皇居を核最終処分場にする話……の巻
犬腰犬介アナ 「こんばんワ! イヌエッチケー“ニュースセンター9”。キャスターの犬腰犬介(いぬこし・けんすけ)です。」
犬飢ゆうひアナ 「同じくキャスターの犬飢ゆうひ(いぬうえ・ゆうひ)です。」
犬腰犬介アナ 「まずお約束の、いつものシュプレヒコールから始めましょう。……アベッチサン!万歳(マンセー)!」
犬飢ゆうひアナ 「アベッチサン!マンセー!」
犬腰犬介アナ 「では最初のニュースです。」
犬飢ゆうひアナ 「ちょっとその前に……」
犬腰犬介アナ 「なんですか? 台本にないですけど?」
犬飢ゆうひアナ 「あんたの手が邪魔です。」
犬腰犬介アナ 「ケンチャナヨ! 将軍さまからの御指示でないから無視します。……さて最初のニュースです。いぬうえキャスター、お願いします。」
犬飢ゆうひアナ 「……ハイ、特報です! 偉大なるアベッチさまのご指示で経務省に発足した、総理大臣さまの私的諮問機関《核廃棄物最終処分場検討会》の初会合が開かれ、皇居の地下ふかくに最終処分場を設置する案が、全会一致で決まりました。」
犬腰犬介アナ 「それはアッパレ! さすが偉大なるアベッチさまですね。ではこの喜ばしきニュースを、経務省担当の長谷川記者から伝えてもらいます。長谷川さん、おねがいします。」
つねに国民の幸福を願って善政をおこなう
われら「キノコぐも栽培強国」の偉大な政治指導者アベッチさま
★ ★ ★
長谷川記者 「はい、昨年まで経営委員だった経務省担当の長谷川無知子記者で~す。同僚だった八百田嘘記(やおた・うそき)さんも、いま経務所でがんばっておりますよ~。……さて経務省からの特報ですよ~。総理大臣様の私的諮問機関《核廃棄物最終処分場検討会》の初会合が開かれ、皇居の地下ふかくに最終処分場を設置する案が、全会一致で決まりました~。」
犬腰犬介アナ 「それ、さっき私がいったママじゃん……」
長谷川記者 「アベッチ将軍さまからそれ以上のご指示を頂いてないので、残念ですが私個人がレポートすることはできないのよ。そんなことをすれば秘密保護法違反になってしまいますもん……。だもんで、ここは《検討会》の議事録を棒読みするのみでお許しい下さいナ。」
犬腰犬介アナ 「アベッチ将軍さまのご意向なら……ケンチャナヨ!」
長谷川記者 「ではこれから《検討会》議事録の棒読みにて、現場レポートに代(か)えさせて頂きます。……なおこの議事録は、下記でダウンロードできるようにしておきましたので、インターネットをご利用のかたは各自でお読みください。
(議事録入手先: http://www.rokusaisha.com/pdf/核廃棄物最終処分場検討会第1回会合議事録.pdf)
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核廃棄物最終処分場検討会
第1回会合・議事録
(屁生27年2月吉日)
経務省エネルギー局長 「本日は皆さん、ご多忙のところをご出席いただき、ありがとうございます。《核廃棄物最終処分場検討会》の第1回を開催いたします。開催に先立ちまして、偉大なる総理大臣アベッチ将軍さまを讃(たた)えて、皆さまとともに万歳三唱を行ないます。皆さまご起立ください。」
(全員その場で起立)
経務省エネルギー局長 「偉大なるアベッチ将軍さまの威徳を讃えて! マンセー! マンセー! マンセー!」
(全員その場でマンセー三唱)
経務省エネルギー局長 「では議事に入ります。本日は初回から核心に入りますが、高レベル核廃棄物の最終処分地をどこに設置するか、本省にて長年の調査検討をしてまいりました結果、東京都千代田区千代田1の1の1、郵便番号で申せば“100の8111”、すなわち皇居の地下に設置するのが最も適切だな~、という結論に至りましたので、ご報告申し上げる次第であります。
かような結論に至りました理由を、関連省庁および各界有識者のかたがたからご報告いただき、この構想を煮つめていきたいな~、と……このように考えておる次第です。ではまず文部科学省からご報告ねがいます。」
文部科学省・学術振興局長 「モンカ省といたしましては、高レベル核廃棄物の永久保管施設の設置にさいして最も懸念しておりますのは、たとえば原子力発電の結果生じる半減期の長い『長寿命核種』のネプツニウムや、アメリシウムや、キュリウムのように、半減期が数万年に及ぶものもございますし、原子力発電にともなう代表的な放射性核種といたしましてはプルトニウム239の場合はおよそ2万4000年、ウラン238の場合はおよそ44億6800万年の半減期を有しておるわけでございます。ウラン235は半減期が7億380万年ほどでございますが、これは原子爆弾に転用できるので、廃棄物としての保管はまったく必要ない、むしろこっそり使ってしまえ、というのが政府の共通認識でございます。……で、核廃棄物の扱いについてでございますが、かように人類の想像をはるかに超えた長期間にわたって保管するとなりますと、はたして現在の日本語で『立ち入り禁止』と表示しても、未来の日本人にそれが理解できるか、はなはだ不安なのでございます。」
