デジタル鹿砦社通信をご覧の皆さんこんにちは、タバコ啓蒙活動に邁進中の原田卓馬です。前回に引き続きタバコ工場見学報告、その後編です。

◆牧草のように甘く自然なタバコ葉を求めて

工場のドアが開いた瞬間、タバコ葉の香りの微粒子と水分ををたっぷり含んだような密度の高い空気が工場内から溢れ出してきました。いい匂いと感じる成分もありますが、バニラとハッカとチューインガムを適当に何種類か混ぜたような、しっちゃかめっちゃかな匂いなので体調が悪ければ頭が痛くなりそうです。二日酔いだと嘔吐しそうです。これは『ピアニシモ』、『ロゼ』などに使用しているケミカル香料の匂いのようです。熟成したタバコの葉は牧草のような甘くて自然な香りがするんですが、なんだかとても残念な嗅覚体験です。

工場内の景観はと申しますと、郊外の大型スーパーマーケットや大型家具店のように天井が高く、端から端まで見通せる巨大なワンルームになっています。刻んだタバコを風圧で送り出すための管(太くて透明な水道パイプみたいな感じ)、タバコ巻き上げ機や、巻き終わったシガレットを一時貯蔵するためのリザーバー、製品を流すためのローラー、箱詰めするための梱包マシン等がシステマティックに並べられています。

専門的な工業用機械とはいっても、タバコを刻んで紙に巻くだけなので、民家を改造して機械を運び込みさえすればタバコ工場なんてどこでもできそうだなと思いました。

◆メンソールの充満したエレベーター

1階はメンテナンスで機械を動かしていないということで、業務用エレベータに乗り込みました。ものすごく爽快なミントの残り香がします。エレベータは人の移動だけでなく物資の運搬にも使用しているとのことで、タバコに添加するメンソール原料を運搬した後はいつも空気がフレッシュになるそうです。

Wikipediaに「一部銘柄のタバコでは、香り付けや、喫煙による喉や呼吸器の炎症を軽減する目的で添加剤として使われている」と書いてありますが、炎症軽減効果なんてあるんでしょうか?

メンソールタバコを吸うとインポになるという都市伝説があります。日本では1977年に発売されたサムタイムという女性向けの銘柄でメンソールが広く知られるようになりました。「女々しいぞ!」という理由で「オカマ=インポ」みたいな風評があったという説があります。これも都市伝説の域を超えませんね。

◆システマティックなマシン

2階に到着しました。稼働中の工場の騒音は凄まじく、前持って渡されていた無線機とヘッドフォンが抜群の威力を発揮します。モーターやコンプレッサーの爆音と、湿った暖かい室温と、香料の匂いが伴って、空間が飽和状態です。生声で話すなら大声で叫ぶか、耳にキスしそうなくらい接近しなければなりません。ヘッドフォン越しだとコミュニケーションが一方通行なので、あれこれ質問し辛いです。

刻んだタバコ葉が風圧で機械に送り込まれるところと、巻き上げたシガレットが積み上げられていくのはよく見えるのですが、肝心の巻き上げてカットするところを見ることができません。

もっと機械に近寄って観察したいものですが、安全上の配慮ということで遠くからしか見ることができません。立ち止まって眺める時間はなく、係の人はどんどん歩くよう催促します。機械がどんなコンビネーションで動くのかピタゴラスイッチ的アハ体験がしたかったのですが、機械に近づけないので全体の流れがよくわかりません。

シガレット巻き上げの機械が1階、2階の2フロアで合計22台あります。ハイスペックなものだと一台のマシンで一分間に20000本のシガレットを製造するというのだから技術の進歩は凄いですね。同じ銘柄のタバコでもボックスとソフトで製造工程が別になるみたいです。梱包によって微妙に煙の味や香りが違うという説がありますが、製造ルートが途中から分かれているので多少の違いはあるかも知れません。

◆優秀なブレンダー

ですが、JTには優秀なタバコテイスティングをするブレンダーの人達が製品にブレがないか味見をしているので、素人にもわかる違いがあるかは疑問です。なんせ、タバコの銘柄をあてるのなんて朝飯前だというのです。五感が狂うと仕事に支障をきたすので、寝不足も二日酔いも風邪をひくことも御法度で、刺激の強いスパイシーな料理?たとえばカレーとか?は勤務前は厳禁だといいます。

勿論、タバコの味と香りを確かめるための喫煙なので、煙を肺にはいれず、粘膜で煙を楽しむ口腔喫煙《クールスモーキング》です。

ブレンダーの人にインタビューしたかったけれども、工場見学当日は残念ながら不在ということでした。そんなに鼻の利く人が香料のフレーバーが充満した工場内で精神に異常をきたさないのか甚だ疑問ではあります。

さて、アメリカンスピリットなどの普及で若者を中心にシェアを拡大しつつある、ナチュラル無添加タバコというのがありますね。他にもプエブロ、チェ、スモーキング・ジョーなど市販されているものがいくつかあります。そんな折、2014年12月中旬にJTから「キャメル・ナチュラル・ボックス」「キャメル・ナチュラル・ライト・ボックス」の二銘柄が東京都、神奈川県、大阪府の一部販売店で新発売となるようです(2014年11月25日JT発表)。

日本の産業構造は優秀な技術者が「安かろう悪かろう」のために才能の無駄使いを強いられて来た側面があるので、香料無添加のキャメルは非常に楽しみであります。

念のためお断りしておくと、先ほども申し上げたように、「タバコは口腔喫煙《クールスモーキング》が基本」です。もし、吸っているタバコがいまいちおいしく感じなかったら、騙されたと思って肺を通さず、煙を鼻からふかしてみて下さい。いつもと違う楽しみ方ができる、かもしれません。

皆さんも是非、タバコ工場見学に応募してみてくださいね!

日本たばこ産業(株)北関東工場

[見学先]日本たばこ産業(株)北関東工場
〒321-3231 栃木県宇都宮市清原工業団地10

▼原田卓馬(はらだ たくま)
1986年生まれ。幼少期は母の方針で玄米食で育つ。5歳で農村コミューンのヤマギシ会に単身放り込まれ自給自足の村で土に触れて過ごした体験と、実家に戻ってからの公立小学校での情報過密な生活のギャップに悩む思春期を過ごす。14歳で作曲という遊びの面白さに魅了されて、以来シンガーソングライター。路上で自作のフンドシを売ったり、張り込み突撃取材をしたり、たまに印刷物のデザインをしたり、楽器を製造したり、CDを作ったりしながらなんとか生活している男。早く音楽で生活したい。
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