3月29日15時から東京地裁429号法廷でいわゆる「堅川SLAPP」訴訟(平成27年[ワ]第4562号 損害賠償請求事件、佐久間健吉裁判官)の判決言い渡しが行われた。判決は「被告に39,614円の支払いを命じる」という内容であった。

この裁判は原告である「地方公務員災害補償基金」が被告の園良太氏に対して、江東区の職員Kが「首を絞められた」として損害賠償請求を提起した裁判だ。

園良太氏

事件の背景や経過は、「堅川SLAPP訴訟をたたかう会(https://tatekawaslapp.wordpress.com/)」に詳しいのでご参照いただきたい。

極めて簡略な要約をすれば、園氏が江東区職員K氏の「首を絞めた」との原告の主張に対する民事の損害賠償事件である。しかし争いの事実が存在しているのであれば、本来園氏は刑事事件として「暴行」なり「傷害」なりで事件直後に取り調べの対象のなっていなければおかしい。

偶発的な「喧嘩」や「もめ事」で当事者同士が損害賠償を争う(民事係争や法廷外での示談交渉)ことは珍しくはないが、「地方公務員災害補償基金」という公的機関が職員を暴力行為の被害者に仕立て上げるのであれば、まず警察なり、検察なりに園氏が暴力を振るった事実を訴え出るのが筋だ。

事実として「傷害」なり「暴行」の犯罪があれば、公務員にはそれを告発する法的な義務がある(刑事訴訟法239条2項「官吏又は公吏(筆者注:公務員のこと)は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」)。これは訓示規定ではなく、したがってK氏(あるいは「地方公務員災害補償基金」)は刑事訴訟法上の義務を無視しながら、民事訴訟で損害賠償を行うという歪んだ行為をあえて意図的に行っていると解釈せざるを得ない。

原告から証拠として提出されたビデオ映像には、園氏が手を伸ばした場面は撮影されているものの「首を絞めた」場面はなく、法廷ではスケッチによる「証拠」が原告側から示されたという。しかしその内容や主張は度々変わっている。

本当に園氏がKの首を絞めた事実があったと私には到底思えない。判決後、園氏に見解を聞いた。

「この裁判は思想弾圧裁判の典型だと思います。被害とされる事実はそもそも存在しないのに、無茶苦茶な内容を押し付けてくる。証拠とされるスケッチは捏造され内容も途中で変わっていますが、判決文の中では裁判官は『それでも良い』というような表現をしている。証拠の不確実性を全く問題にはしていません。診断書があれば証言の変節も問題なしとしている。全く思考停止の判決です。この判決が適用されれば誰しもがこのような手段で弾圧を被る道筋をつけた。いつの行為かわからない、しかも事実がなくても権力に対する損害賠償を認めるという点で、この判決は権力が市民を弾圧しようとすればこんな無茶が通ると認めた点で深刻であり、全く不当な判決です」(園良太氏)

開廷を前に14:45から傍聴券が配布された。60名近くが傍聴券を求めて列をなし、東京地裁前には30名を超える公安警察があつまり、傍聴希望者の姿をビデオ撮影していた。

判決主文が言い渡されると被告の園氏は「不当判決を弾劾する!」と声をあげ、傍聴席からも次々に抗議の声が上がった。判決言い渡しであるから要する時間は数分であることは明白であるにもかかわらず、悪名高き東京地裁429号法廷(常時警備法廷)の入り口には多数の職員や公安警察が壁を作り、法廷内にも25名以上の職員が監視を行っていた。

この裁判を報じたマスコミはないだろう。しかし弾圧の水位は日常の中でじわじわと上昇していく。事実無根を根拠にした園良太氏への思想弾圧裁判は権力へ抵抗するものへの見せしめ以外の何物でもない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

新日本キックボクシング協会の前身となる日本キックボクシング協会が12年の年月を経て復興したのは1996年3月でした。当時、比較的安定していた3団体あった中のひとつのMA日本キックボクシング連盟から突然の脱退。諸々の原因と経緯は省略しますが、あれから本当に早い20年でした。

そして記憶に残る多くのチャンピオンが誕生しました。そんな中で、タイ国の殿堂ラジャダムナン王座奪取した武田幸三、石井宏樹の存在は日本国内戦に於いても大きい存在感がありました。そして今、江幡ツインズが新たな伝説に残る存在に挑戦中です。

MAGNUM.40 / 3月13日(日)後楽園ホール17:00~21:10
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会

◆56.5kg契約5回戦

WKBA世界スーパーバンタム級チャンピオン. 江幡塁(伊原/56.3kg)vs グライペット・ポー・タワッチャイ(タイ/56.3kg)
勝者:江幡塁 / 2-0 (主審 少白竜 / 桜井 49-47. 宮沢 49-49. 仲 49-48)

グライペットvs江幡塁。ラストラウンドに江幡がラッシュするが、体幹が崩れないグライペット

江幡ツインズも25歳。ラジャダムナンスタジアム王座初挑戦の年からやがて3年が経過になります。2度目の挑戦を目指す塁は、これまで6連勝(4KO)中3連続KO勝利。その塁の相手は元・ラジャダムナン系スーパーバンタム級9位という“元”であってもそう遠い昔ではない実力を持った選手。被弾しながらも戦う中で相手の弱点を見つけ、KOに結び付ける展開が多かったところ、今回の相手はいくら攻めても怯まず、鋭く重い蹴りで返され、江幡の腕や脇腹が赤く腫れていく力強さが目立ちました。塁本人に反省点はあるでしょうが、それでも的確さと手数で優り、観てる側からすれば攻防あるいい試合になって僅差ながら勝利を掴みました。

江幡の連打でも崩れないグライペット

◆日本フェザー級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.重森陽太(伊原稲城/57.0kg)vs 2位.石原將伍(ビクトリー/56.9kg)
勝者:重森陽太 / 3-0 (主審 椎名利一 / 桜井 49-48. 宮沢 50-47. 少白竜 49-47)

昨年10月、内田雅之(藤本)から王座を奪った重森陽太は初防衛戦として、パンチの強い石原將伍を警戒しつつ、長身の有利さを利して後半から鋭い蹴りで差をつけて判定勝利。

石原將伍vs重森陽太。後半、攻めに出た重森の伸びるハイキックはいつもながら威力がある

◆日本フライ級王座決定戦 5回戦

1位.泰史(伊原/50.8kg)vs 2位.石川直樹(治政館/50.8kg)
引分け / 三者三様 / (主審 仲俊光 / 椎名 49-49.10-9 / 宮沢 48-49.9-10 / 少白竜 49-48.10-9)

