秋元康が乾坤一擲の力を注ぎこむ「欅坂46」がいよいよ「サイレントマジョリティー」というデビューシングルで登場した。
https://www.youtube.com/watch?v=DeGkiItB9d8

シングル発売は、4月6日で、22日にはすでに「ミュージックステーション」に登場、プロモーションに秋元サイドが力を入れているのがわかる。個人的には、「櫻坂よ、売れろ」と思う。「櫻坂46」はたとえば前田敦子に象徴されるような素人集団「AKB48」とはもっとも遠い地点にある。たとえば洗練されたダンスと、ボーカルたちには実力がある。現在、センターを担当している指原莉乃がかつて語った「AKBに入ろうとおもったら、ダンスの練習はしなくてもいいです。素人っぽいほうが受けるので」というふざけたコンセプトからも距離を置いているプロ集団だ。AKBのコンサートでチケットが3割も売れ残っているという今の状況下で、幸いにも大衆たちは「本物」を求め始めたのだ。

まず特徴のひとつは、とにかくセンターの平手友梨奈の評判がいいことだ。応募総数2万2509名からセンターに選ばれた14歳の平手は、CMやドラマに引っ張りだことなるだろう。もしかして宝塚にでも入れたのではないかと思うほどの妖艶さを持つ平手を売り出すためのチームが「欅坂」だという声もあるが、この際、そんな斜めからの視点は無視しよう。

2つめの特徴は、「櫻坂」が明らかに6月8日の「45THシングル総選挙」へのアドバルーンとして「使われている」ということだ。もう「AKB48」そのものに新しさはない。もしかして「おばさん」となった「48」を集客でひっくり返すかもしれないのだ。

3つめの特徴は、「欅坂」は特定の劇場にこだわらず、全国規模で展開する存在だということ。もはや「箱」を捨てて「電波」を選んだ彼女らの死に場所にして、生きる場所はメディアという四角い画面である。これが吉と出るか、凶と出るか。

いずれにしてもこのシングルはわずか3日間で約25万1000枚を売上げ、もはや100万枚突破は堅いところだろうと指摘されている。芸能界を席捲するのか、それとも「ダダ滑る」のか。「欅坂」よ、売れろ。芸能界に本物志向を呼びもどせ。個人的には、実力ある「欅坂」を応援したいが、様子を見てみよう。

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、著述業、落語の原作、官能小説、AV寸評、広告製作とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論!」の管理人。

[増補新版]ジャニーズ50年史

[増補新版]本当は怖いジャニーズ・スキャンダル


◎『ヤクザと憲法』劇場予告編

映画「ヤクザと憲法」を元「週刊実話」の編集長と、手伝いにいっている編集プロダクションのデスク氏とで鑑賞した。このドキュメンタリーは東海テレビが制作し、すでに放映されたものだがヤクザの日常をレポートした内容ゆえに、当然、全国放映は不可能。そこで映画でしか観れないしろものとなった。本当は「憲法」とつく映画のタイトルゆえ「5月3日」に観たかったが、やはり混んでいると予測し、この日にしたのだ。

渋谷は、ゴールデンウィークのまっさい中だというのに、ガラガラだ。池袋は歩けないほど人ばかり(外国人の旅行者も含めて)ができているってのに、渋谷には「怖い」というイメージがあるのだろうか。

はてさて今、レビューを急いで書いているのには理由がある。ヤクザとつるむタイプのジャーナリストである俺は、警察に追われて近く、高飛びするからだ(なんていうのは嘘)。

そう、ヤクザは危険な生き物の代名詞だ。なのに、この映画に出てくる人はみな、ヤクザとはいえ等身大の「人間」だ。

この映画は、大阪の指定暴力団「二代目東組二代目清勇会」に100日にわたってカメラが入った稀少なドキュメントである。

今、ヤクザは人権がないかのごとく司法上は扱われる。銀行の口座を持てない。家をもてない、ゴルフはできない、宅急便は扱いを拒絶される。だが日本国憲法第4条は定めている。

『すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない』と書いてある。

作家・宮崎学は、この条文の後ろに『ただし、ヤクザを除く』と書いてあるとよく解説する。

僕もそのとおりだと思う。この映画は、確かにヤクザの日常をカメラで切り取っているという点で画期的だし、未来永劫、記録と記憶に残すべきしろものだと思う。

部屋住みの青年が言う。

「嫌いな者どうしでも一緒におれるというのがいい社会とちがいますやろか」

ヤクザはもともと、賭け事の仕切りと祭りの露天商を稼業としてきた。それが、覚せい剤の密売など犯罪行為へと傾斜していった。昭和40年代になると組どうしの抗争はエスカレートしていき、拳銃の大量所持や、抗争で一般人が犠牲となることが問題化してきた。

そうした中、平成3年に「暴力団対策法」が制定され、前科のある組員の割合などが一定を超えると「指定暴力団」として警察の強い監視下に置かれることになる。

こうなるとみかじめ料や用心棒代を要求しただけで「中止命令」が出る。これはいわゆる「イエローカード」で、無視すれば「逮捕」となる。お目こぼしは一回しかないというわけだ。