神社本庁・宗務局長 「しかし、日本人のこころは万葉集の時代から不変でありますし、言霊(ことだま)は時代によってたやすく変わるわけじゃないですから、モンカ省の指摘は杞憂(きゆう)じゃございませんか? 考えすぎ、心配しすぎですよ! 日本国民の魂を信用しなさい!」
文科省・学術振興局長「いとはかなうものし給(たま)ふこそ、あはれにうしろめたけれ……」
神社本庁・宗務局長 「おいモンカ省の高級官僚! いくらオマエが東大出身で、オレが蝗学館大学しか出てないとしても、こっちの業界じゃ蝗学館こそが神官養成のトップエリート大学なんだから、テメエの受験知識をひけらかしても意味ねえんだよ、イケズ野郎! そんな高校古文をここで出してくるなよ! 意味がわからねえことを言って、人を煙に巻くんじゃねえよ、木っ端役人がっ!」
文科省・学術振興局長 「あのぉ……、いま申し上げたセリフは、『源氏物語』の『若紫』に出てくる、あまりにも有名な一節なんすけどネェ……。《いとはかなうものし給(たま)ふこそ、あはれにうしろめたけれ》って、『とても幼なくていらっしゃるのが、どうしようもなく悲しく先が気がかりです』っていう意味で、『源氏物語』ってちょうど1000年まえに書かれたものなんすけどネェ……。たった1000年ですよ。なのに《日本人のコトダマ》とかおっしゃっている神社本庁の局長さんが、これを理解できない……。これってアンタのことを言った文章なんだけどねえ……。まあ、そういうことですわ。」
神社本庁・宗務局長 「インチキ万能細胞で小便くさいおネエちゃんにコロリとだまされたモンカ省の白痴はすっこんでろ! 高校古文を引き合いに出すなよ! 高校時代のオレはワルガキで、神社の賽銭(さいせん)をかっぱらってゲーセンで遊んでたんだから、古文なんてわかるわけネエだろ! 受験知識を出すのは反則だぞこの野郎! 日本人のコトダマは永久に不滅なんだよ! たとえ古文がわからなくてもなっ!」
文科省・学術振興局長 「……というわけで、鳥居のダンナが思わぬ暴発事故を起こしたわけですが、マァ、これは無視するとして、たった1000年まえの日本語さえ通用しない現実において、10万年後の日本人に『高レベル放射性廃棄物の保管地域!立ち入り禁止!』と標識を示しても、その時代からすれば“太古の昔”である屁世現代の日本語なんかわかるわけないですから、さ~てどうすりゃイイのかとアレコレ思案いたしたわけでございます。このあたりの事情につきまして、日本を代表する国語学者の金玉一腫彦センセイから、補足説明をしていただきます。
国語学者・金玉一腫彦 「国語学者の金玉一でございます。いま局長さんからご説明いただきましたように、千年とか万年のオーダーで、未来の日本人に理解できるメッセージを記す方法は、まず無いといってよいのでございます。」
神社本庁・宗務局長 「だ~けど~、日本民族の言霊は永遠不滅なのだから、10万年後の日本国民に、現代の国語を理解させる方法はあるはずです。それを考えるのが国語学者のあんたの仕事じゃないですか!」
金玉一腫彦 「唯一あるとすれば、日本国民が用いている現時点の国語を、古典ラテン語のように、ここで無理矢理ホルマリン漬けにしてしまうことでしょうね。」
神社本庁・宗務局長 「ラテン語といえばカトリックの総本山バチカンが今でも使っていますね。現代日本語をラテン語みたいにできれば素晴らしい! 未来永劫(えいごう)にいまの日本語が、歴史と地域をこえて普遍的に使われるようになるんですね! それは名案だ! ……で、どうすれば実現できますか?」
金玉一腫彦 「日本も、古代ローマ帝国と同じことになれば、現代日本語を、ローマ帝国の言語だった古典ラテン語のような境遇に置くことができるんじゃないでしょうか。」
経務省エネルギー局長 「つまり古代ローマ帝国のように贅沢(せいたく)をしたあげくに滅亡すればいいんですね……。そりゃ簡単ですわ。」
神社本庁・宗務局長 「いや。あんたみたいな高給取りは、いまの日本が経済の絶頂にあるみたいな錯覚もしてるでしょうけど、もはや日本経済は最盛期をすぎて思秋期ですからねえ。経務省の高給取りは知らんだろうけど、最近じゃ日本の神社で大盤振る舞いしてるのは中国人の観光客ですぜ。賽銭箱を開ければ中国のお札ばかりなんだから! もう『贅沢(ぜいたく)をしたあげく』ってのは望んでも手に入らぬ昔の話……、いま可能なのは、貧乏なままどん底まで落ちて滅亡するのみ……」
経務省エネルギー局長 「あんた、そんなことアベノミックスの黒魔術で日本経済復活を企てているアベッチサンの耳に入ったら、家族が住んでるマンションごと“倒壊事故”が起きて呪い殺されますよ。」
神社本庁・宗務局長 「ヤバイっ! いまの私の発言は議事録からカットしておいてね。」
金玉一腫彦 「……マアとにかく、あれこれ検討はしたんですが、言語的手段であれ、イラストを用いたサインであれ、数万年後の人類に『危険!立ち入り禁止!』というメッセージを伝える手段はあらへんことがわかったんですワ。」
経務省エネルギー局長 「金玉一センセイ、数万年後に人類が生存してる可能性なんてほとんどないんですから、そんな面倒なこと、考えるだけヤボですよ。あんた政府にこづかいもらってお使いしてるだけなんだから、テキトーなことを答弁してりゃイイんです。まじめに仕事するだけムダなんすから。(笑)」
