〈橋下徹公式HPトップより〉

橋下徹大阪市長と松井一郎大阪府知事が7月27日、「維新の党」を離党する意向を明らかにした。

ほら見たことか。

橋下の行動は容易に予想が出来ていた。数日前に地方選挙を控えた候補者が「維新の党」から出ると連絡してきたので、「当選したいのであれば、その選択は絶対にやめるべし、橋下の名前は近く『維新』から消えるだろう」と警告した直後だった。政治部記者でもない私が、なぜそのように予想できたのか。

◆橋下はマスコミに取り上げられなければ政治生命が持たないことを熟知している

答えは簡単だ。橋下は、おおよそ半年以上メディアに大きく取り上げられないと、自分の政治生命がもたない、「タレント政治家」だということを自覚しているからだ。注目を浴びるためであればテーマは何でも構わない。大阪都構想で敗北し、任期満了で市長、政界から引退すると語ったとき、私は市長を辞めたら、大臣の椅子確保の裏約束を取り付けて自民に鞍替えし、来年の参院選に出るだろう、と予想していた。だが橋下はそこまで我慢できなかったようだ。

世間は「戦争推進法案」についての報道であふれている。もう在阪のメディアでも「かつてのように橋下でレートが取れる時代じゃない」と見切りをつけ、扱いは大幅に減っていた。

橋下にとって、なにが我慢ならぬかといえば「自分に注目が集まらない」ことほど許せないことはない。

市長辞任再選挙の茶番までは、マスコミもかろうじて取り上げ、話題になった(させた)ろうが、都構想もダメ、咲州庁舎処分もダメ、自身が選んだ教育長はセクハラで退職(その後天下り)、職員に訴えられた裁判は敗訴続き・・・八方塞がりで、

「あかん、弾切れや・・・(大阪弁はしゃべれないものの橋下の内心)」

と、意気消沈していたところ、中央で、柿沢未途や松野頼久が民主らとの共闘を模索している。「これだ!」と目を付けた橋下は「内紛をしている場合ではない」とコメントしながら離党(!)を決意したのだ。そうだ、そうだ。橋下よ、お前の言い分は正しい。「内紛」の原因になったのは自分自身なのだから離党するのだろう。うん。これで橋下が維新の中で内紛の原因になることはなくなるだろう。

◆政策以外の行動原理は終始一貫している橋下

タレント政治家、橋下は全く信用に値しないけれども、彼の行動だけに限れば、実は結構一貫している。「いつでも威張っている」、「差別発言をしても許されると考えている」、「約束を守らない」、「気に入らないと投げ出す」、「不都合は他人に責任を押し付ける」。「平気で前言を翻す」。

なかなかどうして、一貫した行動性の持ち主だ。ただし行動原理一貫性に「政策」が含まれることは金輪際なかった。

読者諸氏は注目なさる必要はない。そうでなくとも奴は必ずまた「奇をてらった」形で、自らの存在をアッピールする行動をとり皆さんの前に現れることを予想しておく。

◆5月17日に「政治家引退」を表明したはずなのだが……

ただこの一言だけは覚えておいて頂きたい。本年5月17日大阪都構想の住民投票で敗れた時に橋本は「(12月の)市長任期後は政治家はやりません。政治家は僕の人生で終了です」と語ったことを。

私はこの「約束」を橋下は必ず反故にすると見立てている。

また、橋下だけでなく「維新」にありもしない幻想を抱いていた方々もそろそろこの現象にお気づきになって頂きたい。橋下は知事時代に退職金減額して、いかにも「経費節減」を実践しているかのパフォーマンスには気を配っていたけれども、要りもしないSPを付けた経費は税金からの出費だ。また知事時代、市長の現在を通して、首長としての給与を貰いながら、どれだけ自分の政治活動に時間と金を費やしたことか。

市長、知事などには出勤時間や政治活動の制約はないものの、公務員であることに変わりない。滋賀県の嘉田前知事が「日本未来の党」代表に就任した際は「知事の仕事と兼務できないだろう!」との県議会で批判と議決を経て党代表を辞任した。はて、嘉田氏には認められず、橋下氏には何故全くおとがめがなかったのだろう。

本人だけでなく、テレビを通じてあるいは選挙を通じて、「なんとなく」橋下を支えてきた人々にも責任の一端はある。もうやめよう。こんなわがまま坊やに付き合うのは。

と、ここまで書いたら橋下と一緒に維新を離党する!と宣言した松井知事が「もう一度大阪都構想を掲げて知事選で闘う!」と言い出した。橋下のコバンザメ松井はあまりにも小者なので(見かけはヤクザ風の強面だが)無視してきたが、「一事不再理」の原則を知らないのだろう。厳格に言えば条例に「一時不再理」は適用されないけれども、橋下が「都構想敗北、引退宣言」をした時点でこの話は終わっていたはずだ。

私があれこれ例を挙げるまでもなく、維新一派の妄想性がまた明らかになった。


◎[参考動画]【都構想否決】橋下徹政界引退を表明 ノーカット 第一部(Zipang News Watch2015年5月17日公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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