麗也(治政館)が返上した王座を泰史と石川直樹が争い、三者三様の引分け。延長戦により2-1で泰史が第8代日本フライ級チャンピオン。公式記録は引分け。

石川直樹vs泰史。決定打に欠ける展開ながら諦めない攻防が続いた日本フライ級王座決定戦

◆70.0kg契約5回戦

緑川創(前・W級C/藤本/70.0kg)vs 喜多村誠(前・M級C/新潟/69.5kg)
勝者:緑川創 / 2-0 (主審 桜井一秀 / 椎名 49-49. 仲 50-49. 少白竜 49-47)

“前・日本チャンピオン”対決は緑川創が僅差の判定勝利。ムエタイ王座を目指し、日本王座を返上した状態ではあるが、“現在”の地位が無いため、一般からみれば“第一線級を退いた”かのような印象である。何らかの肩書が欲しいところ。

緑川創vs喜多村誠。ムエタイ王座挑戦者決定戦のような図式の結果は緑川の勝利

◆73.5kg契約3回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/73.5kg)vs ヨードチャット・プーケットトップチーム(タイ/73.2kg)
引分け / 1-0 (29-29. 29-29. 30-28)
チャンピオンとしてもどかしい試合が続く斗吾はまたも消化不良の引分けに終わる。

◆バンタム級3回戦

日本バンタム級1位.HIROYUKI(藤本/53.5kg)vs同級5位.勝岡健(伊原稲城/53.5kg)
勝者:勝岡健 / 0-3 (28-29. 28-29. 28-29)
日本フライ級王座を麗也に奪われ、バンタム級に転向したHIROYUKIは、パワー不足か、勝岡健にダウン奪われる失点の判定負け。巻き返す底力は前チャンピオンの意地。2階級制覇は遠のいたが、20歳の若さで再浮上に期待。

◆他、6試合

4月17日(日)のTITANS NEOS.14では江幡睦がフォンペート・チューワタナ(タイ)と5度目の対戦。過去、キックで2勝。ラジャダムナン・バンタム級タイトルマッチで2敗。フォンペートも王座を手放し、タイトルは懸かりませんが、今度はノックアウトで圧倒する勝利が期待されます。弟の塁が再ランク確実視される中、睦はフォンペート越えを果たさないと再度のランクインは難しいところでしょう。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない。」

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抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

女性が化粧をはじめとした「外観」に注意を払うのは自然な身だしなみとされる。女性だけでなく、男性も近年は「スルスル肌」が好まれるようで、体毛やヒゲの脱毛までを請け負う業界が結構繁盛しているようだ。「へー」と間抜けに感嘆するまでだが、そこまで「脱毛」っていいもんなんだろうか。

◆心理的負荷を与える「脱毛現象」01──抗がん剤投与による「脱毛」現象

人為的に「脱毛」をしなくとも、深刻な心理的負荷を与える「脱毛現象」がある。1つは男性(一部女性)の「ハゲ」であり、他方は抗がん剤投与による「脱毛」だ。

抗がん剤投与による「脱毛」現象が、実は抗がん剤投与終了後に何年も継続しており、それに悩んでいる人が多数いることが最近の調査で判明している。数年たっても抗がん剤投与以前の半分も発毛が見られず、それに悩んでいる人の数が相当数に上るという。

年齢にもよるが、若年癌が増加傾向にある中で、抗がん剤投与後の女性が頭髪の様子を気にするのは無理もないだろう。だから、がんに限らず薬剤の副作用によって脱毛を強いられた人には「かつら」や「ウイッグ」が実生活の上で有効だと思う。そのような方々はただでさえ、体の調子が思わしくないのだから、少しでも心理的負担を減らし日常生活での気がかりを軽減されるのが賢い選択だと思う(もちろん、本人がそう考えれば、だが)。

◆心理的負荷を与える「脱毛現象」02──男性の「若ハゲ」

一方同様の現象でも男性の「ハゲ」の場合は少し事情が異なる。これは自分自身が経験したことなので「その寂しさ」をしっかりと噛みしめながら回顧できる。「若ハゲ」はたしかに強い心理的ストレスをもたらす。私の場合、もとは「こんなに太くてクセのある髪の毛なんか、減ればいいのに」と思うほどの剛毛かつくせ毛で、毎朝頭髪を整えるのに相当苦労していた。

「願いは叶った」のかどうか知らないけれども、まだ20を少し超えた頃、額の生え際が少し後退し出しているのに気が付いた。髪の毛全体も以前ほどの剛毛ではなくなっていて、鏡を2枚用いて頭のてっぺんを見ていると、頂上部分に生え方の薄い部分がある。

この時は、ショックだった。まだ20を少し超えたばかりで「もうハゲかい」と、何ともいえない寂しさを感じたことを今でも記憶している。ご経験のある読者の方々にはお分かりいただけようが、「ハゲ」を発見した時のショックは、「外見がカッコ悪くなる」という理由もあろうが、私の場合「ハゲ=老い」の象徴という概念があったので、この年でもう「老化」が始まったのかというショックが大きかった。外見を気にするような細かな感性を持ち合わせていない私は「ハゲ」て毛髪が薄くなった自分の姿よりも、既に老化に向かっている自分の身体に激しく動揺したものだ。

とはいえ、これといって対策は講じなかった。自然に抜けるものは仕方ない。当時でも「脱毛予防剤」や、「育毛を促す」怪しい器具は販売されていたし、アデランスをはじめとする業者の広告は派手に展開されてはいたが、それらへの関心は一度も湧いたことはなかった。

◆自然の摂理にもかかわらず、露骨に感じた「ハゲ差別」

でも、「ハゲ差別」は露骨に感じた。人の体のありようについて、ことに女性の風貌についてコメントすれば、それが否定的な内容であれ、賞賛する内容であれ「女性差別だ」とする極端にも思えるほどの「フェミニズムコード」が存在するが、男性の「ハゲ」について、直接ではなくとも、コソコソ「あの人、最近薄くなったわね、かわいそうに」と陰口を叩かれることは、深刻に当人を傷つけるのだがいまだに「ハゲ差別」についての、真剣な議論は見当たらない。

いや、「ハゲ」程度で真剣な「対応コード」など作る必要がある!などと私は思っていないけれども、気の弱い男性たちはご経験のない方々が考えられないほど「ハゲ」を悩み、その解決に膨大な投資をしている。

厚労省認可の「育毛剤」が発売されてかなり時間がたつが、あれはどれほど効果があるのだろうか。私は試したことはないので判らない(正直に言えば興味もない)。育毛剤を家で頭に振りかけるくらいなら、職場や周りの人たちに気が付かれることはないだろうが、最大の悲劇は「分かりやすいかつら」を使用してしまったケースだ。

◆出来の悪いかつらほど残酷なものはない……

自分が若年性の「ハゲ」を経験したためか、私は男性の「かつら」利用者はいとも簡単に見出すことが出来る。「あーあ高いお金を払って……」と同情を禁じ得ないのだけれども、出来の悪いかつらほど残酷なものはない。「このひと生え際見えないわ。高い金払ってかつら買ったんだろうなー。外したらこんな感じでハゲているのかなー」と意地悪い想像が勝手に膨らむ。

また、各種「増毛法」商法もいかがわしいことこの上ない。抜け毛が多くなって薄くなった頭髪の対処として、残っている1本1本の髪の毛に、根元から3本の人口毛を結びつける増毛法がある。これは残っている髪の毛が抜けない限りは1本が4本になるのでボリューム感を維持できるが、もとの1本が抜けた時は一気に4本が抜けることになり、普通の脱毛よりも頭髪減少がさらに顕著に現れる。そうなればまた仕方なく残り少ない毛髪にまたしても3本の人口毛を結びつける施術を繰り返さなければならない。でも自然毛はどんどん抜けてゆくから、いずれはこの対処法は効果を失ってします。

ああ、気の毒な我が「ハゲ」被害者よ!気に病む人たちは何百万円も出費している。

◆私の妙案──禿げを隠さず刈り込めば世界は変わる!