金玉一腫彦 「経務省トップのお役人からそう言われちゃ、あれこれ考えて損した感じがしますが……マァとにかく思案のすえに出たベストの結論は、超危険物質の永久保管場ならば、皇居に併設するほかない……ということです。なぜなら、ここが日本であるかぎり、日本という国が続くかぎりは、天皇陛下が千代に八千代に、サザレ~石が~、巨岩(いわお)にな~りて~、コケが生(む)すまで、ずぅ~っと皇居にお住まいになられるはずだからであります。どんなに世の中が変わってしまったとしても、天皇陛下がいらっしゃるかぎりは、少なくとも天皇陛下だけは、まともな日本語をお使いになられることでしょう。ですから、たとえば3000世代先の未来に人類が生存していたとして、日本という国がまだ存在していたとするなら、そこには依然として、その時代の天皇が御座(おわ)しまして、大昔の、つまり屁世の現代の日本語なども理解できる状態が維持されていると考えてよいでしょう。その時代には日本国の一般庶民は遺伝的に劣化してサル以下の畜獣になっているかもしれません。栄養失調や放射能汚染で脳みそがピーナッツなみに萎縮しているなんてことも、じゅうぶんにありえます。そういうことを考えたら、たとえば東北とか北海道とかの僻地に核のゴミの永久処分場なんて作るのは大変に危険です。無知なケダモノ人間が墓あばきをする危険性はたぶんにあります。だからこそ、もっとも高貴で安全な天皇陛下のお住まいに、そうした保管施設を併設せねばならないのです。……これが最も理にかなった処置なのです。」
経務省エネルギー局長 「日本を代表する国語学者、金玉一センセイの、大変にわかりやすいご説明、ありがとうございました。ところで高レベル核廃棄物の永久保管場をつくるとすれば、地震対策は必須となるわけでございます。そこで、つぎは気象庁から、永久処分場を皇居に併設するメリットを説明していただきます。」
★ ★ ★
気象庁・地震局長 「ご指名をいただきました、気象庁の地震局でございます。究極の危険物質であるプルトニウムその他の高レベル放射性廃棄物の永久保管場を、東京都千代田区の皇居の地下に設置するという構想につきましては、関東ローム層である東京の地下にそうしたものを置くことについて懸念を抱くかたもいらっしゃるかと思いますので、むしろ非常に有意義であるということを、本庁の地震対策会議の議長であられる地震学者の田所雄介博士からご説明いただきます。」
地震学者・田所雄介 「田所でございます。じつは私、先日来、日本が沈没しつつあることを示す地球物理学的な兆候を観測しておりまして、その分析を大至急せにゃならんのに、こういう馬鹿げた会合に引っぱりだされて大変に迷惑しております。……おい君たち! ニッポン列島が沈没したら、核廃棄物の処理なんて意味ないんだぞっ!」
経務省エネルギー局長 「先生っ! それ初耳ですけど、ホントなんですか?」
田所雄介 「……あっ! いっけねえ! うっかりしゃべっちゃった。……皆さん、今のはわたしの寝言です。忘れてください。(笑)」
経務省エネルギー局長 「田所センセイは物騒な夢を見てたんですね(笑)。お願いしてあった最終処分場の件を説明してくださいよ。」
田所雄介 「ご存じのように東京23区のほぼ南半分は、近世まで海岸であり、埋め立てで作られた地域であります。皇居がある千代田区も、そこから遠くない場所に存在しています。つまり東京自体が、すでに地質学的にみれば地震の物理的ダメージを非常に受けやすい地盤構造の上に作られた都市なのであります。江戸時代だけでなく、時代がうつって大正の関東大震災の頃になってからも、東京周辺で多発する地震の原因として“なまず”を想定する民間信仰がありましたが、これは地質学的な脆弱性を考えればそれ相応の合理性を有した民間信仰だったのであります。
江戸時代から日本では「地面に下に潜んでいる
大ナマズが暴れて地震が起きる」と信じられてきた。
もちろん現在では、地震の原因はナマズでないことは誰もがご存じでありましょう。ところで民間伝承においては、ナマズが地震を起こすと考えられていたわけですが、それと正反対の“土地を安定させる地震除け”だと考えられていたのが要石(かなめいし)なのであります。
茨城県・鹿島神宮と、千葉県・香取神宮にある「要石」は
それぞれ大ナマズの頭と尾をおさえこんで、地震を抑止
していると信じられてきた。
現代に生きる我々は、地震の原因がナマズでないことも、要石が地震を抑止しているわけでないことも、もはや周知の事実でありますが、しかしたとえば、不安定な東京都心の地盤に、大量に超高比重の重金属を埋設すれば、たとえ大地震が起きても液状化を抑止できるであろうことは容易に予測できるのであります。いま現在の予測では、千代田区内の皇居から東の地域は、大地震が起きれば大部分が液状化すると考えられているわけですが、皇居の地下に広範囲にわたって大規模に核廃棄物の重金属を、すなわちウランやプルトニウムを世界じゅうから引き取って保管すれば、それは巨大な“要石”の役目を果たすでしょうから、大地震でこの地域がいたずらに大揺れしたり液状化で地盤構造がめちゃくちゃになることを抑止できるでしょう。そうした理由で、もしこれからも東京を日本の首都にしておきたいのなら、そして首都東京を大地震の衝撃から守りたいのなら、皇居の地下深くに大量の劣化ウランやプルトニウムを敷きつめるしか、首都の防衛策はないのであります。」
