7月19日(日)、福岡県福岡市中央区で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。天神駅前の警固公園を出発し、駅周辺を一周するコースで歩道上を行進するデモの為だったからなのか、警備の警察官の姿はなかった。
言われて後から気付いたのだが、赤い物を身に付けて参加して欲しいという呼びかけがあったようで、確かに赤が多い気がする。


[動画]若者憲法デモ@福岡 – 2015.7.19 福岡市(5分2秒)

こんな大雨の中、デモの撮影をしたのはもしかしたら初めてかもしれない。雨が強過ぎて撮影できなかった部分もあり、映像でどこまで雨の激しさが伝わったか分からないが、傘をさしていてもびしょ濡れになるレベルの雨であった。

何を隠そう。私は晴れ男(…と思っているの)で、雨に降られることはそんなに多くない(…と思っている)。
論より証拠だ。それを証明する為、過去1年間のデモ撮影時に雨に降られた確率を出してみると、「14%」という低そうな数値が出てきた。
年間降雨日数の全国平均は大体120日くらいなので、日本の年間降雨確率は大雑把であるが「33%」になる。果たして、この数値と比較して良いのか疑問が残るが、秋山理央の降水確率は平均値とかなりの差をつけて良好であることが分かった。
データを調べるのに時間が掛かったわりに、「自称 晴れ男」というちょっと頭悪そうな称号が得られただけだったのは、反省したほうが良いかもしれない…。
実際にあまり雨に降られないという感覚もあるが、天気が悪そうなら行き先を変更するという選択もしているので、数値が低かったのはそれもあったのかもしれない。


これほど凄い雨の場合は基本的には中止になるのだが、デモが出発した時点で雨は降っておらず開始20分後に降り出した。それから30分ほど土砂降りの雨が降り続いた。デモは1時間くらいだったので、大体半分くらい雨に降られていた事になる。最後尾がゴールする少し前に雨は上がり、中止になることなく行進は完遂された。デモ隊の人々はよく耐えたものだと思う。

社会運動において、「気合い」や「根性」という言葉は必須であるというようなイメージがあるかもしれないが、必須なんてことはない。むしろ、「日常」とか「持続可能」みたいな言葉の方が必須であるし、今の実態を良く言い表しているような気がする。
一部のコアな人々が「気合い」や「根性」で行なうのではなく、「日常」に即した「持続可能」で無理をなるべくしないようにして多くの人で行なった方が楽だし、効果が高いはずだ。
しかしながら、無理をしなくちゃいけない局面はあるし、押さえきれない想いが無理をさせてしまう時もある。ただ、その無理をしてでも行動をするべき時期は後になってみないと分からないので、今を生きる我々にとって非常に難しいところだ。

私はどうしても今回の安保法案に反対する各地のデモと、2012年の大飯原発再稼働に反対するデモが全国に広がった時のことを重ねてしまう。当時感じた勢いや力強さを、今回の雨の中のデモや各地のデモでも感じているからだ。
今のデモは当時に比べ参加者の幅が広く、若者が主催しているデモが全国各地で起きていることが最大の特徴である。ここのところ撮影に「若者デモ」だけを選ぶことができているくらいに全国的にデモの回数も多く、気付けば「戦争法案に反対する若者たち」シリーズも8回目である。

間もなく九州北部も梅雨明けし、安倍政権に反対する暑い夏がくる。



[2015年7月19日(日)・福岡県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《012》戦争法案に反対する若者たち VOL.7 甲府
◎《011》戦争法案に反対する若者たち VOL.6 国会前
◎《010》戦争法案に反対する若者たち VOL.5 鳥取
◎《009》戦争法案に反対する若者たち VOL.4 新潟
◎《008》札幌攻防戦!ヘイトスピーチを撮影せよ!
◎《007》戦争法案に反対する若者たち VOL.3 渋谷
◎《006》戦争法案に反対する若者たち VOL.2 札幌
◎《005》戦争法案に反対する若者たち VOL.1 京都

世代、地域を超えて「新たな脱原発情報ネットワーク」の構築を試みる『NO NUKES voice』

J-castニュースによると福岡教育大学の准教授が7月21日の講義中に「戦争法案絶対反対」「安倍やめろ」などのシュプレヒコールの「練習」をさせたとして大学は准教授の授業を停止したそうだ。(2015年7月27日付J-castニュース

これに関して同大学は7月23日、下記の声明をHPに掲載した

福岡教育大学「授業内容のインターネット掲載に関わる事案について」(2015年7月23日)

◆1日15件の問い合わせは「炎上」なのか?

21日の講義からわずか2日で准教授の「授業停止」を決定したのだというから「電光石火」の対応だ。学生からネット上に投稿されたものは複数ある模様だが、その中にはこの准教授の講義を否定的にとらえていないものも含まれる。大学によると「一時炎上と言われる状態に陥った」とコメントがあるが、「炎上」などという軽々しい言葉を大学が使うことに私は違和感を覚える。いったい「炎上」と言うほど大騒ぎになったのはどこのサイトなのだろうか。学生個人のTwitterじゃないのか。投稿したのは学生だとJ-castニュースには書かれているが、個人のTwitter書き込みに反論が相次ぐことは別段珍しいことではない。さらに「7月22日には問い合わせや苦情、対応を求める電話やメールが15件ほど大学側に寄せられた」そうだが1日にメールや電話で15件の問い合わせは大騒ぎするような数ではない。

大学職員時代に、やや刺激的な企画やイベントを新聞などで告知すると案内した電話番号に電話が集中し、仕事が出来なくなる経験を何度かしたが、そんな状態に比べれば「メールを含めて」1日に15件など特段取り上げるほどの数ではない。

◆国公立大学は教育機関でも研究機関でもなく「従順な国民の養成機関」なのか?