さて、このヤクザをとりあげた映画が「人権を守る」最後の砦として未来では扱われないことを切に願う。そして、この映画をよく作ってくれたと思う。感謝すらしている自分がいる。

「銀行口座が作れないと悩むヤクザ」「金を手持ちすると親がヤクザだとばれる」というきついご時世では、「自動車保険の交渉がこじれた」段階ですぐに詐欺や恐喝で逮捕される。

同時に、この映画では、山口組の顧問弁護士だった山之内幸夫弁護士が、恐喝で立件されて実刑10月の処分を地裁に言い渡されて弁護士資格を失った瞬間をもカメラはとらえている。このとき、「ああ、古きヤクザの時代が終わっていくのだ」と僕は映画館の最前列で滂沱の涙を流した。そう、古いヤクザの時代は、音を立てて終焉に向かっているのだ。

◎『ヤクザと憲法』HP http://www.893-kenpou.com/

▼小林俊之(こばやし・としゆき)
裏社会、事件、政治に精通。自称「ペンのテロリスト」の末筆にして松岡イズム最後の後継者。師匠は「自分以外すべて」で座右の銘は「肉を斬らせて骨を断つ」。

[増補新版]ジャニーズ50年史

本書は、2014年初版の『ジャニーズ50年史』に、今年1月に起きたSMAP解散・脱退騒動の流れを加筆した増補版である。

ジャニーズ事務所は2013年に50周年を迎えている。『ジャニーズ50年史』は50年間のジャニーズにまつわるできごとを、時系列で並べてまとめた、ジャニーズの歴史を俯瞰するのには最適な書だ。ここでのジャニーズの歩みは、途中の浮き沈みはあるものの、大筋では逆境を乗り越えての発展・拡大の軌跡となっている。

◆年明け早々のお家騒動がジャニーズ衰退への大きなトリガーに

2015年までのジャニーズは、男性アイドルという市場にあって、ぶっちぎりの強さを誇っていた。行き着くところまで行ったという頭打ち感は徐々に出ていたが、まだまだ当面その覇権状態は安泰に見えた。ところが2016年の年明け早々、SMAP解散・脱退騒動が、ジャニーズ帝国の根幹を大きく揺るがした。このお家騒動は、ジャニーズを予想外に早く衰退に向かわせる大きなトリガーになった可能性がある。

SMAP育ての親、ジャニーズ中興の立役者だった飯島三智は1月でジャニーズを去り、この4月からメリー・ジュリー母娘の一本化された新体制に本格的に入った。飯島が最後に残していった置き土産のような仕事もなくなり、いよいよ次期社長ジュリーの真価が問われることになる。  

そもそも、飯島に若手タレントを任せたのはジャニー喜多川の意向だったといわれる。タレントが増え、ジュリー・メリー母娘のキャパシティーを超えてきていたので、長年別働隊だった飯島の能力を活用するのは理にかなったことだった。飯島は、人気の如何にかかわらず、律義に新たな仕事を作り傘下のタレントに振りあてて、SMAP以外のマネージメントでも敏腕ぶりを発揮した。ジュリー・飯島の二頭体制はうまくいき、2011年から2015年の間に、ジャニーズの業界内領土は最大版図を獲得するに至った。それをわざわざぶち壊したのだから、経営者としてはクレイジーというよりほかはない。普通に考えれば、飯島をバックアップし十分に働かせその成果を享受する方が、どれほどおいしいことか。

新体制では、すでに子飼いタレント同士で仕事を奪い合うような状況が生じており、この先旧飯島派タレントが合流した大所帯を捌き切れるようにはとても見えない。
 
◆ジャニーズ事務所はもう「国民的アイドル」を生み出すこともできない?

事務所のイメージも悪くなる一方だ。4月から、テレビでSMAPを見かけることが露骨に減っており、1月の「公開処刑」に続き、SMAPが干されるように陰湿に仕向けていることが容易に推測される。夢を売るはずのジャニーズ事務所は、夢の代わりに、SMAPを通じていじめの雛型を日本中に示し続け、多くの人々を嫌な気分にさせている。これでは子供のいじめがなくなるはずもなく、ジャニーズがしばしば口にしてきた「子供たちへの影響を考えて云々」というキレイ事はすべて嘘だったことがよくわかる。そしてこれだけイメージに傷がついたジャニーズ事務所には、もう万人に愛される「国民的アイドル」を新たに生み出すこともできないだろう。

やることなすことがあえて自滅の道に向かっているようにしか見えないのだが、一体この母娘はどういうつもりなのだろうか。実はもう、芸能事務所の経営などどうでもいいのかもしれない。すでに孫子の代まで何もしなくても悠々自適に暮らせるくらいの資産は十分にあり、貸しビル業でも営んだ方がよほど楽で儲かるはずなのだ。だからソニーにおける電機事業のように、芸能業務はアイデンティティと趣味の部分で残していけばよい。そうであるなら、目障りで気に入らないものを叩きつぶし、自分たちの好みの色に染め上げることが再優先になるのもわからなくはない。気の毒なのはそれに付き合わされるタレントたちだ。若手たちは、中高年の先輩タレントたちのような将来があるとは思わない方がいいかもしれない。

