6月7日ノボテル甲子園で前田日明ゼミ第3回目がゲストにジャーナリスト田原総一朗氏を迎え約120人の聴衆が参集し行われた。

前田氏は冒頭、前回ゲストの孫崎享(うける)氏が「安倍首相は戦後最悪の売国奴」と看破したことに驚き、「様々調べたところ、年金原資の25%が株式購入に充てられていること、また日銀も年間3兆円株式を買っている。日本の国債発行残高は1200兆円あるが、そのほとんどは現状郵貯などが引き受けているので、実はそれほど心配ないが、2018年からはルールが変わり格付けの悪い国債を金融機関が引き受けることが禁止される。そうなれば国家予算が組めるだろうか。東京オリンピックなんてできるのかと思う。アベノミクスの本質は実はとんでもないモノかと気がついた」と語った。

田原総一朗さんと前田日明さん

◆小選挙区になってから自民党の中に反対勢力が居なくなった(田原氏)

次いで田原氏が「自民党が変わった。中選挙区時代は自民党の中に主流派、非主流派もあった。ところが小選挙区になってから自民党の中に反対勢力が居なくなった。先日憲法に関する自民党推薦の有識者参考人が3人とも『自衛隊の集団的自衛権は違憲だ』と予想外の発言があった。かつてなら反主流、非主流派からごうごうたる非難を浴びているはずだ」と述べた。田原氏は「自分も当時は中選挙区制は金がかかり過ぎるから小選挙区に賛成した」とも述べた。

田原総一朗さん

◆立派だと思った政治家は鈴木宗男と亀井静香くらいだった(前田氏)

休憩を挟んだ質疑に移ると前田氏は会場から「前田さんは自身が将来政治家になるつもりは?」との質問に「5年間、民主党を応援したが、正直政治家には魅力のある人が少なかった。立派だと思ったのは鈴木宗男と亀井静香くらいだった。今やろうという気にならないですね」と述べた。

田原氏は参加者から寄せられた「小選挙区」に関する質問に回答を試みたが、的を得ないと感じたので私は「小選挙区で金がかかるのは自民党だけの話しではないですか」と問いかけた。

「小選挙区導入議論の際に今日語られる弊害が予想されたので、大きな反対があったが、何故賛成されたのか」と質問した。回答は「今は小選挙区制は間違っていたと思う」とお答えを頂けた。

田原総一朗さんと前田日明さん

次の予定があり田原氏は懇親会に参加なさらなかったが参加者にとっては濃密な時間となった。

次回ゲストは前田氏が尊敬する政治家と称賛した、鈴木宗男氏との発表が懇親会の席であった。

写真左から鈴木邦男さん、田原総一朗さん、前田日明さん、松岡利康=鹿砦社代表(前田ゼミ開始前の昼食兼打ち合わせの席にて)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎《6.8公判傍聴報告》やっぱり不当逮捕だった!火炎瓶テツさんら3人全員釈放!
◎〈生きた現実〉の直撃弾──鹿砦社松岡社長が自身の逮捕経験を「告白」講義
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気

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6月8日午前10時から東京地裁429号法廷(有賀貞博裁判長)で、5月28日に「建造物侵入」容疑で逮捕された「火炎瓶テツ」さんを含め3名の「勾留理由開示公判」が行われた。

公判前の8時30分、支援する人々は東京地裁近くに集まり、9時30分に30余席しか無い傍聴席の傍聴抽選が行われた。抽選には100名近くが傍聴券を求め列をなし、この「不当逮捕事件」への関心の高さが伺われた。

私は残念ながら傍聴券抽選には外れたが、取材の意義に賛同して下さった有志の方から傍聴券を譲って頂き傍聴をする機会を得た。この場を借りてご協力頂いた方に深くお礼を申し上げたい。

◆「嫌がらせ」としか思えない行為を傍聴女性に行う職員たち

本コラムでご紹介した通り429号法廷はいつも「警備法廷」だ。法廷前では多数の裁判所職員が列をなし、鞄や携帯電話などの所持品は全て裁判所の命令で「一時預り」を強いられた。

筆記用具だけは持ち込みが認められているはずなのだが、女性傍聴者に対して複数の職員が取り囲み「ノートの中を見せろ」と不当な恫喝をかける。私もノートの所持は確認されたが、中を見せろとは言われなかった。

429号法廷では女性に対して、嫌がらせとしか理解出来ない行為が多発していると聞いていたが、目前で不当行為を目にする事になった。私を含め数人が「自分はノートの所持を確認されただけなのに何故この人にだけ内容確認を強要するのか」と問い詰めると職員は何と「金属探知機」を持ち出し、女性のノートの裏表に「金属探知機」をかざし(何の意味があるのか?)「ご協力有り難うございます」と発言し、去って行った。

◆警察官に連れられて入廷した「被疑者」と言う名の「不当逮捕被害者」

傍聴者が法廷に入ると裁判官は「傍聴者は声を出したり拍手などをすると退廷を命じます」と恫喝とも言うべき異例の注意を言い渡した。定刻7分遅れで手錠と腰縄をかけられた「被疑者」と言う名の「不当逮捕被害者」が警備の警察官に連れられて入廷し、手錠と腰縄を外され、正面から裁判官と向かい合う位置に二人、弁護士席の前に警察官を挟んで着席した。

この着席位置に弁護側から「被疑者を全員弁護士席の前に着席させよ!」と要求が出されたが、裁判官は取り上げなかった。が判官が事件名を小さな声で読み上げ、弁護側の主張に移った。

弁護士は「本件は逮捕建造物侵入を容疑とした逮捕自体が不当であり、3人は即時に保釈されるべきである」と8項目の求釈明を求めた。しかしそれに対して裁判官は肝心な質問には「答えません」とまともな回答をしない。堪り兼ねた傍聴席から「説明しろ」と声が上がると、裁判官はすかさずその傍聴者に「退廷を命じます」と最初の退廷を出した。

◆被疑者の住所を不明としながら3人の自宅の家宅捜索を行った不合理

その後も弁護団から厳しい質問が相次ぐが、相変わらず裁判官は「答えません」を連発する。

明らかに裁判官は回答から逃げており法律の素人にもその矛盾が明らかだった。

特に勾留の理由に被疑者の住所が不明としながら3人の自宅に家宅捜索を行っている不合理は際立っていた。

その後、3被疑者の意見陳述に移り、各人が10分不当逮捕を糾弾した。被疑者の発言に共感した女性が小さく拍手をすると、裁判官はまたしても退廷を命じ、5、6人の職員が女性を抱え上げ法廷から排除した。

次いで弁護団の意見陳述が行われ「明確な不当逮捕」を厳しく追及して、一連の審理は終わった。

◆閉廷後にも拘わらず「全員退廷!」命令を出した裁判官

その瞬間、傍聴席から「仲間を取り返すぞ!」と大声が上がった。すると傍聴席に控えていた職員が傍聴席と法廷の間に列をなし傍聴者の静止を試みる。しかし法廷内の被疑者は両手を上げて強い意思を示し、応じるように傍聴者から次々激励と裁判官糾弾の声が相次ぐ。

