週刊誌の劣化が始まっている。
1年前に『週刊ポスト』が『週刊朝日』や『サンデー毎日』の東大合格者のデータを転用して謝罪記事を出したときは「終わりの始まり」だと思ったが、意外にも事態はもっと深刻のようだ。
これはもう、あいた口がふさがらないどころか、あんぐりあきすぎて口裂け女になってしまいそうだ。『週刊女性』8月11日号の「櫻井翔のパパは5000人以上の部下を持つ官僚のトップ」という記事が今回の「ターゲット」だ。この記事は、ジャニーズの「嵐」で人気を集める、櫻井翔の父がついに総務省とトップの事務次官にのぼりつめたことにひっかけて、『櫻井翔の弟は慶応義塾大学のラグビー部で活躍』さらに記事によると『母・陽子さんはお茶の水女子大学出身で、現在は駒澤大学文学部の教授』と記述がある。
実はこの部分が大きな「誤報」である。なぜなら、『フライデー』でも同じく5月15日・22日の合併号で、『5人全員エリート! 『嵐』櫻井くん一家は本当にスゴイ!』という見出しの記事で、同じくこう「誤記」した。『そんな次官候補(編集部注:櫻井翔の父、俊氏のこと)を支える妻の陽子氏もスゴイ。お茶の水女子大卒で、駒澤大学の文学部教授だ。日本の中世文学を専門とし、平家物語など軍記物語に関する複数の著作もある。学生からの人気も上々。俊氏が大反対していた翔の芸能界入りをフォローし、実現させるなどの柔軟性もある。』と。
そして『フライデー』は、櫻井翔の母親が、まったく別人だとして「お詫びと訂正」をホームページ『フライデーデジタル』に出す。にもかかわらず、『週刊女性』はなぜまったく同じ誤記をしたのか。これには3つ考えらえる。
1. 『フライデーデジタル』のお詫びと訂正を『週刊女性』の編集者が見ていない。
2. 『フライデーデジタル』のお詫びと訂正が出たが、『週刊女性』の入校タイミングでは編集チェックがまにあわなかった。
3. 『フライデーデジタル』のお詫びと訂正を見たが、『週刊女性』編集部としてはこの事実を忘れた。
まあ、いずれにしても、編集部としては「世紀の凡ミス」だろう。
駒沢大学に『貴大学の櫻井陽子教授は、櫻井翔の母親か』と聞いてみたが「そうですとも違いますともいえません、プライベートですから」と繰り返すのみ。
また、ジャニーズ事務所に『櫻井翔の母親が駒沢大学の教授というのは本当ですか』と聞くと「その件については、『フライデー』が訂正記事を出しているから、それがすべてです」と話す。櫻井陽子教授あてに「あなたは櫻井翔の母親なんですか」と質問状を送ったが、返答は期限の8月14日までに来なかった。こんなアホな取材、時間をかけてはいられない。
まあ、記者としては、ミスはだれにでもあるから、しかたがないとしても、『櫻井翔氏の母親として紹介した駒澤大学文学部の教授の女性は、櫻井家とはまったく関係のない第三者でした。ご本人、関係者の方々にご迷惑をおかけしたことをお詫びし、訂正いたします』という『フライデーデジタル』の記事を仮に見逃したとするなら、「週刊女性」の編集者よ! あんたたちは、恥を知ったほうがいい。
この記事については、書いた記者がニコニコ動画で発売されたあとに関係者にお詫びをしたのが確認できた。実に立派な態度である。
ところが、肝心の『週刊女性』編集部は、お詫びも訂正もする気がないようだ。
「ちょうどお盆休みで合併号が出て、お詫びのタイミングがなかったのでしょう。まあ、よくとればですけどね」(契約記者)
『週刊女性』は週刊誌では、ジャニーズを叩くことができる稀少な媒体だけに、編集部にもがんばっていただきたいものだ。
そうした中で、悲しいニュースが入った。なんと『宝島』が休刊するという。産経オンラインはこう伝える。
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1974年創刊の月刊「宝島」が休刊 「キューティ」も (2015年7月29日付産経ニュース)
宝島社は29日、昭和49年創刊の月刊総合情報誌「宝島」と、平成元年創刊の女性ファッション誌「CUTiE(キューティ)」を休刊すると発表した。「宝島」は8月25日発売の10月号、「CUTiE」は8月11日発売の9月号が最後となる。
創刊初期の「宝島」には評論家の植草甚一さんらが編集に携わり、若者文化やサブカルチャーを牽引(けんいん)。近年はビジネス情報を強化するなどして刊行を続けてきた。「CUTiE」は、ストリートファッションブームの火付け役となった。
2誌ともに近年は部数が低迷しており、宝島社は「時代の気分をとらえて新しい価値観を提供してきたが、定期雑誌という形での役割を終えた」と理由を説明している。
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『宝島』が月刊から「週刊」になった頃、ほかの週刊誌に対抗するために、さまざまな切り口の企画を考えた。このことは、今も、私が何か記事や書籍を作るときの肥やしになっている。そして、今は亡き名編集長、種氏にもお世話になった。今、自分にできるのは、『宝島』が教えてくれたスキルを十分に活かして記事を作ることだけである。ただし、『週刊女性』のように「記事の間違いの訂正と謝罪」を記者に丸投げする編集部とは仕事をしたくないが、多くの記者は同じ気持ちだろう。 (鈴木雅久)
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