私ははじめこそ、気が滅入ったが、ある時、妙案を思いついた。薄毛は伸ばしてハゲ部分を隠そうとすると、とても目立つ。逆に短く髪の毛を刈り込むと思いの外目立たない。2ミリから5ミリほどの超短髪に散髪屋で刈り込んでもらうと、周囲から見た印象もほとんど「ハゲ」ではなくなる。頭髪を洗う手間も省ける。

前述のように抗がん剤投与などにより、脱毛が余儀なくされている人を除き、「ハゲ」た男性諸君! 一度超短髪をお試しあれ。かつらや、いかがわしい増毛法に吸い上げられる際限ない経費が一瞬で止められる。さっぱりして、気分が変わること間違いない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』!

プロ野球公式戦開幕を前に、選手が金銭のやり取りをしていたことが問題とされた。試合前のノックでエラーをした選手への「罰金」的な徴収から、「声掛け」担当した選手が当該試合に勝利すると各選手から集めたお金を手に入れる手法など様々な行為が指摘された。プロ野球選手が「わざと負け」たり、「わざと勝ったり」する行為に手を染めれば、それは明らかな背信行為だから指弾されたり、球界から追放されても仕方ないともいえる。

◆日常的に「賭け」を強いられる職業としてのプロスポーツ選手

しかし、彼らは職業運動家(プロスポーツ選手)なのだ。勝つか負けるかを常に争う世界は、年度ごとの予算を立てて、決算を締める商売の世界とは「仕事」への向き合い方がおのずから異なる。

例外もあるがルールが複雑になるほど優秀なスポーツ選手には、明晰な頭脳が要求される。生まれ持った肉体的運動能力の優位さだけでプロの世界では活躍できない。一流選手は皆、聡明である。と同時に彼らはデータや経験値、直感に基づいて、あるプレーに「賭ける」ことも日常的に行う。

野球の打者であれば投手の投げる球種を予測(山を張る)したり、打席の中で立つ位置を微調整したりする。この行為は経験値に依拠しているが、最後は「勘」に頼るものであり、その点で彼らは日常的に業務上である種の「賭け」を強いられることと直面せざるを得ない職業人だといえる。

◆「賭け」の要素が入り込んではならない職業としての行政

この性質と全く逆に位置するのが行政に携わる人たちの仕事だ。行政は法律なり条例に依拠し議会の決定を受けて行われる公的業務であるから、本来行政に「賭け」の要素が入り込む余地はないし、入り込んではならない。

つまり「賭け」を論じる際には前提としてまず、行為者が誰であるか、そして「賭け」と言われるものの実態がいかなるものであるかが冷静に分析されなければならない。その上で行為の正邪が判断されるべきだ。

◆公営による競馬、競輪、宝くじは合法だから「良い賭博」なのか?

そもそもなぜ「賭博」は良くない行為とされるのだろうか。宝くじは「賭け」ではないのか。競馬は「賭博」ではないのか、競輪は、競艇は、オートレースは?どこからどう見ても全て明らかな「賭博」だ。では雀荘で行われる「賭けマージャン」、「闇カジノ」、「ゴルフコンペ」という名の賭けゴルフはどうして悪行とされ時に摘発されるのだろうか。

回答は極めて簡単。「賭博」の胴元が実質的に「国」(もしくは国に準ずる団体)であればその行為は「合法化」され、私人が胴元になる「賭博」は「違法」とされるのだ。賢明な読者においては勘違いされることは無かろうけれども、決して「賭博」の内容により「合法」、「非合法」の区別が線引きされる訳ではなく、あくまでも基準は「国」(もしくは国に準ずる団体)が胴元であるかないかだけが法的には「合法」、「違法」の基準なのだ。

◆試合結果を予想するサッカーくじ(toto)は国が胴元の「賭博行為」である

「野球賭博」を司る国家的制度は今のところない。したがって野球に関する全ての「賭け」は「違法」と認定される。他方サッカーには、試合結果を予想する明らかな「賭博行為」であるtoto(サッカーくじ)が存在する。国が胴元となる賭博の中でも比較的新しいこのtotoは、明らかな賭博行為のイメージを隠ぺいするために「サッカーくじ」などという名前を付けたが、「くじ」と「賭博」は全く異質かつ相いれない性質を持つ行為であることをご理解いただくのに、多言は必要あるまい。

勝負を強いられる仕事には判断においても、プレーの選択においても「賭け」が必ず必要だ。だから(言い過ぎかもわからないけれども)勝負師にとっての「賭け」は日常的行為だともいえる。よって私はあまりプロ野球選手が小銭のやり取りをしていた行為に興味が湧かない。所詮その金は彼ら自身が稼いだ金であるし、それによって試合に緊張感が出ることはあっても「わざと負けてやろう」という動機が強く引き起こされることは稀だと考えるからだ。

◆最大の「賭博」犯罪は国がGPIFに委ねた「年金原資の投機的運用」である

むしろ関心と指弾は本来「賭博」と無関係であるはずの行政が実質的に「賭博」に手を染めていることに向かうべきではないのか。目下最大の道義的犯罪は「年金原資の投機的運用」であろう。年金の資産は2016年3月現在135兆円だと言われているが、その運用は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に委ねられている。しかし実際の運用はGPIF自身が行うのではなく国内外の「民間金融機関」に委ねられていることはほとんど知られていない。いわば「年金原資運用の民営化」が既に強行されているのだ。しかも委託先は国内の金融機関だけでなく「JPモルガン」、「ゴールドマン・サックス」といった海外大手の多国籍金融機関にまで及ぶ。

年金を天引きされる多くの給与所得者にとっては、青天の霹靂ともいうべき狼藉が合法的に行われているのだ。年金の運用を民間会社に任せて、損出が出たらどうするのだ?誰も責任を取りはしない。仮に運用益が出たところで「瞬間的博打に勝った」だけのことで、年金が極めて不安定な運用に委ねられている構造に変わりはない。