たまらずに裁判官は閉廷後にも拘わらず「全員退廷!」命令を出した。

午後2時、裁判所は3人の保釈決定を弁護団に伝えて来た。

午後6時半、釈放された3人がテント前広場に集い報告集会が行われている。


◎[参考動画]岩上安身による火炎瓶テツ氏インタビュー(2013年12月30日)


◎[参考動画]火炎瓶テツさん、「憲法改悪と護憲」について語る(2013年4月29日)


◎[参考動画] 火炎瓶テツ@辺野古新基地建設NO!防衛省抗議行動(2015年1月13日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎火炎瓶テツさんの勾留理由開示公判が東京地裁「429号法廷」で行われる意味
◎「火炎瓶テツさんを救え!」が始動──6月8日東京地裁で「勾留理由開示」公判!
◎火炎瓶テツさんら経産省前「不当逮捕」が示す安倍ファシズム第二段階本格稼働
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
◎〈生きた現実〉の直撃弾──鹿砦社松岡社長が自身の逮捕経験を「告白」講義

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Cat Panic Entertainmentが運営するキャットファイトを5月23日に新木場まで見に行った。キャットファイトの中でも、お色気が見たい場合は、この団体の試合を見てスカッとするのもいい。キャットファイトは、女どうしの戦いを意味するのだが、ここでは、かわいい女の子が「そんなに激しく戦うのか」と驚きをもって観戦する種類のものと定義する。したがって、脱がしたり、股間をさらすシーンは男性にとってうれしいものがあるが、まちがっても凶器や流血などは存在しない。

観客は、20代から50代の男性がメインで、9割ほど。「全日本プロレス」や「新日本プロレス」のTシャツを着ていたりする。いわゆるおたくの臭いはほぼしない。第一試合からして、「負けたほうが官能小説を読む」という罰ゲームが用意されていた。そうなのだ、こうした演出こそがこのイベントのナイスな肝なのだ。地下アイドルがリングの合間に歌うのも、見どころで、観客の迷惑を顧みずに、ひたすらに踊る最前列のおっさんもいた(あとで後ろの席の人に謝っていたが)。


◎[参考動画]5/23(土)CPEキャットファイト全対戦カード発表!

寝技回春ガールズ

とりわけ、初代ミニスカポリスの福山理子 、アイドルレスラー鳳華、はたまた舞台女優、若林美保などのきれいどころとも出会えるのが魅力だ。開始から最後まで見たが、キャットファイトはよりエンターテインメント性が高まっており,解説もアナも笑いをとらせたら一級品という感じがした。追いはぎマッチや、バナナを尺八する技をあらそう3対3のバトルも、ローションの中のバトルロイヤルも魅力だが、メンバーがいれかわってもなお迫力があるパフォーマンスを見せてくれた。

個人的には、小司あんももえりがまだがんばっているのを発見して、「いまだがんばっているのか」と感慨が深かった。初めて見たときは少女のような初初しさがあったが、もはやベテランの領域だ。ちなみに「あやまんJAPAN」は、初期メンバーはすでに脱退したが、メンバーがいれかってもなおレベルの高いパフォーマンスを見せてくれた。

◆格闘技にエロスと笑いを共存させる『バトルビーナス』たちの饗宴

実は、格闘技とエロスとお笑いを共存させるのは、とても難しい。名前を伏せるが僕の友人もキャットファイトの運営に関わったが、どうしても女の選手たちは「あの子よりも前に出たい」と顕示欲が強くて分裂に分裂を繰り返して、やがて団体は消滅していった。今、残っているキャットファイトの団体の人気の秘密は「美しい戦士たちが汗まみれで戦う」、その姿が崇高だという点だろう。アキバ系のキャットファイトのイベントでも、そうした『バトルビーナス』をリスペクトするカメラ小僧であふれているのだ。

同時に、いつの世の中にも「強い女」に憧れる男はいるもので、彼女たちをリスペクトして、全国に女子プロレスラーを追いかけている中年も一部ではいるのも事実だ。もしかしたら、自分もそうした「女子プロレスラー」の追っかけになっていた可能性は高いのだが、幸いにも自分はプロレスラーの「アイドル性」や「カリスマ性」を追跡するよりも、「試合そのもののおもしろさ」を伝えるライターとなった。したがって、人気があるから選手をとりあげるような真似はしない。試合が秀逸だから、活字たりえるのである。

紫龍みほ(右から2人目)

もしも女子プロレスラーや格闘技家で、魅力ある人がいたなら、ひたすらに追跡していたような気もする。

しかし女子の格闘技家が「旬でいられる時間」が短いのも、僕がどうしても女子の格闘技イベントから遠ざかる原因ともなってきた。お誘いはたくさんあったので、ここでお詫びするなら、どうしても土日は、ボクシングの重要な試合があったのだ。

もしも往年のプロレスファンがこのブログを見ていたら、であるが、リッキー・フジ木原文人も、男女混合のローションプロレスに参戦していたので、この点からも興味を持つかもしれない。

◆キャットファイトの魅力──相反する要素がミスマッチ的に同居

はてさて、話をイベントに戻せば、ラストのローションファイトでは、水鉄砲が配られて、レスラーの股間や乳房水をぶっかけられる。もはや脱力するほどのユルさだ。しかしこうした「脱・日常」こそが、キャットファイトの魅力なのだろう。

桃杏めるのライブ

山田ゴメスは、かつてこう観戦記に書いた。

ポイントは、エロからもっともかけ離れた位置にあるはずの“笑い”(“失笑”もおおいに含む)と、本来ならもっともエロの身近になければならないはずの“下世話”(もっと断言するなら“下品さ”)であるようだ。これらの相反する要素がミスマッチ的に同居する、乱暴なフレイバー感こそがキャットファイトの魅力なのかもしれない。(日刊SPA!

なかなか的確に捉えている言葉だ。いずれにせよ、次回は9月に行われる。
もし日程があればまた出かけてみたい。

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、著述業、落語の原作、官能小説、AV寸評、広告製作とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論!」(http://genron1.blog.fc2.com)の管理人。

◎「THE OUTSIDER 第35戦」観戦記──朝倉海の強さと佐野哲也の安定感に注目
◎不良達の登竜門「THE OUTSIDER」は凄まじ過ぎる興奮
◎川崎中1殺害事件の基層──関東連合を彷彿させる首都圏郊外「半グレ」文化
◎売り子に視界を遮られ、肝心なプレイを見逃す東京ドームのキャバクラ化
◎アギーレ解任前から密かに後任候補を探していた日本サッカー協会の本末転倒

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先日来お知らせしている「火炎瓶テツ」氏の「勾留理由開示公判」が6月8日(月)10時から東京地裁429号法廷で行われるとの情報を得た。

やはりかと思ったが、法廷は「429号」だった。

東京地裁429号法廷は特別な法廷だ。通常の法定であれば刑事事件(裁判員裁判の殺人事件)であっても、民事事件であっても、傍聴席に空席がある限り、開廷前であれ、開廷中であれ誰でも法廷の傍聴席に自由に出入りできる。