そこで福岡教育大学の田中正幸事務局長に電話で事情を伺った。田中氏の話によると「問題の講義は『人権同和教育論』という講義でその受講生がTwitterに投稿した。その事実が判明したので授業担当者の准教授に事実確認を行ったところ『否定』はしなかった。本人が『否定』していないのでTwitterに投稿された事実は存在したと考えており、現在その詳細を調査中だ。授業担当者の外したのは『処分』とは考えない。教員がどんな考えを持とうが自由だが、講義の中で特定の考えを語るのは逸脱の可能性がある。それを語る必要があったのか、無かったのかも含めて調査している」との回答であった。

私は「『人権同和論』の講義ならば最大の人権蹂躙である戦争に対して反対を述べるのは全く自然なことではないか。安保法制に反対するのは『特定の考え』ではない。人権を教える講義の中でごく自然なことではないか」と質問した。

田中氏は「安保法制の事など大学は全然問題にしていない。あくまでも講義内容として適切であったかどうかだけだ」と回答されたが「では、不適切な可能性が疑われる内容は何だ」との問いに「それは学生が投稿した通り『戦争法案絶対反対』とか『安倍を倒せ』というものだ」と結局問題にされているのは「特定の考え」=「安保法制反対」であることを認めた。

田中氏には忙しい中30分ほど時間を割いて丁寧に対応頂けたが、残念ながら福岡教育大学の判断は完全な過ちだ。過ちどころではない。罪でさえある。

国公立大学の教員は公務員だから「国に楯突く研究や言動をするな」というなら、大学は教育機関でも研究機関でもなく、単なる「従順な国民の養成機関」だ。

◆安倍政権の「反動攻撃」にビクついてばかりの国公立大学の経営陣

福岡教育大学は「大学教員が行った教育活動の適正さについて関係法令や本学規則に照らした事実調査等を早急に実施し厳正に対処してまいります」なんていきり立つな。どれだけの凶悪犯罪や知能犯罪を犯したかと誤解するけども、要するに准教授は「戦争推進法案」に危機感を持っていてそれを講義中に語り、きょうび政府に反対することの方法や表現すら知らない学生に範を示しただけの事ではないか。

普通の教育者としては「当たり前」の行為じゃないのか! 戦争に反対するのは。

国公立大学の経営陣は安倍政権発足後矢継ぎ早に飛んできた「反動攻撃」にびくついている。これは福岡教育大学に限った事ではない。教授会権限を奪い学長権限を拡大する「独裁運営」を認める法改正が行われ、ついには「文科系教員養成系学部の廃止・統合」などという実質的な「大学破壊」を文科省は迫っている。もう文部科学省は「教育弾圧省」と実態に合わせて改称すべきだ。

◆大学が異常なほど迅速に対応した背景の本質──戦争推進勢力に抗うことが「非行」扱いされる時代

大学が僅か2日でこのような決定を発表するのは「異常」だ。国立大学の意思決定は通常このように敏捷ではない。「役所的」な手続きがあるから普通の概念より「ゆっくり」しているのが常態だ。その「常態」を「異常」にせしめたのは僅か15通のメールや電話だけであろうか。

違う。殺人事件が学内で発生した並の「緊急対応」を大学当局に取らせたのは、私が想像するに「時代の脅迫」だ。元朝日新聞植村記者の非常勤講師契約について様々な脅迫を受けた北星学園大学のような状態に陥ることへの恐怖感が大学執行部をつき動かしたのではないか。あるいは匿名の卑怯な脅迫や恫喝ではなく「教育弾圧省」からの「お叱り」を慮った側面もあろう。

実際田中氏によると22日時点では問い合わせやメールや電話は15本程度だったが28日に産経新聞(!)が記事化しネットでも配信してから苦情や問い合わせが急増しているという。

憲法違反の「戦争推進法制」に反対することへの「自己規制」いや「内部粛清」が顕在化したのが福岡教育大学事件とみるべきだ。便利なようで「凶器」にもなる「ネット」が力を持つ現代、匿名性の脅迫は当事者を思いの外委縮させる効果を持つ。

武器を持たされる「戦争」の前に「言葉を封じられる」言論弾圧はこのように急速に進行している。既に時代は戦争推進勢力に抗うことが「非行」扱いされる段階に入っている。

真逆に同志社大学では学長が国会の特別委員会中央公聴会で「戦争推進法案」に賛成意見を述べても同志社大学の理事会は「個人の意見には介入しない」との理由で村田晃嗣学長の責任を一切問題にしていない。学内外で有志教職員・学生が反対の声を挙げるのみだ。図々しくも村田は27日も「良心学」という名の講義を行ったそうだ。そんな資格がこの男にあるのか。

戦争法案反対を講義で語れば担当を外されるが、国会で戦争法案賛成を明言しても「良心学」を語らせる。この底抜けに救いがたい倒錯。ファシズムの加速がはっきり目に見える。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎今こそ同志社を<反戦の砦>に! 教職員有志「安保法制を考える緊急集会」開催
◎同志社の「良心」は「安保法案」賛成の村田晃嗣学長を許すのか?
◎安保法案強行採決!「大きな嘘」で日本政治をレイプしまくる安倍話法の本心
◎なぜ安倍政権には「正論」が通じないのか?──加速度を増す日本の転落

『慨世(がいせい)の遠吠え  強い国になりたい症候群 内田 樹 鈴木邦男 対論』

7月18日(土)、山梨県甲府市で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。
コーラーを務める大学生が乗ったサウンドカーを先頭に老若男女150名が、甲府駅北口「よっちゃばれ広場」を出発し、JR中央本線・身延線に架かる跨線橋を渡り、甲府城跡前・甲府駅南口を通り、山梨県庁前で解散という約1時間のコースを行進した。


[動画]戦争いやじゃん 若者怒りのデモYamanashi – 2015.7.18 山梨県甲府市(7分58秒)

この映像を観て、警察官の姿が全く写っていないことに気付いただろうか。もちろん、写さないように撮影したわけではなく、編集で消したわけでもない。単に警察がデモの警備に来ていなかったのだ。
通常、デモの際はその地区を管轄している警察署の警備課や交通課のお巡りさんが警備にやって来て、交通整理やデモ隊の安全確保をする。申請をして許可されたデモの警備は警察の仕事ではあるのだが、場所や人数によっては来てくれないこともある。

これまで取材で全国約460回のデモ行進を見てきたのだが、警察の警備がない状態で行われていたのは「12県15ヶ所」だった。しかもこのほとんどが、車が走っていない歩道を通行する「歩道デモ」だった。
車道を通行する「車道デモ」に警察が来ない例は少なく、宮崎県宮崎市・宮崎北警察署の管轄と山梨県甲府市・甲府警察署の管轄の2ヶ所だけだった。今回のように、デモ隊に車両がある状態で警察ゼロというのは特にレアケースである。