そして、実際に運用損は計り知れない額になるだろう。2015年7月-9月の運用損が9.4兆円との実績がある。1ドル120円前後から110円前後への円高と、今後ますます進む株安により20兆円近い運用損を予想する専門家もいる。

これが「賭博」でなくて何なのだ。

プロ野球選手の賭け事(?)はスポーツ新聞の中で報じていればいい。過剰な報道に「あら、いやだわねぇ」、「子供の夢を壊す」(本当にそんな事思っているのか?と疑問だが)と感じられる方がいるかもしれないけれども、実生活上私たちには「全く関係のない話」だからだ。

一方、年金原資を投機的に運用した結果の損益は、一部富裕層を除くほとんどの人びとにマイナスの影響を及ぼすことが間違いない。

今50歳以下の人が年金を受給できる計算が、どうしても私には出来ないのだ。私の計算が間違いであればよい。誰か安心できる「回答」を示してくれないか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

「この日の為にこの一年を生き、この日に賭けている。5回戦ヒジ打ち有ルールは僕がキックを始める以前からあった基本」。そんなRIKIXジム・小野寺力会長の原点となる意気込みの集大成は、「つまらない展開になったり、判定決着もあるかもしれないが、ファンにワクワクして来てもらいたい」というマッチメイクには満足しているという全9試合。

拘りルールはすべてを貫けない状況ではありますが、観衆が集中力を切らさず、好カードを満喫できる長過ぎない時間と総ラウンド数を心掛けるというNO KICK NO LIFE興行。

ビッグマッチ揃いだけに、この日はちょっと長くなってしまいましたが、大田区総合体育館での開催は3年連続。“キックの日”を掲げていこうと毎度の2月11日(祝日)を押さえるのは難しく、今年は3月12日となりましたが、日時より手頃な広さの大田区総合体育館をキックボクシングのメイン会場に定着させて欲しいものであります。

昨年2回O-EAST渋谷で開催された興行も、平日夜でも主要駅の渋谷で仕事帰りのサラリーマンも立ち寄りやすい手応えで、今年も2回予定されています。

◆42歳の大月晴明と44歳の立嶋篤史は気になる存在

すべてが好カードでしたが、気になる存在は42歳の大月晴明と44歳の立嶋篤史。大月は前口太尊にヒジで切られ、激しい流血でストップされましたが、4月10日の市原での蘇我英樹(市原)戦は出場の予定(この日の試合後の意見)。息子に生き様を見せ続ける立嶋篤史は経験値からくる戦略は見事で、徐々に19歳の藤野伸哉を接近戦でのボディブローでたじろがせる攻めも見せつつ、3回戦では巻き返す時間は少なく、藤野の手数と的確さが優りました。

前口太尊(右)にノーガードで打たせる場面も見せた大月晴明(左)、頭部の傷は問題ないとアピール

「5回戦は3回戦で終わる展開にはない4ラウンド目からのスタミナ重視の展開がある。特に首相撲に捕まれば激しいスタミナ消耗になり、組み負ければそのままヒザ蹴りの餌食、それに打ち勝つにはその練習も充分でなければならない。総合力が必要な競技ですよ」

2003年頃、まだキックボクシング自体が5回戦から3回戦に短縮する前の頃、“新人3回戦”に対する戒めとして語ってくれたある古いジム関係者がいました。その後、そんな基本に逆行するかのように“ランカー以上の3回戦”がどこの団体でも定着してしまいました。テレビ重視の影響を受け過ぎてはいけないと言った関係者も多かったところでしたが、その“3回戦勢力”は増すばかりでした。今後のキックボクシング競技本来の完成度に期待して、4ラウンド目から差が出てくる5回戦本来の醍醐味をNO KICK NO LIFEでは魅せていってもらいたいものです。

◆59.2kg契約5回戦
WBCムエタイ世界スーパーフェザー級チャンピオン.梅野源治(PHOENIX/27歳/59.2kg)
VS
スターボーイ・クワイトーンジム(元・WPMF世界SFe級C/タイ/24歳/59.0kg)
引分け / 1-0 (主審 大成敦 / 小林 48-47. 大村 48-48. 玉川 48-48)
「梅野はパンチとローキックが強いからヒジを合わせろ」
タイのトップクラスにも研究されているという、日本人で最もムエタイ殿堂王座に近い梅野源治の戦法スタイル。減量でいつも以上に体重が残り、思うように動けずスピード遅く、当たっているけど倒せないもどかしさが残る展開だった様子。その打って出たパンチに合わせ、スターボーイが狙った右ヒジ喰らってダウンし、「またやっちゃったな。今後もこれまで以上に頭使って臨機応変に瞬時に動かないとタイだと厳しい結果になるだろう」と今後もより険しいムエタイロードになると反省する梅野源治。厳しい立場ではあるが、こんなタイトップクラスに警戒される存在であることに誇らしい想いであるファンは多いでしょう。

スターボーイvs梅野源治。一瞬の隙を突いてのヒジ打ちも高度な技術

◆55.4kg契約5回戦(ヒジ打ち禁止)
RISEバンタム級チャンピオン.那須川天心(TARGET/17歳/55.3kg)
VS
WBCムエタイ・インターナショナル・スーパーバンタム級チャンピオン.宮元啓介(橋本/23歳/55.6→55.5→55.4kg)
勝者:那須川天心 / TKO 2R 0:26 / カウント中のレフェリーストップ / 主審 北尻俊介
「那須川天心は倒しに行って飛びヒザ蹴りでキッチリ仕留める、魅せる技を持った選手、今後、ヒジ打ち有ルールでどこまでできるか、タイのトップクラスにぶつけてもいい」と語る小野寺氏。宮元啓介を倒してしまうパンチと蹴りの速さとタイミングで次々と日本のトップクラスを撃破することに驚きですが、今後、5回戦ヒジ打ち有でも勝ち進めるか、また数々の好カード実現に期待が掛かります。

調子を上げる前に劣勢となった宮元啓介(右)、物怖じしない那須川は先手を打って一気に攻めた

◆59.5kg契約5回戦
WPMF世界スーパーフェザー級チャンピオン.町田光(橋本/28歳/59.4kg)
VS
森井洋介(ゴールデングローブ/27歳/58.7kg)
勝者:森井洋介 / TKO 4R 0:03 / 主審 大村勝己

町田のスネの裂傷で骨が見えるほどの深い傷、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ 頭部のカットもあってドクターチェックを受けるも、スネの方の深さに視線が行き難かった。

◆65.5kg契約5回戦
ザカリア・ゾウカリー(オランダ/21歳/65.1kg)vs 水落洋祐(はまっこムエタイ/31歳/65.5kg)
勝者:ザカリア・ゾウカリー / TKO 5R 2:28
頭部負傷によるドクター勧告を受入れレフェリーストップ / 主審 玉川英俊

