吉松さんの反対尋問は、異常な展開になってきた。
角地山宗行弁護士 あなたはCBSラジオで被告(谷口氏)が何人もの女性を殺したと公に発言されていますね。具体的には何人ぐらいでしょう。
吉松育美 まず、私は断定していません。その情報はすべてインターネット上で伝聞したものであり、私が自ら谷口さんが人殺しだと言ったことは一度もありません。
角地山宗行弁護士 では、谷口さんが何人も人を殺したというふうに言われていることを……。
吉松育美 そのままインターネットに書いてある言葉を言いました。
角地山宗行弁護士 あなたは被告が本当に人を殺したことがあると思っていますか?
吉松育美 それは本人に聞いてください。
角地山宗行弁護士 では、人を殺したと思っていないにも関わらず、被告を人殺しと言ったということですか?
吉松育美 インターネット上で今までの川田亜子さんの事件を調べてみると、そのようなことをネット上の新聞や週刊誌さまざまなところで見ることができます。
角地山宗行弁護士 ですが、インターネット上の情報というのは、虚偽と真実が入り混じっているということはご存じですか?
吉松育美 はい。
角地山宗行弁護士 にも関わらず、真実かどうかも分からないインターネット上の情報を信じてあなたは被告のことを人殺しであると……。
吉松育美 人殺しと言ったことはありません。
角地山宗行弁護士 被告が何人もの人を殺したと発言されています。
吉松育美 それは私が判断したことではありません。それはすべて他の第三者の人たちが言っている書いたものをそういうらしいという風に発言しています。
角地山宗行弁護士 あなたは他にもですね、多くの女性がパワハラ、セクハラ、ストーキング、精神的な虐待、恐喝、スキャンダルの脅しといった被告からの被害があると言ってますけど、その根拠もインターネット上の噂ということですか?
吉松育美 また、私の友人からも聞きました。
角地山宗行弁護士 ミス・インターナショナルという影響力のあるあなたが軽々しく被告が人殺しだとか、どうしたとか、そういったことを言ったことで被告が多くの被害を被ると想像しませんでしたか?
吉松育美 しませんでした。
角地山宗行弁護士 真実かは分からないけれどもあなたが被告を犯罪者とか、みんなが被告を犯罪者扱いするから、あなたも被告を犯罪者扱いしていいと思ったのですか?
吉松育美 違います。
角地山宗行弁護士 あなたは谷口さんを加害者、自分を被害者と仕立てあげて世間に公表して注目を浴びたかっただけではないのですか?
角地山宗行弁護士 違います。
角地山宗行弁護士 私からは以上です。
(続いて、被告代理人が角地山宗行弁護士から池田尚弘弁護士に交代する)
池田尚弘弁護士 被告代理人池田から質問します。まず、久光製薬との関係について質問します。先ほどあなたは中臣会長からCMを頼まれてドラフトができた2013年6月、90%ぐらい契約が成立していたという風におっしゃいましたね。契約の手順として会社が久光製薬と直接受けるのではなくて間に電通とか広告代理店が入るのはご存じですか?
吉松育美 はい。
池田尚弘弁護士 今回であれば久光製薬の間に電通が依頼を受け、その子会社であるホイッスルが間に入っているわけですね。おそらく電通やホイッスルは、誰をタレント、キャラクターとして採用するかとかいろいろ調べた上で決定するのですが、そういったCMの手続き、契約の手続きについてはご存じですか?
吉松育美 はい。
池田尚弘弁護士 今回、電通さん、ホイッスルさん、あと吉松さん、お話をされた2013年9月、甲13号証8ページ、98、電通の町田さんがこう言っています。「われわれタレントさんとの契約の時にですね、ブッキングする際に当然、芸能事務所の方とお話をすすめるわけですけど、吉松さん、正直IYグローバルさんというのがわれわれ普段、お付き合いがなくて分からなくて、で、分からない部分がたくさんあるので、事務所としてそれは大丈夫ですか? 僕ら広告代理人としてはキャスティング会社である立場の方にこれは調べてくださいよという風に依頼をしているんですよ……」。すなわち電通さんは、電通さんは吉松さんと取引をしたことがないので、この人を久光製薬のキャラクターとして採用していいか調べていたと、そういうことなんです。
吉松育美 いえ、以前にも電通さんとは私の会社でやりとりをしていたことがあります。
[補足解説]
ここで出てくる「ホイッスル」について調べてみたところ、電通の子会社・関連会社一覧には掲載されていなかった。ネットで調べてみてもホイッスルについての情報は極端に少ないが、バーニングプロダクション系の広告代理店として知られるプロシードの主要取引先一覧に名を連ねていた。
ホイッスルは2000年に設立され、2002年に電通の子会社である電通キャスティングアンドエンタテインメントと資本提携を結び、電通キャスティングアンドエンタテインメント内に営業所を置いている。
久光製薬のCM出演交渉では、当初、吉松さんの交渉相手は久光製薬だったが、途中からホイッスルが入ってきたという。契約書によれば、契約の当事者は吉松さんが代表を務めるIYグローバルと株式会社ホイッスルとなっている。ケイダッシュ案件ということでトラブルが起こることを恐れた電通が別働隊のような形で出してきたのがホイッスルだったのだろうか。(続く)
○吉松育美さん公式サイト=http://ikumiyoshimatsu.com
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○吉松育美さんYouTube=http://www.youtube.com/user/yoshimatsuikumi
▼星野陽平(ほしの ようへい)
フリーライター。1976年生まれ、東京都出身。早稻田大学商学部卒業。著書に『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)、編著に『実録!株式市場のカラクリ』(イースト・プレス)などがある。