治政館ジムが抱える若きスターの麗也が“取り”のメインイベント・・・ところが瀧澤博人が最終試合(大取り)に変更となりました。
麗也は治政館の先輩、志朗に続くスターとして試練を与えられつつ、日本フライ級チャンピオンにまで届いた選手。1995年生まれで10月で21歳になります。ここ1年ほどの日本人との同世代ライバル対決では4連勝。5月の山田航輝(キングムエ)との対戦も激しい展開で判定勝利。この日のヨードウィッタナーが次第に調子を上げてきても、パンチで主導権を掴み、突進をいなす技術を見せて勝利を導きました。
瀧澤博人は日本バンタム級チャンピオンとなって以降、ムエタイ王座を目指し強い相手との対戦を臨むも撥ね返される苦戦が続く中、前回興行での王座防衛戦で勝岡健(伊原稲城)を退けた後「ルンピニースタジアム王座を狙う」と宣言したとおり、更なる試練に臨み続けていますが、長身を活かした有効な蹴りとパンチも力及ばずヒジで切られ、3ラウンド終了時の棄権負けでしたが、ただでは終れない玉砕戦法で立ち向かう勇敢さが見られました。
内田雅之は昨年10月に5度目の防衛戦で、重森陽太(伊原稲城)に日本フェザー級王座を奪われるも、ムエタイ元チャンピオン戦を迎え、実戦から長く離れない試合間隔を保っています。勝利には繋がっていませんが、我が息子やジムの後輩に戦う姿を見せるかのように38歳になってもアグレッシブな戦いを続けています。この日は4ラウンドからやや動きが鈍り、劣勢気味で終わりムエタイ元チャンピオンには敵わずでした。
同じく38歳の真鍋英治(市原)が4月の市原臨海体育館での興行に続いて出場。いずれもKO負けですが、過去、1997年と1998年にバンタム級で、2001年にフェザー級で日本王座挑戦したこともあり、今年は数年ぶり(ほぼ10年かも)にライト級での再起でした。攻撃的ファイトで好感が持てますが、打たれての脆く崩れるKO負けが多く、今後続けるのはちょっと心配な存在です。
本日の最優秀選手賞となる武田幸三賞は、試合をコントロールする上手さが光り、麗也が獲得しました。
◎WINNERS 2016. 3rd
8月28日(日)ディファ有明16:30~20:40
主催:治政館ジム / 認定:新日本キックボクシング協会
◆54.0kg契約 5回戦
日本バンタム級チャンピオン.瀧澤博人(ビクトリー/54.0kg)
.VS
ヨーブアデン・ソー・シリラック(元RDN系Lフライ級C/タイ/54.0kg)
勝者:ヨーブアデン / TKO 3R終了
◆53.5kg契約 5回戦
麗也(治政館/53.5kg)
.VS
ヨードウィッタナー・シリラックムエタイ(タイ/52.8kg)
勝者:麗也 / 3-0 (49-47. 49-48. 48-47)
◆59.0kg契約 5回戦
内田雅之(元・日本Fe級C・現同級2位/藤本/58.75kg)
.VS
チャオ・ロゲート(元LPN系フライ級C/タイ/59.0kg)
勝者:チャオ・ロゲート / 0-3 (48-49. 48-50. 48-49)
◆58.0kg契約3回戦
日本フェザー級1位.石原將伍(ビクトリー/58.0kg)
.VS
サハラット・サシプラパー(タイ/57.5kg)
勝者:石原將伍 / TKO 3R 2:05 / 石原はパンチが強く、連打で追い込んで倒しレフェリーストップに追い込む。
◆58.0kg契約3回戦
日本フェザー級3位.瀬戸口勝也(横須賀太賀/57.7kg)
.VS
日本フェザー級4位拳士浪(治政館/57.85kg)
勝者:瀬戸口勝也 / TKO 1R 2:20 / 瀬戸口も得意のパンチ強打で2度ダウン奪って仕留める。何も出来ずに終った拳士浪も納得の敗北。
◆69.0kg契約3回戦
日本ウェルター級1位.政斗(治政館/68.8kg)
.VS
NAOTAKA(橋見塾/68.65kg)
勝者:政斗 / TKO 2R 1:07 / ヒジ打ちによるドクターの勧告を受入れレフェリーストップ。政人が再浮上を狙って積極性ある攻勢。再度の王座挑戦を狙う。
◆62.0kg契約3回戦
日本ライト級2位.直闘(治政館/62.0kg)vs真鍋英治(市原/61.6kg)
勝者:直闘 / TKO 2R 2:57
RDN=ラジャダムナンスタジアム
LPN=ルンピニースタジアム
他、アンダーカード7試合は割愛。
◆麗也と瀧澤博人のダブルメインイベント
この日はダブルメインイベントと謳っているので、麗也と瀧澤博人ともにメイン級ですが、正式にはメインイベントはひとつ、セミファイナルもひとつが基本です。パンフレットにも書かれていたとおり「麗也が初のメイン」。やはり取りを務めるのは我が身でありたいと思うかもしれません。
“見果てぬ頂きを目指して”とは、この興行のサブタイトル。あともう少しというところで手が届かない、程遠いムエタイ殿堂王座。実力で優っても、勝負ではいなされ転ばされる競技でもあります。首相撲の駆け引きと更に現地での知名度も味方になり、そこで防衛してこそ“金メダル級”としたら現在は、“銀”にも迫れない、どうにもならない現状でしょう。そんな険しい頂であるため挑戦し続ける価値があります。
この日、真鍋英治がリング登場時の着ていたTシャツには「ヒジ打ち一発50万!!」と書かれていましたが(セコンド陣営も着用)、この意味分かる人、会場内にどれだけいたでしょうか。
これは現・市原ジム会長の小泉猛氏が、1981年5月の内藤武(士道館/宮越宗一郎、慶二郎の父)での50万円賞金マッチでかなり劣勢な中、ヒジ打ち一発で逆転TKO勝利し、50万円奪取した試合が原点で、当時のゴング誌に、「小泉、ヒジ打ち一発50万!」と書かれていた見出しが使われたものと思います。
次回興行は9月18日(日)には後楽園ホールで、先日、ラジャダムナンスタジアムで3ラウンドKO勝利した江幡睦が“取り”のTITANS NEOS 20が17:00より開催されます。
[撮影・文]堀田春樹
▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」