◆62.5kg契約3回戦
大月晴明(元・全日本ライト級C/キックマスターズマスクマン/42歳/62.4kg)vs 前口太尊(RHOENIX/29歳/62.5kg)
勝者:前口太尊 / TKO 3R 0:47
ヒジでカットされた頭部負傷箇所の悪化でレフェリーストップ / 主審 小林利典

◆63.0kg契約3回戦
SHIGERU(元WPMF世界SFe級暫定C/31歳/新宿レフティー/63.0kg)vs セーンアーティット・ワイズディー(タイ/26歳/63.0kg)
勝者:セーンアーティット・ワイズディー / 0-2 (主審 大成敦 / 玉川 30-30. 小林 28-29. 大村 29-30)

◆63.0kg契約3回戦
佐藤琉(エイワスポーツ/34歳/63.0kg)vs 長谷川健(RIKIX/31歳/63.0kg)
引分け / 1-0 (主審 北尻俊介 / 大成 29-29. 小林 29-29. 玉川 30-29)

◆ウェルター級3回戦
KENGO(RIKIX/31歳/66.6kg)vs 遊佐隆介(チームサムライ/21歳/65.0kg)
引分け / 三者三様 (主審 大村勝己 / 北尻 29-29. 小林 30-29. 大成 29-30)

◆58.0kg契約3回戦
立嶋篤史(元・全日本フェザー級C/44歳/58.0kg)vs 藤野伸哉(RIKIX/19歳/57.8kg)
勝者:藤野伸哉 / 0-3 (主審 玉川英俊 / 北尻 29-30. 小林 28-30. 大成 28-29)

スピードと手数で優る藤野伸哉(右)、打たれモロいが、ジワジワ盛り返すしぶとさを誇る立嶋篤史(左)

◆解説者もアナウンサーも皆、素晴らしかった!

2年連続の解説者の石井宏樹と、いくつもの格闘技実況も長く、人気も上がっている市川勝也アナウンサー

全9試合、リングアナウンサーとして登場した一人目、三遊亭貴楽さんは1985年からリングアナウンサーを始めた方で、当時の日本キックボクシング連盟、MA日本キックボクシング連盟、全日本キックボクシング連盟、ニュージャパンキックボクシング連盟へ移りつつコールされてきています。当時現役だった伊原信一氏、斉藤京二氏をもコールしている古い方で、小野寺力氏がキックデビュー前からお気に入りだった貴楽リングアナウンサーでした。

二人目、ハリー杉山さんはフジテレビの「ノンストップ!」月曜~木曜担当の方。
セミファイナルとメインイベントを担当した福沢朗さんは説明するまでもない元・日本テレビアナウンサーの有名な方。多様なリングアナウンサーが揃ったNO KICK NO LIFEでした。

メインエベンターとプロモーターの主役2人、梅野源治(左)と小野寺力(右)

主な出場選手と賑やかに揃ったラウンドガール10人

◎NO KICK NO LIFE 2016 / 3月12日(土)大田区総合体育館17:05~21:00
主催:RIKIXジム
放送:「TOKYO MX 3月31日(木)24:00~24:30、4月7日(木)24:00~24:30」
「スカパー!サムライTV 3月24日(木)22:00~24:00」
前日公開計量:3月11日 品川区東大井 ムーヴアクション(株)19:00~19:40

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない。」

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抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

選抜高校野球が始まりました。いよいよ野球の季節の到来ですね。と思ったらプロ野球では選手たちの「賭け」が明るみに出て批判を浴びているようです。「金と政治」じゃなかった「金とプロスポーツ」にはいつまでも難しい関係がつきまとうようですね。

さて、今日ご紹介するのはパチンコ「必勝法」です。ネットでは各種の「攻略法」やパチンコ、パチスロ専門雑誌も多数出版されていますが、この話を読んだらそんなもの全て「意味がない」と唖然とするでしょう。私がある「パチプロ」と知り合いそこから見出した「必勝法」です。

◆その台なら「2、3時間で5万は勝てるはずだよ」

私がパチプロ氏と知り合ったのは、とある地方のパチンコ店に、時間つぶしのために入った数年前です。どうせ時間つぶしだから少々負けてもいいやと思って適当に台に座り、私は初めて見る台を打ち始めました。隣で遊んでいたのは中年の男性です。私が着席した時に既に結構な出玉を持っていました。

打ち始めて数分で私の台に当たりが来ました。「ラッキー!小遣いが儲かった」と喜んでいたら、隣の男性が「おたく、時間あるの?」と話しかけて来ました。私は約束待ちの時間つぶしだったので「いや精々30分ですね」と答えると「もったいないなー、その台は今日爆発するよ」と男性。この人は何者なのか? 彼がいわゆる「パチプロ」なのかと不思議に思い「どうしてわかるんですか? 常連さんですか?」と聞くと「常連と言っていいかどうかはわからないけど、この店で俺が出るという台は出るんだよ」と確信に満ちたお答え。

「へー凄いですね。じゃあこの台は止めない方がいいんですね」の問いには「うん。2、3時間で5万は勝てるはずだよ」とビックリするような額を彼は口にしました。「残念だなぁ。約束があるからもうすぐ行かなきゃならないんですよ。でもどうして出る台がわかるんですか?」と核心の質問をぶつけると「それは言えないよ。でもおたくが何日かこの店に通えば黙っていても理由は解るさ」と意味深な答え。

◆勝率は8割以上!

私はその場所に数か月は滞在する予定でしたから、彼の言葉が気になり、休みの日を利用して再び同じパチンコ屋に向かうことになります。すると彼の姿がありました。こちらに顔を向けたのでお辞儀をすると彼はニッコリ笑顔を返してくれました。

その日も彼は既にかなりの箱(出た球を入れておく箱)を積んでいました。「今日も絶好調ですね」と声をかけると「俺がこの店で負けるのは10回に2回くらいだよ。それも多きな負けじゃない」と。「え!8割以上勝っているんですか? 凄い確率ですね」と私は驚きました。

パチンコで8割の勝率なんて今日の規制が厳しくなった台では考えられないことです。しかも彼が打っているのは当たりの確率が399分の1といういわゆる「マックスタイプ」です。当たれば多量の出玉が期待できますが、当たりを引くのが難しいし、負ければ大きな散財になる機種です。

何かからくりがあるに違いない。「それは言えないよ。でもおたくが何日かこの店に通えば黙っていても理由は解るさ」の言葉も気になった私は、その日自分が台には座らず、ひたすら店内の様子や出玉を見て回り1時間ほどいて帰りました。

◆「そこダメ。出ないよ」と先生口調で「指導」され続け……

学生時代以来、パチンコは時間つぶしに気まぐれに入るものとの習性しか無かった私でしたが、パチンコ店には開店前から並んで待機するお客さんが少なからずいることが気になりだしました。

次にパチンコ屋に向かった日は開店20分前でした。すでに数十人が列をなしていますが、その先頭付近に例の男性が居ました。この人毎日開店前から並んでいるのでしょうか、だとしたら会社勤めと変わらない勤勉さです。

