2016年から続く過酷な試練がムエタイ殿堂チャンピオン達には待ち受けています。T-98(今村卓也)と梅野源治はムエタイチャンピオンのまま1年を過ごせるか。
T-98は昨年6月に王座奪取し、10月に現地ラジャダムナンスタジアムで初防衛を果たす、日本人では初の快挙でした。これはT-98自身が目指したことでしたが、観衆は少ない中での防衛戦で、層の薄い重量級で今後、高評価を残すには、今考えられる大物と現地で防衛戦を積み重ねることで克服していくことでしょう。
梅野源治は今年、「KNOCK OUT」の常連メインイベンターで毎度の出場が予定されています。年間6度の興行予定がある中、更にこの合間を縫って半年とされる4月23日に防衛戦期限を迎えるラジャダムナン王座防衛戦を行なわなければなりません。
どちらも強豪が待ち構えるイベントで、強い梅野がどこまで短い試合間隔で激戦を続けられるか注目されます。タイ同級ランカーにも梅野という難敵は研究されるほどなので、群集が押し寄せる現地スタジアムで防衛を果たすことも陣営の計画にはあるでしょう。
◆ムエタイ二大殿堂王座に何人の日本人選手が挑戦するか?
更にこれらの最高峰とされるムエタイ二大殿堂王座に、今年の暮れまでに日本人選手が何人挑戦し、何人チャンピオンが誕生しているかも話題のひとつですが、「藤原敏男氏が獲った時代から比べれば、ずいぶんムエタイ王座挑戦への道が楽になったものだ」と語った当時を知るベテラン記者がいました。獲るだけでなく伝説を作る名チャンピオン誕生を、その兆しを作って欲しい数々のビッグイベントに期待が掛かる2017年であります。
◆1月6日(金)23時からTOKYO MXTVで「KNOCK OUT」がレギュラー放送に!
12月5日に初回興行をKO続出の大成功で終らせたイベント「KNOCK OUT」は今後も好カードでTOKYO MXTVで1月6日(金)23:00より、平成期以降は初となる毎週の地上波レギュラー放送が始まります。
◆新年は1月8日(日)新日本キック「WINNERS2017.1st」で幕開け
年初めの国内興行では1月8日(日)後楽園ホールでの新日本キックボクシング協会・治政館ジム興行「WINNERS2017.1st」で、ISKAムエタイ世界バンタム級チャンピオン(55kg級).志朗(松本志朗/治政館)が出場。2016年1月に滝澤博人(ビクトリー)を圧倒し5R・TKOで倒したバカイペット・ニッティサムイ(タイ)と、56.0kg契約5回戦で、勝者がファイトマネーを総取りするというタイではよく行なわれる両陣営納得の条件で賞金マッチを戦います。観衆は観ているだけですが、お金が懸かるとより試合が熱く、注目と緊張が高まります。
麗也選手は昨年、日本フライ級王座を返上し、世界タイトルを目指し歩みはじめており、2017年は世界タイトルに繋がる闘いを続け、目先の目標はISKA世界王座になるでしょうが、更なるその先のムエタイ二大殿堂王座を見据えての通過点となるでしょう。その今年の初戦は元・ルンピニー系スーパーフライ級2位.グッサコンノーイ・ラチャノン(タイ)と対戦します(当初対戦予定の鈴木真彦は負傷欠場です)。
◆1月22日(日)はREBELSとJKI合同でチャンピオンカーニバル
1月22日にはディファ有明にてREBELSと日本キックボクシングイノベーション(JKI)との合同興行でチャンピオンカーニバルとして豪華開催。ノンタイトル戦を含め、両団体王座やWPMF、WBCムエタイなどの日本タイトルなどの複雑な国内王座が絡むロングタイム興行となります。
◆2月5日(日)は日本キックボクシング連盟・神風シリーズvol.1
2月5日(日)にはNKB傘下の日本キックボクシング連盟・神風シリーズvol.1が開催。NKBミドル級王座決定戦、1位.田村聖(拳心館)vs 2位.西村清吾(TEAM-KOK)の10月2日に引分けた決着戦として行なわれます。高橋三兄弟は長男と次男出場、長男・一眞はNKBライト級ランカーの洋介(渡辺)と対戦。3連敗からの巻き返しに力を注ぎます。
次男の現NKBバンタム級チャンピオン.亮は元・WBCムエタイ日本バンタム級チャンピオンの知花デビット(エイワスポーツ)とチャンピオン経験あるもの同士の対決に挑みます。KNOCK OUTを意識したアピールが多いNKBだけに昨年からより活気ある興行が増えています。
そして2月12日(日) 大田区総合体育館で開催される注目の「KNOCK OUTvol.1」に繋がります。このイベントに相応しいと人選された3試合が決定しています(12月28日現在)。
梅野源治と対戦するのは、タイで10年近い選手生活で、国際的イベントに成長した「MAX MUAYTHAI」で昨年9戦6勝3分の戦績を残し、巧みな首相撲とヒジ打ちが得意で、前進するのみのファイタータイプ、ワンマリオ・ゲーオサムリット(スペイン)が選ばれました。
互いのぶつかり合いで一瞬の打ち合いで終る衝撃的結末を予感させますが、梅野は12月28日のカード発表記者会見で「心を折る、この時点でKO以上の価値があり、KOでなくても技術戦で相手の心を折れる試合がしたい」と語り、12月5日の初戦判定勝利もシリモンコンが心折れていた終盤が思い起こされます。
「守りに入った相手をどうすればKOできるかもトレーナーと研究中」と言い、「欧米系はパワーがあるとか体幹が凄いとか言われますが、それを感じたことは一回も無く、弱くてテクニックも無く単純にやり易く、タイ人とやる方がいちばん難しい」と言う、なかなか的を得た、欧米系のレベルも感じ取れる梅野源治の発言でした。
◆61.5kg契約 5回戦
ラジャダムナン・ライト級チャンピオン.梅野源治(PHOENIX)
vs
ワンマリオ・ゲーオサムリット(元・WPMF世界ライト級C/スペイン)
◆64.0kg契約 5回戦
WPMF日本スーパーライト級チャンピオン.不可思(クロスポイント吉祥寺)
vs
WBCムエタイ日本スーパーライト級チャンピオン.山口裕人(山口)
◆67.0kg契約 5回戦
WPMF日本ウェルター級チャンピオン.引藤伸哉(ONE’S GOAL)
vs
WBCムエタイ日本ウェルター級チャンピオン.健太(E・S・G)
一般の方には何か不可解と思われる同級チャンピオン対決ですが、上記予定文面にも出ているように、これが階級によっては10人も国内同級チャンピオンが居る不可解なキック系業界の王座乱立になっています。
これらの選手は複数王座を持っている選手も居て、まだしばらく改善はされないでしょうが、今年の「KNOCK OUT」の影響で、多くの国内王座より、名のある選手同士のビッグマッチが注目される時代に突入となり、多くの団体や興行が「KNOCK OUT」の出場を意識し、またはここに勝るイベントを目指す団体も出てくるほどキック業界が上昇志向となるでしょう。
「KNOCK OUT」が活動1年を迎える年末に、世間に与える影響はどれほどか、楽しみな1年となるでしょう。
[撮影・文]堀田春樹
▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」