警備の警察官がいないと自分達だけで車の走る車道を歩かなければならず、それなりの警備スタッフも必要だし、交通量の多い車道では恐怖を感じることもある。普段は警察なんてデモの邪魔だと思っていても、デモに警察官が来てくれなかったり、極端に人数が少なくて危なかったりすると、「もっといて欲しい」という気持ちになる。
実際、彼らはプロなので車の整理には慣れていて手際が良い。時には信号操作を行い車道の混乱を最小限に抑えながらデモ隊を進ませてくれる。地域によってドライバーの性質も違うので、信号を操作して一気にデモ隊を通す所もあれば、信号でデモ隊を停める所もある。ついでに言えば、信号で分断されたデモ隊を待って合流させる所もあれば、構わず進めてしまう所もある。このように警察のデモ警備は地域によって全然違うので、普段と違う場所のデモに参加した時は面白いので観察してみて欲しい。


上の写真はサウンドカーとして使っていたトラックの荷台を写したものだ。南国っぽいフラワーリースばかりに目が行ってしまうのだが、ここではそれが飾っている本体に注目して頂きたい。デモで良く見かける大きめの拡声器を4台並べて置いていて、そのうち2台からワイヤレスマイクの音を出し、残りの2台から音楽を流していた。音質はスピーカーには劣るものの、大きな音が出ていたし必要充分な装置であると思った。
非常に簡素なサウンドシステムなので、スピーカーやアンプが不要なので発電機もいらなくて非常に手軽だ。荷台の上は機材らしきものがほとんど見当たらず、誰かの部屋から持ってきたような黒いカラーボックスが水を入れた重しに支えられて置いてあるだけだ。もちろん、これは車が動いている時につかまる為だけにあるわけではなく、棚の上段には音楽を出力しているiPhoneが置かれている、いわばサウンドシステムの心臓とも言える部分なのだ。

そんな手作りで実戦向きのサウンドカーに若者たちは交代で乗り込み、思い思いのスピーチを行なった。

「安倍さん、あなたの仕事はなんでしょうか。
安倍さんの思いを国民に押し付けることではないのです。
国民の思いを聞くことが安倍さんの仕事です。
正直、ちょっとこういうところは慣れていないんですけれど、
自分が何もせずに、『いつかそうなるだろうな』って思ってたっていうのはずるい言い訳だと思ったので、
今日参加させて頂きました」

「この国の主権者は僕たちです。
僕たちが政治を動かすし、僕たちが政治家を動かすんです。
今回、安保法制、衆議院本会議でこないだ可決されましたけど、絶対止めたいと思います。
でも、絶対止められなくても、これ止められなくても、
いやこれ自衛隊海外に出そうとしたらふざけんじゃねえと、
絶対海外に出そうとしたら投票してやんねえぞ、絶対引きずり下ろすぞ、
と圧力をかければいいんです、僕たちが。
僕たちが政治家を動かすんです」

何もできず、見ていることしかできないなんて決して言わない。絶望以外の未来を信じるだけでなく、実際に山梨から国会前で行なわれている抗議にも参加し、こうやって地元でも声を上げている若者がいる。
いや、「自分がやる」と決めた若者たちがここ山梨にもいた。



[2015年7月18日(土)・山梨県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《011》戦争法案に反対する若者たち VOL.6 国会前
◎《010》戦争法案に反対する若者たち VOL.5 鳥取
◎《009》戦争法案に反対する若者たち VOL.4 新潟
◎《008》札幌攻防戦!ヘイトスピーチを撮影せよ!
◎《007》戦争法案に反対する若者たち VOL.3 渋谷
◎《006》戦争法案に反対する若者たち VOL.2 札幌
◎《005》戦争法案に反対する若者たち VOL.1 京都

世代、地域を超えて「新たな脱原発情報ネットワーク」の構築を試みる『NO NUKES voice』

ウナです。日本から持ってきたノートが終わってしまったので、学校近くのカワイイ雑貨が置いてあるショップに行きました。パンダの絵柄がナイスなノートがあったので、ぱっと見て購入すると……。韓国語で「独島は我が領土」と書いてあるじゃないですか! しかも英語で「It’s not over」と書きつつ、裏面はこれまた韓国語で、「アタマにきちゃダメ」とあります……。どんなコンセプトで作られたのでしょう? よくわからないので次の週末、また店に行くことにしましたが、もう売り切れていました。もしかしたらラス1を買ったのかもしれませんが……。なのでスタッフに「独島は我が領土グッズ、他にもある?」と聞きましたが、もう見当たりませんでした。

そしてこの数日後、学校のラウンジで日本からの友人と話していた時に、雑誌が置いてあるコーナーに目をやると、今度は「History of Dokdo」と書いた冊子が! これは天安というところにある韓国独立記念館が作ったものらしく、英語で「韓国は1945年に解放されて以降、経済的な奇跡を果たしてきた。しかし解決すべき問題がまだ残されている。そのひとつが独島の領土問題だ」として、日本でもこの話が出るときに引用される、干山島の話などについて触れています。

とりあえず誰も関心を示している様子はなく、置き去りにされている感満載でしたが、誰かが放置したものなのか、それとも意図的に置いたものなのか……。よくわかりませんでしたが、他の留学生にツッこまれないかどうか、その日はちょっとドキドキしました。

とはいえ学校では先生も生徒も、誰一人として独島の話題は持ち出しません。しかしながら韓国の歴史や文化をテーマにした授業では普通に、日帝支配時代36年間の話題が出ます。でもそれは政治的な意図があるというより、「事実なのだから触れないわけにはいかない」といった、淡々としたテンションです。だからとくに他の国からの留学生達から、「お前らは韓国にこんなことをしたのか!」とか言われることもありません。「そんなことがあったんですね~」程度の受け止められ方なので、ネットでまことしやかに騒がれている、「韓国の反日教育がひどすぎて、日本人がいじめられる!」なんてことは、これっぽっちも起きていません。

