デジタル鹿砦社通信をご覧の皆様、こんにちは。毎週、タバコは実は体に悪くないんじゃないかというテーマで『紫煙革命』というカルチャーなコラムを書いております原田卓馬です。
今回は鹿砦社より発売となりました紙の爆弾増刊号『NO NUKES voice』Vol.02の宣伝を兼ねて、取材こぼれ話をお届けします。
私、『NO NUKES voice』Vol.02では原子力規制委員長の田中俊一氏へのアポなし自宅直撃取材を担当しました。いつのまにやら鹿砦社松岡社長からは原発関連書籍の直撃取材担当者に仕立て上げられてしまい、『東電・原発おっかけマップ』や『タブーなき原発事故調書』などでも直撃取材をさせられて(笑)きました。
私はそもそも、都内を中心に活動する売れないシンガーソングライターです。取材も執筆もしたことがなく、何から手をつければいいのかわからないので、とりあえずウォルフガング・ロッツの『スパイのためのハンドブック』を読んでなんとなく気分を盛り上げてみました。
直撃取材で一番大事なことは「怪しまれずに待つ」ということだと思います。家の前で24時間体制で待ち続ければ、ターゲットはいつか必ず帰ってくるはずなので直撃取材は成功するのですが、そんなにうまくはいかないですね。
近所の人から不審がられて警察を呼ばれたり、ターゲットに警戒されたら待ち伏せは難しくなります。なので遭遇できそうな時間帯を絞り込む必要があります。そのためにターゲットの生活パターンを予測するのであれこれ情報を調べます。情報収集の基本は本人に直接確認することですが、それでは直撃取材になりません。
インターネットは便利ですね。人名で調べるとたいていWikipediaが最初に見つかります。ターゲットが学者なら大学を、経営者なら企業を、政治家なら政党を、調べるとターゲットの生活行動パターンを把握する手がかりがたくさん見つかります。ネット掲示板の2ちゃんねるなどは、デマや中傷が多いですが、近所での目撃情報が見つかる場合があるので重宝します。ただ、不必要な先入観を持ってターゲットに接すると邪悪な気分になる場合が多いのであくまで参考資料程度にしか考えません。
精神論でオカルトめいた考え方ではありますが、直撃取材での一番のコツは「ターゲットに恋をする」ということです。原発関連記事の場合、「原発推進派の悪い奴を懲らしめる」ための社会正義として動くような感覚がどこかで働いてしまいます。
「ターゲットがどれだけ悪い奴なのか」ばかりに注視して、社会的立場や権威性という色眼鏡を通して人物を観察すると嫌いにならざるを得ません。ターゲットを嫌いになってしまうと会いたくなくなりますね。人間は想像できたこと以外は実現できないと思っていますので、会うためには会いたくならなければいけません。アポなし直撃取材をする場合は好きにならなければ会えないのです。
ターゲットに恋をしている状態だと、どんな人物なのかもっとよく知りたいというピュアで真っ直ぐな動機を自らにインストールすることが出来るので行動原理がスマートになります。
「金持ちや偉い人はだいたい悪人」という姿勢で挑むとターゲットの本性が見えません。以前、元東大総長で三菱総研理事長の小宮山宏さんに直撃取材をしたことがありますが、非常に感動しました。
小宮山宏の喧伝する「CO2地球温暖化脅威論」がクリーンエネルギーとしての原発を推進する一助となったということで「原発推進御用学者」と認定して直撃取材に向かったわけです。
原発関係の直撃取材は門前払いか、そそくさと逃げられるというパターンがほとんどですが、小宮山さんは逃げも隠れもせず、「君の言っていることはおかしい、私の書いた本をちゃんと読んだ上でもう一度会いに来なさい」と真摯に対応してくれました。小宮山さんの考え方が正しいかどうかはわかりませんが、立派な人物だと尊敬しています。
それ以来、「会ってみないとわからないから、うまくいったらターゲットと一緒に呑みに行く」くらいのつもりで挑むようになりました。
◆「自分の目と耳で確かめる以外にない」──結論
『NO NUKES voice』Vol.02には田中俊一の自宅住所と地図が掲載されていますので、脱原発派の方は説得するために、原発推進派の方は応援するために直接会いにいくことをオススメします。ちょっと工夫すれば簡単に会えますから、是非とも行ってらっしゃいませ。
今回会ってきた原子力規制委員会田中俊一委員長は、会って二秒で「警察呼べ」と奥さんに命令していましたが、奥さんは「なんでもかんでも警察頼みはよくないからちゃんと話した方がいいんじゃないの」と俊一を説得してくれました。
それにしても、日本人のセキュリティー意識の甘さというのは本当にびっくりします。平和でなによりという側面もありますが、自らがテロや暗殺の対象になるとは考えないのでしょうか。
田中俊一が発した「自主避難者への補償は必要ない、原発を再稼働するために粛々と手続きを進める」という言葉がどれだけ多くの人の感情を逆撫でするものかを理解しているならば、警備員を何人も雇って軍事要塞のような建物に住むべきだと私は思います。
そんな想像力の欠如した人間に原発を再稼働して貰っては困ります。文句があるならどんなに陰口を叩いても鬱憤は晴れませんから、本人に直接文句を言う以外に解決方法はありません。
ですから皆さん、『NO NUKES voice』Vol.02を握りしめて田中俊一が原子力を規制してくれるように応援しにいきましょう!
▼原田卓馬(はらだ たくま)
1986年生まれ。幼少期は母の方針で玄米食で育つ。5歳で農村コミューンのヤマギシ会に単身放り込まれ自給自足の村で土に触れて過ごした体験と、実家に戻ってからの公立小学校での情報過密な生活のギャップに悩む思春期を過ごす。14歳で作曲という遊びの面白さに魅了されて、以来シンガーソングライター。路上で自作のフンドシを売ったり、張り込み突撃取材をしたり、たまに印刷物のデザインをしたり、楽器を製造したり、CDを作ったりしながらなんとか生活している男。早く音楽で生活したい。
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