8月8日(土)、秋田県秋田市で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。
10代~30代の若者で7月に立ち上げた「SPADA(Sprout Peace and Democracy Akita:平和と民主主義を広げる秋田青年の会/スパーダ)」が主催した。若者の呼びかけによるデモは秋田では初めてのことだという。
[動画]青年主催 安保法案反対のデモin秋田 – 2015.8.8 秋田市(3分23秒)
遂に若者デモの波が秋田まで押し寄せ、安保法案に反対するデモが若者によって行なわれることとなった。
過去に3度、秋田市でデモの撮影をしたことがあるが、若者がデモにいるのを見た事はなく、今回の秋田での動きには驚いている。同じ土地に3回行って1人も若い人がいなかったのは秋田ぐらいで、秋田はデモ参加者の年齢が圧倒的に高い土地だ。
失礼を承知で言えば、このデモに参加している若者は多少年齢が高いし人数も少なかった。とはいえ、今までの秋田のデモの光景を考慮すると非常に画期的で、素晴らしい動きだと私は感じている。
これまで「若者デモ」と漠然と言ってきたが、取材を通してその条件を導き出した。以下の3つの条件が満たされていれば「若者デモ」と呼んで差し支えないと私は思っている。
・主催が若者(10代~30代)である
・若者率が参加者の1割以上を占める
・ネットで積極的に告知をしている
これまでのデモの中心的存在である中年が行なうデモとの違いを考えるとこれでいいはずだ。
普段のデモに全く若者がいないような地域でも「若者デモ」と銘打ったデモには少なくとも1割は若者が占めていた。数値的には低いと言わざるを得ないのかもしれないが、この数でも実際の現場としては驚くべき変化があり、もはやビジュアル革命だ。一般的には分かり辛いし、伝わらないかもしれないが、地方のデモでもそれなりの変化が起こっているということだけは覚えておいて欲しい。
シュプレヒコールは秋田のデモとしては珍しいショートコールのみで、しかも楽器が使われていた。その楽器が変わっていて、軽トラの荷台に搭載した和太鼓を叩いてリズムを取っていたのだ。これは、いわばアコースティックサウンドカーだ。車のチョイスも渋いし、なかなか出来ないデモのやり方だと感心した。
今回、デモを撮影していて、赤信号を進もうとしたデモ先頭の横断幕の人に「信号が赤なので止まってくださーい!!」と叫んで私が止めた一幕があった。デモを主催したSPADAは、デモを行なうのが初めてということで色々と不慣れかつスタッフも少なくて、なかなか目が届いていなかったので私が注意した。警備の警察官の指示がない場合、赤信号で止まらなければいけない。
その他、デモ隊がバス停や横断歩道等を塞いでいたりすると市民生活に支障が出たり、デモへの印象が悪くなったりするので、私は撮影中であっても即座にデモ隊を誘導したり注意したりする。良い絵を撮る以上にすべきことがあるという考えだ。「お前は誰だ?」という顔をされるのだが「~だから、~してください」と丁寧に説明しながら誘導をするので、納得して動いてくれる。
本来はデモ参加者の一人一人が注意すべきことなのだが、アピールに夢中だと意識がそちらに行ってしまうのは仕方ないとも言える。
実は、秋田駅前を所管する秋田中央警察署のデモ警備は珍しい方式で、信号無視をしそうになったのはデモ側の問題だけでなく、警察にも問題があると私は思っている。
その警備方法なのだが、デモに直接同行して徒歩で警備・誘導する警察官はおらず、デモ隊の最後尾にパトカー1台だけが付いていく、あとはデモコースの主要な信号機そばに警察官をあらかじめ配置しておき、デモ隊が来たら信号を操作したり、車を誘導したりする、というものだ。デモが通り過ぎた「信号機要員」の警察官は、先回りして次の持ち場に就くか、役目を終え警察署に帰還する。
この方式は、同じ東北地方の山形警察署(※山形県山形市等を所管)でも採用されている。
しかし、秋田市のデモコースは秋田駅東口周辺を円を描くような形で進むので、最初の信号から次の信号までショートカットが可能なのだが、山形市のデモコースは直線なので、次の持ち場へ行く警察官は走ってデモ隊を追い越し次の信号機へ行く必要がある。山形市のデモは制服警察官が全力疾走している姿が見られる珍しいデモだ。
ちなみに、銀座等を所管する警視庁・築地警察署・警備課の「信号機要員」は自転車を使って次の信号機へ移動をしている。自転車移動は比較的ポピュラーなデモ警備の手段である。
山形のお巡りさんにも自転車を使わせてあげて欲しいと彼らの走る姿を見て思う。もしかしたら、冬は雪が積もる地域なので年間を通して使えない自転車は備品として認められないとか、そんなことがあるのかもしれない。
恐らく、警察署には何台かの自転車はあるだろうが、いくら考えても分からないので、次に山形に行ったら事情を聞き、更にはデモ警備での自転車使用を提案してみるつもりだ。
この秋田・山形方式の警備は、警察側からしたら少人数でスムーズにデモを進行させることができるので便利なのだろう。デモ側からしても直接警備する警官がいないのでデモ隊への圧迫感もなく自由に出来て良いはずだ。車道上に警察官がいないので写真も撮りやすい。
しかし、一部の警察官がいない信号では注意しなければならず、中途半端に警察官がいる分、油断してしまい信号無視をしそうになった。
もう自動車免許の講習のようであるが、デモ参加者には「車道を歩いている自覚」を持ってもらうしかないので、場合によってはデモ出発前に車道を歩く事についての注意をしたほうが良いかもしれない。警備スタッフが少ない場合は特に必要な気がする。
「何も言わなければ賛成するのと変わらない」そう叫ぶ、秋田の若者たちは和太鼓と共に立ち上がった。
[2015年8月8日(土)・秋田県]
▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。
《ウィークリー理央眼》
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