昨年、8月7日にムエタイ殿堂のひとつ、ルンピニースタジアムの日本支部が誕生する記者会見が行われてから、一旦は頓挫したのかと思うほど進展が鈍った印象がありましたが、約1年弱経過して王座決定戦が行われる進展が見られました。水面下ではレフェリー育成やライセンスの認定、ルンピニースタジアムの新たな認可や連携が必要とあって時間は掛かりつつ下地は整ったようです。
国内3つめのタイトル奪取成功の貴センチャイジム。右端は会長のセンチャイ氏
ムエタイの興行はキックボクシングとは違った赴きがありますが、M-ONEのような、派手な幟や横断幕が掲げられる外装は無いものの、リングサイドにタイ側役員首脳の顔が並ぶだけでもこの興行の重みを感じます。
3階級の初代王座決定戦が行われた試合出場の萩原秀斗だけが無冠の中、他の5人は過去何らかの国内王座に就いている実力が測れるチャンピオン経験者でした。世界チャンピオンも居て、肩書を書き並べると一般の人の前ではややこしく長くなるので省略します。
長身を利した貴のミドルキック
◆3階級で初代チャンピオンが誕生
貴(たかゆき)は組んでのヒザ蹴りは優位に立つ中、離れて戦えば岩浪悠弥も劣らぬ攻勢でヒジとパンチでクリーンヒットを見せる。ムエタイ式採点にしても日本人ジャッジが見極めるにしてもポイントの取り方が読み難い展開の中、スプリットデジションとなりました。
ペットナリンは来日3年という紹介。手数少ない中、一発の威力ある両者の蹴りも微妙な振り分けで3-0ながら二人のジャッジが僅差の判定。
ペットナリンのミドルキックを避けるのは際どく、耐える加藤剛士
藤原あらしは37歳になっても闘志劣らぬ攻勢で、21歳の萩原秀斗からダウンも奪って大差判定勝利。「まだ20年やります」という発言には、お子さんも「もうすぐ4人目が生まれます」という発言に続き、モチベーションが上がる一方の様子で頂点を極めるまで辞めない、諦めない姿勢が見られます。
重量級でも鋭い蹴りを持つTOMOYUKIが引退試合。パンチの上手さはタイでのプロボクシングでチャンピオンにもなった経験で、2ラウンドに2度ダウンを奪ってレフェリーが止めるTKO勝利。ラストファイトの後、家族とともにテンカウントゴングに送られました。
反撃のミドルキックの加藤剛士もペットナリンに負けない蹴り合い
◎MuayThaiOpen35 & LumpineeBoxingStadium of Japan
主催:センチャイムエタイジム / 7月17日(日)ディファ有明16:00~21:20
認定:ルンピニースタジアム
◆ルンピニージャパン・スーパーフライ級王座決定戦 5回戦
貴センチャイジム(センチャイ/52.15kg)vs 岩浪悠弥(橋本/52.16kg)
勝者:貴センチャイジム / 判定2-1
主審 少白竜 / 蔵満 48-49. 山根 49-48. 桜井 50-48.
在日タイ人として実績もあり、日本タイトル奪取のペットナリン
◆ルンピニージャパン・スーパーライト級王座決定戦 5回戦
ペットナリン・ソー・スパーポン(岡山/63.5kg)vs 加藤剛士(WSR・F池袋/63.3kg)
勝者:ペットナリン / 判定3-0
主審 山根正美 / 蔵満 50-49. 少白竜 50-47. 桜井 49-48.
◆ルンピニージャパン・バンタム級王座決定戦 5回戦
藤原あらし(バンゲリングベイS/53.25kg)vs 萩原秀斗(エイワS/53.52kg)
勝者:藤原あらし / 判定3-0
主審 河原聡一 / 蔵満 50-46. 山根 50-47. 桜井 50-46.
