6月18日「都ホテルニューアルカイック尼崎」で第6回「前田日明ゼミ」が約90名の聴衆を集め開催された。この日の演題は「受刑者のアイドルという生き方 プリズンコンサート400回への道」でゲストはPaix2(ペペ)だ。

ゼミ開始に先立ち松岡社長挨拶に立ち「2010年9月から始めた『西宮ゼミは今回で30回を迎え、一区切り休みに入ります』と西宮ゼミが一応の休止に入る事を宣言した。続いて前田日明氏が、「『受刑者』『プリズン』と聞くと自分に近く感じる。若いころから周りに元気のある人間が多かったので『アイツはもうすぐ出て来る』とか『ヤツは今入っている』という話をしょっちょう耳にしていた。最近は罪を犯した人の出所後の人生が気になっている。昔は出所後の人を受け入れる経営者も多数いたが、今の社会では『コンプライアンス』が声高に語られ、そういう経営者は減っているのではないか」との問題意識を明らかにした。

そしてゲストPaix2が登場し「逢えたらいいな」など6曲を約1時間にわたって披露した。

休憩をはさんで前田氏とPaix2お二人の対談が始まった。個人的には前田氏のズケズケとした質問が際立っていて大変面白かった。「ストーカーみたいなのにはあったことはありませんか?」、「こんな事聞いていいのか解らないけど、お金どうやっているんですか?」、「デビュー前に仕事なさってたんですね、と言う事は活動が16年だからお年は……」など、やらせ一切なしを証明する「アイドルには聞いてはいけない」質問に会場が湧いた。

しかし対談では前田氏とPaix2お二人の経験から、どうして犯罪を起こしてしまうのか、現代社会に見られる犯罪者を生み出してしまう構造の問題点などが真剣に議論された。熱を帯びた対談はまだまだ続きそうだったが、会場の都合上16時30分で散会となった。

ゼミ終了後は場所を移しての懇親会が行われ、約70名が参加した。常連の参加者のみならず、「格闘家」前田氏のファンの姿も多く、恒例となったサインを求める長蛇の列が今回も見られた。

2010年に鈴木邦男氏をホストとして始まった「西宮ゼミ」シリーズは、足掛け7年、30回の開催で一区切りとなる。常連の参加者からは「いつも楽しみにしていたのでこれからも続けてほしい」、「東京や大阪ではなく、西宮や尼崎で知識人の討論を聞くことが出来る貴重な機会だった。再開を強く求めます」、「なんで止めるの? まだやってよ」など継続を求める声が多数聞かれた。松岡社法への「直訴」も相当な数にのぼった。この熱烈「継続希望」を受けて、今後果たしてどのような展開をみせるであろうか。
 
ともあれ一段落である。ここで過去ゲストとして登場頂いた方々を振り返ってみよう。

鈴木邦男ゼミ(第1期):飛松五男(元警察官、現コメンテーター)さん、水谷洋一(西宮冷蔵社長)さん、浅野健一(当時・同志社大学教授)さん、 Paix2(ぺぺ。歌手)さん、野田正彰(精神科医。当時・関西学院大学教授)さん、山田悦子(甲山事件冤罪被害者)さん。

鈴木邦男ゼミ(第2期):本山美彦(経済学者。当時・京都大学名誉教授、大阪産業大学学長)さん、寺脇研(元・文部次官。京都造形芸術大学教授)さん、北村肇(『週刊金曜日』発行人)さん / Paix 2(ぺぺ。歌手)さん、重信メイ(国際ジャーナリスト)さん、田原総一朗(ジャーナリスト)さん、池田香代子(翻訳家、作家)さん

鈴木邦男ゼミ(第3期):上祐史浩(宗教家)さん、神田香織(講談師、ふくしま支援・人と文化ネットワーク代表)さん、湯浅誠(反貧困社会運動家。元・内閣参与)さん、前田日明(格闘家、思想家)さん、青木理(ジャーナリスト)さん、内田樹(思想家、武闘家。当時・神戸女学院大学名誉教授)さん。

浅野健一ゼミ:山田悦子(甲山事件冤罪被害者)さん、河野義行(松本サリン事件冤罪被害者)さん、北村肇(『週刊金曜日』発行人)さん、安田浩一(ジャーナリスト)さん、安田好弘(弁護士)さん、矢谷暢一郎(ニューヨーク州立大学教授)さん。

前田日明ゼミ:鈴木邦男(思想家、社会運動家)さん、孫崎享(国際ジャーナリスト)さん、田原総一朗(ジャーナリスト)さん、山口二郎(政治学者、法政大学教授)さん、木村草太(憲法学者、首都大学東京教授)さん、 Paix 2(歌手、保護司)さん

単に著名人が多く登場しているだけでなく、ホストとゲストの関係で語られるテーマがリレーのように繋がれてきていたのも、今から振り返れば「西宮ゼミ」の特徴と言えよう。一応の区切りに多数寄せられた「継続」を求める参加者の声に鹿砦社はどのように応えるか、注目が集まる所ではある。しかし「西宮ゼミ」開催にあたっては、参加者の増加に伴い、本社社員が全員休日総出で当って来られた事情もある。暫くは一息ついて休憩をして頂き、また鹿砦社らしい企画が再登場することを期待したい。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

Paix2『逢えたらいいな―プリズン・コンサート300回達成への道のり』(鹿砦社2012年)