そう、独島か竹島かについてはまた別の話ですが、日本が朝鮮半島を支配したこと自体は歴史の事実で、それは消せません。だから韓国では当たり前に触れることなので、それを「反日教育!」と見るのは、違うのではないかなあ……と思ったりしました。と同時に、された側はいつまでも覚えているものなのだから、言われたくなければ最初からやらないこと、という教訓を得た気持ちになりました。そんなワケでノートは、頑張って使い切るぐらいに勉強したいと思います。

▼サ・ウナ
韓国の地方都市にある某大学に留学中の女子大生。世界中から来ている学生たちによる、ミックス言語で繰り広げられている「かわいい~」「○○さんかっこいい~」「○○が××のことを好きだって言ってたよ~」などの会話に、日夜イライラしながら学業に勤しむ25歳。

《韓国特派員・ウナの留学日記》
◎「ゆとり」は世界の共通語!?
◎MERSアタック!? in ソウル

タブーなきスキャンダルマガジン!月刊『紙の爆弾』は毎月7日発売です。

 

同志社大学で7月25日、「安保法制を考える緊急集会」が行われ250名以上が集まった。「同志社平和の会」が主催し、「安保法制に反対する同志社大学教職員有志」、「村田学長の公聴会発言に対して抗議する同志社学生有志の会」が共催し学生さんが司会を務める中、会はほぼ予定通り17:00から始まった。

◆鶴見俊輔さんへの黙祷で始まった良心の集会

会の冒頭主催者の出原政雄教授から、20日に逝去した元同志社大学教員でもあった鶴見俊輔さんへの黙祷が呼び掛けられ参加者は起立して黙祷を捧げた。個人的にもお宅に何度も伺った鶴見さんの逝去がこのタイミングに重なったことは、あの穏やかな語り口から「同志社は一体どうなっているんですかね。もう良心は死んだのですか?」との声が聞こえて来そうだった。

会の前半は既に声明を出している同志社大学教職員、学生代表、同志社中学の先生、京大・立命館の先生方からそれぞれお話があった。出色だったのは、言葉は穏やかだったが怒りを含んだ学生代表と中学の先生方のお話だった。学生代表は「教職員よりも先に声明を出そうと思ったが間に合わなかった」と述べながらも、村田発言の問題点を正確に抽出、指摘していた。

◆同志社にはまだまだ真っ当な教師たちがいる

同志社中学の先生方は「13日の村田学長の発言を聞いて、学年末の忙しい時期だったが何としても早く声明を出すべきだと思い翌日には声明をまとめた。学長に手渡そうと出向いたが受け取りを拒否され、その場に抗議声明を置いてきた。生徒は毎朝の集会で不安になっている『僕ら戦争に行かんとあかんの?』と聞いてくる生徒もいる。私達は中学が職場だが学長を辞任させるまで大学の人を応援するので頑張って欲しい」と語った。真っ当な教師の姿ここにあり、との印象を受けた。

だが、一部の教員の発言は時間だけがやたらに長く、内容的には「緊急集会」の名に値しない間延びしたものだった。あたかも通常の講義を行っているかのようで概して「緊張感」がない。そして何よりも「怒り」が感じられない。

◆鹿砦社松岡社長も緊急アピール! 「同志社を<反戦の砦>に!」ビラを配布!

前後するがこの日の集会には松岡社長が「緊急アピール! 稀代のファシスト=村田晃嗣学長を退陣に追い込み 同志社を〈反戦の砦に!〉」と銘打ったビラを持参し会場前、参加者に配布していたが、そこへ出原政雄教授がやってきて「人格を誹謗中傷するのはこの集会の趣旨ではないのでこのビラを回収してくれ」と要求してきた。なに? 戦争推進法案に賛成した村田を批判するビラが「人格攻撃」だからそれを巻くな、回収しろと?

出原氏が問題視したのは、「学生を戦場に送るのに熱心な学長」など殺人者と変わりません。私達は同志社を卒業して何十年かぶりに、体の奥底からの怒りを抑えることが出来ません。村田学長は政治学者ですが、人間性を持ち合わせない〈悪魔〉であることが明らかになりました」の部分だ。

この指摘には呆れるほかなかった。戦前を通じて初めて国会の場で「戦争法案賛成」を表明した私立大学学長への、筋違いな過剰なまでの配慮。戦争を牽引することは「個人研究者の意見」として許される、戦争を誘引する発言は「穏やかな表現であれば」許される。逆に直接的な表現を用いると「人格批判」として排除しようとする。

村田が極悪・史上最悪の国会内での発言を行い、それを問題にする集会でもこのような「言葉狩り」が行われている現実こそが村田のような人間を学長に押し上げ、その暴言を放置する遠因になっているのではないか。そんな的外れな「品性」や「体裁」ばかりに気を回しているからこそ村田の暴走を許したのだという反省が、概して同志社大学には欠如していると感じた。

このビラについては、実質的な教職員有志のまとめ役である板垣竜太先生に相談し「この表現問題ありますか」と伺ったところ、「いや私は問題を感じませんが」とご了承頂いたので、結局無事に配布することが出来たが、村田が調子に乗る学内的要因を図らずも垣間見る機会とはなった。

同志社OB鹿砦社松岡社長もリレートークで緊急アピールを行った

◆同志社はなぜ村田のような超ファシストを大学長にまでしてしまったのか?

主催関連団体の挨拶に次いで「リレートーク」が行われた。合計16名の発言者が5分の時間制限時間内で意見を述べた。松岡社長も発言に立ち「昔は良かったという言い方はしたくないが、同志社の空気は変わったと思う。なぜ村田のような超ファシストを学長にまでしてしまったのか。はっきり言うが教職員の方々にも責任はあると思う。これまで卒業以来大学内の問題に関わることがなかったが、同志社が私にも母校愛がある。今日はチラシを配らせてもらったが主催の先生から『人格攻撃』しているから配布するな、回収しろとまで言われた。そんなケツの穴の小さいことを言っているから村田のような人間がのし上がって来るのではないか。そんなことを言っている場合か。もっと体を張って、村田退陣、安保法案阻止の闘いを期待したい。主体は学生、教職員だから我々は後方支援をしてゆきたい」と語った。

次いで私の発言となり思いの一部を述べた。

この日の集会はたぶん主催者も予想以上の人数が集まり3時間を超える会となったが、様々な立場から多くの人の発言があり大変意義深い集会だったと言えよう。とりわけ短時間でこの集会を準備した関係者の方々のご苦労には敬意を表したい。

◆250名もの良心が集まった理由──村田に辞任を求めない集会に意味があるのか?

