最近は回数が減ってきてはいるものの、今でも街に出てヘイトスピーチを繰り返し行なう人々がいる。
しかし、それ以上にヘイトスピーチに反対する人々もいて、今ではレイシスト(差別主義者)達はヘイトをする度に各地のカウンターに叱られまくっているのだ。
5月30日(土)は東京と福島、31日(日)は東京・愛知・大阪、2日間5ヶ所でヘイトスピーチ・デモ/街宣が行われた。
今回は私が撮影に行った福島駅前と愛知県名古屋市のカウンター映像を紹介しようと思う。
[動画]2015.5.30福島ヘイト街宣へのカウンター(6分47秒)
この街宣は、『在日特権を許さない市民の会(在特会)』の桜井誠・前会長が4月25日に福島県郡山市で主催した
ヘイトスピーチ街宣に共産党員が反対の声を上げに来ていた事にかこつけた、共産党批判を目的とした街宣であった。
…のはずだったのだが、実際には共産党とは全く関係のない人種差別や妄想を連発するばかりであった。
そんなレイシストは9名(+子供2名)、反対の声をあげるカウンターは7名。
レイシストの差別発言を物理的に打ち消す為、あるいはデマ発言を訂正する為、カウンターの人々は大声を張り上げる。
この映像はそういった直接的なカウンター行動しか捉えていないのだが、福島駅前で差別街宣が始まる前に、これからヘイトスピーチが行われる事への注意喚起と、ヘイトスピーチに関する理解を深めてもらうための事前周知行動のチラシ配りもちゃんと行っている。
さらに言えば、午前中から機動隊を使い、在特会の差別街宣の「場所取り」を行っていた福島県警察に対しての抗議も行っている。
私たちは自分にできる事をできる範囲で行うといった、差別主義者たちに対してのあらゆるカウンターをどんどんしてやるべきなのだ。
[2015年5月30日(土)・福島県]
[動画]2015.5.31名古屋ヘイトデモへのカウンター(12分24秒)
ここではかなり激しいアクションが行なわれているが、名古屋で毎回こういう反対行動が行なわれているかと言えば決してそうではなく、むしろこれまでは非常に小規模なカウンターしか行われてこなかった。
今回は桜井誠・在特会前会長がわざわざ名古屋にヘイトスピーチをしに来たので、東京からも大阪からもカウンターが集まり、過去最大のアクションになった。
今まで様々な方法でカウンターはレイシストの差別を止めさせようとしてきたが、今回のこの映像には桜井誠・在特会前会長に文句を言いにきた右翼の街宣車が登場している。
カウンターも新たなフェーズに突入したという考え方もできると思うが、以下、右翼街宣車のスピーチ部分の文字おこしを読んでもらいたい。
『デモ隊のみなさん、大変暑い中での保守行動、ご苦労様でございます。
私どもは、中部地方を中心に民族活動を展開しております○○○○○有志一同です。担当は○○でございます。
今日はみなさんの保守行動を展開するにあたりまして、一つ、二つ、お願いごとをしにやってまいりました。
普段ですね、テレビや新聞などで見かけるヘイトスピーチなる差別的な行動は今日は絶対にやめて頂きたい。
私どもも日章旗そして旭日旗を掲げ、日々民族運動を展開しておりますので、みなさんの意向は分かりますが、一部の人間を差別するような言動は同じ日本人として、もちろんそれは、人間として見苦しい行動であると考えております。
今日のように不特定多数のみなさんがいる、このような環境では啓蒙活動だと信じておりますが、みなさんの行なっている行動が抗議行動であるというのであれば、是非、名古屋市内にあります、領事館、また役所などに出向いて頂きまして、抗議行動を展開してください。
このような場所で、死ねだ、バカだ、そのような見苦しい言動をされますと、同じ日本人として私は本当に恥ずかしいので絶対にやめてください。
デモ隊のみなさん、暑い中で、わざわざ恥をさらす必要はございません。
もう少しですね、良識のある日本人として恥ずかしくない行動をとって頂きたい。
日の丸を掲げて、旭日旗を掲げて、恥ずかしい思いは絶対にしないでください』
右翼といえば皆、自分たちの仲間だと思っていたヘイトデモ参加者も多かったはずで、まさか自分たちのデモが右翼の街宣車に追いかけ回されて注意を受けるとは思ってもみなかったはずだ。
差別主義者は右翼からも見放され、もう完全に孤立してしまった。
ただし、上の書きおこしを読めば分かるように、この右翼街宣車の中の人は決して本来の意味での「カウンター」をしに来ているわけではなく、自分達の「保守」活動の足を引っ張る、いわば調子に乗りすぎている「桜井誠」や「在特会」に(優しく)「お仕置き」しているだけなのだ。
実際、彼らは「差別はやめろ」と同時に、在特会のデモではおなじみの「日韓断交」や「中共が嫌い」との言葉も発している。
また、カウンターに対しては攻撃的な態度をとっており、ヘイトデモを「保守行動」と表現しているところから、一応は在特会を「保守」仲間として捉えてはいるようだ。
「カウンター」と呼ばれる人々は、要は「差別を許さない市民」のことで、共通する何らかの思想があるわけではない。
中には右寄りだったり左寄りだったりする人はいるが、ヘイトスピーチをなくす為に大体同じ方向を向いているだけの大雑把に分類された人々のことを言う。そういう意味では、今回のこの右翼の街宣車も、大枠ではある種の「カウンター」であったと言えよう。
やはりレイシストの居場所は日本にはないのだ。
[2015年5月31日(日)・愛知県]
▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。