「分断をのりこえて」。

働く女性の全国センター(ACW2)の公式サイトに、「働く女性の全国センターとは」などの紹介ページはない。上の言葉がヘッダーの、団体名の下に記されているだけだ。

◆働く権利を獲得してきた世代×働くことが搾取され傷つけられることとなる世代

 

 

 

ACW2を知ったのは、友人に誘われてその総会に参加したことがきっかけだった。別でわたしは周囲の仲間と2008年にフリーランスの多業種の労働組合「インディユニオン」を設立し、さまざまな人との交流が広がり始めた頃だったように思う。メンバーの特異性から「インディユニオン」では「労働相談」のほか「事業創出(仕事づくり)」「生協的な生活の助け合い」を含めて3本柱として掲げ、労働基準法に守られず労働者かどうかを常に問われることを背景にその存在自体が「働くことと生きることを問い直す」ものだという評価を受け、それをお題目にも掲げてきた。だが、事情があり、2017年3月に解散したのだ。

さて、ACW2総会では同世代の女性とまさに「働くことと生きること」に関するリアルな思いを交わすことができ、その場で加盟した(複数の組織に属することは珍しいことではない)。その後、「女性の労働問題は、賃労働以外のケア労働や生きることに直結しており、労働組合では解決できない」「背景には、根深い女性差別がある」と聴く。わたしが主に働く出版業界は比較的女性への差別がないように心がけている業界かもしれないが、個人的にも日常の中で背の低い女性で外面はよいことによって仕事上もなめられやすく、損もしてきた。

常に現場のリアルを吸収している団体だからこそ、ACW2は、「金を寄越せ」と叫ぶ労働運動の限界を超えた、オルタナティブな活動に携わってきた。女性の権利を主張し、真に安全・安心な労働現場を求め、ケアをかんがみるよう促し、今ここで女性たちが求める生き方を提唱してきたのだ。

だが、だからこそ、女性の働く権利を獲得するためにウーマン・リブなどと呼ばれる運動に携わった上の世代と、働くことが搾取され傷つけられることとなったわたしたちの世代との間には、常に対立が生じる。ほかにも、さまざまな構造のなかで、わたしたちは対立を強いられているのだ。それでもわたしは「対話」と「多様性」を繰り返し主張するACW2を信じ、今期まで2年間のみ運営委員の1人として活動している。

1%の権力者・支配者・為政者は、被支配者同士、労働者同士、民衆同士、99%の人同士の対立を煽る。だが、社会運動の現場においては、ある種の内ゲバが続き、そこにまた権力構造が生まれ、力は分散し、共倒れとなってきた。そこにせめて、ACW2には「女性同士の分断はのりこえられるはずだ」という信念があるのだろう。どこにいっても異端のわたしとしては、それが理想論である面はさまざまな現場で常に目にしてきたし、その困難をよく理解しているつもりだ。だが、あきらめてしまえば、被害は拡大するいっぽうだし、わたしたちの自由は奪われるばかりなのだ。

◆「週3日労働で生きられる社会に!」

そこで最近、ACW2が主張していることの1つが、「週3日の労働で生きられる社会に!」ということだ。

4月25日には厚生労働記者会にて記者会見をおこない、労働現場のリアルも伝えた。「命を支える」活動を広く労働として捉え、「日本型の細切れ雇用」の現実を直視することを訴える。また、「働き方改革」の欺瞞を暴き、女性労働者を無視した「政労使の話し合い」から批判した。そのうえで、週3日程度の賃労働と社会保障によって生存権が守られる社会を求めたのだ。具体的な要求項目として提示したのは、以下の通り。

 

この場では個人的にも、今後さらに内部でも外部とも意見交換などを重ねつつ、あたりまえにあるべき(なのに壊され奪われている)「生きられる働き方」を求めていきたいと改めて感じた。

◆「明日、世界が滅ぶとも、
  今日わたしはリンゴの木を植える」

また、現在、「働く女性の全国センター 長期ビジョン =100年を見通して=」通称「100年ビジョン」を策定すべく、対話を重ねている。これは、負け続ける運動を日々継続していく苦しさを打破するために掲げるものと当初聴いた際には心を動かされたものの、運営委員として活動に携わるうちに「わたしたちはともかくすぐ下の世代ですら働きづらさ・生きづらさを引き受けなければならないのか」と疑問に思った。

だが、先日のワークショップで改めて目的の説明をお聴きした際、「明日、世界が滅ぶとも、今日わたしはリンゴの木を植える」という表現を思い出した。これは、ドイツの宗教改革者マルティン・ルターだかルーマニアの詩人ゲオルギオだかの言葉といわれ、さらにアレンジしたものを開高健が色紙に書き残している。

ACW2が2012年に作成した「100年ビジョン」は以下の通りで、現在、これに関連したパンフレットを作成するために、会員たちが集まって言葉の1つひとつを改めて見つめ直しているところだ。

働く女性の全国センター(ACW2)
★公式サイト http://wwt.acw2.org/?page_id=39
★Twitter https://twitter.com/acw2org
★Facebook https://www.facebook.com/groups/291660530948299/

▼小林蓮実(こばやし・はすみ)[文/写真]

1972年生まれ。フリーライター、エディター。『紙の爆弾』『現代用語の基礎知識』『週刊金曜日』『現代の理論』『neoneo』『救援』『教育と文化』『労働情報』などに寄稿。働く女性の全国センター(ACW2)運営委員。

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