昨年8月、大阪の寝屋川市で中学1年生の平田奈津美さん(13)、星野凌斗(りょうと)くん(12)の2人が殺害され、遺体で見つかった事件は衝撃的だった。ちょうどお盆にあたる2015年8月12日に、平田さんと星野くんが行方不明となり、周囲は騒然とした。調べから、2人が寝屋川のコンビニに一緒にいたことが判明。お互い行動を共にしていたと推測された。だが、翌13日の深夜には高槻市の物流センターの駐車場で、粘着テープにまかれた平田さんが遺体で発見され事件は進展した。そして、事件発生から8日後の21日に、近くに住む山田浩二(45)が容疑者として逮捕された。

その後、残念ながら星野くんも、大阪府柏原の山林で遺体として発見されている。大阪地検は山田浩二容疑者を、平田さんに対する殺人罪で起訴した。平田さんの死体遺棄容疑については、遺棄した時点で平田さんが死亡していたことをさらに詳しく立証する必要があると判断し、現在(2015年12月1日)は処分保留としている。

前科もあり、出所後は福島原発で除染作業をしていたこともあるという、契約作業員・山田浩二容疑者の闇は深い。中学時代、窃盗、傷害などさまざまな犯罪に手を染めていた山田は、過去には覚醒剤の売人などの前科もあるという。

しかも服役中に何度も名前を変えた山田(金、渡利、柴原、岸本)は、塀の中からの『手紙』により女性との交際を求めていた節がうかがえる。刑務所事情に詳しく、獄中の受刑者の更生と社会復帰を支援する同人雑誌『獄同塾友会』の編集長を務めている作家の影野臣直氏が語る。影野氏もこの事件に興味をもち、現場への取材などを敢行している。

寝屋川中一男女殺害事件容疑者山田浩二が手記を投稿していた受刑者の同人雑誌『獄同塾通信』(現『獄同塾友会』)

「なぜなら、山田は少なくとも3度、『獄同塾友会』に投稿してきます。といっても、12年前(2003年)に刑務所内での同人誌としては異例の2000部もの発行部数を誇った、塾友会の前身である『獄同塾通信』でのことですがね。投稿のたびに、彼は名前を渡利だったり岸本だったり改姓していますが、明らかに最初の投稿で、女性や同じ境遇にいる方たちとの文通を求めているように思えます」

山田の手記は獄同塾通信の15号(2003年6月15日発行)、16号(同年9月15日発行)、17号(同年12月15日発行)に掲載されている。15号では渡利浩二で、16、17号では岸本浩二と改名している。なぜ、名前が頻繁に変わったのだろう。

「結婚や養子縁組によって名前や本籍地を変えれば、前科がいくつあってもブラックな履歴は残らないといわれています。だから、ローンなども組めるようです。まぁ、山田の場合は車で移動するので名前や住所などを変えていなければ、交通違反などで捕まったときに面倒なことになります。そのため、薬物で逮捕された履歴を消さなくてはならない。違反だけでなくとも、警察に職質されたとき、クスリの前科がある者はすぐ尿検査を促されます。そうしたことを避けたかったのではないでしょうか」(前出・影野氏)

影野氏が指摘した手記は、初代編集長を務めていた大場知子編集長の時代に投稿されたものだ。

たとえば『渡利浩二名義』の獄同塾通信15号のタイトルは、『未だ見ぬ悠紀へ』とあり、こんなことが書かれている。

「起訴事件が5件有りなので5~6年と少しを務めることになりそうです(涙)。考えただけでゾッとしますが、今は自分なりに反省しています腹を括っています。
……(中略)……
還暦を過ぎた両親には、少し遅くなったけど親孝行をしてやりたい、するなら今しかないですから。また、1日も早く運命の女性と出会い結ばれて、遠いどこかで『早よ、生んでくれやぁ!』と叫んでいる未だ見ぬ子供をこの世に誕生させてやりたいです。これでも、子供の名前は決めているんです。……以下、省略」

影野氏が続ける。
「もちろん、手紙の原本などは残っていないが、本文中では贖罪の箇所が多くみられます。文面は普通の青年のそれであり、中学生を誘い込んで殺すような残虐性は本文中からは見いだせません。むしろ、結婚願望というか、子をなして普通の生活への憧憬を感じますね」(続く)

(小林俊之+影野臣直)? ※取材協力『獄同塾友会』

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