開店時間になり私は例の男性の隣の台に座りました。「おはようございます」と声をかけると「そこダメ。出ないよ」と先生のような口調で「指導」してくださいます。

「どれが出るんですか?」と生徒が聞くと「それは見てなよ。見てればわかるよ」と先生、そう簡単に答えを教えては下さりません。「出ない」と言われた台でミスミス負けるのは馬鹿らしいから台には座らず、様子見に徹しました。彼はまた勝っています。1時間で5箱出していました。他方「出ないよ」と言われた台に座ったお客さんの台は彼の予言どおり全く当たりが来ません。

うむー。これは何かある。必勝法と言わないまでもコツのようなものを彼が知っていることは間違いありません。私はそれ以来意地になり、休みの日は開店前からそのパチンコ屋に出向くようになりました。毎日「先生」は開店前の行列に並んでいました。

そしてある日、ついに私は「ひょっとしたらこれが秘訣じゃないのか」と思われる鍵を発見します。私は躊躇せず、その日も好調な「先生」の肩を叩いて「すいません。ちょといいですか」と台から離れてもらい、店の外へ一緒に来てもらいました。「間違っていたら恥ずかしいんですが、『先生』がいつも勝てているのは『〇〇〇〇〇〇〇〇』だからではないでしょうか」とやや緊張しながら私の推論をぶつけました。

先生はニンマリとした笑顔を浮かべ「よく研究したね。明日からこれであんたも稼げるよ。うんその通りでいいよ」と私の仮説に合格を出してくれました。

◆台に座って10分も経たないで当たりが来た!

とはいえ、私は毎日朝からパチンコ屋通いが出来るような身分ではありませんから、パチンコ屋へ行くのは休みの日だけです。そこで先生にも認められた「必勝法」を実践して見ることにしました。台に座って10分も経たないで当たりが来ました。
一度止まってもしばらくするとまた当たりが来る。半日で数万円の勝利です。でも1度だけではまぐれや、たまたまの可能性もあります。次の休みの日にも朝からパチンコ屋へ向かいました。また勝利です。その日も数万円の儲けでした。

それ以来しばらくはパチンコでかなり「おいしい」思いをさせてもらいました。

その必勝法? それは簡単には教えられませんよ。でもある条件の店で、ある条件を満たした人が、ある台に座ればその必勝法に近い勝率は叩き出せるでしょう。「ある条件」はなかなか簡単ではありませんが、その方法を見つけ出せば巷に出回る「攻略法」や偽の「必勝法」のように高額で購入しなくとも高い勝率を収められることは私自身が経験したことです。

そうそう。くれぐれもギャンブルは節度を持って、のめり込まないようにしてくださいね。

(伊藤太郎)

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抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

ショーンK(ショーン・マクアードル川上)の経歴詐称疑惑が連日、世間を賑わせているが、『週刊文春』に「テンプル大学ジャパンのIELP(Intensive English Language Program)に入ってフィラデルフィア(米国テンプル大学)に行かせてもらった」と記述のある「テンプル大学ジャパン」では、「また余計なことをしてくれたな。ただでさえ就職で苦戦しているのに」と学生たちがむくれている。

ショーンKオフィシャルサイトより

「実はテンプル大学ジャパンのIELPは、英語での授業をいきなり聴いてもわからないので、英語でリスニング力や作文力、スピーチ力をつける『準備過程』にすぎません。学部(4年制)にあがるためにはTOEFLなどの点数、自己紹介文(エッセイ)などを提出し、書類審査がありますが、これがまた難易度が高い。このIELPは、古くは斎藤こずえやモデルのBLENDAさんらが在籍していたそうです。ただ、このIELPは、『学部にあがるのをあきらめてただの語学学校として通学』する目的の場合は、遊び惚けてすごすという選択もあります」(テンプル大学ジャパンOB)

ショーンKとほぼ同時期、テンプル大学ジャパンのIELPに通っていた男性はこっそり言う。

「ショーンについては、ほとんど学校に来なかったんじゃないかな。いわゆる学部にあがるためのTOEFLも受けたという話は聞いたことがありませんね。新宿区の下落合にテンプル大学ジャパンがあった時代は、学生たちは高田馬場でコンパをやるので、すが、川上(伸一郎)君は、普段は学校に顔を見せないくせに『慶應のインカレサークル(複数の大学が集まるサークル)と合コンをやるので、10人以上集めてくれ』などと燃えていたのをよく覚えています。通称『合コンの帝王』で、まったくもてないくせにイベントは仕切りたがっていましたね」

テンプル大学ジャパンのキャンパス内でも、片っ端からかわいい学生を見かけると声をかけるので『ナンパ師』として有名だったようだ。

「キャンパス内は、半数が外国人だったが、英語で口説いたという話は聞いたことがない」(同)というから、よほど欧米に憧れている学生をカモとしていたのか。それとも「中途半端な英語力がバレるのを恐れたか」は今となっては不明だ。

「テンプル大学ジャパンは、アメリカ本校とおなじ教育を受けられるのを売りとして、1983年に誕生しました。80年代後半には、理事長だった元衆議院議員、東力の脱税疑惑で捜査が入るなど、不幸な歴史が続いてきた学校でもあります。バブル崩壊で学生が激減する氷河期を耐え抜き、ようやく時間をかけて文部科学省にも認定され、ここを卒業して日本の大学院へ入学できる単位互換が認められるようになった矢先だけに、余計な醜聞は避けたいところでしょう」(教育関係者)

「嘘だらけ」とされるショーンKは、真面目に勉強していたのか。テンプル大学ジャパン広報に問い合わせると「卒業生、在校生を含めて学生の個人情報について公開いたしかねます」(広報)とのこと。

ショーンKに「喰われた」とされる当時の女子大生が証言者として出てこないといいのだが。

(伊藤北斗)

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抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

2011年3月11日まで、80の駅を総距離343.1kmで繋いでいたJR常磐線はその後5年が過ぎたいまも、竜田駅─原ノ町駅間および相馬駅─浜吉田駅間が運行休止となったままでいる。今年1月、水戸・いわき方面からの下り終着駅「竜田駅」とその周辺を歩いてみた。地震と原発事故で分断された鉄路の景色──。最終回の今回も、写真とともに周辺の様子を眺め歩こう。
 

この辺りは、車の音さえ聞こえずとても静かだ。しかし、この福島県道391号線の道路脇には、たくさんの原発事故関連施設が存在する。そういった施設さえ目に入らなければ平穏な様子なのだが。
 