が、東京地裁「429号」法廷は特別だ。ここは常時「警備法廷」として準備されている特別に警戒が厳しい部屋として、業界では悪名高い。

通常の法廷であれば傍聴者は荷物を持って傍聴できるけれども、「429号」法廷の場合ほぼ間違いなく裁判所の職員に鞄所持品、携帯電話などを預けなければならない。加えて私の過去の経験から言えば、裁判所入所時に金蔵探知機で所持品を調べられているのに、この部屋に入る際に更に全身を調べられた。

部屋の前の廊下には目つきの鋭い裁判所職員(?)が常駐し、その姿は何も知らずに訪れると、相当威圧感を受ける。

◆「429号法廷」とは傍聴者たちに対しても「本気で弾圧するぞ」という権力の意思表明

「火炎瓶テツ」氏の「勾留理由開示公判」が429号法廷で開かれること自体、裁判所や検察は「本気で弾圧するぞ」と言う意思を示していると了解しても間違いないだろう。この場所は主として新左翼活動家や暴力団の抗争などの刑事事件で専ら使われる法廷でもある。

当日、傍聴予定の方はあらかじめ、そういった場所であることを覚悟しておいた方がいい。一般の法廷と雰囲気が全く違う、威圧的な雰囲気の中で「勾留理由開示公判」は行われる。

高々建造物侵入(といっても「押し入った」わけではないのに)容疑で「警備法廷」をあてがうほど、国家(権力)は警戒しているということだ。

「火炎瓶テツ」とその仲間たちは丸腰の人ばかりなのに。

◎[参考動画]2015.05.28『戦争法案反対国会前集会』シュプレヒコール【5/10】

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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◎合法ラディカルな自由メディアの天使「ノエル」少年を権力が恐れる本当の理由

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芸能界では昔から「枕営業」と呼ばれる人身売買が行われているとされているが、時に報道などによってそれらが明らかとなるケースがある。

2010年には契約解除をめぐる紛争でタレントの眞鍋かをりが芸能事務所、アヴィラと裁判沙汰になったが、この裁判の準備書面で眞鍋側は「仕事場の楽屋でマネージャーから(中略)『タレント某は社長と性的関係を持ったから、番組に出演出来た』などの低俗な話を聞かされた。実際に話題に上ったタレントの仕事量が増えた」「性的関係を持った女性タレントに小遣いを渡していた」などと主張し、物議を醸した。

◆頻発する犯罪報道で明らかになる「枕営業」強要の実態

2014年12月には「ちょいワルおやじ」という流行語を流行らせ一世を風靡した中年男性向けファッション誌『LEON』を創刊した有名編集者、岸田一郎氏から、『東京ガールズコレクション(TGC)』への出演を引き換え条件に肉体関係を強要されたとして23歳のモデルが『FRIDAY』で告発した。

2015年1月にはオリコンランキングで1位を獲得し人気が急上昇していたアイドルグループ、仮面女子のメンバーらが運営会社社長に日常的に性接待を強要されていたという告発が『週刊文春』で報じられた

こうした報道は最近、特に増えている。

先月は、アイドルグループ、PASSPO☆のメンバーがツイッターで枕営業の実態をほのめかす内容の投稿をし、大騒動となり、また、元芸能プロダクション社長田代オリバーことベレン・オリバー・オリベッティ容疑者がタレント志望の女子中学生に「俺がデビューさせてやる」と持ち掛け、みだらな行為をしたとして、児童福祉法違反の疑い逮捕された。

さらにその数日後にも、東京、原宿でスカウトした女性の着替えの様子を盗撮していた芸能プロ社長ら5人が逮捕される事件も起きた。

叶恭子『トリオリズム』 (2006年小学館)

◆叶姉妹とミス・コンをめぐる1999年『週刊ポスト』スキャンダル報道の衝撃

筆者が調べた範囲では、「枕営業」に関する過去の報道でもっとも衝撃的だったのは、『週刊ポスト』が1999年11月から12月にかけ、5回にわたって報じた叶姉妹とミス・コンテストをめぐるスキャンダルだ。

叶姉妹といえば、97年ごろから高級ファッション誌『25ans』に「スーパー読者」として紹介され、瞬く間に人気を獲得した、叶恭子、叶美香による姉妹ユニットだが、その実態は謎のベールに包まれていた。

『ポスト』の報道には、叶姉妹と密接に公開した資産家令嬢のA子さんが登場し、「絶対にあの姉妹を許せません」として2年間にわたった「レズ奴隷生活」を告発した。

記事によれば、A子さんは数年前に知人宅を訪問したところ、その知人が叶恭子、叶美香を呼び出し、以降、交流が始まったという。

初対面の恭子は、「私のこと、知らない? ミスコンの審査員をしてるの」と切り出し、しきりにミスコンへの出場を誘った。

恭子は毎日のようにA子さんに連絡をし、買い物などに同行させ、仕舞いにはレズ関係を迫られるようになった。恭子は「3人目の妹になりたいなら頑張らないと」といつも言っていたという。

さらには、ある日、美香から「会えば絶対、勉強になる」などとと言われ、コンドームを手渡され、ホテルチェーンを経営している2代目という青年実業家を紹介され、関係を迫られた。

それが終わってから、美香はA子さんにこう言ったという。

「あの人はバカだから(利用するには)ちょうどいいの。あなたは初めてだから、ああいう人がいいのよ。電話番号は教えてないでしょうね」

それから1週間ほどして美香から「この間の人から電話が来たわよ。よかったわね。A子ちゃん。これでしっかりつかんだわ」と連絡があり、再び青年実業家との面会がセッティングされた。再び、面会した青年実業家は「君を紹介してもらうのはとても大変だったんだよ」と話していたという。

A子さんが、この間の経緯を恭子に説明し、抗議すると恭子は、「美香がやったのね。私は関知してないの」と釈明したという。

同様のことはその後も続く。そして、叶姉妹は、A子さんに自分たちが運営側として関係し、世界4大ミスコンテストの1つとされ、フィリピンが主催国の「ミス・アジアパシフィック」の日本代表選考会への出場を強く薦め、「A子ちゃんの頑張り次第で日本代表になれるから」と言った。

◆「ホントにやる気だったら、オレと寝ろ。2年でビッグにしてやるから」

そして、大会が1か月後ぐらいに迫ったある日、美香が「ミスをとったあと、A子ちゃんのために個人事務所をやってくれるという人がいるの。絶対あなたのプラスになる人だから会ってみない」と紹介され、音楽関係のプロデューサーを紹介してもらった。

だが、このプロデューサーは、初めて会ったその日にバーに誘い、「ホントにやる気だったら、オレと寝ろ。(ミスコンの)代表になるには2000万~3000万円かかる。そのカネはオレが出すから最低2年はつきあおう。2年でビッグにしてやるから」と迫ったという。

これを聞いて気が動転したA子さんはその場から席を外し、叶姉妹に電話をかけたが、電話に出た美香は「A子ちゃん次第よ。でも、絶対あなたのためになる人だから……」と説得したという。