だが、残念だが何かが欠けていたように感じる。大学では講演会やシンポジウムが頻繁に行われるが、その空気感と大差がなかったように感じたのは私だけであろうか。

私はこの会を実質的に運営した板垣竜太先生と学生諸君には特に再度深い敬意を払う。同志社中学の先生方の熱意も実感した。

だが、最後に再び登壇した出原教授は「この会は議論を目的にしている、村田学長への批判は予想されていたが『人格攻撃』はならないと考える」と再び述べたにとどまらず「会の目的は『村田学長に辞任を迫るものではない』」とまで言及した。

では、この「緊急集会」の意味は一体何なのだ。参加者の少なくない人々が村田許せぬ。即時退陣を願っているからこそ250名を超える人数が集まったのではないか。この発言は決定的に問題の本質を捉えていない。許せないと感じた私を含めた多くの人から声が上がった。

「村田に辞任を求めない集会に意味があるのか?」

こう発言した私に出原教授は「集会の趣旨と違うから出て行ってください」と言い放った。更にその発言を糾弾すると私の前に座っていた教員が「静かにしろ!黙って聞け!」と立ち上って迫ってきた。

何を考えているのだ、あなた達は。私に向ける「言論弾圧」のエネルギーがあればそれをすべて「村田打倒」に向けたらいいではないか。近年アカデミズムの世界でも「回りくどい」言い回しで煙に巻く話法が流行している。その意味が戦争賛成である「回りくどい言い回し」は「直接的な反論言語」よりも高尚とされる。表現の細かな部分の揚げ足取りで発言を封じ、あからさま悪意が「修辞」を纏って闊歩することは往々にして問題にされない。

ここだ。ここに「知」の退行がある。そして人間として当たり前に感じ、表現すべき「怒り」への抑制と蔑みがファシズムを下支えしている。

身近なファシズムを打破するところから始めなければ、と再度痛感した1日でもあった。

当日、配布禁止回収を求められた緊急アピールチラシ(表面)

当日、配布禁止回収を求められた緊急アピールチラシ(裏面)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎《大学異論40》同志社大学長発言を「個人の意見」と容認した理事会に反省なし!
◎《大学異論39》同志社の「良心」は「安保法案」賛成の村田晃嗣学長を許すのか?
◎なぜ安倍政権には「正論」が通じないのか?──加速度を増す日本の転落

自粛無用のタブーなき月刊誌『紙の爆弾』!

現在、私は韓国の某地方都市にある大学に語学留学をしています。世界中から同じ目的の仲間が集まっています。が、これがまたドイヒーな状態です。

「先生、おしっこ!」

「先生、水!」

そう言って授業中にすっくと席を立ち、教室から出て行こうとするのはアメリカ人やカザフスタン人。恰幅のよさがマツコ似のウクライナ人女性と、お付きの者にしか見えないほど激ヤセしているキルギスタン人の青年は、ほぼ毎日「歯が痛い」「お腹が痛い」と言って授業を休んでは、ランチタイムになると絶好調の姿を見せて談笑しています。そんな彼らを先生は目撃してしまい、「あの子たちは歯が痛い、お腹が痛いと言うけれど、私は頭と心が痛いわよ」と、ため息をついてました……。元気出して……。

また私の答案をちょいちょいチラ見する中国人の男性は、ある時先生が「じゃあ今説明したところで文章を作って、発表しましょう~」と言った瞬間、机の上に置いてあった私のカバンを払いのけてまで急接近! ノートを覗き込んで答えを写そうとするものの、訳文を日本語で書いてあるのを見て、すごすご引き下がることもありました(中国語で書くわけがない)。またハングルがひとつもわからない状態で来てしまった別の中国人男性は、毎日机の下にスマホを隠し、勉強そっちのけでゲームに興じておられます。

そして私自身、下宿よりも安いという理由で学生寮に入ってしまったのですが、これも大失敗。深夜までロシア語による「ダバーイ!」などの雄叫びが響いて、正直寝るどころではありません。まさに世界中から、『ゆとり』が集まったと言える環境です。

ただそんな中でも日本の皆さんは、比較的真面目に勉強している姿が目につきます。中国やロシアの留学生の中には応じたら負けだと思っているのか、こちらがにこやかに挨拶してもガン無視するのも結構いるのに、彼ら彼女らは自分から挨拶する人も。

しかしいつも同じ仲間と一緒にいて「それ以外とは絶対関わらない!」といった空気を醸し出している集団もいるし、わからないと思っているのか、でかい声で「ちんちん!」と日本語で叫んでいる青年もいるので、「日本サイコー!」とは、間違っても言えない状況です……。

日本にいた数か月前まで、いわゆる『ゆとり」』は日本固有のものだと思っていました。世界の若者はもっとしっかりしていて、自分を持っていて、真面目に日々を生きている。

しかしそれは思い込みでしかないということを学んだのが、一番の成果かもしれません(嬉しくない)。

この先、『ゆとり』君たちは変わっていくのか、それとも『ゆとってる』まま本国に戻るのか。勉強がてら観察することにしたいと思います。

▼サ・ウナ
韓国の地方都市にある某大学に留学中の女子大生。世界中から来ている学生たちによる、ミックス言語で繰り広げられている「かわいい~」「○○さんかっこいい~」「○○が××のことを好きだって言ってたよ~」などの会話に、日夜イライラしながら学業に勤しむ25歳。

◎《韓国特派員・ウナの留学日記》MERSアタック!? in ソウル
◎《ウィークリー理央眼006》戦争法案に反対する若者たち vol.2 札幌
◎〈生きた現実〉の直撃弾──鹿砦社松岡社長が自身の逮捕経験を「告白」講義
◎《大学異論37》沈黙する大学の大罪──なぜこんな時代に声を上げないのか?