しかしファンでもない立場から眺める分には、今後予想されるジャニーズの縮小・衰退フェーズも、味わい深く面白いものになるのではないか。ぜひジャニーズの大きな曲がり角に建てられたマイルストーン『ジャニーズ50年史 増補新版』を傍らに、巨大芸能事務所盛衰の歴史を鑑賞してみて欲しい。
 
(遠藤サト)

4月28日、29日と那須塩原温泉にいた。
ゴールデンウィークの入り口、寸前なので28日はまだ旅館が通常料金に近い。なんといっても行くなら本格的な硫黄温泉に入りたい。というわけであるが、縁もゆかりもないが、評判がやたらといい「湯荘白樺」に宿泊した。

 

肌寒い。まるで感覚としては冬で空気は澄んでいた。西那須野から。バスで40分ほど走ると塩原温泉バスターミルに着く。そこに旅館の車で迎えにきてもらった。山中、970メートルの山を登っていくと山桜がようやく咲き始めたのが見える。ゆっくりとだが、確実に少し私たちより遅れて春が「山」に来ているようだ。

天和2年(1683年)からすでにこの温泉はすでに湯治場として知られ、神経痛か肩こりリウマチ、胃腸の疾患に効くそうだ。

 

布団を敷きにきてくれた旅館店員は言う。
「泥パックを塗るといいですね。温泉に備え付けてあります。湯の中に入って、毛穴を開かせて10分間、塗っておいてパックすると白く乾きます。そうしたら洗い流す。私など1年間入ったら、腰痛がすっかり治りました」

那須町への観光者数は微増していて、平成27年度は 480万2,208人 (前年470万7,029人)前年比 102.02% 9万5,179人増)だからうまくいっているほうなのだと思う。実際、那須塩原は修学旅行地のメッカとしても知られ、小学校のときに宿泊したあまりにも有名な「ホテルニュー塩原」を38年振りに見たときは思わずため息が漏れた(何年経営しとんねん)。

 

あ、肝心の腰痛、ヘルニアだが実際問題、誇張ではなくて軽くなった。1日でかなり軽くなるということはやはり温泉は治癒効果があるのだな、と思う。まあ年をとったらこのあたりに住むのもいいかもしれないな、と思う。

いっぽうで、大分の湯布院温泉などは、熊本地震の影響でキャンセルが相次いでいるという。これは九州全体の旅館が打撃を受けており、2、3割値段を下げて必死に集客をしているようだ。機会があれば、熊本や大分にも赴こうと思う。それが震災地が元気になる最もてっとり早い手段だと信じるのみである。

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、著述業、落語の原作、官能小説、AV寸評、広告製作とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論!」の管理人。

抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

日本のキックボクシングは統一ができないから、本場ムエタイの力を借りよう!──。皆がそう思っている訳ではありませんが、キックボクシングには団体がバラつき過ぎて、確固たる団体と王座が無く、原点となるムエタイに還り、その世界機構の傘下に入ろうという傾向が見られるようになったのは、ここ10年内のことでした。

日本、全日本、日本プロキック、日本ナックモエ、MA日本、日本ムエタイ、日本キック・イノベーションなど、日本のキックボクシングの歴史の中で、“日本”の国を象徴する名称の“王座”は、出尽くしたほど出て、その後は私的組織王座(国名、地域名ではないキャッチフレーズ的名称王座)で更に乱立していく中、本場ムエタイの傘下に入って権威付けに目を向けた手法にも乗り出しました。

古いルンピニースタジアム。トタン屋根の天井からぶら下げられたプロペラ式の扇風機などがなんともたまらない雰囲気

その傘下で作り出した最初の日本王座は、2009年に誕生したWBCムエタイ(母体はWBC)日本王座が各階級で誕生し、2010年にはWPMF(世界プロムエタイ協会/母体はタイ国ムエスポーツ協会)日本王座が各階級で誕生し、2015年にはムエタイ二大殿堂のひとつ、ルンピニースタジアム傘下の「ルンピニー・ボクシング・スタジアム・オブ・ジャパン」が発足しましたが、これは現在停滞中です。

そして今年3月1日、四つ目の国内ムエタイ組織が誕生。WMC(世界ムエタイ評議会)の日本支局が設立されました。WMC(当初はWMTC)は1995年にタイで幾つか存在した世界機構を統合した、当時では画期的団体でした。4月3日には第1回目のWMC日本支局認定試合が行われ、バンタム級とライト級の2階級で王座が決定しています。