道路脇の線量計。「0.157μSv/h」を示している。都市では騒音をデシベルで示す電光掲示板を目にするが、同じように空間線量を掲示している現状がここにある。
 

竜田駅を出発してから、ゆっくりと1時間半ほど歩いただろうか。海沿いに到着した。ここでは複数の重機が整地と思われる作業を行っている。
看板が示している通り、海岸を補修しているようだ。右手に見えるテトラポットの奥には太平洋が広がっている。左奥に見えるのは、現在運転を停止している東京電力福島第二原子力発電所だ。その裏手には常磐線富岡駅が位置していたのだが、津波に流されてしまった。どうやらこれより先に進むのは難しいようだ。駅まで引き返し、線路の反対側を歩くことにしよう。

竜田駅から15分ほど西へ行くと楢葉町役場がある。そのとなりに食堂があるということを駅務員の大須賀さんから教えてもらっていたので、そこで昼食をとることにした。

食堂に入ると「ごめんなさい、ご飯が無くなったのでラーメンで良ければ!」と声をかけられた。やや昼時を過ぎているが、作業服を着た客が3組と夫婦客が1組。繁盛している様子だ。声をかけてきた女性店員に「忙しそうですね」と答える。
店員は「今日は休日だから、このへんでやってるのウチだけなんですよ」「ここから先にはお店ありませんし」と言う。この食堂は国道6号(福島県浜通りを南北に貫く道)に面しており、第一原発からは直線距離にして15km以上離れている。避難指示を解除されたとはいえ、平常とは言い難い現状だ。
 

楢葉町立楢葉中学校の校舎。現在は使用されていない。同校はいわき市中央台の仮設校舎にて教育活動を行っている。
 
そろそろ帰らなければいけない。竜田駅に戻り、ひとつ残されたホームに到着する車両を待つ。降りてきたのは2人。乗車するのも2人。避難指示が解除され、営業を再開した竜田駅。2019年には全線を開通させるという常磐線。これらをもって「復興」というが、その言葉は浮き足立っている。歩かなければいけないが、歩きすぎてはいけない。時に足を止めなければ、路傍の草花は色を喪うのだ。
 
いわきへ向かう常磐線上り列車の車窓から太平洋側を望む。
所々にフレコンが置かれている。
空が広い。
 

▼大宮浩平(写真家)
1986年東京生まれ。
個展情報 : 大宮浩平写真展「態度」 / 新宿眼科画廊 /
2016年4月15日~2016年4月20日 12:00~20:00(最終日のみ12:00~17:00)/ 入場無料
Facebook : https://m.facebook.com/omiyakohei
twitter : https://twitter.com/OMIYA_KOHEI
Instagram : http://instagram.com/omiya_kohei

抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

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3月21日、防衛大学の卒業式が行われた。卒業する日本人学生419名のうち47名が自衛官への任官を辞退した。この数は昨年の25名の約倍で日本人全卒業生の1割以上にあたる。任官辞退の過去最大は1991年の94名で第一次湾岸戦争への自衛隊派兵が焦点化された年だが、それ以来最大の任官辞退者数を記録することになった。

自衛隊の志願者を巡っては、多くの高校生が受験する「一般曹候補生」の志願者数も急減しており、2015年度の全国分は前年度と比べて19%減の2万5092人で2012年の半数近くにまで激減している。解釈改憲が行われた2014年も前年比10%減だったが、前年比約20%の落ち込みは過去最大級に際立っている。

◆任官辞退は極めて自然な選択

足音や「キナ臭い雰囲気」といったレベルではなく、堂々と戦争へ向かった方向性を政権が隠すことなく進めている。憲法もへったくれもあったもんじゃない。「武器輸出三原則」は撤廃され、東大は軍事研究の解禁を宣言し、防衛省は大学に補助金を出して軍事研究を奨励し始めた。4月からは予備自衛官として船員21名の「徴用」が予算化され実施質的海上労働者の「徴兵制」が開始される。

任官を辞退(拒否と言い換えてもいいだろう)する防衛大学卒業生の数が増加するのは、極めて自然な選択と言える。今年防衛大学を卒業する学生が入学したのは2012年4月。お粗末ではあったが民主党政権時代,まだ第二次安倍政権が誕生する前だった。防衛大学入学にあたり、まさか卒業する時に、日本が「集団的自衛権」を認め、地球の裏まで米国の尻拭いに出かけて行かなければならない時代になると予想していた学生はいなかったのではないだろうか。

◆契約不履行の責めを負うべきは安倍政権

防衛大学の学生は身分を特別職の公務員とされ、授業料は免除され、給与にあたる手当が支給される。だから昔から任官辞退をする卒業生に対しては「授業料を返せ」だとか「手当を返せ」といった批判を投げつける人がいる。「税金の無駄使い」には敏感な庶民感覚に訴えやすいそれらの批判には一理ありそうで、実はとんでもない言いがかりだと思う。

特に「専守防衛」を国是にしていた時代に入学した防衛大学の学生が、政権の勝手な「解釈改憲」によって「戦地への道」を開かれてしまったからには、何を言われようと、逃げるが勝ちだ。当初の基本契約事項「専守防衛」が反故にされたのだから、契約不履行の責めを負うべきは現政権というべきである。

◆安倍訓示文の主語は誰なのか?

卒業式に出席した安倍首相は、「今月施行される平和安全法制に基づく新しい任においても現場の隊員たちが安全を確保しながら適切に実施できるようあらゆる場面を想定して周到に準備しなければならない。平和安全法制は平和な日本の強固な基盤を築くために考え抜いた結論だ」と述べたそうだ。

「現場の隊員たちが安全を確保しながら適切に実施できるようあらゆる場面を想定して周到に準備しなければならない」と安倍は紙を見ながら訓示しているが、この文章の主語はいったい誰なのだ。自衛隊員の安全確保の責任は内閣総理大臣である安倍が負うものではないのか。まさかもう「文民統制」まで安倍の中では無きものにされているのか。もしこの文章の主語を防衛大学卒業生(自衛隊員)に押し付けているとすれば、許しがたい責任逃れの極致と断言せねばならない。

滅茶苦茶な安保法制だけ作っておいてこの主語を欠く歪な文章は「お前達は現場では、自分で安全を確保してどんな状況でも、(私は知らないから)お前達がお国のためにご奉公できるように考えて、(私は知らないし、戦場へは行かないからお前達が考えて)何とか勝手にうまいことやってくれや」としか私には翻訳できない。

「平和安全法制は平和な日本の強固な基盤を築くために考え抜いた結論だ」だと。今更ながら安倍が発する言葉の含意が、事実と何百万光年も乖離していることをまたしてもご立派に披歴している。嘘をつけ!考え抜いたのはどうやって「強行採決」を通すかだけじゃなかったのか。

こんな男のこんなちゃちな理屈に、人生や、命を左右されてはたまったものではない。しかも安倍が総理の座に居座るのは長くても数か月から数年だ。安倍の気まぐれでひん曲げられた針金のように変形してしまったこの国の形は、相当な力と年月が無ければ修復不可能だろうし、下手をすれば修復どころか、いびつな形が固定化してしまい、更なる奇形化を起こす可能性が高い。