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「戦争法案」が衆議院の特別委員会で強行採決された7月15日、それに反対する市民10万人が国会議事堂前に大集結した。
19時半、SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)が主導した抗議時間になると、「安全保障関連法案に反対する学者の会」からは発起人の上野千鶴子・東京大学名誉教授、同会呼びかけ人の山口二郎・法政大学教授が登壇。学生を鼓舞するスピーチに国会前は一気に怒りのピークタイムを迎えた。野党からは民主党・枝野幸男幹事長、共産党・志位和夫委員長、社民党・吉田忠智党首といった党幹部らも続々と駆けつけ、学生らに囲まれながらマイクを握り、共に怒りの声をあげた。
国会前にはこのようにスピーカーや参加者として学生を支える「大人」の他に、抗議を無事に終えられるよう、抗議に慣れていない参加者でも安心して来ることができるようにと、自主的にガードをして見守る「大人」や、ボランティアの給水所や救護所を作り、抗議の場を支える「大人」が学生と「共闘」している。

今や、世代、立場、党派を超えた人々の抗議の「器」となったSEALDsの国会前抗議ではその夜、歩道から溢れ出した人々が国会正門前の車道上にまで広がり、若者たちの怒号のようなコールが深夜まで鳴り響いた。

SEALDs:サイト / Twitter / Facebook

[2015年7月15日(水)・東京都]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《010》戦争法案に反対する若者たち VOL.5 鳥取
◎《009》戦争法案に反対する若者たち VOL.4 新潟
◎《008》札幌攻防戦!ヘイトスピーチを撮影せよ!
◎《007》戦争法案に反対する若者たち VOL.3 渋谷
◎《006》戦争法案に反対する若者たち VOL.2 札幌
◎《005》戦争法案に反対する若者たち VOL.1 京都

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当時の捜査関係者たちはいま、再審請求審の行方が気になって仕方ないだろう。もうすぐ発生から17年になる、和歌山カレー事件のことである。

札幌地検のホームページで検事正としてあいさつする小寺氏

1998年7月25日、和歌山市園部の夏祭りで何者かがカレーに猛毒のヒ素を混入し、60人以上が死傷した。捜査の結果、現場近くに住む主婦の林眞須美(当時37)が殺人などの容疑で検挙され、2009年に死刑確定したが、一貫して無実を訴える眞須美には冤罪の疑いが根強く指摘されてきた。そして今年、和歌山地裁の再審請求審で弁護側が「眞須美の周辺で見つかったヒ素」と「現場で見つかったヒ素」が異なるという京都大学・河合潤教授の意見書を提出。これに対し、地裁がどんな判断を下すかが注目されている。

そんな状況の中、今年の7月25日をいつも以上に特別な思いで迎えるに違いない捜査関係者がいる。小寺哲夫という。この事件の主任検事として捜査、公判を担当した人物だ。現在は札幌地検の検事正に出世しているが、今年3月で62歳になった。検察官の定年は63歳(検事総長のみ65歳)だから、小寺が現職の検察官として7月25日を迎えるのは今年が最後になる見通しだ。

そこで、筆者は今年の3月から小寺に対し、繰り返し手紙や電話で取材を申し入れた。検察を去る前に、和歌山カレー事件の捜査、公判で警察、検察が行った不正を洗いざらい打ち明けてもらうためである。

◆疑われているのは冤罪だけではない

というのも、この事件はかねてより冤罪の疑いのみならず、捜査、公判を通じて警察、検察が数々の不正を行った疑いも指摘されてきた。

たとえば、眞須美宅の台所で見つかったとされる「ヒ素の付着したプラスチック容器」はこの事件の最重要物証だが、捜査員によるねつ造説が根強い。事件発生から2カ月以上経ち、眞須美が逮捕されてから行われた家宅捜索で発見されたうえ、表面にヒ素を意味する「白アリ薬剤」という言葉が大きく書かれているという不自然なシロモノだからである。

また、眞須美は事件以前から夫の健治や知人の男らにヒ素や睡眠薬を飲ませ、保険金詐欺を繰り返していたとされ、この「事実」が裁判ではカレー事件の有罪の状況証拠とされている。しかし、これも実際には、保険金をだまし取るために詐病で入院を繰り返していた健治や知人の男らを警察、検察が「被害者」にでっち上げた疑いが指摘されている。そもそも健治は公判で「ヒ素は自分で飲んでいた」と告白しているし、知人の男らは捜査段階に警察官宿舎で数カ月に渡って捜査員らと寝食を共にしていたことなど不審な点が多いためである。

和歌山カレー事件の捜査、公判でこのような不正が行われた疑惑の真相について、捜査、公判共に担当した検事である小寺が何も知らないことはありえない。だからこそ筆者は小寺に取材を申し入れたのだ。

◆繰り返された場当たり的な回答

取材依頼の手紙は5回に渡り返送されてきた

結論から言うと、小寺は筆者の取材依頼に対し、逃げ回るような対応に終始した。筆者は3月から6月にかけて5回に渡り、小寺に手紙で取材を申し入れたのだが、そのたびに同封しておいた切手やテレフォンカードと一緒に手紙がそのまま送り返されてきた。筆者もそのたびに札幌地検に電話し、小寺に取り次ぐよう求めたが、小寺は広報担当者に対応を任せ、自分は一度も電話に出ないという姑息な態度を繰り返したのだ。

もっとも、こうしたやり取りの中で興味深かったことがある。小寺は筆者の手紙を返送してくるたび、広報担当者に指示し、取材を断るコメントをワープロ打ちした紙切れを同封してきたのだが、そのコメントがいつも場当たり的なごまかしの内容だったのだ。

まず、最初の2回の取材依頼の手紙に対し、小寺が返送する際に同封してきた紙切れのコメントは次のようなものだった。

〈具体的な事件の捜査、証拠関係についての取材には応じられません。〉

まさに木で鼻をくくったような回答だ。ただ、札幌地検の広報担当者に電話で確認したところ、筆者の取材依頼の手紙は地検に到着後、小寺本人に渡る前に他の職員が開封していたという。それでは小寺も部下の手前、このような取り繕ったコメントしかできないだろう。

そこで、小寺に対する3回目の取材依頼の手紙は、札幌地検の職員を使わずに自分自身で対応するようにしたため、封筒に「親展」と朱書きして送付したところ、返送されてきた手紙に同封された紙切れのコメントは次のようなものだった。

