◆営業目標を露骨に掲げるクリニックの事情

忘年会真っ盛りである。「一年間お疲れ様」なのか「理由はどうでもいいからまあ飲もうや」なのか、とにかく忘年会である。

地方都市で個人経営のクリニックに勤務する知人がいる。そのクリニックは地域ではなかなか盛況らしく、医師は一人だがスタッフは常勤非常勤を合わせると20名を超える。例年12月中盤の土曜午後に忘年会が行われるそうでそこには医師、スタッフのほか出入りの製薬会社や関係者も顔を出すので総勢は30名を超える規模になる。

先ごろ行われた忘年会の乾杯前の挨拶で、院長は参加者へのねぎらいを述べた後「まだ目標にする数字○○○人には到達していません!」と目標患者数を挙げたそうだ。常勤スタッフだけでなく、参加者の多くが少し惑いの表情を見せたという。この話を聞いて私自身、開業医が保険会社じゃあるまいに、「患者の来院目標数」を設けているのかと聞いて驚いた。医師不足、病院不足が問題にされる中、個人開業医のなかにはあたかも株式会社のごとく、収益目標を露骨に掲げて経営が行われているクリニックがあるようだ

◆領収書の明細でわかる病院の食い扶持

クリニックや病院から受け取った領収書をお持ちの方はそれをご覧いただきたい。領収書の明細は病院を問わず「区分」がほぼ同じであることがわかる。

「そういえば」と知人は続ける。整形外科であるその医師はやたらと患者に検査を行うそうだ。初診の患者には症状の如何にかかわらず、ほぼ例外なくX線撮影を行う(「画像診断」)。病院の治療代は点数制だ。1点が10円である。厚生労働省に尋ねたところ、X線撮影(画像診断)は同じ部位でも角度や撮影方法により点数が細分化しており、「一概に何点(何円)かかるとは言えない」そうだ。「それではX線撮影の最低は何点からあるか」と聞くと「30、40点くらいですね」という回答だった。いかにもあいまいでわかりにくい。それだけクリニックや病院が自由に判断する幅があるという事だろう。ちなみに今年私自身が大病院で腰を5、6枚撮影してもらった際には581点かかっていた。

このクリニック平日の午前診療時間(9時から12時)で平均20名弱の被撮影者がいるという。現在X線撮影はほとんどデジタル化されており、消耗品は少ない。昔のように現像する必要もない。だからはっきり言えば「X線撮影」は非常に儲かる。患者一人平均のX線撮影点数が仮に200点とすると、1日の撮影人数は午前、午後合わせて約40名だから40×200で8000点となる。8000点は8万円ということだ。クリニックの開業日数は年間240日あまり。だからX線撮影だけでも年間2000万円近い収入があることになる。

平日午前の診療は高齢の患者さんが中心らしい。X線撮影をしても医師はほとんどの場合、「まあ、たいしたことはないわ。お歳もお歳やから、うまく付き合っていくしかあらへんね」としか言わず、リハビリにまわすか投薬をするだけだという。年配者だけならばまだしも、幼稚園にも通わないような年齢の幼児にも通院のたびにX線撮影を行うことが多い。明らかに過剰なX線の乱用だとクリニックスタッフも内心心配しているどうだが、いかんせん医師一人が経営するクリニックだからなかなか進言できる雰囲気ではない。人柄は穏やかだそうだが明らかに「ヤブ医者」だ。

しかも、前述のとおり「営業目標」を掲げるような考えの持ち主である。「営業目標」が語られた忘年会はたぶん出入りの製薬会社が経費の一部(もしくは全部)を負担しているのではないか、と知人は述べる。忘年会のほかにも年数会、同様の会合がありその際は製薬会社が会費を負担するという。

企業がクリニックに便宜をはかるのは構わないが、患者を「営業目標」の対象と見られてはたまったものではない。

◆こんな開業医は要注意!

知人は言う。「開業医でやたらに検査を行う医師は疑ってかかったほうがいい」、「歯科で患者数がさほど多くなさそうなのに虫歯の治療に何ヶ月もかけるクリニックも要注意」、「軽症で患者が積極的に望んでいないのに、やたら注射を打ちたがる医師は要注意」だそうだ。

一方で公立の大病院では過酷な労働条件の下働く医師も多い。やはり知人で大病院に医師として勤務する知人は「開業医と勤務医の収入は別業種位に差があるよ」と言う。彼は最近地方都市に「30年ローン」でマンションを購入したと言うので「お前みたいな高給取りがなんでローンなんや」と聞くと「俺たちの手取りなんか夜勤含めても○○万円くらいやで」と意外に低い数字を口にした。

ともあれ、体にかかわることなので、病院(クリニック)選びは慎重さが必要なようだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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