関係者情報では、昨年初頭にはルンピニージャパンの発足計画は進んでおり、また古くには「ラジャダムナンスタジアム日本支局長にならないか」という打診が日本人関係者に伝えられていた話もあり、日本でビジネス戦略が成り立つなら、幾つでも本場ムエタイブランドを利用した日本組織が作れてしまう状況でもあります。

ラジャダムナンスタジアム。擂り鉢状の造りは観易く広く、歓声の響きは不気味なほど凄く反響します。2~3Fは立って歩き回る賭け屋が多いのでコンクリートの段差に座るのはキツイ

WBC含め、本場ムエタイ組織傘下として、キック系日本国内トップを目指しつつ、厳しく言えば、乱立している中の個々でしかない現状で、一般世間から見ればキック系競技は「訳わからん構造」であることに変わりありません。

過去、キックやムエタイやその他の競技に於いても、いくつもの認定組織が出てきては消滅したり弱体化した一例としては、その代表者が亡くなられたり、無責任に辞任されたりした後、しっかり継ぐ者がいなければ、急速に勢力が弱まる傾向がありました。王座があっても組織の存在が曖昧であれば、そこに人は集まりません。

国王生誕記念興行、王妃生誕記念興行、1774年にビルマとの戦争で捕らわれの身となった戦いで10名のビルマ軍兵士を相手にムエタイ技で勝利を納め生還し、タイに自由を取り戻した英雄としてナーイ・カノムトムの栄誉を称えられる記念興行など、国家イベントには盛大に記者会見も行われます

そういう形が残らない曖昧な組織に対し、タイ国の陸軍系ルンピニースタジアムや王室系ラジャダムナンスタジアムが最高峰の地位を築き上げて来た経緯には、終戦前後に建設され興行が行われてきたという、まだ競技場黎明期から伝統と権威を自然と築き上げてきました。

その土地・建物はそこから移動しないし無くならないという不動産であり、ムエタイとボクシング興行を行なう専門の競技場であるがため、大物プロモーターがそこで興行を打ち、選手が試合をして、そこで強者が就く王座が与えられれば、そこを目指して地方で有望なムエタイボクサーがバンコクに集まり競い合い、ファンや賭け屋が注目し、この業界皆が個々の思惑はあるものの、人の集まりが関わりあって、これらのスタジアムを世界的に有名なムエタイ最高峰へ育て上げた結果でしょう。

二大殿堂となったスタジアムの支配人が交代しても習慣化した日々のスタジアム風景が変わることなく続き、スタジアム自体が無くなることは、よほどムエタイ競技が衰退しない限り、人は集まり興行は続くでしょう。

新ルンピニースタジアムの初回興行は2014年2月11日。新しいスタジアムは冷房完備、リング上に四面スクリーンを設置するなど最新式の設備で約4,000名収容可能な新たな聖地としての再スタートを切りました

2年前、ルンピニースタジアムの老朽化による移転はありましたが、古きスタジアムの物質的消滅はあっても新ルンピニースタジアムそのものの価値と活気は変わっていません。

後発のスタジアムでは二大殿堂には敵わず、他の認定組織では所有するスタジアムは無く、形が残る価値としては、WPMFはタイ国で国家的イベントに起用され、国王生誕記念興行や王妃生誕記念興行、ナーイ・カノムトム興行などがバンコクの王宮前広場やアユタヤ県などで年間3回ほどありますが、そこではWPMF世界戦が3試合以上起用され、世界チャンピオンの防衛戦や挑戦者としての出場、傘下の日本チャンピオンとしてのビッグマッチ出場で、世界に名を売るチャンスがあり、WPMF傘下に居る特典とも言えるでしょう。

WBCはプロボクシングで広まった世界のネットワークがあり、ムエタイそのものの認知度は低いでしょう。しかし、元・WBCムエタイ世界スーパーライト級チャンピオン.大和哲也(大和)がロサンゼルスやラスベガスでの試合に頻繁に出場したように、アメリカ本土に渡って、まだ世間の小さな注目でも、ボクシングのメッカとなる聖地で試合出場することは今後重要な意味合いを持っていくでしょう。

新日本キックボクシング協会もタイ・ラジャダムナンスタジアム興行(Fight to MuayThai)を年1回実施した時期がありました。チャンピオンになれば与えられるチャンスをまた団体の価値としても重要で復活して欲しいところです。

日本の代表的格闘技のメッカ、後楽園ホール54年の歴史。プロレス、ボクシング、キックボクシング、プロダンス、笑点、欽ちゃんの仮装大賞などのイベントがメインでした。それぞれのイベントで会場の造りが大きく変化します

過去、スタジアムの利点を考え、日本でも昭和の時代に「後楽園スタジアムランキング」で王座を含む意味合いで作ろうと暫定ランキングを一部団体で作られたことがありますが、対抗団体としての意地もあり、どこからも賛同されず実現に至りませんでした。今の時代に“後楽園スタジアム認定ライト級チャンピオン”なんてあったら、後楽園ホールが格闘技のメッカと言われる歴史の価値から業界関係者・ファンは魅力的でしょうが、この実現には各方面で利害が絡み、難しいでしょう。

