2011年3月11日まで、80の駅を総距離343.1kmで繋いでいたJR常磐線はその後5年が過ぎたいまも、竜田駅─原ノ町駅間および相馬駅─浜吉田駅間が運行休止となったままでいる。今年1月、水戸・いわき方面からの下り終着駅「竜田駅」とその周辺を歩いてみた。地震と原発事故で分断された鉄路の景色──。最終回の今回も、写真とともに周辺の様子を眺め歩こう。
 

この辺りは、車の音さえ聞こえずとても静かだ。しかし、この福島県道391号線の道路脇には、たくさんの原発事故関連施設が存在する。そういった施設さえ目に入らなければ平穏な様子なのだが。
 

道路脇の線量計。「0.157μSv/h」を示している。都市では騒音をデシベルで示す電光掲示板を目にするが、同じように空間線量を掲示している現状がここにある。
 

竜田駅を出発してから、ゆっくりと1時間半ほど歩いただろうか。海沿いに到着した。ここでは複数の重機が整地と思われる作業を行っている。
看板が示している通り、海岸を補修しているようだ。右手に見えるテトラポットの奥には太平洋が広がっている。左奥に見えるのは、現在運転を停止している東京電力福島第二原子力発電所だ。その裏手には常磐線富岡駅が位置していたのだが、津波に流されてしまった。どうやらこれより先に進むのは難しいようだ。駅まで引き返し、線路の反対側を歩くことにしよう。

竜田駅から15分ほど西へ行くと楢葉町役場がある。そのとなりに食堂があるということを駅務員の大須賀さんから教えてもらっていたので、そこで昼食をとることにした。

食堂に入ると「ごめんなさい、ご飯が無くなったのでラーメンで良ければ!」と声をかけられた。やや昼時を過ぎているが、作業服を着た客が3組と夫婦客が1組。繁盛している様子だ。声をかけてきた女性店員に「忙しそうですね」と答える。
店員は「今日は休日だから、このへんでやってるのウチだけなんですよ」「ここから先にはお店ありませんし」と言う。この食堂は国道6号(福島県浜通りを南北に貫く道)に面しており、第一原発からは直線距離にして15km以上離れている。避難指示を解除されたとはいえ、平常とは言い難い現状だ。
 

楢葉町立楢葉中学校の校舎。現在は使用されていない。同校はいわき市中央台の仮設校舎にて教育活動を行っている。
 
そろそろ帰らなければいけない。竜田駅に戻り、ひとつ残されたホームに到着する車両を待つ。降りてきたのは2人。乗車するのも2人。避難指示が解除され、営業を再開した竜田駅。2019年には全線を開通させるという常磐線。これらをもって「復興」というが、その言葉は浮き足立っている。歩かなければいけないが、歩きすぎてはいけない。時に足を止めなければ、路傍の草花は色を喪うのだ。
 
いわきへ向かう常磐線上り列車の車窓から太平洋側を望む。
所々にフレコンが置かれている。
空が広い。
 

▼大宮浩平(写真家)
1986年東京生まれ。
個展情報 : 大宮浩平写真展「態度」 / 新宿眼科画廊 /
2016年4月15日~2016年4月20日 12:00~20:00(最終日のみ12:00~17:00)/ 入場無料
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