叶姉妹に憧れ信用しきっていたA子さんは、代表になるためには仕方がないと重い、いやいやながら部屋に行った。

その後もこのプロデューサーはA子さんにたびたび面会を求め、美香からも「会ってほしい」としつこく要請されたが、A子さんは拒絶した。

結局、A子さんは「ミス・アジアパシフィック」で小さな賞をもらったものの、代表にはなれなかった。

◆メディアが叶姉妹を攻め切れない理由──訴訟代理人・弘中惇一郎という脅威

叶姉妹というと、ネガティブな報道に対してはすぐに訴訟を起こすことで知られる。おまけに訴訟代理人は、「無罪請負人」という異名も持つ剛腕の弘中惇一郎弁護士であり、メディアにとっては脅威だ。

『週刊ポスト』側も叶姉妹からの訴訟に備え、連載開始直後から告発者のA子さんを何ヶ月も各地の温泉に連れ出し、匿っていたという。だが、『ポスト』の記事については叶姉妹サイドの反論として「A子さんは叶姉妹のストーカーだった」という記事が女性週刊誌に出たものの、結局、裁判には至らなかった模様だ。

最近、芸能界のセクハラ事件が相次ぐ事態を受け、ある芸能プロダクションがツイッター上で次のように呼びかけ、話題となった。

「現在、事務所の社長やマネージャーにセクハラされたり、体を要求されてる方がいたらご連絡ください!未成年の方は、保護者の方と一緒にご連絡ください!そういう糞事務所を叩き潰しましょう!」

その意気は買いたいが、芸能界の中枢から末端まであちこちではびこる人身売買は、構造的なものであり、直ちに改まるものではない。権力者が恣意的にキャスティングを歪め、オーディションがまともに機能していないという問題にメスを入れない限り、今後も似たような事件が起こり続けるだろう。

※追記=6月6日の本通信の記事で『裁判にはならなかった』と記述したが、この記事を見た関係者のインサイダー情報として『ポスト』と発行元・小学館関係者が刑事告訴されたことが判明、『ポスト』側が家宅捜索や逮捕を恐れ屈服し極秘に和解したという。具体的な和解内容は不明、現在取材中だが、和解後小学館から叶姉妹の写真集が刊行されている。

▼星野陽平(ほしの ようへい)
フリーライター。1976年生まれ、東京都出身。早稻田大学商学部卒業。著書に『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)、編著に『実録!株式市場のカラクリ』(イースト・プレス)などがある。

星野陽平の《脱法芸能》
◎『あまちゃん』能年玲奈さえ干される「悪しき因習」の不条理
◎音事協の違法性──芸能界が「独占禁止法違反」である根拠
◎宮根誠司──バーニングはなぜミヤネ独立を支援したのか?
◎松田聖子──音事協が業界ぐるみで流布させた「性悪女」説
◎爆笑問題──「たけしを育てた」学会員に騙され独立の紆余曲折

芸能界の歪んだ「仕組み」を綿密に解き明かしたタブーなきノンフィクション『芸能人はなぜ干されるのか?』

 

6月3日夜(19時~21時)警視庁東京空港警察署(羽田)で、先月28日に不当逮捕され、現在も同署に勾留されている「火炎瓶テツ」氏への激励行動が行われた。警視庁は都心からわざと通いにくい場所を選定して彼らの勾留を決めたのだろう。だが平日の夜にもかかわらず約70名の人が集まり、次々に激励のメッセージを語ったり、歌で伝えたりした。同様の激励行動は5月30日(日)の日中にも行われていて、その際は100名を超える人が参集したという。激励の場では、警察署内の「火炎瓶テツ」氏から(弁護士経由)のメッセージが読み上げられた。「30日激励行動の声が二度聞こえた」と。

激励行動に参加した複数の人がその模様を中継していた。中継画面を視聴している人数も数百人に上る。「火炎瓶テツ」氏逮捕が如何に注目されているかを示す数字だ。

◆凄まじい拡大解釈による「接見禁止」で被疑者の心を萎えさせる

3日は空港から警察署まで徒歩10分ほどの間に私服制服警官が数人、警察署では20名程の警察官が警備にあたっていた。現在「火炎瓶テツ」氏は「接見禁止」(弁護士以外の面会が許されず外界と完全に遮断される)が付けられている。最近集会やデモで逮捕された人には微罪であっても裁判所はいとも簡単に「接見禁止」を出す。「接見禁止」は証拠隠滅や逃亡の恐れがある被疑者に基本限定されるはずだが、その拡大解釈振りも凄まじい。

逮捕勾留された経験のある人物(西宮市に本社のある出版社社長)によると「接見禁止はきつかった。弁護士も毎日来てくれるわけではないし、こちらから手紙は出せても返事は一切受け取れない。あれが長期間続いたら精神がどうなっていた事やら」とその辛さを語っている。某出版社社長は神戸の不便な場所に勾留され、しかも突然の事件で支援体制も整っていなかったことから外部からの声援などでの応援はなかった。

◆「逮捕されたら絶対に黙秘してください、黙秘が最大の武器です」(山田悦子さん)

だが、別の逮捕経験者によると、警察署あるいは拘置所外部からの激励は、時としてとても大きな力になるという。まだ若かったある活動家はデモの際に逮捕勾留され連日の厳しい取り調べの中で「完黙」(完全黙秘、事件についての聴取で何も語らないこと)を貫こうとしたが、精神的に参ってしまい、不覚にも供述を始めてしまった。その時警察署の壁の外から「××君絶対完黙で頑張れよ!」との声が聞こえ、ふと我に返り再び「完黙」を貫き通せたという。

甲山事件で冤罪被害者にされた山田悦子さんは講演の度に「逮捕されたら絶対に黙秘してください、黙秘が最大の武器です」と語っている。

何を言いがかりに逮捕されるか、少し真面目に政治や社会のことを考えて行動している人には全く油断のならない時代だ。運悪く逮捕されても、余程無茶な起訴をされないかぎり23日で勾留は終わる。その間肝要なのは「完黙」を貫くことだ。取調官は時に甘い言葉で、時に脅しを込めてあれこれ誘導してくるが、とにかく逮捕された件については一切話をしないことが、その後の裁判の行方を左右する。

こんな事、「火炎瓶テツ」は先刻ご承知だろうけれども、今外から彼を支援している人の中にまだご存知ない方がいるかもしれないので念のためお伝えする。

◆6月8日東京地裁で行われる「勾留理由開示」公判の重要性

尚、「火炎瓶テツ」は勾留理由開示公判を要求し、時刻は未定も8日月曜日に東京地裁で公判が開かれる。勾留理由開示公判とは被疑者が「なぜ勾留されなければならないか」を裁判所に問いかけ、明らかにするための特別な法廷だ。不当逮捕や弾圧の際には保釈へ向けた意思表示の一助となるし、「接見禁止」が付けられていても、法廷で傍聴人と顔を合わすことが出来るというメリットもある。勾留理由開示公判は勾留に納得しない被疑者が裁判所をいわば追求する場でもあるので、時に荒れる。

傍聴券が出るほどに傍聴人が参集すれば裁判所に対する大きな圧力になる。東京在住でお時間のある方は関係者に時刻ご確認の上8日は東京地裁へお出かけになると貴重な体験が出来るかもしれない(尚、世間の注目が高まったり、勾留理由開示公判を請求すると、微罪の場合その直前に保釈されるケースも多いので念のため)。


