ヤクルトVS巨人を神宮球場で見てきたが、野球部出身の友達と一緒で、なおかつ解説してくれると楽しみなことがわかった。たとえばノーアウト3塁でランナーがいて、バッターに選手がたつ。「スクイズがあるのかな」と僕が聞く。すると「このバッターはバントが上手ではないので、まずないです」と答えてくれる。
また満塁の場面では「外野フライを打たれてタッチアップされたくないから、膝から下のボールしか来ないよな」と聞くと「いや、逆をついて高めが来るかもしれません」と解説してくれる。そして友達のいうとおり、高めの釣り玉がきてバッターは三振するのだ。「隣に野球が詳しい解説者がいる」という状況で、プロ野球を見ると、こんなに楽しいのかと思う。
そして、現在、プロ野球に圧倒的に足りないものは何か、という点がこうして玄人とプロ野球を楽しんでいると見えてくるのだ。
「最近は、プロ野球の観戦マナーが悪くなった」という声をちらほらと聞く。この日も、上司の奥さんを連れ出したサラリーマンが、後ろで延々と会社の愚痴を語ってうるさいのなんの。いっぽうで、前の席では赤ちゃんがうどんをベンチにこぼしていた。
神宮球場では、圧倒的に穴場なのは、バックスクリーン横、テレビカメラのすぐそばでヤクルト側だ。ここは、ライトのプレイがいまひとつ見にくい。しかしながら、投手の真後ろだから、ピッチングフォームの狂いがよく見えるのだ。
よくど素人とプロ野球を見に行くと、「なぜ打たれたのだろう」と首をかしげている。こうした人はまったくプロ野球の観戦には、向いていない。よく見ると、投手が手投げになっていたり、体重が後ろに残っていたりするのだ。
また、神宮球場では、男性のビールの売り子を目にした。「2年前から、女性の売り子が減ってきた」と、ビールの売り子のキャスティング会社のスタッフは嘆く。「ひと昔前は、芸能界やグラビアガールへの登竜門だったビアガールですが、今は重労働ですし、客からのセクハラもあるので、志望者は少なくなりました」
それでも、今年の神宮球場のビアガールのレベルはものすごく高い。
たしか、生まれて初めて連れて行ったプロ野球では、1年目の掛布がものすごい打撃をしており、王選手は見事にレフトに突きさすようなホームランを放った。今、登場するだけで歓声があがるのは、残念ながらヤクルトの山田哲人くらいのもので、ほかの選手はさしてときめかないのか、歓声があがらない。
今年、20億円近い補強した巨人のていたらくを見ていると、現代の野球はとてつもなく緻密に戦略をたてないとだめだとよくわかる。たとえば1アウト2塁でも攻撃の形は20パターンくらいある。それも、バッターのカウントにより変わってくるのだ。
もし機会があれば、野球部出身の人とプロ野球観戦をお勧めする。倍楽しめることは必須なのだから。
(伊東北斗)