「DAYS JAPAN」と言う月刊誌をご存知の方も多いであろう。
今月号の特集は「福島の小児甲状腺異常多発の発表」だ。

「DAYS JAPAN」2015年7月号

悲しいニュースだが直視を避けられない現実が詳細に報告されている。本号は発売直後よりアマゾンをはじめとするネット上の図書販売サイトでは完売となり、書店でも残部僅かのようだが、増刷されるとのことであるのでまだご覧になっていない方にはご購読を強くお勧めする。

「DAYS JAPAN」はかつて講談社が発行してたが休刊となり、2004年にフォトジャーナリストの広河隆一氏が会社を立ち上げ編集長に就任し復刊した。表紙の右下には発刊以来毎号「一枚の写真が国家を動かすこともある」との腰の据わったメッセージが記されていたが、その場所には編集長が丸井春氏に代わった昨年からは「人々の意思が戦争を止める日が必ず来る」と、より明確な「宣言」が掲載されるようになった(「人々の意思が戦争を止める日が必ず来る」はそれ以前にも時に表紙に書かれていたメッセージではある)。

◆発刊以来、原発問題に深く取り組んできた「DAYS JAPAN」

この雑誌の最大の特徴は現在世界でも希少となった「フォトジャーナリズム」を実践し続けていることだ。同時にパレスチナ、イラク、中東など世界中の紛争地帯(それが脚光の当っている場所であろうがなかろうが)の問題を取り上げ、視覚に訴えると同時に卓越した視点から解説を行うことだ。国内問題も同様である。一貫して在野の立場から権力監視を続ける骨太の編集方針は「ジャーナリズム」の原点から全くぶれていない。

また同誌が主催する「DAYS国際フォトジャーナリズム大賞」は世界的に権威のある写真コンテストとなり、ここでの受賞者がピューリッツアー賞などを後に受賞することも珍しくない。実は世界のフォトジャーナリストから注目されている雑誌でもある。世界的な注目を浴びる雑誌はこの島国に「DAYS JAPAN」だけである。

「DAYS JAPAN」2015年7月号より

前述の通り今月号の特集は「福島の小児甲状腺異常多発の発表」である。同誌は発刊以来一貫して原発問題に深く取り組んでおり、2011年の1月号(大震災の2カ月前)特集は「浜岡原発爆発は防げるのか」だった。事故直前まで月刊誌でこれだけ原発問題に警鐘を鳴らしていた雑誌は他にはない。スリーマイル島やチェルノブイリで原発事故取材経験豊富な広河氏は福島事故発生後3日目には現地入りしている。そこで持参した放射線測定器がチェルノブイリでも経験したことのない高い値、針が振り切れる経験を初めてする。目前には何も知らない人々がマスクもつけずに危機感もなく往来している姿を見て、取材を止め高線量地帯へ向かう人々の車を止め引き返すように説得を始める。


◎[参考動画]「3・11メルトダウン 福島原発取材の現場から」Part2
日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)綿井健陽氏2011年7月18日公開

◆「DAYS JAPAN」行動原理の体現者・広河隆一氏

「DAYS JAPAN」の行動原理はこの時の広河氏が体現している。ジャーナリストとして現地へ赴くがある時期「人間として」何をすべきかと感じた瞬間に彼らは「行動者」へと転身する。広河氏がレバノンの難民キャンプ取材から難民支援を始めて20余年が経つ。チェルノブイリ取材を50回ほど行っている広河氏は1991年に「チェルノブイリ子供基金」を設立し、保養施設「希望21」を各国のNGOと政府の協力により設立し、そこで保養を行った人の数は7万人を超えたという。

福島原発事故のわずか2か月後、早速保養所設立プロジェクトは動き出し、早くも翌年2012年7月には久米島に「球美の里」を設立し福島から子供達(親同伴の場合もあり)の受け入れを開始する。常人には想像できない発想と行動力は編集長が代わっても引き継がれている。

原発や被曝については「付け焼刃」ではなく長年の取材経験と人脈、知識と実践を持つこの雑誌に敵うものはないだろう。いや違った。「NO NUKES voice」ははるか後ろを走っているけれども志だけは負けたくないと編集長以下腹を固めている。
◎「DAYS JAPAN」Facebook
◎広河隆一氏のtwitter


◎[参考動画]DAYS JAPAN フォトジャーナリズム写真展 特別講演会「震災と原発問題」
2012年11月20日京都造形芸術大学 学校法人瓜生山学園公開

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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