◎[参考動画]2015.05.29「不当逮捕への抗議と…仲間への激励行動」警視庁丸の内警察署前【1/2】

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎火炎瓶テツさんら経産省前「不当逮捕」が示す安倍ファシズム第二段階本格稼働
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
◎〈生きた現実〉の直撃弾──鹿砦社松岡社長が自身の逮捕経験を「告白」講義
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気

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15歳の少年「ノエル」が各所で「ドローン」を駆使した「中継」を行い、それがマスコミで「問題視」され結局逮捕されたのは5月21日であった。迂闊にも彼の活動の詳細について追跡をしてはいなかったので、「ノエル」の活動をここ数日ネット上で確認するまで、その意味と逮捕の不当性についてよく理解できていなかった。

彼は2月頃から全国各所に赴き「配信」を始めている。もっともその前からネット上では様々な議論や発信を行っていたようであるが、「ノエル」の独自性が発揮されるのは何と言っても「自分の顔を映しながら」各所で警察に囲まれるも、それをことごとく「論破」する場面であろう。


◎[参考動画]15歳少年、警察に腕つかまれて連行されそうになるが断固拒否して退散させる

例えば、福島から「配信」された映像では制服警官や補導員が「ちょっと警察所行こうよ」、「これ補導だからね。私補導員だから」と誘導しても「任意なんですか? 任意なんでね。ならお断りします」と至極真っ当な法律の原則に立ち反論する。制服警官は「ノエル」の両腕を掴み強引に(この行為自体「任意同行」を拒否している人間に対しては違法行為だ)引きずり回わし、「名前は何っていうの」、「どこから来たの」と執拗に攻め立てるが「答えません。答える必要がありません」と退ける。補導員と称する女性には「今、補導対象時間外ですよね」と正論をぶつけると「でも、学校に行っていなかったらだめでしょ」と間抜けな応答しかできない。


◎[参考動画]【ノエル】150519 JR有楽町前でドローン撮影をし警察トラブル

有楽町駅前でも同様の光景が展開される。「翼のついていないドローン」を用いて配信を行っていた「ノエル」を何者かが「不審者がいる」と警察に「通報した」と理由を述べ多くの警察官が「ノエル」を囲み「ここは迷惑だから警察署行こうよ」、「危ないから」と誘いをかけるが、「ノエル」はまた「任意ですか?なら応じません」、そして「翼のついていないドローン」を示し「これ飛びませんよね。飛ばないから危険じゃないですよね。何が問題なんですか」と明晰に「配信」視聴者に語り掛ける。正にその通り。翼のない小型ヘリコプター玩具は飛べはしない。プラスチックの固まりに過ぎない。

◆大人と日本の嘘が見えてくる──「個」として思考し、行動する少年ノエル

「ノエル」はまた、自身の行動を歪曲報道したフジテレビにも出かける。そこでニュース番組責任者との面会を求め、応対するフジテレビ社員と応酬を繰り広げる。「ノエル」は以前のニュース番組で自分が歪曲報道されたので、その日放送するニュース番組内容を確認させてくれ、と要求するがそれは出来ないと断られる。すると以前の番組で取り上げられた「ノエル」を模した3Dの画面をパソコン上に示し「これ、僕ってわかりますよね。だから責任者の方と話がしたいんです」と証拠を示し「報道被害の防止が目的」である旨を伝える。フジ社員は「事前に番組内容をお知らせすることは出来ません。放送後ご意見があればご意見を伺う窓口にお伝え下さい」と紋切型で切り抜けようとするが「ノエル」は「放送されると取り返しがつかないんですよ。間違いを放送されて、全国の人に勘違いされた後ではどうしようもないんです。だから番組責任者の方と話がしたいんです」と正論を述べる。フジ社員はごちゃごちゃ言い訳を並べるけれども、どちらに論理的な非があるかは明らかだ。

川崎市で起きた少年殺人事件の容疑者宅前にも出かけている。ここでも「不審者」の通報があったとして警察に囲まれる。警察は「個人のお宅を撮ったら迷惑になるでしょ」と言うも「ノエル」は「僕は僕の顔しか撮っていません」と応じるが、その様子を周りで囲んでいた「マスコミ」が一斉に「ノエル」を撮影し出す。背後から「ノエル」のパソコンのディスプレーを堂々と撮影しているテレビカメラもある。警察は大勢の「マスコミ」取材陣には一切お構いなしだ。煌々と目がくらむような照明を向けテレビカメラやマイクを向ける「大勢」と、パソコンを抱えそれに向かって小言で話している一人とどちらが「迷惑」なのかは常識的な想像力を持った人間であれば理解できよう。

「ノエル」は各地の祭りにも出向き、最終的に浅草の三社祭に「行きます」と言った為に同所で逮捕(ドローンを飛ばしていないにもかかわらず)されたようだ。

「ノエル」を各所で「尋問」していた警察官は「君は誰なの」、「中学生だったら危険があるから保護しないと」、「なんでここにいるの」、「どうやってここに来たの」、「カバンの中には何が入っているの」とクドクドどうでも良いことを聞き出そうとしていたが「ノエル」は冷静に「任意なんですね、なら答えません」と一貫して突っぱねていた。でも、若しこの質問者が警察ではなかったらこれらの行為はどう評価されるだろうか。腕を掴んで引き回す行為は「暴行罪」に明確に該当するだろう。私的な事を付きまといながら、答えることを嫌がっている人に聞き続ける行為は「ストーカー行為」そのものだ。

「ノエル」が15歳であることのみに活路を見出した警察は、しきりに「保護」や「安全」、「君が誰かわからないと心配」などと繰り返しているが、それらが本音ではないことも明らかだ。警察(権力)が懸念したのは「ノエル」の独立した意志に立脚した実に多彩な行動に他ならない。Ustreamやツイットキャスティング、その他様々な方法で個人が各所から映像を配信できる技術が確立された。既にそういった配信方法を利用した「ビジネス」を確立している企業があるし、個人もいる。

だが新配信技術の魅力を知った人の中には、あっという間に「配信内容」よりも「儲け」あるいは「アクセス数」が頭の中で先行し、既存マスコミと何変わらぬ思考に陥る人も少なくない。

「ノエル」の頭の中にも「視聴者を広めたい」という欲求はあったろう。しかしそれ以上に彼の興味、関心領域は無限の如き広がりを見せ、数知れぬアクティブな配信へと自身を突き動かしたのだろう。前回記事「火炎瓶テツさんら経産省前「不当逮捕」が示す安倍ファシズム第二段階本格稼働」の中でも指摘したが内容の如何を問わず、「個」として思考し行動する者を何より国家は危険視しする。その補完機関たる「大手マスコミ」も同様だ。

◆放送という既得権が「個人」に侵食されることを恐れるマスメディア


◎[参考動画]ミヤネ屋のノエル逮捕報道

「ノエル」逮捕について、救いがたく低劣な思考を恥じぬことで有名な宮根誠司は「ミヤネ屋」の中で「こんな事をやっていること自体がもうね、人として良いのか悪いのかって判断がついていないこと自体が、自分が取れない映像をを撮ってそれを沢山の人が見て、更に現金化できるぞって、だったら何をしても良いっていう。15歳にもなってこういう事をしてしまうのが問題ですよね。大問題ですよね」とまくし立てている。

