プロ野球が開幕した。3月28日、14時開始のプロ野球「巨人―横浜DeNA」 戦を、東京ドームの「内野アルプス」席で初めて見た。かなり急角度に作られた観客席は、まさに登山している途中のような席だ。3塁側だったが、内野を見下ろす感覚で、文字通り「下界で野球をやっているなあ」という感覚だ。ただし、球場全体が見渡せて、ひじょうに気持ちがいい。

東京ドーム「内野アルプス」席は球場全体が見渡せて、気持ちがいいのだが……

それにしても腹がたつのが、ビールやソフトドリンクの売り子たちが目の前の通路を横切ると、プレイが瞬間的にせよ、見れなくなる点だ。横切られると、選手たちが視界に入らなくなる。

カウントしていたが、平均すれば30秒に一度「ビールいかがでしょうか」「ワインクーラーいかがでしょうか」「アイスのモナカはいかがでしょうか」とやられる。

もちろん、ドーム球場の売り子たちは雑誌でグラビアが組まれるほどかわいいコぞろいで、とくにビールの売り子は、ほかのドリンクを売る子とは明らかに質がちがう。かわいいコ選抜で「芸能界への登竜門」とも言われる。まあ実際は大学生や専門学校生など18~22歳がほとんどだ。

売り子たちは確かにかわいいコぞろいだが……

売り子たちは確かにかわいいコぞろいだが……

◆スタンドはまるで売り子と会話をするキャバクラ

試合は、開幕第2戦で、私がお気に入りの横浜DeNAの山口俊投手が投げているというのに、売り子のせいで何度もボールを見失った。「抑え」で挫折し、「先発」へと再転向した苦労人の山口のボールは150KM近いスピードに乗り、凝視しないと玉筋がわからない。それなのに、売り子のせいでしばしばボールを見失う。

スタンドは、まるで売り子と会話をするキャバクラのごとく

スタンドは、まるで売り子と会話をするキャバクラのごとく

頭に来ることに、このスタンドは、まるで売り子と会話をするキャバクラのごとくなっていて、「大学生? 何曜日に来ているの? 今日は何時まで?」とお気に入りのギャルからしか買わない客もいるから「おまえら、何しに来ているのか」と問い詰めたくなる。

7回裏をすぎて、私はついに頭にきてスタッフに「おい、プレイ中はせめてビールの売り子に通路を通るのをやめさせろ」と怒鳴っていた。売り子のせいでロペスのホームランを見失ったのだ。もっと言えば、巨人の阿部のフェンス直撃の二累打も見逃した。

「えーと、売り子にはなるべく通路で立ち止まらないようにと指導しているのですが」とスタッフは弁解する。

もちろん、球場で酒を飲むなとは言わない。かわいい売り子を目当てに球場に来ているというのも、男としてわからなくはない。神宮球場では、「美しすぎるビールの売り子」としてアイドル顔負けに人気を集める子もいた。だが、「ボールの動きが追跡できない」という観戦環境は、もはや論外だ。

ひるがえって、先日、後楽園ホールで観たボクシングでは、視界に運営スタッフが入ってきたので「リングが見えないからどいてくれないか」と申し入れると、すぐにしゃがんでくれた。

「興業でのサービス」とは何だろう。かわいいコを集めて、これでもか、これでもかとドリンクを売りつけていくことだろうか。ちなみにハイボールが800円だったが、これも値段の根拠がわからない。もしも球場に足を運んでほしいなら、500円で売るべきである。ちなみにコーラは260円だ。

◆打線陣に30億円を浪費する金満野球の巨人にあきれてファンをやめた

さて、ドームの試合は巨人のポレダ投手が打ち込まれ、巨人が大負けした。私は、かつて巨人を応援していたが、もはや昨年から応援していない。金満野球にあきれたのだ。

今年のメンバーを見ても、ここ4年ほどと変わっていない。阿部が捕手からファーストに転向し、いまだに高橋由伸、坂本、長野、亀井だ。くわえて、セカンドが弱点と分析するや、西武から片岡をとり、中日から井端を移籍させた。相変わらず金で勝利を買おうとしている怠慢な姿勢がみてとれる。

今、野球は「走る」というスタイルに戻りつつある。楽天のデーブ大久保監督は、「走る野球」を明確に打ち出している。走ることを忘れ、ひたすら長打を待つ巨人の野球がどう終戦を迎えるか楽しみにしたいところだ。

はっきりいって、打線で30億円も使って優勝できなければ恥知らずである。ちなみに西武ライオンズは10億円も使っていない。

◆球場の選手もスタッフも「プロ」と呼べる仕事をしてくれよ!

さて話をプロ野球観戦に戻す。久しぶりに球場に言ったが、鳴り物が少なくてホッとした。メジャーリーグでは、打球音を楽しむために、鳴り物などもってのほか。選手の応援歌を繰り返して歌うなど、 せっかくの「野球音」が聞こえずに台無しである。

こうしてみると、自分は野球よりも、本場アメリカの「ベースボール」のほうが好みだということに気がつく。なによりもボールが動くスピードが段違いだし、選手の配置も戦略も理論だっている。ファンだって野球を知っているし、選手をリスペクトしていてブーイングはするものの、個人攻撃的なヤジはしない。

あいかわらず、日本の優秀な選手は海外へと流れているが、「どうして日本のプロ野球に残ってもらえないか」をNPBのみならず、すべての野球関係者は考えてみるべきであろう。

「野球をチームでなく、注目の選手で追跡する」タイプの私は、今年は日本ハムの大谷や、メジャーリーグから帰ってきた「ストライクしか投げない男」黒田や、実はまだ現役を続けている、今後、5年で日本でただひとり200勝を達成しそうな西武の西口、はたまたソフトバンクからヤクルトに移籍した成瀬などに注目している。

果たして、球場のスタッフも選手も「プロ」と呼べる仕事をぜひ見せていただきたくない。少なくとも私たちは、決して安くないチケットを購入して観戦に行くのだから。

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、著述業、落語の原作、官能小説、AV寸評、広告製作とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論!」の管理人。

◎アギーレ解任前から密かに後任候補を探していた日本サッカー協会の本末転倒
◎柴咲コウが同調し、小泉今日子も後押し?──小栗旬「俳優労組」結成への道
◎川崎中1殺害事件の基層──関東連合を彷彿させる首都圏郊外「半グレ」文化