暴言を吐き続けて、自民党内ですらテンヤワンヤに陥れた百田尚樹に「沖縄タイムス」が直接取材を行っている。まず、その全文を引用紹介する。
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◆百田尚樹氏に一問一答 「沖縄2紙は嫌い」「つぶれてほしい」 沖縄タイムス2015年6月27日
作家の百田尚樹氏(59)が、自民党の会合で発言した米軍普天間飛行場の成り立ちや沖縄の2紙に対する内容について26日、沖縄タイムスの電話取材に応じ、発言の真意と持論を説明した。(社会部・聞き手=吉川毅)
―米軍普天間飛行場の成り立ちについての発言は。
「住民が騒音などの精神的に苦痛があり、補償しろと言う。苦しみは当事者にしか分からないこともあるだろう。それを踏まえた上で、違和感を覚えると発言した。なぜかと言えば、住んでいた場所に基地が引っ越してきたわけではない」
―普天間の現状認識は。
「地権者には、膨大な地代が払われている。六本木ヒルズに住んでいる大金持ちと同じ。それはメルマガで書いた話だ。普天間が返還されたら、あっという間にまちは閑散とする。ぬくぬく暮らしていた地権者も困るはずだ」
「滑走路のそばに小学校があるが、いまだに移転していない。移転に反対の運動も起きているが、本末転倒。基地批判のために小学校を置いている。何がしたいのか分からない」
―「沖縄の島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」の発言の真意は。
「絶対、あってはならないことで仮定の話をした。沖縄の人は中国を歓迎している。(辺野古の新基地建設反対など)翁長雄志知事が言っていることも意味が分からない。沖縄の人の総意は何なのか。中国の危機意識がない人も見受けられる」
―沖縄戦について。
「沖縄は戦争で犠牲になったと言うが、東京も大空襲があり、犠牲を払っている。沖縄だけが犠牲になったわけではない。大阪も大空襲で多くの人が死んだ」
―「沖縄2紙をつぶさないと」の発言について。
「沖縄の新聞をしっかりと読んだことはないが、ネットで読むと、私と歴史認識が違う。全体の記事の印象から私が嫌いな新聞だ」
「オフレコに近い発言で、冗談として言った。公権力、圧力でつぶすとの趣旨ではない。私も言論人。言論は自由であるべきだ。私と意見が違う2紙を誰も読まなくなり、誰も読者がいなくなってつぶれてほしいという意味での発言だ」
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この男全く反省していないことがわかるだろう。反省どころかより一層救い難く悪辣な本音が吐露されている。こんな考えを持つ人間が出入りしているのが自民党であり、百田は自民党の本音を代弁していると言っても過言ではないだろう。
◆大西英男議員政策秘書の亀本正城氏との一問一答
私は26日以降「マスコミをこらしめるのには広告収入がなくなるのが一番」と発言した大西英男、「スポンサーにならない。これが一番こたえる」の井上貴博、「沖縄メディアは左翼勢力に乗っ取られている」の長尾敬各議員に取材を試みた。28日現在いずれも本人と話すことは出来ていないが大西議員の政策秘書亀本正城氏と話すことが出来た。以下は私と亀本氏のやり取りである。
秘書 「あくまで議員ではなく私の理解だが、中国の『脅威』を強調したくてあのような言葉になってしまったのではないか。前後の文脈があるのでそれを見て頂ければご理解いただけると思う」
田所 「前後の文脈がどこかで確認できるのか」
秘書 「それはなかなか難しい」
田所 「では国民は理解することは出来ないということにならないか。衆参両院で圧倒的多数を握る自民党の議員が明らかな言論弾圧発言、とりわけ沖縄の新聞を攻撃することが許されると思うか」
秘書 「そのような意図と取られても仕方ない発言であった点は反省すべきだと思う。議員にもそう伝えたい」
田所 「集団的自衛権行使や『戦争法制成立』の方が『中国』の脅威より余程戦争の危機を高めるのではないか。米国債を最も多く保有しているのが中国で二番目が日本だ。米中は最近接近しているようにも見えるが、そのような状況下で中国が日本に戦争を仕掛けてくることがあると思うか」
秘書 「中国が全面的に戦争を仕掛けてくることは現実にはないと思う。但し尖閣諸島などでの小さな衝突の可能性はあるのではないか。それに対するために現在安保法制の議論が行われている」
田所 「『近年我が国を取り囲む国際的な緊張が高まっている』と自民党は言うが近隣諸国との緊張は冷戦時代の方がはるかに高かったのではないか。尖閣問題は前石原都知事が『都が尖閣を買う』と言い出すまで(しかもその発言を米国で行うまで)実質的に棚上げされており、緊張はなかった。かつて政府は仮想敵国として『ソ連』を上げたことがあったが現在の具体的な仮想敵国はあるのか」
秘書 「仮想敵国ではないが中国や北朝鮮の脅威があると思う」
田所 「『日中平和友好条約』と言う条約があるがあれは無効なのか、また近年は『戦略的互恵関係』等という言葉で両国首脳が関係を示しているがそれでは脅威を感じる国に対する表現なのか」
秘書 「政治にお詳しいですね」
田所 「私が質問をしている」
秘書 「大変紳士的に貴重なご意見を伺ったので必ず議員に伝えておく」
◆火消に必死な自民党内とは裏腹に燃料投下に励む百田尚樹という「愉快犯」
次いで長尾敬事務所公設秘書の河村氏(女性)は取材に対し「特にコメントは準備していません」と述べ、「議員は地元に帰っているので詳細は判らない」とだけ語ってくれた。
井上貴博議員の政策秘書伊藤重雄氏は「私の発言が誤解を招いたとすれば申し訳なく思います。発言内容は青年会議所時代の事業を紹介したものです。私自身報道を規制するとか企業に圧力をかけるとか、そういった考えはございません」が正式なコメントだと教えてくれた。
「青年会議所時代の事業」とは何かと質問すると地元「マスコミとの意見交換会」の事だそうで、「意見交換会」を「事業」と呼ぶのか、結局マスコミと癒着しているか利用しているとも取れるが、の問いには「コメントの通りです」との回答だけだった。
自民党内ではこの事件の火消に必死の様子だが、表面を取り繕おうとも本質的な「沖縄差別」と「戦争猛進政策」を改めない限り意味はない。百田はその後も「あの時は冗談だったが今は本気でつぶさなければいけないと思っている」と追い打ちをかけている。こんな人間が経営委員に任命されるのがNHKだということも忘れてはならない。
◎[参考動画]沖縄2紙、作家・百田尚樹氏に抗議声明(2015年6月26日TBS News-i)
▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。
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