鳴り物入りで、英ワールドカップの日本代表の活躍を受けて開幕した感のある今年の「ジャパンラグビートップリーグ」。初日に続いて「集客」が2日目もぱっとしない。試合はつまらなく、天気も駄目ダメだったが、この悪しきムードを一掃したのは、「秩父宮」に登場した意外な「大和撫子」だった。
◆「五郎丸効果」で関係者は盛り上がっているものの……
五郎丸歩(ヤマハ発動機)の「五郎丸ポーズ」が流行語大賞をとり、ラグビー日本代表メンバーはテレビ番組、CMに雑誌にと引っ張りだこ。ラグビーの大ブレイクがやってきたと思いきや、なんと11月13日に行われた開幕戦の「パナソニックーサントリー戦」で前年の8月の開幕戦より370人少ない、1万792人の観客数で責任問題となっているのが「ジャパンラグビートップリーグ2015-2016」 。ここではラグビー関係者が観客をかき集めるのに奔走している。
初日を終えると「ジャパンラグビートップリーグ」の関係者たちは、出場する東芝やリコーの関係者のみならず、マスコミ相手に急遽「来てください」と緊急コール。ホームページには、磯山さやかが初戦を観た「楽しかったです」との感想のツイッターと前出・人気ラガーの五郎丸のつぶやきを並列で掲載するなど痛いほど必死に集客をPRしている。
2日目、秩父宮ラグビー場で行われた「リコーブラックラムズ VS NTTコミュニケーションズシャイニングアークス」(午前11時40分開始)と「東芝ブレイブルーパス VS クボタスピアーズ」(午後2時開始)は、雨がぱらつく中、少しずつ観客が集まってきて、スタンドの半分強をなんとかして埋めた。
「それでも、マスコミは押し寄せました。記者は25人、カメラマンは30人以上。こんなにマスコミが押しかけたのはちょっと記憶がありません。平尾誠二(現神戸製鋼コベルコスティーラーズ総監督兼任ゼネラルマネージャー)が率いた全日本が1991年にワールドカップで初勝利して以来かも」(ラグビー雑誌記者)
◆「記念観戦」の一見客がほとんどだった
しかし試合は「リコー VS NTTコミュ」は、39-12でNTTが勝利し、「東芝-クボタ」のマッチは47-3と一方的で、ダブルヘッダーにもかかわらず後半は2試合とも負けているためかバックスも守備で走らず、やや気が抜けた雰囲気がスタンドを支配。2試合目の「東芝 VS クボタ」戦では日本代表のキャプテンで、東芝でフランカーを務めるリーチ・マイケルが最初のトライを決めた前半が終わると「雨も強いし、もういい」とばかりに多くの人が席をたった。つまり「記念観戦」の一見客がほとんどだったのだ。
「休みなのに観戦しろと言われたので来た」(20代の東芝社員)、「派遣社員ですが、昨夜に上司から頼まれたので応援に来ました」(30代リコー派遣社員)という、「人数合わせ」の観客ばかりの中、西側スタンドで「GO! GO! スピアーズ!」と黄色い声をあげて男性客の視線を集めたのは、「スピアーズ」のチアガールたちだ。
◆クボタ「スピアーズ」のチアリーダーは質が高い……
ちょうど踊りの練習をしていたのだが、これが売店でごった返す空間で行っていたため、いっせいに男性客に取り囲まれる。
「撮影しないでください」とスタッフが注意してまわる。
「じゃあ、こんな目立つところでやらなくても」という声もある中、
「実は『スピアーズ』のチアリーダーは質が高くて、ファンがついているメンバーがいるほどなんですよ。僕も実はチアリーダー目当てに来ました」(男性客)というラグビー関係者が涙ぐみそうな人も。
それでも、初心者でもわかるように、「今のプレイはノックオンです。ボールを○○選手が落としたために反則となります」などプレイのひとつひとつに電光掲示でリプレイが出て、解説のアナウンスがついたり、ファンサービスで試合前にプレゼントを選手が観客席に投げ入れるなどして、集客への工夫が感じられた。
「03年からリーグがあるが、チームで実力差がありすぎる。少なくとも実力を均衡にしないといけない」(前出・ラグビー雑誌記者)との声も。
一番盛り上がるのが「チアリーダー」では情けない。2019年のワールドカップに向けてさらなる充実が求められるラグビー界の現状と課題がかいま見えた秩父宮だった。
(小林俊之)
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