経務省エネルギー局長 「大変に説得力のあるお話しをいただき、ありがとうござました。田所先生、これであなたのお仕事は片付きましたから、日本沈没の研究にお戻りくださいませ。」
田所雄介 「さっきも言ったけど、もし遠からず日本列島が沈没することになったら、あんたらの構想は海の藻屑(もくず)になって終わるぞ。……マァその時は、俺も海中で骸骨(がいこつ)になってるだろうけどな、ガッハッハ!」(田所博士、そう言い残して退席。)
★ ★ ★
経務省エネルギー局長 「田所先生が急用でお帰りになられたので、つぎは大蔵省財務政策局からご意見をいただきます。」
大蔵省・財務政策局長 「大蔵省といたしましては、皇室が核廃棄物永久保管場の経営を担うことによる財政健全化のメリットを、なによりも強調したいと思います。これにつきましては今世紀の初めから自罠党政府の財政担当大臣などをお務めになられてきた竹下屁臓センセイにご説明いただきます。」
大蔵省顧問・竹下屁臓 「テレビ南京の『ワールドビジネスサテライト』でおなじみの竹下屁臓でございます。わたしが小舅政権の大蔵大臣時代に全身全霊をかけて取り組んだのは、財政から無駄なぜい肉をそぎ落とす作業でした。国家存続にとって必要のない国民福祉を削減し、生涯雇用で社畜を丸抱えして、まるで社会福祉施設のようになっていた日本の労働市場を、派遣労働者が中心のパート雇用制度へと大改造して、人材派遣ビジネスを活性化してきたわけであります。おかげさまで私が経営してる人足手配会社も大繁盛ですわ、エッヘッヘ。……とはいえ、まだまだニッポンは財政的な無駄をたくさん抱えています。これから必要なのは、中央政府および地方自治体政府をすべて民間企業に委託し、警察・消防および軍隊も民間企業に委託することです。日本の青年がフランスの外人部隊やイスラム国の戦闘部隊に入隊して世界で活躍していますが、それは自衛隊の民営移管を視野に入れて考えると、とても素晴らしい快挙でありますネ。こうして海外のお雇い軍隊で経験をつんだ青年たちこそが、これからの民営化時代の日本軍を担っていくのでありますから……。」
経務省エネルギー局長 「竹下屁臓センセイ……。それと今回の話がどうつながるんですか?」
竹下屁臓 「……オッと忘れるとこだった。……さて、私が大蔵大臣などを務めて政府にご奉公していたときは、政府の無駄なぜい肉をかなり削ることができたと思いますが、最後の聖域にはついに手をつけることができませんでした。経務省局長さん、それって何だと思いますか?」
経務省エネルギー局長 「大奥のことでしょ? 永田町にある酒池肉林の……。あたしは話に聞いただけで、いまだご相伴にあずかったことはネエですが……」
竹下屁臓 「少女買春の地下組織につきましては警視庁の所轄ですから私の知ったことではありません。大奥ではなく、最大の無駄は、国家財源で飼っている“国民の象徴”であります。」
経務省エネルギー局長 「竹下センセイ、それはタブーだっ! 言っちゃいけねえ!」
竹下屁臓 「聞きたくないなら耳栓をしておればよい。」
経務省エネルギー局長 「ヘイっ! おい次長、タンポンもってこい! ……ハイ、先生。耳栓つめました。あとはご勝手に。」
竹下屁臓 「では話を続けます。……現行憲法で『日本国家および国民の象徴』と定められた、ヤンゴトなきお方とそのご一族には、莫大な国家財源が投入されております。もっともこれは、ご皇族の存在意義とご公務を考えれば、正当な負担であろうと思うのですが、それにしてもこの財源を大ナタで切り落としたい、と私はつねづね考えておりました。」
大蔵省・財務政策局長 「先生! それは大蔵省でもタブーですよ。皇族予算については黙っていて下さい。それ以上語ると我々がヤバイ!」
竹下屁臓 「だったら耳栓してなさい。」
大蔵省・財務政策局長 「 おい次長、アンネタンポンもってこい! ……ハイ、先生。耳栓つめました。あとはご勝手に。」
竹下屁臓 「私の提案はしごく単純です。皇族の運営も民営化すればよい。つまり皇族もビジネスを行なって、独自に稼げば、政府が維持費を負担する必要はなくなる。」
大蔵省・財務政策局長 「どんなビジネスですか? 天皇陛下とかのキャラクターまんじゅうを作って売るとか?」
竹下屁臓 「なんだアンタ、聞いてたのかよ(笑)。キャラクター商品よりも付加価値が高いものがいい。米国CIAがマネーローンダリングのために行なってきた秘密ビジネスなんかが参考になります。たとえばコカインや大麻の栽培と精製とか……」
大蔵省・財務政策局長 「竹下先生、そりゃマズイわ。麻薬規制はうちの仕事ですぜ。あんた我々が天皇にワッパをかけることを望んでるの?」
竹下屁臓 「いやいや、現状では日本で大麻やコカインのビジネスをするのは無理ですからなあ。……あと付加価値が高いビジネスとしてはカジノとか売春なんてのもあるけど。」
大蔵省・財務政策局長 「あんた、どういう境遇で育ってきたの? 犯罪の百貨店みたいなところで育ったの?」