日本でキックボクシング系団体やプロモーション単位の王座で「必要無いだろう」と考え得る多くの組織誕生の中で、それらが今後幾つ生き残るのか不透明な現状ながら、皮肉にも乱立した王座があるからこそ、選手層が厚く、興行が増えている逆現象があります。

そんな経験を積める環境から、梅野源治のような突出した日本の多くのチャレンジャーたちがサバイバルマッチを勝ち上がって歴史に残って語り継がれる、そんな“形ある最高峰”を勝ち獲り、その世代が日本でのスタジアム理想論も実現する時代が来て、世間の「訳わからん構造」を分からせる構造に世直したら、我々、昭和の経済高度成長期経験世代が生きているうちに訪れたら、楽しみな物語になることでしょう。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

2011年3月11日に東日本大震災が起きたときにジャニーズのグループで真っ先に激励のテレビCMを流したのはSMAPだった。ところが今回4月14日、16日に起こった熊本大震災について、ジャニーズのグループとして、一番最初にテレビCMにメッセージを出したのが嵐だった裏事情には「メリー副社長のご意向が反映している」(スポーツ紙記者)という

[増補新版]ジャニーズ50年史

5月1日から熊本県の民放キー局でいっせいに嵐のメンバーがひとりずつ激励コメントを語る「応援CM」は感動的だが「こうしたときに真っ先にメッセージを出すSMAPではないところに世代を交代の波がある」という声も。

2011年3月11日の東日本大震災のときはSMAPがACジャパン(公益社団法人・公共広告機構)のCMに出演、中居が『今、ひとつになるとき』と言いつつ5人で「日本の力を信じている」と力強くPRした。ときを経て5年、熊本大震災後、熊本県で流されたテレビCMでは、嵐の5人は画面に登場すると櫻井翔が口火を切る。「このたび、地震で被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます」として二宮ほか4人がお見舞いと激励のコメントを送り、最後に5人全員が「みなさんのふるさとに寄り添います」と語り、バックには嵐が歌う「ふるさと」が流れる。

その後もSMAPはジャニーズを代表して福島の被災者を激励し続けたイメージがある。今年の1月にもNHKにて生放送された『震災から5年〝明日へ〟コンサート』(3月に放映)で福島の被災者を励ます趣旨で北島三郎や「SEKAI NO OWARI」「Perfume」などを招待してコンサートを開催するなどしている。それではSMAPから嵐への交代に何があったのか。まずこれにはSMAPも驚いたという。

「暗黙の了解としてまっさきにメッセージを出すのがいつもSMAPだったのでファンの間でショックだったようです。熊本の民放4局で5月1日に一斉に放送された事実は、あとになってそれぞれSMAPのメンバーたちに知らされたようです」

このニュースを聞いた中居正広は、事務所に単独で熊本に入って救援活動して、 今年にもジャニー喜多川にかわり、社長になると噂されるメリー副社長に怒られた負い目があるからか「しょうがねえよな」とふてくされ 気味でつぶやいたという。

あの解散騒動からなかなか「5人そろってコミュニケートする時間をとるのは不可 能に近い」(テレビ局員)というが、予想していたとはいえ、スタジオでこの話を聞いた稲垣吾郎は無言で、香取慎吾、草彅剛は絶句したという。

とくにショックを受けているのが木村拓哉で、このテレビCM映像を取り寄せて見た。そのはつらつした姿はあまりにも1月に解散騒動で5人そろって「SMAP×SMAP」(フジテレビ)の冒頭で謝罪している映像を対照的だったので「ありえなくねえ? これじゃあ、世代交代をアピールしているもんだろうが!」と舌打ちしたという。
ただでさえ、木村拓哉にとって嵐がジャニーズのグループとして頂点のような厚遇を受けているのは不満のようだ。だが「それもしかたないだろう」という声もある。嵐は、SMAPを育てた元飯島三智マネージャーに対抗して藤島ジュリー景子が作ったグループ。彼らを売りだそうと、無料で再建をめざすJALのCMを引き受けたり、ジャニーズのアイドルグループとしては泥水を飲むような安い条件でバラエティ番組のギャラ条件もあえて呑んできた。

「メリー副社長は熊本震災が起きるとすぐに『震災被災者の激励キャラはうちは 嵐で行くからとスタッフ会議で伝えた。これがSMAPのマネジメントラインには伝わっていなからったらしい。もともと今、誰 がSMAPのマネジメントを主導権をとっているのかは、混乱の最中にある』(事情通)