〈事件の取材は、検察庁の広報を通じて対応致します。
検察官には守秘義務があり、検察官が個別の事件について、個人として取材を受けることはありません。〉

小寺は個人として取材を受けないことを正当化すべく、このような弁明をしてきたのだ。しかし筆者は手紙で小寺に対し、取材を依頼する趣旨は和歌山カレー事件の捜査、公判で警察、検察が不正を行った疑惑に関する事実確認だと伝えてある。検察官が個人的に捜査、公判で行った不正を取材者に明かしても、それは通常、「正当な内部告発」や「犯行の自白」と認められ、守秘義務違反に問われることはない。小寺の弁明は明らかに失当だ。

4回目の手紙でそのことを伝えつつ、改めて取材を申し入れると、今度は返送されてきた手紙に次のようなコメントが書かれた紙切れが同封されていた。

〈捜査・公判において不正を行った事実はありません。
検察官には守秘義務があり、検察官が個別の事件について、個人として取材を受けることはありません。〉

要するに、小寺も捜査、公判での不正に関する取材依頼については、「守秘義務違反になるから個人で取材には応じられない」という弁明が通用しないことは理解したらしい。そこで今度は「不正を行った事実はない」と言い張って取材を受けずに済まそうとしたわけだ。

そこで筆者は小寺に対し、今度は取材で掴んだ事実をあててみた。それは、和歌山カレー事件の捜査、公判において、警察、検察が不正を行っていたことを裏づける次のような2点の事実である。

1、眞須美や健治と一緒に保険金詐欺をしていた人物の1人が検察官たちからその弱みにつけこまれ、眞須美に殺されかけた被害を訴えるように強要されていたことがこの人物の兄の証言により判明していること

2、眞須美が知人の男たちに睡眠薬を飲ませた現場とされる岸和田競輪場、近畿大学付属病院内の喫茶店、和歌山市内の喫茶店などにおいて、警察、検察が現場検証や目撃者探しなどの捜査をまったく行っていないことが現場関係者の証言などで判明していること

◆不正を認めたに等しい対応

5回目の手紙では、これらの事実を示したうえ、捜査、公判を担当した検事である小寺もこれらの事実を知らないはずはなく、小寺は本来なら証拠隠滅罪や犯人蔵匿罪などで処罰されるべきであることを指摘。そのうえで「反論したいことがあれば、反論するように」と求めた。すると、今度は返送されてきた手紙に次のようなコメントをしたためた紙切れが同封されていた。

〈検察官が個別の事件について、個人として取材を受けることはありません。〉

要するに決定的な事実を示され、小寺は不正を行っていないなどと言い張ることができなくなってしまったのだ。つまり小寺は事実上、和歌山カレー事件の捜査、公判において警察、検察が不正をはたらいていたことを認めたのである。

筆者はこの事件を長く取材し、林眞須美は冤罪だと確信しているが、今後、眞須美が冤罪であることが明らかにされる過程では警察、検察がはたらいた数々の不正も一緒に明らかにされなければならないと考えている。小寺ら捜査関係者に対する追及は今後も続けていく。

場当たり的なごまかしのコメントを繰り返した小寺氏

▼片岡健(かたおか けん)
1971年、広島市生まれ。早稲田大学商学部卒業後、フリーのライターに。新旧様々な事件の知られざる事実や冤罪、捜査機関の不正を独自取材で発掘している。広島市在住。

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8月1日(土)東京・大田区総合体育館で開催される『BLADE.2 JAPAN CUP -55kg』の記者会見が、6月8日(月)都内にて行われたのでいってきた。

概要と一部対戦カードが発表された。 注目の55kg級トーナメント、REBELSの山口元気代表によれば、「誰が天心選手を止めるのか、止められる存在になれるのか」と、天才にして、優勝候補である16歳高校生キックボクサー、6戦無敗のRISEバンタム級王者・那須川天心(TARGET)をメインファイターとして指名。テーマを「ストップ・ザ・天心」とした。那須川は「中心選手と思われて光栄です。誰が来ても勝てるように練習したい」と強気に発言をしていた。

中央が那須川選手(グレーのスーツ)

6戦無敗のRISEバンタム級王者、那須川天心選手は16歳の高校生

WBCムエタイ日本・INNOVATIONの2冠王・宮元啓介、UKF世界スーパーバンタム級王者ユウ・ウォーワンチャイ(大田原友亮/ウォーワンチャイムエタイジム)、REBELS王者工藤政英、REBELS推薦・小笠原裕典の5選手出場が発表、他は調整中としている。

とりわけ城戸康裕がペトロシアン弟に挑むが、アウェイの外国で「わけがわからない、自転車をこぐ健康診断をやらされて疲弊した」とぼやいていたが、リベンジなるか。

本格的なキックを見たいなら、今現在は、見るイベントは限られる。なにしろキックボクシングは、それぞれの団体が仲がよろしくなく、ひじ打ちがあったりなかったりするのでルールも統一されていない。くわえて、誰もがキックのムエタイの王者になりたがるので、さっぱり意味がわからない。そもそもキックとムエタイは別物で、ムエタイは技を競うスポーツ。ムエタイは、キックとちがってノックアウトを美しいものだとはみなさない。相手の攻撃をうまくかわして勝利することが「もっとも美しい勝利」とされているからだ。

また、このところ「キックボクシングエクササイズ」なるものもできた。音楽に合わせてエアロビのようにパンチやキックを繰り出す。これは全身運動なので、かなり引き締まる。

かくいう僕も月に2、3度行くが、ひとりでやる気にはなれない。周囲には二十代、三十代の男女が踊ってパンチを繰り出しているが、やはりみんなで楽しむものなのだろうと思う。市の、もしくは区のスポーツジムでもクラスとしてやっているので、運動不足のむきは、探してみるのもいいだろう。

◆元K-1世界王者ピーター・アーツ、またもや正式引退を発表

またもか、という気がするがこの会見では、昨年12月29日に開催された『BLADE.1』のリング上で、次回大会に出場することを表明していた元K-1世界王者ピーター・アーツ(オランダ)だが、負傷の回復が思わしくなく正式に引退することが発表されていた。