竹下屁臓 「うるせえよ! どんな境遇で生まれ育っても憲法じゃ“法の下の平等”って決まってんだろ! 憲法を守れよ木っ端(こっぱ)役人が!」
経務省エネルギー局長 「あのね、竹下センセイ……。それと今回の話がどうつながるの?」
竹下屁臓 「……オッと、ま~た忘れるとこだった。……つまり結論から申せば、皇族の皆さまにおかれましては、皇居に全世界から核廃棄物を受け入れるという一種の廃品回収業を行なっていただき、それで得られるはずの莫大な収益で、国庫からの財源注入を必要としない皇室財政の自立に努めていただきたい。」
大蔵省・財務政策局長 「なるほど……。皇族の皆さまに、究極の廃品回収業で頑張っていただき、経済的自立を成し遂げてもらうというわけですね。それは素晴らしい! もうすぐ2700年に達せんとする皇族の歴史において、ビジネスで経済的自立を実現するというのは初めてのことです。まさに画期的! 素晴らしい! さすが世界に冠たる経済学者の竹下先生ですね! ……だけど本当に、核のゴミの引き受けだけで皇族の経済的自立は果たされるのでしょうか?」
竹下屁臓 「私の試算では、全世界から核のゴミを引き受ければ皇室は経済的自立をはるかに上回る利益を得られるはずです。こうして得た収益の一部は、日本政府に貸してもよいし、外国に融資してもよいでしょう。皇室が経済的に富裕になるわけですから、バチカン市国のように日本国内で独立国家となることだって可能でしょう。」
大蔵省・財務政策局長 「それは素晴らしいアイデアだ! 三島由紀夫も天国で感涙にむせんでいるに違いありません。」
経務省エネルギー局長「皇室が核のゴミで廃品回収ビジネスをするというのなら、私にもアイデアがあります。恩寵タバコで国民に愛されている天皇のご紋章、すなわち菊花紋章を、『放射能危険』のハザードマークにアレンジしてみてはどうでしょうか。菊花紋章がついた廃棄物ドラムカンは、もうそれだけで格段に付加価値がつきますから、世界じゅうのマニアの連中に高く売りつけることができるはずです。」
核廃棄物をつめたドラム缶に表示される「放射能危険」の
ハザードマークを天皇陛下の菊花のご紋章にアレンジすれば、
このドラム缶はプレミア付きで世界のマニアたちに売れるはず……?
警視庁・警備局長 「ビジネスの話なら、われわれ警察も興味がありますよ。皇居に高レベル核廃棄物の永久保管施設をつくるとなれば、当然、警備も厳重にせねばなりません。過去の『2.26事件』や、天皇の終戦詔勅(しょうちょく)の前夜、すなわち昭和20年8月14日に起きた『皇居クーデタ未遂事件』で周知のように、皇居の警備を軍隊にまかせるわけには行きません。軍の連中はアタマに血がのぼると何をしでかすか、わかったもんじゃない! 全く信用できません。」
防衛省・企画調整局長 「オイ警棒野郎! きさま、オマワリの分際でわが国軍を侮辱するのか? つぎに有事があったら、きさまなんぞ真っ先に重営倉にぶちこんでやるからな! そもそも、な~にが『皇居クーデタ未遂事件』だよ! 昭和23年の6月末日まで、陛下のお住まい処は『宮城』と呼ばれておったのだ。同年のナナ月イッピからであるぞ、『皇居』と呼び習わすようになったのは。……これだから地方警察の下級公務員はダメなんだよ!」
警視庁・警備局長 「バカモノ!忍者部隊月光は富士山の裾野で忍者ゴッコでもやってろ! おまえら六本木族の出る幕はないわ。宮城の警察業務はミヤギ県警がちゃんとやっておるワイ! われら大東京の警視庁は、東北の警察業務なんて所轄外なんだよ、この用なし国家公務員野郎が! ……まあとにかく、われら警視庁としては、皇居に核廃棄保管施設をつくることになれば、多量の武装警察官を張りつけて核物質泥棒などを徹底的に抑止しするのでアリマス!」
経務省エネルギー局長 「皇居の内外にビッシリと警官を張りつける必要がありますな。」
警視庁・警備局長 「そのとおり。概算では皇居内だけでも5000人ほど、武装警官を配置します。」
経務省エネルギー局長 「いくらなんでも多すぎやしませんか?」
警視庁・警備局長 「いやいや。人件費は皇室に負担してもらえばよい。なにせ核物質の預かり賃をガッポリ稼いでくれるんですから。我々としては“自宅警備員”の連中、つまり職業技能をもたぬ“ひきこもり”のような青年たちを大量に雇い入れて、皇居の警備に張りつけます。これは雇用対策にもなるし、ニッポン警察の凄さを世界に宣伝することで、世界じゅうに我らが警官隊を売りつけることも視野に入れております。」
大蔵省顧問・竹下屁臓 「なるほど、警察業務も民営移管するという世界的動向を、ちゃんと視野にいれてのビジネスプランですね。あっぱれな構想ですね。」
皇居に核廃棄物の永久保管所を作れば、皇居内は数千人の
警官隊で守られることになる。写真は皇居・東御苑の大手門
付近を警備する武装警官隊。
★ ★ ★
経務省エネルギー局長 「最後にもう一点。皇居に核廃棄物の永久保管施設を設置すると、よそでは期待できないスピリチュアルな利点があります。これにつきまして、精神世界にお詳しい粗野綾子センセイにご説明いただきます。」
