1月10日にISKAムエタイ世界バンタム級王座決定戦を制し、チャンピオンとなった志朗がISKAムエタイ・ヨーロッパ同級チャンピオン. ライアン・シェーハンとのノンタイトル戦が行われました。見かけ弱そうな細身のライアンはムエタイ技を身に付けた強豪でした。志朗がボディブローやローキックでペースを掴みつつ、ヒジで切られてからムエタイ技のシェーハンの距離感に苦戦した流れでした。
ムエタイが世界に普及した現在、いろいろなタイプの選手が世界に散らばっている中で、特にヨーロッパ勢は昔から柔道でも学習能力が高く、また地続きの近隣の国々と交流が盛んになるので、競技人口も高く、成長度が高いと言われます。ムエタイ殿堂王座が世界最高峰であっても、強いのはタイだけではない、いろいろな国柄のタイプが拡散した方々の選手と対戦することが重要な時代かもしれません。今後、志朗は日本人選手とも対戦して欲しいところ、そこにファンの支持と評価が高まります。
日本バンタム級チャンピオン.瀧澤博人(ビクトリー)が長身を活かした右ジャブを有効に使い、2度の飛び膝蹴りで勝岡健(伊原稲城)を豪快にKO、2度目の防衛に成功と共に今興行ベストファイトとなる武田幸三賞を受賞。また、「ルンピニー王座を狙う」というマイクアピールに、挑戦への新たなルート展開を見せるのか、気になる宣言でありました。
2010年に石井宏樹を小腸断絶で病院送りにしたパッカオ・ダボンヌンガヌウン(タイ)を緑川創(藤本)がブッ倒し、敵討ち成功。ラジャダムナンランカーを倒したことで、緑川のランク入りも確実で、いよいよ殿堂王座挑戦が近づいて来たかの期待を持たせる印象。ヒジでパッカオの頬を腫れさせ、2R後半からパッカオの反撃激しく骨を砕くような打ち合いが続く中、緑川が左右パンチでダウンを奪い、最後はコーナーに詰め、ボディと顔面パンチで仕留める豪快にKO。激しさが長く続いた互いのぶつかり合いでは、瀧澤博人の試合を上回っていた印象があります。
麗也(20歳/治政館)と山田航輝(17歳/キングムエ)の、幼少期からアマチュアでムエタイ・キック系競技の経験を積んできたベテランの試合は、攻防の展開が速く、スタミナ切れない展開に会場が沸き、ムエタイ経験は山田航輝が上回る中、麗也のキックリズムの攻撃力が上回ったか、僅差の結果ながら麗也の勝利。これで対戦が遠退くのでなく、また再戦に向かって欲しい幼少期開始世代の対決でした。
◎WINNERS 2016 2nd / 2016.5.15後楽園ホール17:00~21:30
主催:治政館ジム / 認定:新日本キックボクシング協会
前日計量:14日.ホテル東京ガーデンパレス(御茶ノ水)15:00~16:00
◆日本 vs アイルランド国際戦 56.0kg契約3回戦
ISKAムエタイ世界バンタム級チャンピオン.志朗(治政館/55.8kg)
vs
欧州ムエタイ・バンタム級チャンピオン.“アベンジャー”ライアン・シェーハン(アイルランド/55.7kg)
引分け / 1-0 (主審 椎名利一 / 少白竜 29-29. 桜井 29-29. 宮沢 30-28)
◆日本バンタム級タイトルマッチ 5回戦
チャンピオン.瀧澤博人(ビクトリー/53.5kg) vs 1位.勝岡健(伊原稲城/53.25kg)
勝者:瀧澤博人 / TKO 2R 2:45 / カウント中のレフェリーストップ / 主審 仲俊光
◆70.0kg契約 5回戦
緑川創(藤本/69.9kg) vs ラジャダムナン・スーパーウェルター級8位.パッカオ・ダポンヌンガヌウン(タイ/69.5kg)
勝者:緑川創 / KO 4R 2:32 / カウント中のタオル投入 / 主審 少白竜
◆52.5kg契約 5回戦
麗也(前・日本フライ級C/治政館/52.4kg) vs 山田航輝(キングムエ/52.2kg)
勝者:麗也 / 2-0 (48-48. 49-48. 49-48)
◆73.5kg契約 5回戦
日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/73.5kg) vs イ・ジフン(韓国/72.25kg)
勝者:斗吾 / 3-0 (30-26. 30-26. 30-26)
◆59.0kg契約3回戦
内田雅之(前・日本Fe級C/藤本/58.7kg) vs デンサヤーム・ウィラサクレック(元ルンピニー・B級C/タイ/58.5kg)
勝者:デンサヤーム / TKO 2R 3:05(場内アナウンス) / レフェリーストップ
◆ライト級3回戦
日本ライト級1位.永澤サムエル聖光(ビクトリー/61.0kg) vs 日本ライト級2位.直闘(治政館/61.23kg)
引分け / 三者三様(29-28. 29-30. 29-29)
◆他の6試合
昔から、試合へ向けた記者会見というのはビッグマッチの際にありましたが、ここ数年、それほど大きくない興行でも、記者会見は増えてきた様子はあります。特に公開計量というのは、毎度やって欲しい気がします。各社記者さんにとっては記者会見の方が重要と思われるでしょうが、計量や試合結果記録などは公式に開示して欲しいものなのです。
蘇我英樹(市原)が後楽園ホールでも引退式を披露。先月、市原臨海体育館で大月晴明とラストファイトを行ない、壮絶KO負けを喫した蘇我英樹はその試合後、ダメージ引きずる中、引退式を行ないましたが、改めて後楽園ホールの殿堂で、市原だけでない多くのファンが集まる中、引退式を行ないました。市原では報道陣もほとんど居なかったので、仕方ないところ、後楽園ホールでの開催を1本に、豪華にやった方がよかったように思います。しかしいずれも「長き激闘にお疲れ様でした」という声が多い引退式でした。
3月にキックボクシング創始者・野口修氏が逝去されました。近親者のみの密葬の形で見送られたようで、4月に入っても報道はされていなかったようです。これで良くも悪くも長き時代のひと区切りが終わったという印象ですが、野口修氏の影響で個々のキック人生が続いている多くの業界人が今後もキックボクシングを引率していくことでしょう。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」