SMAPのマネジメントがいまひとつ機能しない今、やや不謹慎ながら、熊本大震災を機にここで一気に嵐をたてて業界内で覇権をとろうと画策するには千載一遇の機会だ。

一方で木村が嵐に対して心穏やかでないのは、自身が誇りにしているドラマ『HERO』の設定をパクるようなドラマを松本が演じているからだとも言われる。

「松本潤が主演して高視聴率を稼いでいる『99.9―刑事専門弁護士―』(TBS)は木村がライフワークにしている風変わりな検事が主人公の『HERO』(フジテレビ)にストーリーが酷似しているのは明らか。不利な状況から逆転していく弁護士役の松本の姿は、木村が演じる検事、久利生き公平の姿に重なっていきます。変わり者だという点もかぶっていますし、パートナーの宮崎あおい演じる弁護士ととうまくい かない状態なのに次第に呼吸があってくるところも、木村と検事事務官を演じた松たか子のコンビを彷彿させます」(スポーツ新聞記者)

実際、SNSの書き込 みでも「マツジュンのドラマ、あれ『HERO』に激似じゃん。おもしろいんだけど』という指摘があふれた。木村が「設定を俺らの『HERO』に寄せすぎだ。恥ずかしくないのか、あいつら」と暗にTBSのスタッ フを批判したとも伝えられる。

「今後、熊本県民を激励するチャリティーコンサートも主催されています。嵐 が主体となるのですが、もしかしたら格下のゲスト扱いでSMAPを呼ぶなんていう逆転劇もありうるかもしれません」(同)

心中に嵐が吹き始めたのは、木村だけでなくファンも同様。皮肉なことに 『99.9―刑事専門弁護士』は第3話終了時点で、平均視聴率は16.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)をマーク。「水準ぎりぎりながらも映画化も話が出始めてもおかしくない」(TBS関係者)。

それにひきかえ、来年頭からなかなかスケジュールが埋まらないSMAPの木村を除く「造反組」と言われるメンバーたちは焦りから愚痴が増えてきたとも。
「契約が切れる9月に本当に解散するのではないでしょうか」(30代SMAPファン)

のしあがり始めた嵐の台頭に、SMAPのメンバーたちの本音はいかに?

(伊東北斗)

抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

むのたけじさん

1947(昭和22)年5月3日に施行された日本国憲法。これを記念して定められたのが憲法記念日だ。5月3日(火)、東京臨海広域防災公園で開催された〈5.3 憲法集会〉に参加した。

最寄駅のひとつ国際展示場駅を降りると、大勢の参加者と様々な団体旗・組合旗に迎えられた。政治や教育に関するビラを配る人々を横目に早速メイン会場へ向かう。

会場では開会前のプレコンサートが行われていた。沖縄音楽を代表する歌い手、古謝美佐子さんの歌声が広く響き渡るなか、徐々に参加者が集まってくる。開会宣言がなされた13:00には通路にまで溢れた参加者の熱気で、まさに大集会といった空気が出来上がっていた。

野党4党首のスピーチからは、やはり彼らは「人気者」なのだなという印象を受けた。しっかりと組まれた主張内容を訓練された話法で彩り、聴衆は適宜拍手を挟むなどして応える。ありきたりだが外さない演説であった。

奥田愛基さん

多くの方がマイクを握るなか、字義通り圧倒的な演説を行ったのがジャーナリスト、むのたけじさんだ。1915(大正4)年生まれのむのたけじさんは、朝日新聞社アジア特派員として活躍し、戦前・戦中期には近衛文麿や東条英機のインタビューを行ったこともあるという。現在101歳だ。

カンペを持たずに一言一言を確実に紡ぐその声は重く力強い。自身の戦争体験とそこから得た自責の念。特に印象に残ったのは「第三次世界大戦は、動植物の大半を死なせるでしょう。戦争を殺さなければ、私たち人間に生きる資格はありません。」という言葉だ。むのたけじさんのスピーチに対する拍手は絶大なものだった。落涙を免れなかった参加者の大勢いることは容易に想像できる。

ハイライトとして、SEALDsの奥田愛基さんの参加を挙げよう。遅れて会場に到着した奥田さんは、その理由(遅刻しそうだったためタクシーに乗り事情を説明。急ぎすぎた運転手が速度違反切符を切られた。そのために遅れたとのこと)を語り会場を笑わせる。

しかし、リュックを背負い、メモとしてiPhoneを見つめながらスピーチする彼の言葉は軽い。限りなく軽いその言葉と態度に、筆者は親しみを抱くことができなかった。現政権への対抗勢力の集まりという側面を持つこの集会に、奥田愛基さんの言葉はどれだけ有用なのだろうか。

参加人数の多い大規模な集会(この度の集会参加人数は主催者発表で50,000人)は社会の状況を端的に表すことがあり、無視することができない。やや私感に偏った観察記となったが、集会の様子を知る手助けとなれば幸いだ。


▼[撮影・文]大宮浩平(写真家)
1986年東京生まれ。
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抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

女優、吉田羊(年齢非公表)とジャニーズ事務所のアイドルグループ「Hey!Say!JUMP」の中島裕翔が「7連泊愛」として週刊誌に仲睦まじい様子をスクープされた一件がジャニーズ事務所のメリー喜多川(藤島メリー泰子)副社長の耳に入って怒り心頭だ。

