2月8日鹿砦社主催の「前田日明ゼミin西宮」の第1回がお馴染みの鈴木邦男さんをゲストに迎え60余名の聴衆が集散し、これまで同様cafeインティラミで開催された。「前田日明ゼミ」への関心の高さは『紙の爆弾』誌上で発表後時間をおかずに定員に達したことからも伺われたが、この日も会場へ直接申し込みなく訪れた方々が10名を超えた。
会場スペースと消防法の規定もあり、当日会場に来られた方々は入場することが出来ずにお帰り頂いたそうだが、鹿砦社の担当者の方からは「大変申し訳ないが事情を理解していただき、次回以降申し込みをして頂き是非ご参加を」とのコメントがあった。
会場には鹿砦社のロゴやカレンダーなどを手掛ける「龍一郎」さん(前田さんの大ファンだそうだ)も駆けつけ、対談開始前に会場で書を実践披露していただいた。書かれたのは「誠」。清々しいサプライズを受けて対談が始まった。
この日のテーマは「真の愛国者とは~現代日本は社会を読み解く~」であった。新右翼でありながら今や「境界なき思想家」である鈴木さんと韓国籍から日本国籍へ帰化された前田さんの間でどんな激論が交わされるのか。「愛国」を語らせたら、これ以上ないスリリングな組み合わせに会場は静かながら緊張感に包まれた。
鈴木さんは吉田松陰や幕末に活躍した人間が専ら中国の古典から教養の基礎を学んでいたことを紹介し、日本で昨今見られる排外主義に疑問を呈すると、前田さんはすかさずそれに呼応する。いわく武士の教本は「四書五経」にあったと。
◆サンフランシスコ講和条約──問題はそこから始まってる
前田さんが恐るべき読書家で、それには鈴木さんすら一目置くほどだという事実は知る人ぞ知るところだが、その後も歴史的にあまり知られていない重要な事実を前田さんはどんどん明かしてゆく。
「吉田茂と白洲次郎は売国奴ですよ」
「サンフランシスコ講和条約は何語で書かれているか皆さんご存知ですか?英語、フランス語、スペイン語、付け足しで日本語と書かれてるけど、政府答弁ではサンフランシスコ講和条約の日本語版は存在しない!」
「サンフランシスコ講和条約の中で、日本に主権を返すという記述はある。でもそれは日本国にじゃなくて”Japanese People”と書かれてる。これ日本人でしょ。日本国じゃないですよ。でも政府は日本国と偽訳で国民を誤魔化してるんです。」
「敗戦に伴う賠償請求はしないことになったると言われてるけど嘘ですよ。よく読んだら戦費以外は『いつでも、私企業にも賠償させることが出来る』て書いてある。だから日本は国連やIMFへの出資が多い。ODAもそうですよ。日米安保以前にサンフランシスコ講和条約の問題を誰も言わないでしょ。問題はそこから始まってるんですよ」
「今まで何百人という政治家に会ってきましたけど、この人は本物だなと思える人は2、3人ですね。あとは皆だめですね。私の質問にも答えられない」
◆彼ら(在特会)のやってること自体が『在日』そのもの
そして、いよいよ「愛国者」に関係の深い昨今の差別問題へと鈴木さんが話題を向ける。前田さんは実際に「在特会」のデモやヘイトスピーチを目にしたことはないというが、
「彼らのやってること自体が『在日』そのものなんですよ。『在日』にもいろんな人間いるから変な奴もいる。正に『在日』の悪い部分そのものですね」
と在特会こそ『在日』の闇の部分だと指摘する。だが、
「もし目の前であんな事言われたら、日本刀でぶった切るかもね(笑)」
とやはり前田さんにも許し難い行為のようだ。更に新井将敬(元韓国籍から日本国籍に帰化、自民党から国会議員に当選するも自殺)、中川一郎、果ては橋本龍太郎の死に対して疑いの目が向けられる。
「謀略って日本人はあまり信用しないけどあるんですよ」
前田日明ゼミ第一回は早速ダッシュで始まった印象だ。本当はゲストである鈴木さんの「聞き出し方の旨さ」も際立っていた。鈴木さんに取調官をやらせたらきっと優秀だろう。
ゼミ終了後、同じ場所で懇親会が開催された。前田日明ファンが写真を撮ったり、握手を求めたり列をなした。中には時価1千万円の価値があるという「テレホンカード」の数々を持参して前田さんにサインをもらっている方もいた。極め付けは「技をかけて!」と願い出る女性へのコブラツイスト!
次回以降も何が起こるかわからない。期待を寄せる刺激に満ちた初回スペシャルだった。
▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ
◎渡辺昇一の「朝日憎し」提訴原告数が「在特会」構成員数とほぼ一致
◎粗悪な食文化の伝道企業=マクドナルドの衰退は「自然の理」
◎人質事件で露呈した安倍首相の人並み外れた「問題発生能力」こそが大問題