トランプと安倍が会談し、その要旨は〈①核・ミサイル開発を進める北朝鮮の政策を変えさせるため、圧力を最大限に高める、②トランプが日米間の貿易不均衡の是正を要求。安倍は経済的対話を通じて成果を出すと説明、③トランプは米国製武器の輸入拡大を求め、安倍も意欲、④安倍が提唱した「自由で開かれたインド太平洋戦略」実現に向けた協力強化で一致。中国への懸念が念頭〉の4点だったと報じられている。

◆ここに理性があるとはどうしても考えられない

トランプが来日すれば「成り上がり実業家」として、商売の話をしてゆくに違いないと多くの人が予想した通り、今回の来日でトランプが日本に迫ったのは「貿易不均衡の是正」(米国産製品をもっと買え!)と、「対北朝鮮全ての選択肢」(戦争も排除しないぞ! 戦争になったらお前ら日本も加勢しろよ!)さらにそのためにはもっと「米国の武器を買え!」との要求だった。安倍は「はいはい、わかってまんがな、親分」とトランプの命令すべてを受け入れた。

別段驚くに値しない、予定通りの「セレモニー」ではある。にしても「すべての選択肢」には明確に「武力攻撃」=「戦争」も包含される。この島国に住む多くの人は本当に「戦争」を許容するのだろうか。望んでいるのだろうか?「北朝鮮の政策を変えさせるため、圧力を最大限高める」のであれば、すでに旧友好国中国との仲も不安定になっている朝鮮が「暴発」する可能性はますます増大する。「暴発」を意図して米国をはじめとするその「友好」周辺諸国がひたすら朝鮮に対する圧力を高めることに腐心しているとしか私には思えない。ここに理性があるとは、どうしても考えられない。

 

◆かくも不可解な安倍政権の対米完全服従姿勢

「もっと武器を買え」と言われて「はいはい、その通りでございますね。幾らでも買わせていただきますわ」との「公約」を先の総選挙で安倍は一度でも口にしただろうか。日米関係は最上にして不可侵の国是だと安倍は妄信している。誰に教えを請わなくても、祖父岸信介が A級戦犯で、本来は連合国により「死刑」を執行されても不思議ではなかった身から、どうしたわけか無罪放免された。それにとどまらず最高権力者にまで、引き揚げてもらった連合国(とりわけ米国)への「恩義」が人格形成に関わっているのだろう。仮に連合国が岸に「死刑」を執行していれば(死刑制度の是非についての議論は別にして)安倍は総理ににまで登りつめることはなかったろうし、安倍のかくも不可解な、対米完全服従姿勢が生じたか、にも疑問符が付こう。

ちょっと抽象的なようだけれども、この相関性を自分に置き換えて考えてみると、あちらさんが、いかに「逆らえない」相手かを想像することができる。連合国の思惑(岸信介の放免)がなければ「今の自分はなかった」。これは安倍にとって取り去ることのできない自己規定の前提と言ってよい。

だから現実も理屈も条約も憲法も、安倍にとって実は「どうでもよい」のだろう。
私たちにとっては比類なき不幸である。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

タブーなき『紙の爆弾』12月号 安倍政権「終わりの始まり」