「誰かがMERSにかかったら皆に感染するかもしれないので、週末は街に出ないでください」

6月5日、韓国の地方都市にある大学の留学生宿舎で、こんな通達が出た。この2、3日前より韓国内では「MERS」(中東呼吸器症候群)の流行が懸念されるようになり、「ラクダと密接な接触は避ける」(韓国内の一体、どこにいるのか)「せっけんと水でよく手を洗う」「滅菌してないラクダの乳や、生肉を摂取するのは避けて」(韓国内の一体、どこで売っているのか)などと書いてあるお知らせが、公共の場所に貼り出されるようになった。

この街ではまだMERS患者が出ていないため、ウィルスを持ち込ませないようにするための措置だと、学校関係者は語った。通達が出た直後、アメリカやカザフスタン、ウクライナなどからの留学生たちは、一斉にマスクをし始めた。この地方都市でも、繁華街にあるセブン・イレブンやダイソーの店頭からは、既にマスクは消えていた。

翌6日の土曜日、ソウル市のカンナム地区にあるバスターミナルは、休日の午前中にも関わらず閑散としていた。マスクをして歩いている人が、時折姿を見せる。女性や高齢者の割合が高かったものの、男性もいないわけではない。バスターミナルがある駅から、14番目の患者となった男性が入院するサムソン・カンナム病院までは地下鉄でわずか6駅。この病院には6月8日現在、34人もの感染者が入院しているという。

マスク姿の女性が目立つ、高速バスターミナル

「こんなに人がいない清潭洞は、見たことがありません」
“シモンズ”など高級家具のブランドショップやカフェなどが並ぶ、ハイソな街の清潭洞界隈も、正月の丸の内並みに閑散としていた。ウォン高円安による不景気で、買い物に来る人が激減したのもその理由だろうか?

「いや、全部MERSの影響ですよ。本当に今日は街に人がいない」
そう語ったのは、清潭洞でハンバーガーカフェを経営する男性だ。ちなみに彼は、かつて日本語を学んでいたことがあり、「もうほとんど忘れてしまいましたよ~」と言いながらも、なかなか流暢な日本語を話してくれた。

ガラガラすぎる、日曜日午後の清潭洞

「政府が情報をきちんと発表しないのが、全部悪いんですよ!」
ソウル近郊に住む40代の女性は、マスクをしたまま怒りをあらわにした。彼女によるとサムソン・ソウル病院にはサムソンの李健煕会長が心臓の病気で、昨年から長期入院している。感染者がいる病院の情報が週末まで公開されなかったのは、サムソンと会長の名誉を守るためではないかと疑っているそうだ。

「国民がこんなに大変な時なのに朴槿恵大統領は、14日から18日まで訪米するんですよ。彼女は何が起きても側近任せで「私は知らない、わからない」と言うばかり。あと2年半も、この政権が続くなんて……」

弘大でばらまかれていた謎のチラシ。「MERSよりも大統領が怖い。責任を取らない政府、国民たちは自分の力で生き残らなければならない現実。これが国家か?!」と書いてある

韓国政府によると、6月11日現在の感染者は122人で、死者は10人。前述の大学ではこの日頃から留学生たちのマスクは、N95対応のものまで見られるようになった。

▼サ・ウナ
韓国の地方都市にある某大学に留学中の女子大生。世界中から来ている学生たちによる、ミックス言語で繰り広げられている「かわいい~」「○○さんかっこいい~」「○○が××のことを好きだって言ってたよ~」などの会話に、日夜イライラしながら学業に勤しむ25歳。

◎〈生きた現実〉の直撃弾──鹿砦社松岡社長が自身の逮捕経験を「告白」講義
◎第3回「前田日明ゼミin西宮」──田原総一朗氏を迎えて聴衆120人の大盛況!
◎《ウィークリー理央眼002》福島/名古屋ヘイトデモ反対行動
◎《6.8公判傍聴報告》やっぱり不当逮捕だった!火炎瓶テツさんら3人全員釈放!

タブーなきスキャンダルマガジン!月刊『紙の爆弾』は毎月7日発売です。

世代と地域を繋げる脱原発情報マガジン『NO NUKES voice』Vol.4好評発売中!