日本の高校のサッカー部員らがこの3月、韓国で「集団万引き」をした事件で、被害に遭ったソウル・東大門のショッピングモールの商店主たちが、処罰を望まないという意思を警察に伝えていたことが分かった。4月14日の朝鮮日報日本語版によれば、商店主たちは、高校生らが韓国で重い処罰を受けた場合、東大門商圏の主な顧客である日本人観光客たちの客足が途絶える可能性があると懸念したという。
ソウル中部警察署が4月13日に発表したところによると、被害に遭った9店舗のうち一部の店主たちは「日本の高校生たちに寛大な措置を講じてほしい」との意向を警察に伝えたという。店主たちはその理由として「高校生たちは未熟で、彼らが処罰を受けた場合、周辺の商圏に否定的な影響を与えかねない」と述べたという。
埼玉県の私立高校がソウルへ練習試合に出かけた帰路、集団(22人)で万引きを行ったことが発覚した事件だ。東大門のショッピングモールと表現されているが実際は小さな商店が軒をならべる「市場」と言った方が似つかわしい雰囲気の場所だ。
この悪戯が過ぎる高校生たちは、親や学校からこっぴどく叱ってもらわねばならない。高校生(中学生)の集団万引きは今日に始まったことではなく、「あれが欲しい」という動機ではなくても「あいつがやっても大丈夫だから」と付和雷同的に引きずられ、ついつい気楽に悪さをしてしまう。そんな心理が生徒たちには働いたのだろう。
◆「ブルー・ライト・ヨコハマ」を歌えた80年代韓国の不良たち
同様の「悪さ」は昔、韓国でも問題になったと留学生から聞いたことがある。韓国社会は急変しつつあるとはいえ、いまだ日本に比べれば封建的な側面が残っており、特に「教師」への尊敬の念は幼少の頃から叩き込まれる。だから日本同様に生徒同士の喧嘩や、万引きなどは同じように昔からあったけれども、「正面切って教師に刃向う」不良生徒は皆無だったそうだ。
そして韓国では80年代まで多くの高校で日本の詰襟同様の制服が残っていて、不良生徒は丈の長い上着に、ズボンをダブダブに太くするのが「不良文化」だったそうだ。誰が伝えたのか(自然発生なのか)知らないけれども、似なくてもいいところが似るものだ。もっとも詰襟の制服は日本支配時代の遺物であり、彼らは「ラジオ体操」まで学校で習っていたというから笑えない歴史でもある。
そんな韓国の不良たちはラジカセを抱えてタバコを吹かしながらある日本の歌謡曲を繰り返し聞いていたという。それはいしだあゆみの「ブルーライト横浜」だ。なぜに「ブルー・ライト・ヨコハマ」なのか、複数の元不良に調査したが誰も理由は分からないと言っていた。日本語が分からなくても「ブルー・ライト・ヨコハマ」を歌える不良が結構いたらしい。
◆もしもいま、韓国の高校生たちが日本で「集団万引き」をしたら……
さて、今回の集団万引き事件だが、もし逆の事が日本で起こっていたら、どんな報道がされて、インターネットではどんな言説が飛び交っていただろうか。こんな「仮定」自体が韓国には失礼だけれども、想像するだけで気分が悪くなるようなヒステリックな差別が飛び交っていたのではないか。
問答無用の「嫌韓人」には何も伝わらないだろうけれども、「東大門のショッピングモールの商店主たちが、処罰を望まないという意思を警察に伝えていたこと」ことは謙虚に受け止めるべきではないだろうか。
日本だけにいると、あたかも韓国は世界中から嫌われているかのような雑誌の特集や書籍を多く見かけるが、毎年BBCが実施している国別好感度調査によると2014年度日本の好感度は第5位で韓国は11位だ。逆に嫌悪度では日本が11位で韓国が9位だ。因みに好感度1位はドイツで最下位はイスラエルとパキスタンである。参考までに米国の好感度は8位で嫌悪度は7位となっている。
世界は多様な価値観で構成されている。
▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ
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