ヒジ打ちでダウンを奪い、若々しいファイトを続けた藤原あらし
◆女子50.0kg契約3回戦(1R=2分制)
ホンカーオ・モー・ラチャパットチョンブン(タイ/50.0kg)vs 小林愛三(NEXTLEVEL渋谷/50.0kg)
引分け / 0-0 (三者とも29-29)
◆73.0kg契約3回戦
TOMOYUKI(センチャイ/72.1kg)vs 剛王(FIGHTLAB JAPAN/73.0kg)
勝者:TOMOYUKI / TKO 2R 1:50
─以下、8試合─ / ○=勝者 ●=敗者
◆61.0kg契約3回戦
●スアノーイ・トー・ヌームエタイシンジム(タイ/59.5kg)vs 笠原淳矢(フォルティス渋谷/61.0kg)○ / 判定0-3
◆62.5kg契約3回戦
○村中克至(ブリザード/61.75kg)vs ライヤマン(ナックルズ/62.3kg)●判定3-0
◆フェザー級3回戦
翔貴(岡山/57.1kg)vs 大山拓也(インスパイヤードM/57.15kg)引分け0-0
◆ウェルター級3回戦
○重宗(TSKJapan/66.35kg)vs 田邊裕哉(京都亀岡/65.2kg)●判定3-0
◆65.0kg契約3回戦
馬木愛里(岡山/64.75kg)vs 柿沼慶(ポゴナクラブ/64.9kg)●判定3-0
◆スーパーフェザー級3回戦
●宮田裕司(バンゲリングベイS/58.8kg)vs 皇貴(インスパイヤードM/58.97kg)○判定0-3
「あと20年」「4人目が生まれます」前向きに語る藤原あらし
◆スーパーバンタム級3回戦
○丸吉伴幸(クラミツ/55.3kg)vs 菊地英時(ポゴナクラブ/54.95kg)●TKO 3R 2:58
◆スーパーフライ級3回戦
大翔FLYSKYGYM(FLYSKY/51.4kg)vs 前田翔太郎(NEXTLEVEL渋谷/51.85kg)
引分け三者三様
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重いローキックを放つTOMOYUKI
4月には、これもタイ発祥のWMC傘下の日本王座が誕生しており、ムエタイを母体とする日本王座も4団体目となりました。この他に従来の日本のキックボクシング王座が乱立している訳で、共存共栄できるとしても、一般世間の人には説明し難い厳しい現状が続きます。
日本では「LumpineeBoxingStadium of Japan」が正しい名称の、略称「ルンピニージャパン」です。本場タイでは世界タイトルという位置付けではないスタジアムタイトルですが、これがムエタイを代表するラジャダムナンスタジアムとルンピニースタジアムが二大殿堂となる最高峰と言われています。スタジアムとしての歴史は古く、ラジャダムナンは1941年の設立。ルンピニーは1956年の設立です。また古代ムエタイと言われる歴史は1774年にまで遡るナーイ・カノムトム物語が有名です。更には500年の歴史と言われるほど、その原点は複雑なほど古くなります。
こんな偉大な歴史を母体に持って動き出したルンピニージャパンの興行は、ディファ有明での満員にはならない船出でしたが、センチャイ氏はムエタイオープン興行を過去34回継続してきた経験値で今後も踏ん張るでしょう。
次回センチャイジム主催興行は7月29日(金)14:00より「TOYOTA Hilux Revo Superchamp in Japan」がディファ有明で開催。タイ選手4人、日本選手4人の計8人によるワンデートーナメントが開催されます。喜入衆(フォルティス渋谷)、平野将志(インスパイヤードモーション)、佐藤翔太(センチャイ)、為房厚志(二刃会)が出場予定です。
またムエタイオープン36&ルンピニージャパン2は10月2日(日)にディファ有明で開催予定です。
スポットライトを浴び、家族と共にテンカウントゴングを聞くTOMOYUKI
[撮影・文]堀田春樹
▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」
7月13日発売!芸能界の闇を暴く震撼の書『芸能界薬物汚染』(鹿砦社薬物問題研究会編)