特集シリーズ、検証「未来のための歴史パネル展」の第4回目をお届けする。今回はこれまでの経緯のご紹介とは異なり、日本の学問の在り方と社会運動という大きな壁に直面する内容だ。一般読者には聞きなれないことばかもしれないが、「みれぱ」において「剽窃(ひょうせつ)」と疑われる点が少なくない箇所が見受けられる。そしてその疑惑の中心人物が岡本朝也だ。

◆「剽窃」定義のガイドライン

そもそも「剽窃」とはなんだろうか。本稿は若干このコラムには珍しく「硬い内容」になるが読者諸氏にはご容赦頂きたい。

剽窃(plagiarism, forgery)とは、他者の書いた文章・論理・言葉などを、自作として使用する行為である。つまりコピペ・盗用である。わずか一部であっても、自分の言葉と他人の言葉は峻別しなければならず、他者の執筆した文献や文章などを使用する際は、引用・区分または別記表記などで峻別する必要がある。

言うまでもなく、引用符を付けず自分が書いた言葉かのように記したり、または、誰かの書物を自分の成果とすれば「学問に対する背信行為」であり、これを犯した者は学者生命が絶たれて然るべきものとされる重大な非違行為だ。これはアカデミズムの世界にいる人には常識であるが、逆に言えばそれ以外の世界の人にはあまり知られていない概念である。

2014年に、小保方晴子の博士論文盗用問題が騒がれたことがあったが、あれは極めて悪質で明瞭極まりない「剽窃行為」である。下記のとおり各大学がガイドラインをもうけている。

〈関西大学〉
http://www2.kansai-u.ac.jp/econosc/hyosetsupdf.pdf
〈早稲田大学〉
https://www.waseda.jp/fpse/pse/assets/uploads/2014/05/20170330_AvoidingPlagiarismJAP1.pdf
http://www.waseda.jp/fpse/gse/assets/uploads/2016/04/652ddf06da2b53baaed45b6238e189e6.pdf

◆パネル展(みれぱ)の剽窃調査

では、具体的に「B君の原案」と「現在、『みれぱ』パネル展で使用されている現物」を比較することにより、疑念を解き明かしてみよう。

ここでは3つの項目について確認を試みる。「①実際の文章の酷似度合」「②実際に使われているパネル資料」「③論理構成」である。

最初にパネル展で使用された「竹島/独島問題」のB君の原案と現在使用されているパネルの単純比較を行う。[図表1]は「B君の原案と「みれぱ」のパネル」の内容で、「B君案」と「現・使用の「みれぱ」資料」の酷似可能性を指摘するのみに留まる(以後、詳しく説明)。

黄色■■■の部分は文章自体、水色■■■は過去原案が加味された部分、緑色■■■は当時岡本と打合せ段階で双方が合意を得て割愛したが付記された部分、という区分法をとる。
  

[図表1]酷似部分

 

 

上記の通りB君が作成した文章を「そのまま」使用した箇所は多くはない。語尾や言い回しには若干の差異がある。この類似点だけで剽窃と決めつけるのは危険だろう。ただし、留意すべきは、この表記に至るまで(このシリーズで前回までにお伝えして来た)B君と岡本のやり取りの内容だ。岡本はB君に大方の研究・調査を行わせたのちに、B君を追放している。したがって、この場合紹介文章の類似性もさることながら「コンテクスト(文脈)」の検討も加えられる必要がある。人文科学に包摂される歴史学は社会科学とは異なり、FACT(事実)に高度な厳密性が求められるため「似ている」状況が発生することは起こり得る。であるからこそ「コンテクスト(文脈)の類似性」、「論理構成の類似性」の検討が意味を持つ。

◆パネル文から「コンテクストの酷似性」「論理構成の酷似性」を検証

では実際に展示されたパネルはどのような内容であったのであろうか。[図表2a]がB君が作成した原案、[図表2b]が実際に展示されたパネルだ。

[図表2a]B君原案

[図表2b]実際に展示された「みれぱ」パネル資料

 

 

以下、B君原案と「みれぱ」パネル資料の「コンテクストの酷似性」「論理構成の酷似性」検証を行う。[図表3]で取材班が「剽窃疑惑」を抱いた根拠を示す。ここでは変数を細かく切り、変数それぞれの関係を整理し、具体的に検討したい。

[図表3]コンテクストの酷似性、論理構成の酷似性

[図表3]において明らかなことは、「コンテクストと論理構成が完全に一致している」という結論である。コンテクストと論理構成は、書き手によって十人十色に分かれるものである。「完全一致」はいかにも不自然かつ剽窃の疑いを持たざるを得ない。

◆なぜB君の原案が使用されているのか?

では、なぜ剽窃に至ったのか。2つの可能性が推測される。「B君が書いた原稿は、彼がM君を擁護していることを理由にアカハラを受けた後、岡本は改めてゼロから独自で執筆をせず、そのまま校正に回し、修正したものを現在使用している」か「B君原案を元にアレンジを加えた」のいずれかだ。

B君は岡本と5~6回にもわたり、原稿のやりとりをしており、校正に回せる段階に到達していたことは、前回の本検証記事〈3〉で岡本自身が認めている。そして校正に回せると分かるや否や、事件以降M君を支援するB君の存在は、しばき隊、カウンターからのパネル展に対する援助を受ける際に支障になるがゆえに排除したものと考えるのが自然である。

具体的に剽窃行為疑惑がどのような人的手続で、誰が加担したのかまでは定かでない。しかし現に調査結果として「剽窃疑惑」という結論が導き出された以上、論理的に考えれば「B君の原案をそのまま校正に出し、それを修正し、使用されている」か「B君原案を元にアレンジを加え、校正にかけ、使用されている」のいずれかがを想定することが妥当である。

B君が岡本とのみ、原稿打合せをしていた事実がある以上、岡本が主犯格で彼の一存で剽窃的行為が行われたのではないかと推測される。

そしてこれは重要な要素であるが、近年多くのポスト・ドクター(博士学位取得者)たちが職探しに窮困している。このパネル展開催も、たとえば大学教員採用の際に「社会活動」として「業績一覧」に記入すれば、1つの貢献と見なされ、常勤講師・准教授・教授といったような「アカデミックポスト」への就職の一助としてポイントとなる。勿論、採用側が「B君の原案が校正に回せる段階になって、リンチ事件の被害者であるM君を支援していたことを理由に不当に排除し、その原案がそのままパネル展側に搾取され、岡本らがそれを校正にかけ、再編集を経た上で、紛い物の社会貢献活動をしている」ことを知り得ることはまずあり得ない。「みれぱ」を記事化した毎日新聞(本検証記事〈1〉参照)を見れば明らかだ。

以上述べたことを要約すれば次の通りである。

① 運動維持のためならば、リンチという多大なる人権侵害を受けた人(犯罪被害者)を守ろうとする者にすら、アカハラを行い、パージする
② 運動維持のためならば、剽窃すら行い、科学を裏切る
③ そしてそのような者が大学教員として幅を効かせている

ということである。また、B君から見れば「アカハラを受けた上に、剽窃までされた」という事に他ならないのだ。現在もなお、関西大学社会学部のホームページには、岡本朝也の名前が非常勤講師として記載されている。岡本は現在もなお、大学の教壇に立っているのだ。B君への圧迫と排除、アカデミック・ハラスメントの実態を知れば、類似のことを今後も行う可能性が極めて高いと言わざるを得ない。関西大学当局および関係学会においては、大学内部で発生した事案ではないものとはいえ、適切な対応を望みたい。(つづく)

(鹿砦社特別取材班)

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