己達の頭が硬直して15歳の発想と取材力に至らないことへの口惜しさを見当違いの個人攻撃に向ける宮根。何が大問題なものか!「ノエル」が「配信」したことよりはるかに悪辣な「プライバシー蹂躙放送」(例えばこの番組自体)を生業にして飯を食っているのがお前たち「腐れマスコミ」ではないのか! その証拠に川崎市での容疑者宅近くでの警察による「ノエル」包囲の際、大マスコミはハイエナのように「ノエル」の姿、パソコンの表示画面までを「ノエル」の許可もなく撮影していたではないか。

マスコミが「ノエル」を批判するのは奴らの儲けの領域が一個人により浸食されかかった事への危機意識と憎悪の現れである。既得権である「ニュース」と言う名の偏向報道の現場を全く視点が異なる「個人」に侵食されることがマスコミには許しがたいのだ。

私はある程度の年齢に達すれば、人間の思考能力に大差はないと考える。自分の中学生時代を思い返しても友人にはその辺りで「お笑い芸人」と呼ばれている連中より余程感性が優れていて、テレビに出せば確実にプロを凌駕する悪友が沢山いた。逆に年齢を重ねようとも成長しない人間は全く成長しない。しかし実質年齢だけは重ねていくので、一様に年配者はそれなりに「賢明」だという勘違いが世間にはあるが、大いなる間違いである。だから私は「ノエル」の行動と年齢の関係をことさら特異な物とは考えない。

「ノエル」は釈放されたら更に行動に磨きがかかるだろう。

◎[参考資料]粉川哲夫の雑日記─[12]「日本の発展」(2015年5月31日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
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5月28日経産省前で3人の市民が逮捕されたという報に接した。「『戦争法案反対国会前集会』を終えた3名が、経済産業省本館の門扉外側のスペースで抗議行動を行っていたところ、警備員の通報を受けた警察官により身柄を拘束されてしまいました」と友人は語っている。経産省の敷地に入った「建造物侵入」が逮捕容疑のようだが、言いがかりであることは明白だ。

◆火炎瓶テツさんと仲間たちの逮捕容疑は明確な意図に基づいた「言論弾圧」

これは明確な意図に基づいた「言論弾圧」である。逮捕された3名の中の1名は、反原発や反戦争など主として経産省前、だが時に応じて文科省前、東電前や米国大使館前などを自在に移動し、「決して逮捕されない」ように細心の配慮を払って活動していた「火炎瓶テツ」さんだ(本名は書かないが事件の性質上彼の「仕事名」は明かした方が良いと考え、顕名とした)。


◎[参考動画]2015.05.28『戦争法案反対国会前集会』終了後?火炎瓶テツと仲間たち【10/10】

私は彼を良く知っている。彼の明晰さと行動力、そして人に訴えかけるアジテーション、即興のラップリズムに乗せた風刺のメッセージ。

東京で抗議行動に参加された方の多くは彼の顔や声を聞いたに違いない。「大丈夫?」と聞くと「何やられても絶対逮捕されませんよ」と昨年語っていた彼は、3・11後大勢が官邸前に集まるのを確認しながら、自分の活動拠点を取り敢えず「経産省前」としたようだ。この点「経産省前テント広場」の方々と着眼点の共通点がある。慧眼だ。

彼のバイタリティーには恐れ入っていた。灼熱の夏の日も、極寒の冬の日も週に最低2、3回は「仲間」とともにどこかで抗議活動を繰り広げている。

そう彼には、彼と共に活動を続ける「仲間」がいる。だから抗議行動の名前は常に「××反対!!火炎瓶テツと仲間たち」となっていた。逮捕された時にも多くの仲間がその現場を確認していたことだろう。

◆下地真樹=阪南大准教授「不当逮捕」と共通する「狙い撃ち」

2012年12月大阪で公安に逮捕された阪南大学経済学部准教授、下地真樹氏(「モジモジ先生」下地真樹さんの声明「警察はウソをついて私を逮捕」)のケースとの共通点も見いだせる。それは彼が単なる「抗議活動参加者」ではなく、優れて自分の言葉で問題の中心部を抉り出し、それを行政なり企業なりに直接ぶつける議論に「ひとりで」対抗できる頭脳と行動力の持ち主と言う点だ。

実は権力にとっては10万人の集会よりも、「個を確立した」10人の方が恐ろしいのかもしれない。党派にも属さず、自分の皮膚感覚と経験、そして学習に依拠して毎度毎度異なるテーマ―で悪政の根本を糾弾する「火炎瓶テツ」は、そろそろ「好きにさせておいてはいけない」と判断されたのだろうか。

彼のニックネームはやや「過激」に聞こえるかもしれないけれども、この時代、心の中に「火炎瓶」を持つぐらいの怒りを持たない方がどうかしている。

◆理性のある人間が戦争に反対し、戦争推進の動きに怒るのは当たり前

国会の中で安倍は一体何を語っているのか? 有事関連法制などというが、その実「どのように戦争を執り行うか」(しかもその前提は極めて根拠が曖昧・希薄である)の技術・解釈論だけであり、呆れるほど結果に対する洞察力を欠いている。戦争が起きたらどんなに非常が待ち受けているかを、真剣に想像している方々がどのくらいいるであろうか。残念ながらそういった懸念なしに過ごすことの出来ない日常が今日の姿だ。政府により戦争への明確な準備が目の前で行われている。

いくら嫌がっても残念ながらそれが現実だ。「人殺し」はいけない。どのような理由があろう避けるべきだ。だが戦争は国家が「お墨付き」を与える「合法的殺戮行為」だ。私的な「人殺し」に反対するのであれば「戦争に反対する」のは明々白々じゃないか。日本の憲法がどうであれ、日本の友好国がどうであれ、もっと言えば自分の親戚や身内が賛成しようとも、理性のある人間は戦争に反対し、それを推し進めようとする動きに怒るのは当たり前ではないか。戦争推進に怒ることなくして、一体何に怒れというのか。

◆「個」を持った「まつろわぬ」人たちがどんどん駆られる島国ファシズム第二段階

国家にとって目障りで邪魔なのは「個」を持った発言者・行動者だ。だから今回の逮捕は「火炎瓶テツ」には気の毒ではあるけれども、とうとう「戦争扇動者」安倍により「こいつは野放しに出来ない」と認められた勲章ともいえる。仮に不当な起訴や重刑が語られれば話は別だが、いくらなんでも大した罪状で罪は問えまい。

私は今日もまた「ついに来たか」と感じた。水際はどんどん迫って来る。影響力はないもののある意味「発言者」である私にとって、「火炎瓶テツ」の逮捕は他人事ではない。彼の主張は私の思想に比べれば余程穏便だったのだから。

