8月30日に国会議事堂前でおこなわれた、安全保障法案への大規模な抗議は、韓国でも報道されていました。7月に法案が衆議院で可決されて以降、これまでもニュース専門チャンネルのYTNが「戦争したくなくてふるえる。」デモの様子などを取りあげてきましたが(その時は「日本 軍事大国化 始動」という物騒なテロップが……)、普段あまり政治に対して声をあげない日本人が12万人も集まったこと、他の地域でも同時多発的に抗議がおこなわれたことなどが紹介されていました。ウナの友人も駆けつけたそうで、彼女からの画像を見るとひとめで、「あまりの人の多さにヤバい」ことはよくわかりました。
韓国で最近、多数の人が集まったイベントというと、やはり先月の光復説(解放記念日)につきます。8月15日は景福宮前の世宗大路は完全通行止め、歌あり、パフォーマンスありのイベントステージができていたり、大極旗がそこかしこに飾られ「私達は皆、大韓民国」なんて文字パネルも登場して、大変にぎやかな様子でした。
そんななか目をひいていたのが、韓国政府の女性家族部が主催した「日本軍“慰安婦”問題に対する、学生・青少年作品 公募展 受賞作」と題した、従軍慰安婦についてのイラスト展でした。多くの家族連れが足をとめ、絵を目にして色々と話しています。世界中の人が集まる場所で慰安婦展をすることには、正直私は違和感を覚えました。しかし韓国の歴史からは、切り離すことのできない問題なのでしょう。根本的な解決がなされないまま時間だけが過ぎていくことが、本当に残念でなりません。
景福宮のすぐ近くにある、日本大使館前にも足を運んでみました。というのもここには、慰安婦にされた少女を模した「平和の少女像」があり、かつ8月12日には自身に火を点けて抗議をした人が現れて、大騒ぎになったからです。
たどり着いてみると、警察のものものしい警備が……。「BOYCOTT JAPANESE GOODS」「日帝侵略戦犯! 安倍晋三総理! 謝罪賠償促求!」などと書き、さらに旭日旗にハーケンクロイツを組み合わせたプラカードを掲げた一団が少女像の横に集まり、「安倍晋三は謝罪しろー!」などと、気を吐いていました。ヒー! 恐い……。最初は遠巻きに見ていましたが、警備がゆるかったので近づいてみることにしました。日本人とわかると糾弾されるのではとビクビクしていましたが、彼らは私のことなど完全に無視。真隣にたっても気にも留めず、目は日本大使館にのみ向いていました。
程なくして参加者が、安倍晋三に見立てた空気人形に火を点けた瞬間、警察が消火器をブシューっと撒いてあたりは騒然。私も消火器の粉を吸いまくり、むせまくってしまいました。次に彼らは道端に散乱した安倍プラカードにも火を放とうとしましたが、これまた瞬時に消火器で制圧。もうドロロン煙幕状態で、何も見えやしません。少女像も当然、消火器の粉にまみれていました。
ひととおり抗議を終えたら参加者達は満足したのか、三々五々散っていきました。この消火器の粉、どうすんだよ! 一部の参加者が後片付けをしたり、少女像を布で拭くなどしていましたが、その拭き方は「もっと優しく扱え!」と言いたくなるほどのもので、とてもイライラさせられました。
違和感を覚えたり、イライラしたり。でもこれは日帝時代の植民地政策と戦争が生んだものなのだから、やはり戦争はいけない。過去の戦争の清算も済んでいないのに、新たに戦争ができる国を目指すなんて、愚の骨頂としか思えません。だから安全保障法案なんて、ダメに決まってます。でもそんなモヤっとした気分は、光復説70周年記念の花火大会に行ったら見事にリセットされました。きれいなものや美しいものは、心を穏やかにする力があるのですね!
▼サ・ウナ
韓国の地方都市にある某大学に留学中の女子大生。世界中から来ている学生たちによる、ミックス言語で繰り広げられている「かわいい~」「○○さんかっこいい~」「○○が××のことを好きだって言ってたよ~」などの会話に、日夜イライラしながら学業に勤しむ25歳。
《韓国特派員・ウナの留学日記》
◎《05》メッコールの里・椒井薬水(チョジョンヤクス)は韓国版玉川温泉?
◎《04》日帝支配からの解放を祝う「独立記念館」へ
◎《03》日帝支配時代について、フツーに教えてます
◎《02》「ゆとり」は世界の共通語!?
◎《01》MERSアタック!? in ソウル