粗野綾子委員 「みなさま、粗野綾子でございます。みなさまご存じのように、わたしはカトリック巨魁に所属している迷える子羊でありますが、中学校で教わる二次方程式なんてぜんぜんわかんないし、そんなもん教えられても人生でなんの役にも立たないから学校で教えるのをやめさせろ、と夫の三裏邪宗門に言いつけて、文科省の教育課程審議会で“二次方程式の解の公式”をブッつぶした武勇伝をもっておりまして……」
神社本庁・宗務局長 「なんだオイ! 伴天連のバアさんが自分の馬鹿ぶりを自慢したり、偉いダンナを動かして日本の教育を破壊して白痴化の推進に成功しましたなんてドヤ顔で吹聴してやがるぜ。おい経務省のエラい人! こんな痴呆老人に発言させるんじゃねえよ! こんな婆さんにだって日当払ってんだろ。いつから経務省は痴呆老人の介護施設になったんだよ。」
経務省エネルギー局長 「そ…、粗野センセイ! いくら文学者でも、ワケのわからないシュールな自己紹介はかんべん願います。日本の学童を白痴化したとか、そういうテロ自慢のお話しが、今回の皇居への核廃棄物保管場の設置構想と、どう関係するんですか? ひょっとしてアンタ、なんでもブチ壊して喜んでるだけのテロリストなんじゃないの? 警視庁さん、この人アヤシイから監視してくださいね。」
粗野綾子委員 「あんたら! わたしに失礼を働いたら天罰が下るわよ。キリストは言いました。『右頬をぶたれたらピストルでそいつを撃て』と……。これが皆さんご存じの、新約聖書のハイライトでもある“戦場の垂訓”なのですよ! わたしにとって、神のことばは絶対です。わたしを脅かすなら、ピストルで天罰を喰らわしますから、そのおつもりでいらっしゃいませ!」
警視庁・警備局長 「現認しました。テロリストとして監視しなきゃなりませんな……」
経務省エネルギー局長 「粗野センセイ、恫喝(どうかつ)はもうそれくらいで、よろしいでしょ? あなたはこの会合で何を発表したかったんですか? あなたが常々、自己主張しておられたカトリック信者だというお立場から、皇居への核廃棄物永久処分場の併設をなぜ絶賛しうるのか、それを説明していただけませんか?」
粗野綾子委員 「わたしは80歳をすぎて、ますます精神世界に近づいております。今はそうねえ……一日の22時間くらいは俗世を離れて夢うつつの神様世界で遊んでおりますわよオホホホホホ! 今この瞬間も、あんたがた俗世の下衆(げす)には、私の美しい肉体しか見えていないでしょうが、それは下界の仮の姿であって、脳のほうは“あの世”で美酒に酔いしれておりますのよ。」
警視庁・警備局長 「“美しい肉体”などどこにも見えませんが……。この人は詐欺師ですか? うちの生活安全課にも監視を命じなきゃならんのか……」
経務省エネルギー局長 「おまわりさん、バアさんがちゃんとこう言ってますぜ。『脳のほうは“あの世”で美酒に酔いしれておる』と……。まあ、ヨイヨイになってるってことでしょうな、まともに相手にしなさんな。」
粗野綾子委員 「いまや日常の大部分を、俗世を超越した精神世界に住むようになったワタクシが、この歳になって確信しておりますことは、“祈り”のパワーです。この世の中では、なんでも祈れば願望が実現するのです。わたしもお祈りのパワーでボートレースではガバガバ儲けさせていただきました。」
警視庁・警備局長 「競艇で八百長レースを主催してきた……ということでしょうかね。うちの暴対班も動員しなきゃならないのかなぁ。とんでもない組織犯罪に付き合うことになりそうだわい。」
経務省エネルギー局長「粗野センセイ、あんたの競艇賭博の自慢話はどうでもいから、はやく皇居に核廃棄物処分場を併設する話に行ってほしいんですが……」
粗野綾子委員 「あんたら異教の蛮族どもは、わたしの垂訓の意味さえ理解できないケダモノなのね! そんなことだからアメリカ様に原爆を落とされて地獄の業火で焼かれたのよ。あんたら異教徒は学習能力がない蝦夷(エミシ)、土蜘蛛、豚犬なんだから、ホントに軽蔑するしかないわね!」
警視庁・警備局長 「でましたヘイトスピーチ! これは警視庁の手には負えないので国連機関の手に委ねるしかありまへん!」
経務省エネルギー局長 「……で、粗野センセイ、皇居に核ゴミ埋設施設の話はどこに行ったんですか?」
粗野綾子委員 「えっ? そんな話するんでしたっけ? わたしが事前に聞いていたのは侵腸社から出版される新刊の宣伝ってことだったけど……」
警視庁・警備局長 「バアさん、そんなことで政府から日当もらってたんじゃ、官費の不正受給ってことで現行犯逮捕ですぜ。……おい次長、いまワッパ持ってっか? 逮捕状もらってこい!」
粗野綾子委員 「……おっとっと! 今わたくし精神世界から戻ってまいりました。これまでの戯(ざ)れ言は、今のわたくしとは全然関係のない邪悪な別人格によるものですから無視して下さいね。あれは認知症患者にありがちなつまらない症状ですから、お忘れくださいませ! ここからわたくし、正気ですから。」
警視庁・警備局長 「おい次長、逮捕状とる必要なくなったぞ。会議続行だ。」
神社本庁・宗務局長 「なんだコイツ? 『エクソシスト』に出てくる“悪魔に憑かれた女”そのものじゃないか。伴天連の世界はややこしいわ。その点、神道はせいぜいキツネ憑きくらいで、こんなひどくないからラクだわ。」
