7月11日、ついに「共謀罪(テロ等準備罪)法」が施行される。これに反対して廃止を求める行動が全国各地で一斉に開催される予定だ。
数あるイベントの中で、歌や音楽・スピーチでアピールする「全国一斉共謀祭」とプラカードなどを街頭で掲げる「全国一斉スタンディング」を紹介したいが、その前に共謀罪について改めて基本を確認しておこう。
◆明日、監視・密告社会が到来する
日本の刑法では、基本的に犯罪の既遂(実際に行う)があって初めて処罰される。しかし殺人罪など重要な犯罪については、実際に人を殺す行為をしていなくても「未遂罪」などが適用されるわけだ。
ところが共謀罪は、未遂の段階よりはるか前の、計画や合意があったと警察が認定した段階で強制捜査に着手できる。しかも、その合意とは黙示的な合意も含まれ、形にあらわしたり言葉で賛意を表さなくても成立してしまう。
当然のことながら、客観的な証拠がないから、計画・合意の事実を示すものとして盗聴(電話、ファックス、メール、SNS、話し合いの現場)が必要になる。また、計画に参加したとする者の自首・密告、あるいは捜査官が潜入して計画と合意があったと主張しなければならない。
まさに監視社会・密告社会が到来することになる。合意のあとの「準備行為」が必要だと政府は説明しているが、花見に地図や双眼鏡をもっていけば準備行為、キノコ狩りにいけばテロ資金獲得のための準備行為、などと国会でも答弁されているとおり、準備行為が構成要件を厳しくするのではなく、逆に何でもありという事態になりかねない。
しかし、些細なことをでっち上げて、権力に都合の悪い人や組織を弾圧することはこれまでもなされてきた。だから、共謀罪は必要ない。では、なぜ共謀罪法案を強行採決させたのか。
それは、活動家や団体だけでなく、一般人・全国民に監視・弾圧の対象を拡大させるためである。この法律は廃止するしかない。
だからこそ、共謀罪法施行第1日目に、どれだけ廃止の声をあげるかが重要になってくる。
◆新宿ジャック・全国一斉共謀祭
まず、「全国一斉 共謀際」が行われる。
東京では、新宿駅西口の小田急百貨店前で、一般人有志の会主催の「新宿ジャック・全国一斉共謀祭」が開催される。ミュージシャンらに加えて、評論家の鈴木邦男氏や経済学者の植草一秀氏らが登壇する。
午後4時スタートで夜9時までの5時間という長丁場だが、法施行1日目という重要な局面なので頑張るという。この間に5時30分から6時30分までは、「ブッ飛ばせ!共謀罪」百人委員会が呼び掛けるリレートークもある。
全国主要都市でも連帯の「共謀祭」が行われる。7月7日現在の情報では、北海道、大阪、愛知、愛媛、千葉、静岡などから、参加の声が上がっているという。共謀祭に関する情報はフェイスブックページで確認していただきたい。
◆共謀罪をぶっ飛ばせ!全国スタンディング
一方、「ブッ飛ばせ!共謀罪」百人委員会は、「共謀祭」と同日に全国一斉のスタンディングを呼び掛けている。やり方は参加者にまかせるが、可能ならば施行日である7月11日を象徴するため、17年7月11日午後7時11分前後にプラカードを一斉に掲げ、共謀罪法廃止をアピールしよう、というのが呼びかけの趣旨だ。
東京での行動は、前述の「新宿ジャック共謀祭」と連動することになる。まず、午後四時に新宿駅西口の小田急百貨店前で「新宿ジャック共謀祭」開始。夕方5時30分から6時30分までの1時間は、百人委員会呼びかけのリレートークとなる。
・「ブッ飛ばせ! 共謀罪」百人委員会 フェイスブック
・ブログ ・HP
◆福岡では喪服で共謀罪葬送デモ
工夫を凝らしたイベントとしては、福岡で実施される福岡市民救援会主催の葬送デモがあげられる。実は6月25日にも同様のアピール活動があり、次回が第2弾になる。萎縮など一切せずに、共謀罪法を「葬り去ろう」というのがその趣旨だ。
葬送デモというからには、もちろんドレスコードは、喪服(黒い喪章、黒ネクタイ、モーニングベールなど)である。そして葬式では個人の遺影がはいるパネルに共謀罪法と墨守し、黒いリボンをかけるなどのパフォーマンスも行われるだろう。
施行日の「711」にかけて、午後7時11分には、お経風シュプレヒコールで声をあげます。が、どんなシュプレヒコールなるかは、参加するかネットの動画で見られるだろう。
主催者は、「共謀罪法の遺影や位牌を用意します。みなさんも、是非黒い服を着て、マイ木魚、マイ鈴、マイ棺桶を持参して街頭アピールに参加しませんか?」と呼びかけている。なお、「その御気持ちあるのに参加できない人は、共謀罪法葬儀への弔電やお香典も受け付けます?」ということだ。
場所は福岡パルコ前。毎週第2火曜日18時30分~19時30分に定例で行われている「福岡辺野古アクション」とのコラボ企画になる。
全国的に展開される各地のイベントを過去最大規模に盛り上げることが、廃止につながるだろう。
▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)ほか。林克明twitter