JAXA(宇宙航空研究開発機構)が昨年12月3日小惑星探査機「はやぶさ2」を打ち上げた。JAXAによると「はやぶさ2」の任務は、「地球などの惑星は、元は小さな天体が集まってできたと考えられています。しかし、惑星が誕生する過程でいったんどろどろに溶けてから固まっているため、惑星をつくった元の物質についての情報は失われています。いっぽう、小惑星や彗星はあまり進化していない天体ですから、太陽系が誕生した頃やその後の進化についての情報を持っていると考えられています。これらの天体は『始原天体』とも呼ばれています。このような天体を調べることにより、、太陽系がどのように生まれ、どのように進化してきたのか、また私たちのような生命をつくる元になった材料がどのようなものであったのかについて、重要な手がかりが得られる可能性があります。そして、このような知識は、太陽系だけでなく、その他の惑星系の誕生や進化を調べる上でも不可欠です」(JAXA「なぜ小惑星を探査するのか」)
ということらしい。
また、「小惑星の探査目的は、科学だけではありません。小惑星や彗星は、過去に何度も地球に衝突しており、そのたびに当時の地球に大小様々な影響を与えてきました。6500万年前の恐竜絶滅の原因とされる天体衝突から、最近ではロシアに落下して被害を与えた隕石もありました。『宇宙からの天災』は今後も発生するであろうと容易に推測されます。こうした天体の地球衝突に備える『スペースガード』活動の一環としても、地球に近づく小天体の探査は重要なテーマ」だという。(JAXA「なぜ小惑星を探査するのか」)
◆無意味な夢の裏に隠された軍事転用技術開発の本気
宇宙科学についてはずぶの素人なので、こう説明されると「ほーそうなのか」と半分はわかったような気になるけども、どうもすっきり納得ができない。
「始原天体」を調べることにより「私たちのような生命をつくる元になった材料がどのようなものであったのかについて、重要な手がかりが得られる可能性があります」は本当だろうか。もしそうなら、ここで言われている「ロシアに落下して被害を与えた隕石」の構成物質を調べればいいのではないか。わざわざ膨大な資金と長い年月をかけて「重要な手がかりが得られる可能性がある」かもしれない、逆に言えば「何も得られない可能性もある」こんなプロジェクトに意味があるのだろうか。
JAXAも自信があるわけではなく「可能性」と正直に告白しているが、小惑星から「生命誕生」の鍵になる物質が見つかるとは考えにくい。
更に正直すぎて驚くのは「小惑星の探査目的は、科学だけではありません」と非科学的行動であることを認めていることだ。地球に衝突する隕石や小惑星に備える「スペースガード」活動の一環だそうだ。
地球に衝突する可能性のある、小惑星や隕石の存在が分ったところでそれをどうするつもりなのだろうか。「スペースガード」というからには「迎撃ミサイル」さながらに打ち落とすつもりなのだろうか。
そんなものできるわけがないだろう。
隕石など毎日のように地球に降り注いでいる。でもその隕石がどの位置から地球上のどこへ落下するかなど、測定できるはずがないではないか。まあ「科学ではない」と正直にJAXAも言っているからこれ以上突っ込まないけど、要するにこれは対象が「惑星や小天体」ではなく「人工的に作られたもの」=武器(大陸間弾道弾など)への応用を目指しているのだろう。だから「科学」ではなく「軍事目的」なのだがそうは露骨に言えないから、実現可能性がない「スペースガード」などを引き合いに出しているのだろう。
でも「はやぶさ2」の役割はそれだけではない。
「また地球に接近する天体は、月に続く近未来の有人探査のターゲットとして近年大きな注目を集めています。さらに遠い将来、人類が深宇宙空間に進出した暁には、月や火星のような重力の大きな天体ではなく、重力の小さな天体の資源を利用するほうが効率的だと考えられます。このような利用法を探る上でも、小惑星探査は重要なのです」
なのだそうだ。え? 人類は「遠い将来、宇宙空間に進出」するのか?「月や火星のような重力の大きな天体ではなく、重力の小さな天体」ていったいどこのことだ。そんな遠くで人間が暮らすと本気で考えているのだろうか。
◆「ロケット」打ち上げ実験=軍事転用可能「ミサイル」技術の開発
スペースシャトル計画も終了し、国家が宇宙開発に血道を上げる時代はとうに終わっている。火星への有人飛行とか、まだ眠たいことを言っている人間も一部にはいないわけではないけども、それは「宇宙旅行」で一山当てようと計画している民間業者だったり、一部の研究者だ。膨大な金と時間をかけて「有人飛行」を行ったところで、人類に恩恵がもたらされるような特質すべき利益が得られると現実的に考えている人間はほとんどいない。
JAXAによる「はやぶさ2」ミッションの説明から読み取れるのは、極めてあいまいかつ「実り」がほとんど期待できない「金の無駄使い」ということだ。「スペースガード」などという荒唐無稽な理由まで持ち出してくるのにはさすがに驚いたが、「はやぶさ2」に限らず、実は日本の宇宙技術開発は一貫して適当な理由をでっち上げ進められてきた。
つまるところ「ロケット」の打ち上げ実験は、いつでも軍事転用可能な「ミサイル」技術の開発に他ならない。それ以外の人工衛星打ち上げなどはおまけの理由といっていい。さらにその「ミサイル」は「核弾頭」搭載も視野に入れている。安部が副官房長官時代に本音を漏らしたし、過去には科学技術庁(当時)の官僚も暗にそれを認める発言をしている。
JAXAやそれに便乗するマスコミは、相も変わらず「宇宙のロマン」などと、手垢で汚れまくっている古臭い誤魔化しで本質をだまそうとし続けているけれども、「宇宙のロマン」の追求は個人の金でやってくれ。
つい最近も新星発見を趣味にする方がご自身で100個目の新星を発見したではないか。その姿勢こそは「宇宙のロマン」と言う言葉には相応しい。
ついでに言えば、日本人宇宙飛行士はTBSの「宇宙特派員」だった秋山豊寛氏を除いて皆「無賃乗車」、否税金を利用しての公金流用だ。スペースシャトルに乗ったり、宇宙ステーションに滞在したりした人たちは、個人的には興味深い経験だったろうけども、いったい税金からいくら持ち出しをしているのだろうか。
挙句の果て、宇宙飛行士は何か特別偉い存在のように扱われる。その筆頭が毛利衛だ。こいつはあちこち顔を出しては、如何にも「私は特別な人間だ」と言わんばかりに持って回った糞偉そうな言い回しで「宇宙」や「科学」を若者に語っていた。毛利は積水ハウスやSONYなど大企業のCMに出まくった挙句、「九州電力玄海原子力発電所─プルサーマル」のCMにまで登場している。
ここまで紹介すればもうお分かりだろう。宇宙技術開発と原発は共に「ミサイル」と「核弾頭」開発を見越した「今のところ民生技術」だということが。昨今の好戦的政治状況を見れば、あれよあれよと「軍事転用」される日が来ても不思議はない。
金がふんだんに余って、国民が裕福な暮らしをしているのであれば、趣味的な「宇宙探検」をするのも良かろうが、国家財政は破綻寸前、年収200万円以下で食うや食わずの人があふれる今日、税金を使っての「宇宙お遊び」などやっている場合であろうか。JAXAこそ「分割民営化」して民間に任せたらどうか。収益が見込めないから引き受ける企業はないだろうけども。
▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ
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