を傾けていたことだ。

京大全学自治会が所属する「全学連」委員長も駆けつけており、強い調子のアピールを行っていた。別の学生は「今日もこの中に公安がいると思いますけど」と冗談交じりに発言した。私の後ろにはちょと怪しいスーツ姿が2人いたが一瞬彼らはたじろいだように思う、勘違いかもしれない。

京都大学で11月12日、不当逮捕と公安の侵入に抗議する「全学緊急抗議行動」が開かれた(筆者撮影)

◆学生に「過激派」のレッテルを張る国家こそが究極の過激組織

そして私は思いを巡らした。目の前で発言する学生は「戦争に向かう安倍政権を許せないし、それに対抗する学生を逮捕する弾圧は許せない」、「日米ガイドライン見直しと特定秘密保護法の施行が迫っている。この国は戦争に向けてまっしぐらだ」、「なぜ、大学との約束を破り大学に潜入した公安を拘束したのが『行き過ぎ』と言われて、なんの暴力も振るっていないデモ参加者を引きずり倒して逮捕するのが正当化されるのか? 『過激派』だからというが、どっちが過激なのか?」と。

最後の発言は、ここ20年ほど私の頭の中で行きつ戻りつしてきた疑問でもあった。警察や公安調査庁は「過激派」、「極左暴力集団」と呼ぶけれども、ゲバ棒どころかヘルメットすら被らなくなった、彼らのどこが一体「過激」なのだと。私は特定党派の擁護をしているのではない。むしろ彼らにはある種の歯がゆさすら感じる。無責任の誹りを恐れずにいうなら「革命」に相応しい行動してくれよな、という内心がないわけでもない。いやダメだ。こんな発言に私は1ミリも責任を持てない。

だが、断言できる。レッテル張りで「過激派」、「極左」という警察用語を恥もなく用いる、あるいは疑わない新聞記者やマスコミの連中の頭脳の方が「反動に乗じる」という力学の中で余程「過激」であることを。凡そどれほどの動員力や資力を保持しようとも、この国において「国家」を超える「過激派」など存在しえた歴史はない。国家こそが戦争を、死刑を、資本を、些細な公務執行妨害(ほとんどのケ―スはでっち上げ)を独占しうる究極の過激組織ではないのか。

◆森喜朗政権と安倍政権の温度差──15年弱で蔓延した御用マスコミ・文化人

例えば、その補完機能として日本テレビ系列に最低クラスの情報番組として「バンキシャ」という番組がある。この番組に出るコメンテータは全員御用学者か、検察出身の弁護士、あるいはおでたい御仁で「早く国粋主義を!」と主張する連中ばかりだ。

そこに先週作家で法政大学の島田雅彦が登場した。島田の名前が世に出たのは「優しいサヨクのための嬉遊曲」(1983年)だった。「この弱虫め、お前のような奴が敗北を呼び込んだのだよ」と若気の至りに怒りながら読んだ記憶があるが、番組の中で島田は「公安の人たちが容易に身分が分かってしまうと職務上問題があるんじゃないのか」と発言をしている。いや、正確に訳せば「公安の人達はもっと身分が分からないようにして職務を遂行すべきです」と訳せるじゃないか!

かつて「オットセイの体に蚤の脳味噌」と比喩された森喜朗という首相がいた。森は麻生と同程度に日本語が苦手なので失言を繰り返し、最後は支持率が一桁になった。森と比べて安倍の支持率はたぶん実質の10倍以上水増し操作されている。ありがたくも賢く相成ったマスコミのお蔭だ。

京都大学の帰路立て看板に学生サークルが「青山繁晴」の講演会を開くという宣伝があった。私が知る限り「安全保障の専門家」を自認する青山は共同通信勤務時代に海外出張の際、経費をごまかした咎で自主退職に追い込まれた輩だ。「テレビアンカーでおなじみの!」と学生は青山をテレビ出演の実績で讃えていたが、京大に合格する能力があっても青山の吐く明白な嘘と恫喝の羅列の本質には思いが至らないのか。その点ではこれも「過激」な現象だといえよう。

こと戦争に向かう方向性においては我らが偉大なる首相「安倍」同志が畏くも「解釈改憲」という妙案を用いて近道を作り出してくださった。その「安倍」同志が間もなく解散総選挙に打って出るという。所費税が8%になり、大臣が金銭疑惑で辞任しようが、景気が冷え込んでも何ってことない。マスコミは順風満帆、いつでも「安倍」同志の露払いであり懐刀だ。

過激なのは、公安を取り押さえた学生なのか? それとも時代なのか? この問いは重い。

※関連記事=《大学異論16》京都大学が公安警察の構内潜入を拒否するのは100%当たり前!(田所敏夫)

▼田所敏夫(たどころ・としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しない問題をフォローし、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心が深い。

 

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