「力には二種類しかない。それは、剣の力とペンの力である。そして、剣の力はしばしばペンの力に打ち負かされる」と言ったのは、英雄・ナポレオンである。このナポレオンの言葉を具現化しているラディカル・スキャンダル・マガジンこと「紙の爆弾」8月号の紹介記事を展開する。
このブログの読者は、鹿砦社のファンはもちろんのこと、月刊「紙の爆弾」のファンも多いようだ。今月発売号の紹介を柄にもなくするが、告知だけでは味気ないので、10年前の「紙の爆弾」創刊以前に、前身としてすでに創刊されていた「スキャンダル大戦争」までさかのぼり話をしよう。
この「スキャンダル大戦争」の編集方針が後に大きく「紙の爆弾」の編集に当然ながら影響していくのだが、当初から現在に至るまで「なんでも書いていい」と中川編集長は宣言していた。「三井銀行はマフィアバンク」など訴訟されそうなタイトルを打ち、なんとセブンイレブンまでガチで批判してみせたその突撃精神には、頭が下がるのひと言だ。「鹿砦社は訴訟されることで有名になりたがっている」という変な誤解も生まれた。そしてその突撃精神を、松岡社長は「帰りのガソリンを積まない片道飛行」と表現した。この危険でありながら冒険心に充ちた編集制作に、僕は一貫してつきあうことになる。
だから多少、もし僕が「紙の爆弾」について紹介するなら手前味噌で、そして少しばかり感情的だ。それでも、と僕は思う。「紙の爆弾」を応援し続けるのは、僕の使命なのだと。もちろん、「紙の爆弾」創刊で松岡社長が咆哮した「ペンのテロリスト宣言」も僕は永久に支持するであろう。
◆タブーなき言論の砦
自分の恥部をさらすなら、「紙の爆弾」が「噂の真相」の休刊で大きく落胆した「スキャンダル好き」読者の大きな期待を受けて創刊された2005年4月、すでに僕が所属していた週刊誌は大きく傾き、直後の8月には休刊のアナウンスがなされた。だから僕は「紙の爆弾」には大きな、そして過度な期待をこめてお手伝いしていた。
「噂の真相」を雑誌の頂点として考えていた僕は、実は休刊間際に1本だけ原稿を書かせていただいた。このときにアンカーとして、実にうまいまとめかたをしていただいたのが、(当時は面識がなかったが)今も「紙の爆弾」で「コイツラの銭儲け」を連載している西本健氏だ。
「スキャンダル大戦争」が月刊となり、「噂の真相」の後継として生まれかわりそうだ、という話が業界に広まったとき、幸いにも僕は準レギュ ラーのような扱いをしていただいた。「紙の爆弾」の誌面は、何十回も企画を出してボツを食らった「噂の真相」に傾けるエネルギーをつぎこむに、十分な器だった、有象無象の「噂の真相」に書きたかったジャーナリストが怒涛のごとく、売り込みに来たと思う。だが多くの者は馬脚を現した。
他方、さして才能がない僕は、「スキャンダル大戦争」から書かせていただいている、というアドバンテージのみで使ってもらっていたのだ。だから僕は「紙の爆弾」が低空をさまよい、苦渋の思いで合併号を出さざるをえなかったときも、どの案件とは言わないが、内容証明を食らったときも、バーニングと法廷で死闘を繰り広げたときも、常に「無力」ながらも編集部の傍にいた。何人か有能なライターを連れてきて、有能なものは残った。
もちろん、「紙の爆弾」については、一冊書き下ろすほどの思い出はある。松岡社長が逮捕されたときも、「紙の爆弾」のライターたちは、「タブーなき言論の砦」というテーマの庇護のもとで、権力者たちの汚い顔をペンであぶりだしていた。時間軸を今に移せば、このエネルギーは今も脈々と生きている。
「今、あぶりだすべき」ターゲットは、やはり傲慢といえばあまりにも厚顔無恥な安倍政権の独裁ぶりだろう。その意味で、「紙の爆弾」は大きな使命を負っている。たとえば「紙の爆弾」を編集している東京支社にいて、誰かがノックするとき、僕は「だれかがまた記事を書かれて内容証明でも送ってきたか」と身構えてしまう。いまだにそんな緊張感が漂う編集部は、世の中にはもうそんなに残っていない。
そうした言論戦闘の最前基地という位置に、「紙の爆弾」の中川編集長は立っている。そしてこれからも、立ち続けるだろう。「紙の爆弾」が 「権力を撃つ」と宣言している限り、僕は微力ながらも力を差し出すだろう。
◆安倍、沖縄、東京五輪──利権の深層を抉り出す
さて、8月号の紹介だが、まずは巻頭の『安倍晋三 退陣への道』では、ベテランの政治ジャーナリスト、朝霞唯夫が、安倍が「安保法制の信を問う」として年内解散総選挙へのシナリオが脈動していると、警告している。まったくふざけた話である。
『前沖縄県知事 仲井眞弘多の現在』に注目したい。「沖縄の米軍基地問題」の混乱に拍車をかけた仲井眞弘多元沖縄知事の「現在の動向」を、気鋭のジャーナリスト、藤堂香貴が執拗に追いかけている。7億円もかけた知事公舎もそのままに、米軍基地が普天間から辺野古に移設することに「賛成」とした仲井眞だが、沖縄電力の利権を背景にして、小型原発の研究に邁進している疑惑を追及する。
そして開幕まであと5年と迫っているがいっこうに盛り上がらない東京五輪の三人の戦犯について暴いた『返上論も浮上 2020年東京五輪 をもてあそぶ3人のメダリストたち』では、石原慎太郎元東京都知事、建築家の安藤忠雄東京大学名誉教授、森喜朗元内閣総理大臣たちの「唾棄すべき老醜」について触れる。そもそも、たとえば国立競技場のリニューアル工事に2520億円ほどかかるそうだが、都民、いや国民のコンセンサスはとってあるのか。これ以上は、本誌を読んでいただきたい。
「ペンのテロリスト宣言」の脈動は、この雑誌の中になお生きている。
読者諸兄よ、こもるな。『紙の爆弾』を手に権力へ牙を剥こう。いつでもわれわれを「騙して搾取する」のは、常に権力の側なのだから。
(小林 俊之)
───◎タブーなき「紙の爆弾」8月号は注目記事満載!◎───
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