粗野綾子委員 「まず選ばれし正統カトリック教徒の模範とも申すべきわたくしから見れば、核技術とニッポンの皇族は共通点があるのです。」
経務省エネルギー局長 「……はて? 駄洒落で話をおとして逃げる気かこいつ?……」
粗野綾子委員 「いやいや、笑点じゃないからそういう展開にはしません。結論から申しますと、どっちも日本の生命線というべき、至高の存在だということです。」
神社本庁・宗務局長 「たしかにそれは否定できませんな。」
粗野綾子委員 「三種の神器とはなにか?」
経務省エネルギー局長 「カー、クーラー、カラーテレビですね。うちの所轄だわそれ。」
警視庁・警備局長 「それは昭和元禄時代の“3C”って奴でしょ。あんたも古いねえ(笑)。三種の神器とは……森昌子、桜田淳子、山口百恵にキマってるでしょ。とりわけ顔立ちからいえば桜田淳子は名器だって、五味康祐センセイの『女体の秘奥は顔で分かる』に書いてありましたぞ。」
神社本庁・宗務局長 「あんたそれホントですか?」
警視庁・警備局長 「美人を逮捕したときは取調室で丸裸にして、机のうえでしゃがませて、穴という穴をぜんぶ詳しく調べますから、五味センセイの女体占いはかなりの的中することが実証ずみです。人気女優・愛染京子の実況検分のときは、小生自身、ずいぶん感心して、奮い立ったムスコをなだめるのに苦労したものでした……」
粗野綾子委員 「慶良間(けらま)ケラケラ、阿嘉(あっか)んべ~! 座間味(ザマ~み)やがれ、ま渡嘉敷(とかしき~)!」
警視庁・警備局長 「うわっ! 悪魔つきのバアさんが泡を吹いてなんか叫んでるぞ! おい神主! 悪魔ばらいしろ!」
神社本庁・宗務局長 「無理ですよ~! こちとら伴天連じゃないからねぇ……。バアさん、あんた何を叫んでるの?」
粗野綾子委員 「あたしが考案した“滅びの呪文”よ! ロクでもないこと言ってる奴らは天罰が当たって滅びりゃイイんだわ!」
警視庁・警備局長 「あんたそれ立派な脅迫ですよ。……おい次長! ワッパ持ってきたか? あと逮捕状もらってこい!」
粗野綾子委員 「……あらエッサッサっと! 今ふたたびわたくし、精神世界から戻ってまいりました。呪文みたいのは私のなかの悪魔が叫んだものですから無視して下さいね。……ここからわたくし、正気ですから。」
警視庁・警備局長 「おい次長、ま~た逮捕状とる必要なくなったぞ。ふたたび会議続行だ。」
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粗野綾子委員 「どこまで話しましたっけ?」
経務省エネルギー局長 「三種の神器で愛染は名器。」
粗野綾子委員 「うしろ半分は関係ない! ……で、神器の話でしたね。そう神器。……天皇陛下は“陛下”という呼び名でいみじくも表しているように、天上の神様のお使いとして地上に御座(おわ)します存在でありまして、ご存じのとおり“鏡”と、“剣”と、“勾玉(まがたま)”がその三種の神器です。これらのアイテムは、天照大御神(あまてらすおおみかみ)の命令をうけた天上の若い神様・邇邇芸命(ニニギのミコト)が、葦原中国(アシハラのナカつクニ)すなわちニッポンを統治するために高天原(タカマがハラ)に降り立った際に、天照大御神からもらって地上に持ち込んだ“統治のための魔法の道具”だったわけです。」
警視庁・警備局長 「えっ? そんなファンタジー初めて聞いたわ。『指輪物語』……ですか? それともジブリの新作アニメ?」
神社本庁・宗務局長 「バカヤロー! これだから低学歴は困るわ! おまえ義務教育でニッポン神話を習わなかったのか? 天孫降臨の神話なんて基本中の基本だぞ!」
警視庁・警備局長 「うるせぇよ、賽銭ドロボー。蝗学館を出たくらいで威張るんじゃねえよ!」
経務省エネルギー局長 「諸君! 地上10センチレベルの昆虫世界の学歴争いはやめたまえ! 粗野センセイの話をさえぎるな! ……ところで先生、アマテラスオオミカミってのは誰のことで、高天原ってのはどこにあるんですか?」
粗野綾子委員 「あんた日本人のくせにそんなことも知らないの? アーマーテラスのオオカミってのはマッカーサー元帥のことで、高天原ってのは厚木航空基地なのは常識でしょ? あんた東大出たくせにそんなことも知らないんだ。(笑)」
経務省エネルギー局長 「お言葉ですが受験科目は日本史じゃなくて倫理社会でしたから……」
粗野綾子委員 「なんだ倫社か(笑)。ゆとり受験生のハシリね。うちの亭主が文科省の審議会で実現しようとしていた“期待される人間像”ってのが、あんたみたいな“ゆとり”だったのよ。ここで出会えてよかったわ(笑)。……で、三種の神器の話に戻りますが、このように神器の正体は、サルかヒトかも判然としない類人猿やら蛮族だとか、ありとあらゆるモノノケが跋扈(ばっこ)する地上の世界、つまり神世の天上世界からみれば最底辺の地獄に派兵されたニニギノミコトが、そうした“言うことをきかないケダモノ”どもを成敗するための兵器だったと言えるわけです。現代の核技術に目をむけてみますと、三種の神器はなんといっても原子爆弾・水素爆弾・中性子爆弾ですわね。アメリカのマッカーサーだって、こういう核爆弾のおかげで日本に天孫降臨して、アーマーテラスのオオカミとして君臨できたわけですもの。」