これから、どんどん駆られるだろう。「個」を持った人間が、「まつろわぬ」人たちが。この島国のファシズムは第二段階に入った。

◎[参考動画]2015.05.28『戦争法案反対国会前集会』シュプレヒコール【5/10】

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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そろそろ福岡県警をぶったたくタイミングが来たようだ。僕は福岡県警を叩き、工藤會に味方する。なにしろ福岡県警は強引だからだ。

たとえば5月15日、福岡県内にある指定暴力団工藤會系の組員が広島県内で拳銃を不法所持した疑いが強まったとして、警視庁は5月15日、福岡県中間市と北九州市の組事務所を容疑者不詳のまま銃刀法違反(加重所持)の疑いで家宅捜索したようだ。

◆逮捕の理由が強引すぎる福岡県警

組織犯罪対策5課は、捜索容疑として組員が昨年1月ごろ、広島県内で回転式拳銃1丁と実包6発を密売人から購入し所持したとい点をあげている。朝日新聞によると「工藤會のヒットマンをしている組員が幹部の指示・命令で、拳銃と実包を20万円で購入し、ある事件で使った」との情報が昨年8月に寄せられたことなどから捜索したようだ。

だが、中間市の組事務所には午前9時過ぎ、捜査員約30人が入ったものの、いずれの事務所でも押収物はなかった。5月22日には、福岡県北九州市で起きた歯科医師に対する殺人未遂事件で、実行犯に殺害を指示したとして、警察は、全国で唯一の特定危険指定暴力団・工藤會のトップら4人を再逮捕した。(朝日新聞2015年5月22日

再逮捕されたのは、工藤會総裁の野村悟容疑者(68)やナンバー2の田上不美夫容疑者(58)ら4人。野村容疑者ら4人は去年5月、北九州市小倉北区で歯科医師の男性を殺害するよう配下の組幹部らに指示した疑いが持たれているという。男性は刃物で襲われ重傷を負い、実行役とされる工藤會系組幹部ら4人が逮捕・起訴されていた。

「県警察は、県民の願いである工藤會の壊滅に向け、いささかも手を緩めることはありません」(福岡県警 吉田尚正本部長)

そうこうしているうちにこんな判決も出た。

「工藤会理事長代行・木村被告に懲役3年判決」(読売新聞2015年05月27日)

組長を務める暴力団事務所が入居するビルを脅し取ろうとしたとして、恐喝未遂罪などに問われた特定危険指定暴力団工藤会(本部・北九州市)理事長代行の木村博被告(62)の判決が26日、福岡地裁であった。岡部豪裁判長は「暴力団特有の身勝手で反社会的な犯行」と述べ、懲役3年(求刑・懲役4年)を言い渡した。
岡部裁判長は動機を、ビルを組事務所として使用し続けるためと認定。配下の組員らに脅迫させるだけでなく自らも脅していたとして、「極めて執拗で、被害者に強い恐怖感を与えた」と指摘した。判決によると、木村被告は北九州市八幡西区のビル所有者の親族に対し、2009年6月、「事務所を売れ」と脅迫。昨年7、8月には他の組幹部らとともに、親族らを「あんたの嫁や子供たちと話をするわけにはいかんからな」と脅し、ビルを取得しようとした。(読売新聞2015年05月27日

◆「推定無罪」の事件を執拗に掘り起こす裏にある「天下り先作り」

工藤會に対する福岡県警のやり方を見ていると、まずは「暴力団壊滅のモデルケースとするのだ」という福岡県警の意地と、強引さを感じる。たとえば総裁の野村悟が、1998年に同市で起きた漁協の元組合長射殺事件に関与したとして、福岡県警に逮捕された発表した。ナンバー2で会長の田上(たのうえ)不美夫(ふみお)も殺人などの疑いで指名手配された後、逮捕された。

「なぜわざわざ16年前の事件を掘り起こしてまで逮捕したのか。射殺に関して共謀したとされるが、まったく物理的証拠はなく、証言だけだ。こんなものが通ったら、たれ込みがあったら、物理的証拠がなくても誰もが犯人にされちまうぜ」(都内弁護士)

16年前の事件で実行犯らの有罪がすでに確定している。実行犯ですら、総裁や会長たちの関与は語っていない。つまり、98年2月18日に同市小倉北区の路上で起きた脇之浦漁協の元組合長(当時70)射殺事件に関与した疑いがあるというが、限りなく「シロに近い」かもしれないのだ。

今の時点で、この疑惑については「推定無罪」なのだ。にもかからわらず、弁護士によると「身に覚えがない」と否認しているという。暴力団対策センターや反暴力団体などがいくつもでき、警察のOBが講演や勉強会などで飯を食うための措置が何重にもとられているのだ。

「工藤會へのアプローチは警察にとっては、見ばえがいいものかもしれないが、天下りの理由を作っているということも忘れてはいけない」(ヤクザ雑誌ライター)

福岡県警に聞いたところ「平成26年には、16人の暴力団員が『脱組』を希望したが、工藤會かどうか確認していない」という。福岡の暴対センターも声高に「組からの離脱者を増やす」といっているくせに、「昨年の16人が離脱の希望者のうち、工藤會が何人いるかは掌握していない」という。おいおい、ふざけるのもいいかげんにしたらどうだ。じゃあ、警察と連携している暴対センターはどうだろう。

県警も、暴対センターも、工藤會の殲滅をさんざんアピールしておきながら「離脱者のうち、何人が工藤會かわからない」とは、いったいどういう了見だろうか。ふざけるにも限度というものがある。

ゆえに、工藤會を締め付けて「派手にヤクザを締め付けたという印象を全国にアピールしたい」という邪な感覚が署長にはあったといえまいか。

◆工藤會がいまも有する「昔ながらの川筋気質」

工藤會は、昔ながらの川筋気質で「工藤會を取材しましたが、駅についた時点から、客に鞄を持たせない。何台かで組事務所まで送っていただきましたが、きちんと車がスムーズに通るようなフォーメーションもできています。昔ながらの川筋気質で、極道の中でも本格派ですよ。そうした気質があるからこそ、意地でも警察には負けられないのでしょう」(影野臣直・作家)

工藤會の幹事長代行の木村博も、「事務所がはいっているビルを工藤會にただでくれ」と脅したとして逮捕されている。これも否定しているという。要するに、いずれの案件もすべて「推定無罪」なのだ。なのに、工藤會は危険だ、というイメージを植え付けているのが警察連中だ。これは、権力による「蠕動」だといっても言い過ぎではない。

◆「われわれはマグロなどの回遊魚と一緒」(木村工藤會幹事長)

2012年11月末、年末のあわただしい中で鹿砦社の書籍『「改定」暴対法―変貌するヤクザと警察』(田口宏睦著 岡田基志監修)の取材に応じてくれた木村幹事長(当時・現在は理事長代行)は、気さくにさまざまなことを話してくれた。
「われわれはマグロなどの回遊魚と一緒。動いていないとおぼれて死んでしまう」と語っていた。つまり、警察の締め付けがいくらきついからといって、音をあげていては、ヤクザとしての矜持に関わるというのだ。