[増補新版]ジャニーズ50年史

「冗談じゃない。Hey!Say!JUMPは売れてきたから、せっかく新番組に押し込もうとしていたのに」と激怒が収まらない。既報のように吉田は3月下旬、都内のアジア料理店でイケメンと食事後、そのまま自宅に中島を“お持ち帰り”。中島は吉田の自宅に約1週間にわたり連泊したというのがスクープの中身だ。

ジャニーズのグループは恋愛はもちろん御法度だが、それ以上にメリーを怒らせているのが「1月に独立を画策したSMAPを外し、冷や飯を食わす算段」が狂ったからと言われている。

もはや過去のお宝映像を流すばかりで、5人そろった企画がなかなか撮影すらもままらないほど番組作りがギクシャクしている「SMAP×SMAP」 (フジテレビ)の放映枠である月曜の22時を「Hey !Say!JUMP」がメインの番組にとって替えよ うと根回している最中だった。メリーの算段が成功し、次のクールでの「交替劇」はかなりの話題になるはずだったが…。その番組内容は、「Hey!Say!JUMP」をメインにして、スポーツやゲーム、もしくはダンスコンテンスなど盛りだくさんのイベントテイストのもの ったとか。

「中島はメリーのお気にいりで、年始やメリーの誕生日には、LINEでやりとりをするほどだと聞いています。ところが今回、中島からの弁解のLINEはいっさい無視。「SMAP×SMAP」を「Hey!Say!JUMP」に引き渡す話は、白紙に戻してちょうだい」とフジテレビ上層部に即刻、連絡を入れたそうです」(スポーツ紙記者)

ところで「Hey!Say!JUMP」の中でナンバー3くらいの位置にいる中島が意識しているのは、実は演技一本で活動している同じジャニーズの生田斗真だ。演技に海岸したのは、2013年夏に放映された「半沢直樹」で、境雅人の演技をまのあたりにして、さらに演技を磨きたくなったとか。

「中島君は、俳優としてかなり演技がうまいほうですよ。それに仕事に対して真面目な性格です。メリーも中島が役者志向があるということを知っているから、うすうす『吉田に演技を教わっているのだろうな』と察していて、事情を理解しているのでおおっぴらに中島を叱れない。だからなおさらやり場のない怒りを抱えていると思います」(同)

中島、吉田とも交際は否定しているが、少なくとも中島が吉田へ役者として相談したいことが山ほどあったはずだと話すドラマ製作関係者も少なくない。

「実は吉田は男っぽい気質で、『ジャニーズがなんぼのもん? 別に独身どうしが恋愛して何が悪いの?』と酔って劇団関係者に当たり散らしたというから、そうした開きなおった態度も情報通のメリーに入って、さらに態度を硬化させたという話も出ています」(同)

ジャニーズ事務所に「メリーはどれくらい怒っているのか」と聞いたが「担当者は不在」とした。また 吉田の事務所はメールも電話もつながらず。

とはいっても、昨年の大晦日、大阪でカウントダウンライブが超満員の「Hey!Say!JUMPはジャニーズ事務所の稼ぎ頭で「写真集は 10万部以上見込める」(出版社社員)

という日の出の勢い。

メリーの中で「鶴の一声」で完全にメイン番組を外される「SMAP」のメンバーたちの番組がことごとく外されるもの時間の問題のようだ。

(伊東北斗)

抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

本日は1947年5月3日「日本国憲法」が施行された「憲法記念日」である。施行から69年目となるが、2016年の今日にいたり、成文憲法たる「日本国憲法」(以下「憲法」)は本当に「在るのか、もう無いのか」、私にはかなり怪しく思えて仕方がない。形式的にも外形上も「憲法」は存在しているけれども、その重要な柱とされたはずの「国民主権」、「基本的人権の尊重」、「平和主義」は文字通りの内容を伴い、下位法で定められ、行政の場で「憲法」が規定する運用がなされているであろうか。

◆条文と現実の間の乖離

「憲法」は前文以下第一章から第十一章補足の第百三章までで構成されている。その中で以下の文言は「在る」には「在る」が実態はどうだろう。カッコ内太字が私の疑問である。

第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 (集団的自衛権容認)

2  前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。(自衛隊の存在)

第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。(近年3万人を前後する自殺者)

第十四条  すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。(各種差別の放置)

第十九条  思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。(大学による思想弾圧)

第二十条  信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。(神社本庁の政治介入)

2  何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。 (国家神道に由来する「君が代」斉唱の強制)

3  国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。(官僚の靖国神社参拝、首相の伊勢神宮参拝)

第二十一条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 (鹿砦社が襲われた言論弾圧事件)

2  検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。 (盗聴法の成立)

第二十三条  学問の自由は、これを保障する。(文科省による「文系学部統廃合」)

第二十五条  すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。(ワーキングプア・生活保護支給拒否)

第二十八条  勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。(労組への不理解・労組の弱体化)

第三十三条  何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。 (現行犯以外での令状なし逮捕の横行)

