本コラムでも言及していた北星学園大学問題。田村信一学長が至極全うな声明を9月30日付声明を出して以来、同大学をめぐる状況はさらに悪化し、学外からの攻撃が激化した。一時は非常勤講師として勤務する元朝日新聞記者、植村隆氏の非常勤教員としての来年度契約を「結ぶのが難しい」と田村学長がこぼすまで状況は悪化していたが、同大学は英断を下した。
北星学園大学は12月17日付、北星学園大学理事長大山綱夫、北星学園大学学長田村信一両氏の連名で声明を発表した。詳細は北星学園大学のHPを参照されたいが、近年まれに見る格調の高さと、大学としての覚悟に満ちた歴史的とも言える内容だ。
◆「北星、ようがんばっとるやないか」では済まされない
この決断までには、紆余曲折があったことは既に報じられている。卑劣極まりない脅しや攻撃が北星学園大学だけでなく、植村隆氏さらにはそのご家族にまで及んでいた。安寧な生活が送れないほど植村氏の生活は脅かされていた。
大学の非常勤講師というと、名誉ある仕事であるように響くけれども、はっきり申し上げれば極めて給料の安い仕事である。90分講義を1コマ担当して、1か月2~4万円が相場だ。多くの有名大学在学生は「家庭教師」をすることにより、大学の非常勤講師よりもはるかに高い報酬を得ている。
しかし問題は金ではない。植村氏に対する卑劣な攻撃に対して、一時は腰が砕けそうになった北星学園大学が「この時代本当にそんなことがあるのか!」と驚くほどの勇気ある決断を理事長、学長が下した意味は非常に重い。
「決断」を示す文章が何をも「自負」したり、「構えて」いないことに更に頭が下がる。これまでの経緯を誠実に綴り、ブレがあったことを認めながらも最終的に植村氏の雇用継続に至ったことを包み隠さず語っている。
このような決断を前にすれば、その姿勢に賛辞を送り背中を押した人間達にもそれなりの責任が生じてくる。「北星、ようがんばっとるやないか」では済まされない。自らの名前を名乗る勇気も無い、しかしながら攻撃の手段を選ばない卑劣な輩たちは更に攻撃をエスカレートさせているに違いない。
孤立無援、苦境で戦う時、外部からの支援ほど力になるものは無い。理事長、学長が腹をくくったのだから、内部では議論があろうと頑張ってもらうしかない。幸い今日は誰でも気軽に応援する方法がいくらもある。応援の電話やメールは困難内部にいる人間に、勇気を与える。
私自身、かつて大学職員時代に大きな力で潰されかけた時、見知らぬ人からのメールにより、砕けそうになった心を取り戻し再度自分を奮い立たせることが出来た経験を思い出す。
私は暴虐の時代に決然とした姿勢を明らかにした北星学園大学に最大級の賛辞と賞賛、更に少ないけれどもカンパを送る。
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▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ
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