経務省エネルギー局長 「核兵器が現代の神器として大切だということはわかりました。……けれど、だからといって皇居に核廃棄物の永久ゴミ捨て場を作るというのは、どういう理屈なのですか?」
神社本庁・宗務局長 「おい、バアさん! あんた天皇陛下が“人間原爆”だって言いたいのか? たしかに帝国海軍は“人間魚雷”を使ったけど、ここはイスラム国じゃないんだから天皇陛下のお腹に原爆をくくりつけて特攻するなんて、想像すらできないことだぞ! 文学者のあんたは淫らな想像力で、天皇陛下を特攻兵器にするつもりか? 世が世なら不敬罪だぞ、このバテレン野郎!」
粗野綾子委員 「これだから神道はダメなのよ。八百万もの有象無象の『神』とやらを拝んでいるから、こういうロクでもない奴が神官を名乗るようになるのね。神道にいま必要なのは神さまをリストラすることだわ。最終的には唯一神、ヤハヴェさまだけを残して、あとはぜんぶクビにすべきです。」
竹下屁臓 「おっしゃるとおり。シントー業界は無駄が多すぎる。船頭が多すぎて船が先に進まない。思いきって神さまをどんどんリストラすべきですな。うちの会社をご指名くだされば、不要な顔ぶれはバッタバッタと首切りにしますから、どうぞご用命を。」
神社本庁・宗務局長 「屁臓さん、あんた首切りばかりしてると天罰くらうぞ。」
経務省エネルギー局長 「ま~た話が紛糾しましたワイ。宗教がらみだとすぐ紛糾する。こんな調子だと宗教法人税を徹底強化しなくちゃなりませんな。宗教団体って心の平成のために存在するんでしょ? なのに内ゲバばかりしてるんなら破防法を適用せにゃなりませんな。」
警視庁・警備局長 「破防法ですか……。永田町番外地とか言われている窓際族部落の公安調査庁が、能なしのせいで我々の仕事ばかり増やしてくれるから、ハボーホーって言葉さえ耳にしたくないですけど。(苦笑)」
粗野綾子委員 「あんたたち小役人どもは、わたくしの話の腰を折るのが仕事なんですね。それで俸給をもらってんだから、税金ドロボーって言われても仕方ないわね。」
経務省エネルギー局長 「こりゃ一本とられましたな。どうぞ珍説をお続けくださいませ。(苦笑)」
粗野綾子委員 「もう、おバアちゃん眠くなっちゃったから、結論を言いますわね。……天皇皇后両陛下のおつとめは、日々、平和をお祈りすることですわね。祈り屋さんなんですから、どうせ祈ってもらうんなら、自分たちのお住まいの地下に保管された大量の核のゴミが、どうか安寧のまま千代に八千代に、さざれ石が大岩になってコケが生えるまで、ずっと未来永劫、つつがなく保管されますようにと、毎日毎日、お祈りしていただくのがベストだと思うのです。……ねえ皆さん、そんなにまめにお祈りしてる人がほかに日本にいますか? 天皇陛下はお祈りのプロなんですから、ここは核のゴミの永久の安寧を、陛下のお祈りに託すのが最善の策だと思うのですよ。」
神社本庁・宗務局長 「粗野センセイ、おコトバですが、神に祈るのという仕事なら、われわれ神官だってプロフェッショナルですよ! さらにいえばイスラム教徒なんて一日に5回も神に祈ってます。あんた、そんなことも知らないの?」
粗野綾子委員 「だったら出雲大社とか伊勢神宮の地下に、核廃棄物の永久保管場を作るべきだ……と、そういう理屈になりますわね。」
神社本庁・宗務局長 「……えっ? やっぱり天皇さまの祈りのパワーにはかないませんわ。皇居……皇居に決定ですな。」
経務省エネルギー局長 「会場貸し出しのタイムリミットが来ましたので、ここで検討会を終了いたします。……なんせこの部屋、つぎは結婚式の控え室になるんで、我々はやく退出しなきゃならないもんで……。ハイ!きょうの結論。 皇居の地下に高レベル核廃棄物の永久保管施設を設置することにいたします。そして天皇皇后両陛下には、毎日、廃棄物の永久の安寧をお祈りしていただきます。……皆さま長時間のご検討、ありがとうございました。お帰りはタクシーを用意しておりますので、受付にてタクシーチケットをご用命くださいませ。」
(ここで会議終了)
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長谷川記者 「……ということで、議事録を棒読みすることになってしまいましたが……」
犬腰犬介アナ 「バカヤロー! あと10秒で番組終了じゃねえか! 全文読んでどうすんだ、ラジオ第2放送の『朗読の時間』じゃねえんだぞ!」
ディレクター(怒鳴り散らす声がそのまま番組に入る) 「犬介てめえキャスターのくせに何やってんだ! てめえ今日かぎりでクビだ! 地方局に飛ばされて一生ローカルニュース読んでろバカ!」
犬飢ゆうひアナ 「きょうはニュースが一本しかお伝えできませんでしたが、最後に、先ほどの検討会でも大活躍だった粗野センセイのご尊顔をごらんください。《ニュースセンター9》、明日もお楽しみに……」
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(この物語はフィクションであり登場人物その他はすべて架空のものです。
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