第三十四条  何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。(不当逮捕・拘禁の横行)

第三十六条  公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。(警察・検察・海上保安庁などによる暴力の常態化)

第三十八条  何人も、自己に不利益な供述を強要されない。(自白の強要)

2  強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。(不当長期勾留により相次ぐ冤罪)

3  何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。 (自白のみでの死刑判決)

第四十四条  両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。(人種による差別)

第九十九条  天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。(憲法改正を公言して憚らない首相以下国務大臣)

◆「改憲」だけが「憲法の死」を意味するわけではない

素人目でざっと見渡しても現実と条文の間には、相当な乖離があり、乖離の幅は権力者の意図によりどんどん拡大され、かつ固定化を図られている。今、自衛隊が既に定着しているのはその好例だ。これだけ解かりやすい文言でも曲解すれば何でもできる。「学問の自由はこれを保障する」など文科省の官僚や、大学に批判的な「学生狩り」に血道をあげる多くの大学関係者には「冗談」にしか聞こえないだろう。

文言、条文はある。よく読めば所々に少しおかしな部分もあるけれども、ある種の思想と理念を総合的に包含した「憲法」を有機体ととらえれば、外見上の体裁は整ってはいる。まだ生きていそうだ。問題は「憲法」の内臓を喰いつくしつつある「悪性新生物」が既に有機体としての生命を奪う(あるいは既に奪われた?)ところまで拡大していることだ。

毎年のように5月3日に、私は「護憲」(条件付きながら)の意見を表明する発言や行動をしてきた。けれども今年は現実を直視しようと思う。極めて重篤で危篤状態にある「憲法」。おそらくは蘇生不可能な有機体としての「憲法」。

「改憲」だけが「憲法の死」を意味するわけではないことを、私(たち)は徐々に学ばされ、「解釈改憲」という「殺憲法術」をも目の当たりにした。「憲法」はこれからどうのように最期を迎えるだろうか。「明文改憲」がなされるのか、それとも「悪性新生物」が臓物を食い尽くし、内部は完全な変容を遂げても、表皮だけは「憲法」のままの体裁を取り続けるのだろうか。「憲法」はまだ「在る」。死んではいない。でも意識はあるか? 余命は幾ばくか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

4月29日(金)、国会議事堂前にて〈T-ns SOWL〉(Teens Stand up to Oppose War Law)が安倍政権の退陣を求める抗議行動を行った。同グループは安保法制に反対することを目的として立ち上げられたもので、高校生や10代の若者が主なメンバーだ。首相官邸前で行われている反原発連合の活動を取材した筆者は、少し遅れて国会議事堂前に到着。国会議事堂と警察、大勢(30名超)の取材陣を前にした〈T-ns SOWL〉が、一見して熱のこもった声を上げていた。

「集団的自衛権はいらない」「戦争反対」などという聞きなれたシュプレヒコールに加え、あるいは練習を重ねたのではと思われるような、新鮮でリズミカルなオリジナルコール。それに答えるメンバーは、白色に統一された拡声器を握り締め、しっかりと声を出していた。

暴力性を帯びがちなかつてのデモ活動に比し、〈T-ns SOWL〉の活動からは「フラットな民主性」が感じられた。それは、彼らの用いる言葉やその服装が「社会的一般」を外れていないという事実に依るところが大きいと思う。

より多くの社会構成員に働きかけることを目的のひとつとして認めるのであれば、一般的な言葉で語りかけるというのは非常に重要なことである。この観点からすると、彼らの態度はメンバーの若年性を考慮せずとも評価さるべきものである。

もうひとつ感じたことを述べる。これは〈SEALDs〉についても言えることなのだが〈T-ns SOWL〉のデモ活動からは、浮き足立っているような、言わば「部活動」的な印象を受けた。これはそのメンバーの多くが生活を持たないという点に起因するものであろうが、あるいは不可避的なものだとも言えよう。重要なのは、そういった印象を与えるということを自覚しているかということと、その自覚を持った上で為すべき仕事を追求しているか、ということである。これは私見だが、彼らの仕事は「半ばほども社会参与していない高校生ですら問題意識を持つ安保法制とはいったいなんだろう」といった手順で問題意識を惹起させることだと思う。

大学生主体の〈SEALDs〉に次いで現れた〈T-ns SOWL〉は、メンバーが高校生であるという点が最も特徴的であり、その特徴はメディアにとって格好の要素である。先述した通り、現場にはその「ネタ性」を証明するように筆者を含めた報道関係者が詰めかけている。メディアは〈T-ns SOWL〉とその活動を資本に変換すべく様々な調理を試みるだろう。そういった社会の利害関係に絡め捕られることなく、自分たちの立場と為すべき仕事を認識し、主体的に行動できればと願うが、非常な困難が伴うであろう。まずは今後の動向を眺めようと思う。

[撮影・文]大宮浩平

▼大宮浩平(写真家)
1986年東京生まれ。
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抗うことなしに「花」など咲きはしない『NO NUKES voice』Vol.7

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