アーツはビデオレターの中で、「ケガの回復が思わしくなく自分は引退することを決めました。もう試合は出来ません。今後は指導者として選手を育てていきます」と語っている。

「いったい、何度目の引退なのか。大会のたびに目玉として呼ぶのはいいが、客寄せ選手としては、疲れたのではないか」と関係者はささやいている。

2013年12月、東京・有明コロシアムにて開催された『GLORY 13 TOKYO』で引退試合を行ったアーツだが、その後、引退を否定。数試合を行ったが今回は本当に現役引退のようだ。

とにかく5月に村越優汰(湘南格闘クラブ/RISEバンタム級王者)をKOで倒した那須川の俊敏な動きとハードなパンチ、キックに注目したい。ドラマは8月1日に必ず起きるであろう。

[BLADE] http://blade.jp.net/

■BLADE.2 JAPAN CUP -55kg
日時:8月1日(土)開場13:30 本戦開始15:00
会場:大田区総合体育館 最寄り駅京急線「京急蒲田」駅・「梅屋敷」駅
中継:ニコニコ生放送で生中継 7時間全試合CS放送「Sky・A sports+」8/4(火)18時~25時(9月に選手インタビュー・バックステージを網羅した完全版放送)
チケット料金:SRS席 (1~3列)  20,000円、RS席 (アリーナ指定)  12,000円、S席 (1指定席)  8,000円、A席 (2自由席) 5,000円

●主なカード
<ISKA世界スーパーウェルター級(70kg級)タイトルマッチ 3分5R>
アルメン・ペトロシアン(イタリア/チーム・レオネ・ペトロシアン/王者)vs.城戸康裕(谷山ジム/挑戦者、WBKF世界70kg級王者、元Krush -70kg級王者)
<61kg契約 3分3R(延長1R)>
SHIGERU(新宿レフティージム/BLADE FC JAPAN CUP 2014 -61kg準優勝)vs.花田元誓(リアルディール/RISEフェザー級(57.5kg)王者)

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、著述業、落語の原作、官能小説、AV寸評、広告製作とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論!」の管理人。

◎「THE OUTSIDER 第35戦」観戦記──朝倉海の強さと佐野哲也の安定感に注目
◎格闘技にエロスと笑いを共存させた美戦士達のCPE「キャットファイト」が凄かった!
◎川崎中1殺害事件の基層──関東連合を彷彿させる首都圏郊外「半グレ」文化

『紙の爆弾』──タブーなきスキャンダルマガジン

7月12日(日)、鳥取県鳥取市で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。県内や島根県、兵庫県北部から集まった若者が安倍政権に対し反対の声をあげた。総勢30名ほどのデモ隊であったが、約15名の若者がおり全体の半数を占めていた。少ないと言われてしまえばそれまでだが、この一団が踏み出した一歩は決して小さいものではない。


[動画]7.12戦争法案反対デモ@鳥取 – 2015.7.12 鳥取市(3分26秒

この中にはデモに参加することに強い抵抗があり不安を抱きながら歩いていた若者もいて、本当に凄い勇気を出してデモに来ていたのだ。そんな想いを考えてしまい撮影している最中に泣きそうになってしまった。
山陰ではそもそもデモが頻繁には無いし、無党派デモは成熟していない。きっと孤独な想いをしている人が多くいるはずだ。

だからこそ、この鳥取の若者デモは山陰の希望に見えた。
デモは単なる示威行為ではなく、同じ考えを持つ人々の集まる場所でもあるので、人数が少なかろうが大きな一歩を踏み出した若者たちがそこにいたことは事実だ。

話は変わり、ここでご当地ネタを挟んでおく。デモが通った、人通りのない商店街にスイカが植えてあった。鳥取県はスイカ国内生産4位なので、鳥取の誇り(あるいは単にポピュラーな植物なのだろうか…)として商店街でも育てているのだろう。ちゃんと手入れがされていたので、平日はもしかしたら人がそれなりにいるのかもしれない。
そして、デモを撮影して気になったのは、映像2分35秒に写る「鳥取カレー」のノボリだ。鳥取市は1世帯あたりのカレールー消費量が全国1位らしく、住んでる人みんなカレーが大好きらしい。しかしそんな売り出し方をされても「だから何なんだ」と思ってしまう。とは言いつつも鳥取グルメには魅力的なものが多く、私は鳥取カレーは後回しにし「牛骨ラーメン」を選んだ。どうしても気になっていたので、デモ後、汗だくにも関わらずラーメンを食べてきた。これがさっぱりしていて非常に美味しい。もっと時間があったら話題の「すなば珈琲」にも寄ったり、美味しい物をもっとたくさん食べてきたかったのだが、鳥取駅から自宅まで電車で7時間もかかるので、16時50分にはもう出なくてはならなかった。
毎週のように全国を旅しているので、名残惜しさにはもう慣れてはいるのだが、それでも「また来れるよね」と思いながら私は帰路につく。

もう一つ名残惜しい、というか心残りだったのが、鳥取大学3年生の実行委員長が都合で来れず会えなかったことだ。
代表が欠席というのは、忙しい大学生らしく、リアルな生活が透けて見えるのでそれはそれで良いと思う。
デモをやるような人も何ら普通の人と変わりない単なる生活者で、当然自身の生活がある。
自分の都合を優先するのは信頼できる仲間がいるからできることで、主催したデモを欠席したことで彼の評価が下がることもない。

そんな彼、実行委員長の堺泰樹さんからのメッセージがデモ出発前の集会時に読み上げられたのだが、以下に一部を抜粋する。

「戦争で待っているのは罪無き人間の死ではないでしょうか。
自衛隊員が死に、他国の兵士が死に、民間人が死にます。
テロが起これば日本国内で戦死者が出ます。
そんな愚かな国、そしてそれを認めた愚かな国民になりたくありません。
僕は僕達の声でこの命を守りたいと思います。」

そう、私たちは今ならまだ「声で守る」ことができるのだ。
だから、鳥取から、各地から、私たちはもっともっと声をあげていかなければならない。
鳥取で再び若者が声をあげる時、彼らをまた撮りに来ようと思う。



[2015年7月12日(日)・鳥取県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

世代、地域を超えて「新たな脱原発情報ネットワーク」の構築を試みる『NO NUKES voice』

 

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