◆防衛大生は殺したり、殺されたりする人生を選択したわけではない

それでも戦禍に自衛隊員が犠牲になった時、安倍の責任が問われることは金輪際ないだろう。イラクへ派兵された自衛隊員の自殺が相次ぎその数は100名近くに上っている。実戦を経験していないはずの自衛隊員、サマワで道路建設を中心に担っていたはずの自衛隊員や輸送機の操縦や整備に関わっていただけのはずの自衛隊員から何故これほど多くの自殺者が出るのか。防衛省はその理由を隠ぺいしている。土木作業に従事していただけならば自殺を選択するようなPTSDを抱え込むであろうか。

イラク戦争への派兵で自衛隊の死者は現地では出なかった。しかし安倍の話を聞いていると、こんな男をまともに相手にしていてはたまったもんじゃない、任官なんかとんでもないと考える防衛大学卒業生の判断の方がまっとう至極だ。「自衛隊」という名の組織幹部になろうと考えていたら、米軍の尻拭いで日本と全く関係のない国に連れて行かれて殺したり、殺されたりする人生を彼らが選択したわけではないのだから。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』!

読者の皆さんにお読みいただいている駄文は、私が「書いた」原稿のはずである。完成した原稿はそれが書籍であれ、PC上の文章であれ文字羅列でありその意味において読む側からすればさほど大きな違いはない(私自身も感じない)けれども、「書いている」はずの私はしばらく前からいたく違和感がある。

ご想像の通り私はこの原稿をPCで「書いている」。しかし頭の中では文章を構成する頭脳を使ってはいるが、手の動作はボールペンを握って紙に文字をしたためているのでなければ、鉛筆で原稿用紙に鉛の黒色で意思を表しているのでもない。私の手はひたすらPCのキーボードを「叩いて」いる。

なるほど下書きを終えてプリントアウトしてみれば、それは紙の上に印字となって現れていて「原稿を書いた」ような気分に少しはなる。が次に原稿を「叩き」始めるとまた違和感が湧いてくる。もっともそんなことを気にしていてはこの時代全く仕事にならず、直ぐにお払い箱になることは必定なのだけれども、「書く」といいながら「叩いて」いる手の動きとの不整合に対する気持ち悪さのようなものが年々つのって来る。

これが携帯電話だと「叩く」ではなくボタンを「押す」となる。モバイルPCを持っていない私は取材先から荒っぽい原稿を携帯電話で編集者へ送ることがある。指先の不器用さと不慣れ、さらには年々進行する老眼の為に小さな画面の携帯電話をのぞき込んでボタンを「押し」ながらの作文作業は煩わしいものの、予想変換機能のお蔭で少々の原稿であればさほどの苦労なく作文することが出来る。

◆「書き殴って」いた昔より「書いている」意識が希薄になってきた

日々「書き殴って」いたのは学生時代であった。発表するあてもなく誰に聞いてもらえるはずもなく、聞いてほしいとすら思わない内面の発露をノートに「書き殴って」いた。愛用していたボールペンは指に馴染み心地よくノートの上を滑ってくれた。悶々としながら夜明けまでノートに向かい続け、指が痛くなることを気にもせず「書き殴って」いた。

その内容は忘れたし、どうでもよい。問題はあの時の「書き殴って」いたという体感が、今でも私には残っているが、逆に人様に価値もない文章をお読み頂いている今日、私には「書いている」という意識が希薄になってきていることだ。

私はひたすら「叩いて」いる。取り上げるテーマにより自分の気持ちの入り具合が異なるからキーボードを「叩く」スピードなり、個々のボタンを「叩く」圧力に多少の違いがあるのは自覚する。しかしどう考えてもこれは「書く」行為ではないのではないか、という思いが確信近く高まってきている。

◆PC文法で作文する習慣に違和感を覚えなくなっていく

例えばPC文法とでも呼ぶべき新しい文法がある。正式とされる日本語文法では段落を変える時には一文字空けて次の文章を書き始めるが、PC文法においては「一文字開け」ではなく文章と文章の間に1列の間を取るのが一般化してる。まだ分析されてすらいない数多の光線が際限なく眼球に飛び込んでくるPC画面にあっては、たしかにこの体裁の方が読みやすい。しかし正式な文法からすれば、明らかに逸脱した形態だ。小論文の試験でこの体裁の文章を書けば、それだけで大きな減点を食らうことは間違いない。

しかしそう難じながらもPCで作文をする際は私自身もPC文法で作文する習慣に違和感を覚えなくなってきている。

思えば紙に向かって書いている時も、対象がノートであるか、原稿用紙であるか、便箋であるかによって私の文体と筆圧は自然な調整が働いていた。それがPCを「叩く」ようになり、おしなべて抑揚のないものになりつつあるのではないかとの不安がある。

このことをある人に話したら「じゃあ原稿用紙に書いたらどうだ」とアドバイスを受けたことがある。たしかに試してみる価値がありそうだけれども、差し当たり迫りつつあるあれこれを前にしてPCを「叩く」前に、一度「書く」実践は未だに果たせていない。最大の課題は「叩く」ことにより出現した「原稿」がどんどん内容の薄いものになりつつあるのではないかという実感と懸念である。もちろんそこには普遍的な身体と技術の問題だけではなく、私自身の不勉強という根源的な欠落があることも承知してはいる。

「書く」代わりに「叩く」ことに象徴されるように、最新テクノロジーに依拠した生活では指の使い方が極めて単純化されるのと反比例に出来上がった作品はそれなりの体をなしているというパラドクスが支配する。

◆手を使わなければ、体を使わなければ、という不安感が増してくる

手を使わなければ、体を使わなければとの不安感が増してくる。だからリンゴを剥いてみる。どうやらまだ大丈夫そうだ。玉ねぎはどうだろう。皮をむき千切り(スライス)を試みる。トントントンとリズミカルに刻めるだろうか。どうやらまだ可動域はそれほど減ぜられてはいないようだ。大根の桂剥きを試す。ちょっと怪しい。以前よりはぎとる皮の幅が厚くなっている。皮では満足できず大根をどんどん剥いてゆく。

自動車に乗る。ドアは鍵を開けずともノブを握るだけで解錠される。エンジン始動は鍵を差し込み右側に廻し、アクセルを踏みこむのではない。電気機器のようにスイッチを押せば発動する。そうそうこの車種にあってはエンジン始動の際はブレーキを踏むのが基本だ。パーキングモードにすればどれほどアクセルを踏んでもエンジンに気化したガソリンは注がれない。安全で燃費効率が高いことは疑いがない。

自動車なんて最初から理解を超えた複雑機器でそれを操作するのに両手両足を使っていたのが片足を使うだけになった、と言えばそれまでだ。

でも怪しい。確実に自分が怪しい。「叩いている」自分と「鍵を差し込みアクセルの踏込みなし」に発動する自動車を操作する自分と「書いている」自分。この差は埋められるのだろうか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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