「そりゃ、警察がいくら締め付けても、金儲けの知恵を考えて、すり抜けるのがヤクザ。どんなに締め付けても音をあげないと思いますよ」(前出・影野臣直)
僕が警察に対する怒りを感じるのは、福岡県に福岡県警が差し込み、「有害図書」としてコンビニエンス協会から僕と宮崎学で作ったヤクザが主人公の漫画本を撤去させたからだ。宮崎学は怒り心頭となり、福岡県相手に訴訟を起こした。当然のことだ。宮崎学ブログ(http://miyazakimanabu.com/2010/04/01/691/)

僕は作家を守り、出版社は見放した。たったそれだけのことだが、僕は宮崎の側に立ち、裁判に協力した。2014年7月に、この訴訟は宮崎側の負けとなるが、実にこの訴訟は勉強になった。

なにゆえに、福岡県警は、工藤會相手に「おとなげない」ほどにむきになるのだろうか。

人権派弁護士は匿名を条件に「ヤクザへの締め付けがなぜこんなに厳しくなったのか」について語る。

「警察が対ヤクザのNPOや社団法人に天下りしたり、企業に『対暴力団コンサルタント』的に雇ってもらったりするためでしょう」

僕から見て「茶番」に見える警察の工藤會殲滅作戦は、いつまで続くのだろうか。税金をもっと有効的に使っていただきたいものである。

(小林俊之)

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◎見直すべきは選挙制度であって、憲法ではない──横浜「5.3憲法集会」報告
◎731部隊の「ガチンコ人体実験」跡をユネスコが「世界文化遺産」と認める日

『「改定」暴対法―変貌するヤクザと警察』(2013年2月鹿砦社)

 

 

関西大学で共通教養科目の中のチャレンジ科目として開講されている『人間の尊厳のために』の非常勤講師、鹿砦社松岡利康社長の2回目の講義が5月29日行われた。先に本コラムでご紹介した通り、講義1回目は松岡社長(鹿砦社)の社会的活動紹介に中心を据えた内容で、とりわけ高校の同級生であった東濱弘憲さんが熊本で始めた「琉球の風」について詳しく紹介された。

前回の講義では「はじめに─〈人〉と〈社会〉との関わりの中で、〈死んだ教条〉ではなく〈生きた現実〉を語れ!」と題したレジュメが配布されたが、言及された「現実」とは音楽活動(琉球の風)や文化・教養活動(西宮ゼミ)が中心であり、出版社として「人」や「社会」と関わってゆく姿勢の、いわば「前向きな活動」紹介だったと言える。

◆10年前の逮捕経験を静かに語り始めると、空気が変わった

29日の講義でも冒頭は10数分「Paix2(ぺぺ)」の活動を紹介するテレビ番組が上映され、参加学生は「このまま講義は進んでいくのだろう」と感じていたのではないか。

しかし、注意深い学生たちは既に気が付いていたはずだ。この日配布されたレジュメやコピーは先週のそれとは全く内容が異なることに。

「次に、たぶん私がこの教壇に立つことになった経験について語らせて頂きます」と切り出すと、松岡社長は配布資料中朝日新聞朝刊1面に掲載された、自身の逮捕を予告する記事を指し、2005年7月12日に起こった神戸地検特別刑事部による自宅包囲、事務所への連行から、自宅、事務所のガサ入れについて、それまで「琉球の風」や「Paix2(ぺぺ)」を語っていた口調と全くトーンを変えずに語り出した。

配布資料は朝日新聞1面だけでなく、逮捕に批判的な識者談話や有罪判決時の新聞記事、週刊金曜日に何度も掲載された山口正紀氏のメディア批判、さらには裁判の支援呼びかけ人に名を連ねた人々談話などA4両面印刷で4枚、8ページに及ぶ。松岡社長が自身の経験談を語り始める前から熱心にこの資料をめくる学生の姿も散見された。

そして「逮捕されると、全身裸にされて、こんな格好で(実際に命じられた姿勢を体現して)体を調べられるんです。女性も同様だそうです。『裁判所は人権の砦』などと言われますが、有罪も決まっていない逮捕段階で全身裸にされる。これは『被疑者を委縮させる』ためのやり口であり『人間の尊厳』も『人権』もあったものではありません。そして私の場合は『接見禁止』が付きました。弁護士を除く外部の人間と一切の連絡を絶たれたわけです。これは非常に精神的に堪えました。半年余りの拘禁生活で鬱に近い状態になりました。あの状態がもっと続いていればさらに厳しい精神状態になったでしょう」

目の前で講義している人物が、10年前に名誉棄損で逮捕拘留、接見禁止までを食らった人物であることを全学生が認知した瞬間だった。140名ほどが受講する講義だから数名寝ている学生はいるが、私語は一切ない。教室の空気も松岡社長が意識して作り出したわけではないだろうが、それまでとは一変し、緊張が支配する。

◆「輝き」と正反対の「闇」を語ること

さらに、保釈後直ぐに行われたサンテレビによるインタビュー映像が流される。穏やかな表情で、レジュメを目で追いながら、どちらかと言えば小声で話をしている講師はインタビューの冒頭「今のお気持ちを」と問われると「何が何だかわかりませんよ!」と憤然と答えている。インタビュアーに怒っているのではないことは容易に見て取れる。裁判を「自分だけのものではなく闘っていく」との宣言もある。

自身の経験を語るにあたり松岡社長は何度も「生き恥を晒すようですが」と繰り返した。そんなことないじゃないか、司法の暴走被害者が「恥じ入る」必要なんてない、と私は感じたが、彼が語り掛けているのは目前「学生達」だ。主として1年生が受講していることへの配慮もあってか、逮捕拘留から有罪への「生き恥」(松岡流)披露であったが、本来であれば語りたかった(語られるべき)であろう事件の背景や周囲で暗躍した人間たちへの批判は皆無だった。

2回の講義で松岡社長が伝達しようとしたことは「生きた現実」に尽きよう。その「輝き」と、正反対の「闇」。人生論と換言も可能な彼自身の豊穣かつ激烈な経験だったように思う。

◆学生の中で「何か」が確実に動いた

「ちょっと踏み込んだことをすると私のように逮捕されるのがこの世界です。そういう覚悟のない人は踏み込むべきではないし、踏み込むからにはその覚悟を持ってほしい」

口調は相変わらず穏やかである。あくまでも穏やか。それだけにこれほど「ドスの効いた」言葉はない。文字通り「生きた」直撃弾だ。松岡社長が講義中、展開した持論の1つは「安全地帯から何もせずに『表現の自由』だの『言論・出版の自由』というのは簡単で耳触りもいいけども、身を持って実践していくのは並大抵のことではありません」である。

正しく聞こえても実践を伴わない美辞麗句は「空論」に過ぎない。「そんなものは何の価値も迫力もないよ」と彼は繰り返し言外に語っていたように思う。

講義終盤、彼の話は穏やかながら熱を帯びる。静かな熱。あくまで穏やかな語り口。そして「それではこれで私の講義を終わりにしたいと思います」と語ると、教室中から拍手が起こった。

学生の中で何かが確実に動いた瞬間だった。

◎[参考資料]松岡利康=鹿砦社社長によるフェイスブックでの講義報告(2015年5月30日)
https://www.facebook.com/toshiyasu.matsuoka.7/posts/876422795751113

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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